私、N F Fサービス社長付き秘書をしています   作:妖精絶対許さんマン

8 / 8
お待たせしました。違和感や気になるところはあると思いますが、『人類悪』だった女と『ただの人間』の男の物語は終わりです。


誕生の時来れり。汝、望まれて、愛されて生まれた赤子なり

––––––地球白紙化と呼ばれた現象は一人の少年と一人の少女、多くの人達の手によって解決されました。

 

地球白紙化現象が解決されてからカルデアに召喚されていた英霊の方々は『座』と呼ばれる場所に還りました。カルデアに召喚されたコヤンスカヤさんもその例に漏れず『座』に還り・・・・・・ませんでした。なんと、コヤンスカヤさんは『聖杯』と呼ばれる物で受肉されたそうです。

 

『聖杯、一つくすねて参りました☆仕事の報酬はきっちりといただきます♡・・・・・・まあ、これ見よがしに置いてあったのでくすねたと言うより盗まされたと言うのが正しいですね』

 

そう話した時のコヤンスカヤさんの顔は不満と喜びが混ざった複雑な表情でした。ですが、その聖杯のおかげでコヤンスカヤさんは受肉することができました。

 

私と受肉したコヤンスカヤさんは地球白紙化解決後、日本に戻り生活基盤を整えるためにNFFサービス時代に貯めていた貯金で家を買いました。私はマンションでも良かったのですがコヤンスカヤさんが

 

『マンション?嫌です。なぜ社さんとの生活に他の人間を関わらせないといけないのですか?私、社さんは大好きで愛してますけど他の人間は嫌いですので☆』

 

とのことで即却下されました。今はコヤンスカヤさんが起業した会社で社長秘書兼副社長の役職に就任しています。コヤンスカヤさんの経営手腕のおかげで会社はすぐさま軌道に乗って大企業の仲間入りになりました。

 

「ただいま帰りました」

 

「お帰りなさいませ、社さん♪」

 

扉を開けるとリビングからお腹を大きくした(・・・・・・・・)コヤンスカヤさんが出迎えてくれました。会社が軌道に乗ってからすぐにコヤンスカヤさんの妊娠が発覚、もう少しで産まれます。

 

「コヤンスカヤさん、出迎えなどしないでいいですから座っていてください。何かあったら大変ですから」

 

「もうっ!社さんは心配しすぎですっ!家の中で怪我するなんてヘマしませんよ!」

 

そうは言っても心配なものは心配です。コヤンスカヤさんは妊娠が発覚してお腹が大きくなってからも会社で仕事しようとしていたので、なんとか説得して週二回の出勤に抑えてもらいました。・・・・・・私としては出産してから時間を置いてからにしてほしかったです。

 

「それより社さん。お風呂にします?ご飯にします?それとも・・・・・・わ・た・し♡」

 

「コヤンスカヤさんでお願いします」

 

「食い気味ですねっ!」

 

コヤンスカヤさんに近づいて頰にキスをします。そして、手を繋いでコヤンスカヤさんに負担が無いようにゆっくりとリビングに歩いていきます。

 

「今日はハヤシライスにしてみました。美味しいと思いますよ?」

 

「コヤンスカヤさんが作ってくれた料理ならなんでも美味しいですよ」

 

「嬉しいこと言ってくれますねぇ」

 

最近は家にいることが長くなったコヤンスカヤさんが晩御飯を作ってくれています。初めはお世辞にも美味しいとは言えませんでしたが、日を増すごとに料理の腕が上達していってもしかしたら私より美味しいかもしれません。

 

「社さん。ご飯の用意をしておきますので着替えて来てください」

 

「わかりました」

 

寝室がある二階にまで上がって着替えていると一階からガチャンッ!!という音とドサッという音が聞こえて来ました。

 

「コヤンスカヤさんっ!!」

 

慌てて一階に降りてキッチンに向かうと顔色を悪くしてお腹を抑えているコヤンスカヤさんが座り込んでいました。

 

「大丈夫ですか、コヤンスカヤさんっ!!」

 

「う・・・・・・」

 

「う?」

 

「う、産まれます・・・・・・っ!」

 

産まれる。その単語を聞いた瞬間、すぐにコヤンスカヤさんを抱きかかえて駐車場に向かいます。かかりつけの産婦人科は車で飛ばして十五分ほどの場所にあります。大きくなったお腹に気をつけながらコヤンスカヤさんにシートベルトをつけます。

