私、N F Fサービス社長付き秘書をしています 作:妖精絶対許さんマン
この話で一度、『私、NFFサービス社長付き秘書をしています』を完結させてもらいます。『狐屋夫婦小話』で短編集を投稿する予定です。
この作品のコヤンスカヤはビースト幼体でも無く、光のコヤンスカヤでも無く。闇のコヤンスカヤでも無く。第四のコヤンスカヤ––––––愛のコヤンスカヤですっ!
『ブリテン異聞帯』に打ち克ち、神域特異点『高天ヶ原』を修正したカルデアはたびたび発生する
「ダ・ヴィンチちゃん!どうしたの!?」
「ああ、藤丸君!マシュも一緒だね!?突然、召喚サークルが起動したんだ!」
「えっ!?聖晶石は砕いて無いよ!?」
「貴重な資源を無闇に砕こうとしないでください先輩っ!」
召喚サークルから発せられる光は次第に強くなる。光の中から女性があらわれる。桃色の髪に太ももの部分に大きなスリッドが入った体に張り付くようなライダースーツに身を包み、何より目を引くのは頭部の狐耳と腰辺りから生えている尻尾。女性は藤丸、マシュ、ダ・ヴィンチを視界に捉えながら、不敵な笑みで名を名乗った。
「この度は召喚のほどありがとうございます♡潜入、生産、商談、販売、傭兵派遣に破壊工作。人類の皆様のあらゆるニーズにお答えするNFFサービス代表、タマモヴィッチ・コヤンスカヤ!ここに参上いたしました♡よろしくお願いしますね、マ・ス・ター♡」
いやー、ようやくカルデアに召喚されることに成功しました。まあ、召喚される、というより私の方から出向いたが正しいのですが。社さんとは騎士王さんの代名詞と言ってもいい聖剣でも切れない太い縁で繋がってますけど、カルデア、ひいてはマスターの藤丸立香との縁は薄いもの。私と契約するのはマスターですので、カルデアに召喚されるまで時間がかかってしまいました。
「まさか・・・・・・君が自分から召喚されるなんて思ってもみなかったよ、タマモヴィッチ・コヤンスカヤ」
「ええ、そうですね。私、別に人類の皆様の未来とか興味はございませんが、ここには社さんがいらっしゃいますので」
辺りを見回してみますが社さんの姿が見当たりません。もしや・・・・・・カルデアで不当な扱いをっ!?
「ところでマスター?私の社さんはどちらに?」
「狐屋さんなら今頃、ゴルドルフ新所長と事務仕事してると思うよ」
「狐屋さんがお手伝いしてくれるようになってから仕事の進みが順調だと新所長もおっしゃっていましたね!」
「当然ですわ。社さんには徹底的に秘書としての必要なスキルを叩き込みましたので」
夫が褒められるのは悪い気はしませんね。ありとあらゆる技能を教え込んで、社さんも物覚えがいいのでメキメキと成長されていきましたから。
「でしたら、マスター。私が召喚されたことは社さんに内緒にしておいてください。あと、ゴルドルフ閣下にも」
「いいけど・・・・・・どうして?狐屋さんすっごい喜ぶと思うけど?」
やれやれ・・・・・・これだから子供は。大人の恋愛をまるでわかっていませんね。
「いいですかマスター。私がすぐに社さんと再会すれば確かに感動的です。ですが出来る大人の女の恋愛とは時と場所、何よりシチュエーションが大事です。貴方も盾のお嬢さんにプロポーズなさる時はその辺りを心得るように」
「「ぷ、プロポーズ!!?」
マスターと盾のお嬢さんは二人揃って顔を真っ赤にして顔を逸らして・・・・・・目があうとすぐに逸らしています。はっはーん?さてはこの二人、両片思いというやつですね。
「狐屋君に教えないのはわかるけど、なんでゴルドルフ君まで?」
「あの方、腹芸とか苦手ですし。私が召喚されたことを知ると100%顔と態度と体の震えが表れるでしょうから」
あの方、本当に時計塔の法政科を出ている魔術師なのか疑いたくなるようなお人好しで単純ですので。
「そうでした。私の部屋は社さんとの
私は鼻歌を歌いながらもしもの事態を考えて、霊体化してカルデア内部を散策しながら社さんを探します。しばらく歩き回っていると廊下で誰かと喋っている社さんを見つけました。
(霊体化もして、ダメ押しのアサシンクラスの『気配遮断』もあるので少しぐらい近づいても問題ありませんね)
社さんは一体誰と話をしているんでしょうか?ゴルドルフ閣下でしょうか?でも、マスターは書類仕事をしているとおっしゃっていましたし・・・・・・。近づくにつれ、社さんと話をしている相手が見えてきました。社さんと話をしていたのは––––––いろいろと因縁深く、忌々しい女、玉藻の前でした。
「おや、
––––––あ"っ?社・・・・・・さん?私の社さんを名前呼びですって?