 

「や、社さん・・・・・・手を握っていただけますか?」

 

「はい・・・・・・いくらでも握っていますとも」

 

片手での車の運転は褒められた行為ではありませんが、コヤンスカヤさんの頼みを断るなんてことは私には出来ません。コヤンスカヤさんに痛いぐらい手を握られながら車を走らせて産婦人科に向かいます。渋滞に捕まることもなく無事に産婦人科に到着しました。

 

「コヤンスカヤさんっ!すぐに人を呼んで来ますので待っていてくださいっ!」

 

病院に駆け込み、受付で業務終了の片付けをしているスタッフの人に慌てて声をかけます。

 

「すいませんっ!こちらに通院している狐屋ですっ!妻が産気づいて・・・・・・っ!!」

 

「わ、わかりましたっ!すぐに先生を呼んで来ますので旦那さんは奥さんの側についていてあげてくださいっ!」

 

「わ、わかりましたっ!」

 

スタッフの方が受付の奥に戻るのと同時に車に戻ります。コヤンスカヤさんは先程に比べて顔色が悪くなっており、呼吸も苦しそうでうめき声を上げてます。

 

「コヤンスカヤさん、もうすぐ先生が来ます!だから、もう少し我慢してくださいっ!」

 

「ううっ・・・・・・!」

 

コヤンスカヤさんの手を握りしめて、私が側にいることを必死に伝えます。女性の出産は想像を絶する痛みを伴うと聞きました。私に出来ることはこうやって、コヤンスカヤさんの手を握ることしか出来ません。

 

「奥さんを移動します!旦那さんは待合室で待っていってくださいっ!」

 

「・・・・・・妻のことをよろしくお願いしますっ!」

 

コヤンスカヤさんの手を一際強く握りしめて、コヤンスカヤさんの頬にキスをしてから離れます。本当はコヤンスカヤさんについて行きたいですが、衛生面の関係から入れません。

 

「コヤンスカヤさん・・・・・・」

 

ストレッチャーに乗せられて、病院内に運ばれて行くのを確認してから車を駐車場に駐めに行きます。

 

「男って生き物は・・・・・・こういう時に何の役にも立ちませんね・・・・・・っ!」

 

苛立ちを紛らわすようにハンドルを拳で全力で殴ってしまいました。

 

「そろそろ行かないと・・・・・・」

 

いざ父親になるとなると緊張と不安が一気に押し寄せて来ています。コヤンスカヤさんは受肉したとは言え、普通の人間とは違います。もし、生まれてきた子供が異形だったら?コヤンスカヤさんが出産の時に命を落とすようなことがあったら?私はその時・・・・・・生まれてきた子供を心底から愛せるのでしょうか?コヤンスカヤさんが亡くなるようなことがあったら、私は正常でいられるでしょうか?

 

「本当に自分の弱さが嫌になりますね・・・・・・」

 

待合室でのもどかしい時間が続きます。一時間過ぎたと思ったらまだ三十分しか経っていませんでした。それを何度も何度も繰り返し、夜明けが近づいてきた時です。分娩室から大きな声で泣き声が聞こえてきました。

 

「狐屋さんっ!赤ちゃんが無事に生まれましたよ!母子共に健康状態に問題はありませんっ!」

 

看護師さんの言葉を聞くと同時に安堵から力が抜けて椅子から滑るように崩れ落ちてしまいます。

 

「奥さんは病室に移動されていますので、旦那さんも奥さんの側にいてあげてください」

 

「わかりました。ありがとうございます」

 

看護師さんにお礼を言ってコヤンスカヤさんが休まれている病室に早足で向かいます。病室に近づくにつれて大きな泣き声と慌てた様子であやしているコヤンスカヤさんの声が廊下にまで聞こえてきました。あんなに慌てた様子のコヤンスカヤさんの声を聞くのは久しぶりです。

 

「コヤンスカヤさん」

 

「ああっ!?社さんっ!助けてくださいましっ!」

 

コヤンスカヤさんは涙目になりながら私に助けを求めてきました。コヤンスカヤさんから赤ん坊を受け取り、あやしていると次第に泣き止んで眠りました。

 

「やけに手慣れていますね・・・・・・社さん」

 

「そうですか?・・・・・・出産、おめでとうございます」

 

「ふふっ、ありがとうございます♪私の胎の内にこんなに大きな子供が入っていたなんて・・・・・・驚きです。男の子なんですよ?」

 

「そうですね。コヤンスカヤさんにそっくりです」

 

「目元は社さんに似ていますよ?」

 

お互いにこの子は私とコヤンスカヤさんのどちらに似ているかを話し合って、次第に会話は無くなって私とコヤンスカヤさんは私の腕の中で眠っている子を見つめます。

 

「社さん・・・・・・私を母親にしてくれて、ありがとうございます」

 

「私の方こそありがとうございます。私とコヤンスカヤさんの子供を産んでくれて」

 

コヤンスカヤさんは私の腕に抱かれている我が子の頬を優しく撫でて、赤ん坊もその小さな手でコヤンスカヤさんの指を握り返しています。

 

「社さん。この子の名前、考えていますよね?」

 

「はい、もちろんです。この子の名前は––––––」

 

多くの人と出会って、絆を紡いで欲しい。そんな想いを込めてこの子の名前は––––––。

 

 

コンコンッ!

 

 

狐屋夫妻の新しい家族が誕生した日の未明、ある部屋で不完全ながら英霊召喚が勝手に行われた。

 

『輝ける東方の女神に感謝しなくてはな!不完全な召喚とは言えこうして現世にいま一度召喚されたのだからな!』

 

実体を僅かに保てている程度の魔力しか持ち得ないその英霊は、足音を立てずに部屋で寝ている赤ん坊に近づいて覗き込む。

 

『ふむふむ・・・・・・ヤースカヤと婿殿にそっくりだ。いいとこ取りというヤツだな。そうか・・・・・・この子がオレの孫か』

 

英霊は優しい手つきで赤ん坊の頬を撫でる。赤ん坊はくすぐったのか顔を逸らして、英霊の指をその小さな手で握った。英霊は握られたことに驚いたあまり頭部の耳と尻尾がピーンッと伸びたがすぐに元に戻り、耳は嬉しそうにぴこぴこと動き、尻尾は世話しなく左右に揺れている。

 

『ふふ・・・・・・貴方はこれから様々なことを経験するのでしょうね。その瞬間に祖父(祖母)としては立ち会えないのは残念で仕方ありませんが・・・・・・』

 

英霊の体は実体を保つための魔力が底をつき、現世に留まれる時間も僅かしか残されていない。しかし、英霊はそんな些末な事は気にもしない。

 

『オレが約束するぞ!お前はこの先、どんなことでも成し遂げられる!立派な勇士に、知恵深い賢者に、あるいはそれ以外の何者にでもなれる!頑張れ、お前ならなんでもできるぞ!』

 

偉大なるロシアの勇士は孫のことを言祝ぎながら現世から退去した。消える直前まで、ロシアの勇士は太陽が如き笑顔で笑っていた。




・狐屋社⑦

地球白紙化解決後は妻のコヤンスカヤと共に『NNFFサービス』の企業、社長秘書兼副社長の地位に就いた。

コヤンスカヤの出産まで影で色々と考えて、悩んでいたが子供が産まれたら悩みなんてどこかに吹き飛び、子煩悩な親になった。

子供は男児六人女児六人の十二人の父親、ビッグダディと化した。これには輝ける東方の女神も引き気味。

・狐屋コヤンスカヤ⑦

地球白紙化解決後に『聖杯』を盗むつもりが、逆に『聖杯』を目の前に盗んでくださいと言わんばかりに置いてあって少し不満だったレディ・ラビット。もちろん、ちゃんと盗んで受肉した。

社が影で色々と悩んでいるのは知っていたが、口出しして変に拗れるのが嫌だったため、社が自分で答えを出すのを待っていた。

子供は一年に一人のペースで産んでいたが、スタイルは全く変わっていない。これには盾の乙女も嫉妬した。

・狐屋夫婦の子供

名前は読者の皆様のご想像にお任せします。

あとに産まれる子供も含め、狐屋夫婦の子供には輝ける東方の女神の加護が少しだけ与えられた。無病息災程度のものではあるが十分にすごい。

・NNFFサービス

コヤンスカヤが地球白紙化解決後に起業した会社。兵器開発や傭兵派遣から手を引き、さまざまな分野で成功。特に力を入れたのは紛争地域のインフラ整理や現地住民を雇用して現地で雇用を作っている。

NNFFサービスはニュー・ナイン・フォックス・ファイナンスサービスの略。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。