「お疲れ様です、
––––––お"っ?貴方も名前呼びですか?浮気?浮気ですか、社さん?
「社さんも真面目ですねぇ。魔術師でもなんでも無いんですから少しはリラックスしたらいいのに」
「だから、です。私はこのカルデアで一番『何も持っていない人間』です。藤丸君のように人間一人が背負うには重すぎる責任を背負っていませんし、ゴルドルフさんやムニエルさんのように異聞帯に直接出向くようなことも無い。そんな私が出来ることは、出来るだけ皆さんの負担を減らすことだと思っています。それが書類作成や整理といった小さなことだとしても」
・・・・・・そうでしたね。貴方は表に立つタイプではないですもの。そんな貴方だから、私は秘書にしたんですもの。
「・・・・・・そうですか。貴方もなかなか難儀な性格ですね」
「自分でもそう思います。・・・・・・それでは、失礼します」
社さんは玉藻の前に一礼するとそのまま歩いて行かれます。社さんの後を追いかけて、玉藻の前の横を通り過ぎます。
「––––––あまり、お痛をなさらないことですね」
本っっっっっっ当にいけ好かない女ですわねっ!!
マスターとの資源回収という名の
逆に避ける傾向なのは中国系英霊の方々。特に顕著なのは始皇帝ですね。それはもう露骨に避けています。まあ、私もあの方のことは嫌いですから避けるの推奨です。
「あの、コヤンスカヤさん。本当にその服装で社さんとお会いされるんですか?」
「ええ、当然です。この服はいわば私の正装。社さんをスカウトした時もこの服でしたもの」
今の私の服装はライダースーツではなくNFFサービスの社長をしていた時に着用していた特注のビジネススーツを着ています。この服とも長い付き合いですので、愛着が湧くというものです。
そして、今日––––––満月の夜に社さんとの再会を決めました。場所はノウム・カルデア内の外が見えるラウンジをお借りしました。マスターには社さんを呼びに行ってもらってます。ええ、別に
「ところでマシュさん。マスターとはどこまで進展されました?」
「進展・・・・・・ですか?」
マシュさん–––周回に連れ回されている内にそれなりに親しくなりました–––はキョトンとした表情で首を傾げてしまいました。
「マスターとの進展だなんて一つしかないじゃないですか☆キスは済まされました?添い寝は?一緒にシャワーは浴びられました?性行為は?」
「せっ!?性行為だなんて『まだ』してませんっ!!先輩とは『まだ』手を繋いでしかいませんっ!!」
「『まだ』・・・・・・ねぇ?」
「・・・・・・あっ。〜〜〜〜〜〜ッッッッッッ!?!?」
あらあら♪顔を真っ赤にして可愛らしい♪『まだ』と言い切るあたりマスターにゾッコンのようですね。
「あまりうかうかしているとマスターが他の女性に盗られてしまいますよ?その方がマシュさんが知っているサーヴァントなのか、知らない女性なのかはわかりませんが」
「先輩が・・・・・・盗られる」
キュッとマシュさんは胸を強く握り締めます。残酷なことですが、『人間』の一生は短いですから。悔いなく生きたいのなら、他者を傷つけてでも、他者の尊厳を踏み躙ってでも欲しいモノは手にするべきです。だって、『人間』とはそういう生き物ですもの♡
「もし、マスターとのことで相談事があるのなら何時でもお声がけください。特別に格安で相談に乗ってあげます」
「・・・・・・お、お願いします」
「承りました♡・・・・・・そろそろ時間ですね」
時計の針が0時に重なりました。直に社さんを連れたマスターが来るでしょう。
「そ、それでは私は失礼します」
「ええ、話し相手になっていただきありがとうございます☆いい暇つぶしになりました」
マシュさんは一礼してラウンジから出ていきました。・・・・・・ど、どうしましょう。一人になった途端柄にもなくドキドキしてきました。
「へ、変なところはありませんよね・・・・・・」
ガラスを姿見代わりにして全身を確認します。帽子良し、髪も枝毛一本無し。服も皺や汚れも無し。下着もその・・・・・・少々派手目の物を着用しています。再会したら『そういう事』に発展してもいい準備もできています。
「ふぅ・・・・・・」
自分に自信を持ちなさい、コヤンスカヤ!!社さんと私は相思相愛!何を怖気付く必要があるのですか!
私が覚悟の完了が済むと同時にラウンジの扉が開きました。私の愛する人が立っていました。面と向かって会うのは久しぶりです。
「お久し––––––」
お久しぶりです、そう言い切る前に私は社さんに抱きしめられていました。
「––––––ふぇぁっ!?」
突然の出来事で普段出さない、情けない声を出してしまいました。
「良かった・・・・・・っ!本当に・・・・・・コヤンスカヤさんだっ!」
「・・・・・・ふふっ。はい、貴方の妻のコヤンスカヤですよ。寂しい思いをさせて、一人にしてしまってごめんなさい」
「そんな・・・・・・っ!謝らないでください。こうして再会することができたんですからっ!」
私を抱きしめている腕に力が入っていくのを感じます。私も負けじと社さんを強く抱きしめます。もう二度とお互いを離さないと示すように。
「社さん・・・・・・」
「コヤンスカヤさん・・・・・・」
満月の光に照らされながら、私と社さんの影は次第に近づいて一つに重なりあいました。
––––––そこから先は私と社さんの二人だけの秘密。満月を眺めながら、寄り添って会話に花を咲かせたのか。あるいはそのまま部屋に戻って閨を共にしたのか。ふふっ、さてどっちでしょう?
・狐屋社⑥
カルデア内で一番背負っている物が無いと思っている秘書。実際はそんなことは無く、立香とマシュのレポート作成を手伝ったり、時間があれば厨房のヘルプに入るなど活躍中。
コヤンスカヤとの再会後は夫婦同室で誰の目も無いことを良いことに四六時中イチャイチャしている。耳を触ったり、手を繋ぎながらキスしたり。
最近召喚されたロシアの勇士に『ヤースカヤの夫ならオレの息子も同然。来い、鍛えるぞ!』と言われてトレーニングルームに連れ去られているのを度々目撃されている。
将来的に子供は二人ぐらい欲しいと思っている。ただし、コヤンスカヤがもっと欲しいと言えば頑張る所存。
コヤンスカヤに対する絆レベルはメーター振り切るぐらい。測定不能。
・狐屋コヤンスカヤ⑥
社と夫婦になったことで霊基登録名が変わったレディ・ラビット。社との夫婦同室での生活を満喫中。
人理修復後は聖杯を一つちょろまかして受肉する予定。独占欲は強いがある程度の女性職員やサーヴァントとの会話は許している。ただし、夜は社に抱きついて離さない。
最近の悩みは自分のことを『ヤースカヤ』と呼んで親しげに接してくるロシアの勇士。何故か拒絶することが出来なくて困っている。
将来的に社との子供はサッカーチームが出来るぐらいと考えている。
社に対する絆レベルはメーターの針が何周もするほど。つまり測定不能。
これにて一匹の獣を愛した人間と一人の人間を愛した獣の御伽噺はお終い。