ラスボスからは逃げられない!   作:宇宙きのこ(ミズガルズ産)

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漫画の最新話でベネトナシュが大活躍中!
本当に表情がコロコロかわって可愛いですよね。


ちょっと短いですが次回のイチャイチャの為のつなぎとして更新。


ベネトナシュ 状態異常 “泥酔”

 

 

「きいで、いるのか! ありすとてれすぅ!」

 

 

 

「勿論です」

 

 

 

呂律の廻ってない言葉が部屋に響きプランは微笑みながらソレに頷いていた。

彼の眼前にいるのはベネトナシュである。

複数回殺された結果、貧血状態になった彼女は体力が回復するまでそのまま【光の森】に滞在し正式にミョルニルの王として歓待を受けていた。

 

 

 

 

複数人に囲まれるのを嫌うと判断したロードスは極小人数の一室で彼女を持て成していたのだが……今や目も当てられない事になっていた。

 

 

 

カランと音を立てて複数の空っぽになったワイン瓶やブランデーの入っていた容器が転がっている。

これらは全てベネトナシュが空けたものである。

飲まされた【ゲロ】の後味を消す為にひたすら彼女は飲んでいた。

 

 

後は再生させたばかりで臓器の能力が落ちていたのもあるかもしれない。

他にもため込みすぎたストレスが限界に達したとも考えられる。

理由は多々考えられるがどちらにせよ彼女は酔っている。

 

 

 

それはもう、べろんべろんに。

普段では考えられないどころか、彼女の人生においても初の泥酔状態である。

ベネトナシュは頬を真っ赤に染め、プランの襟元を掴み上げて口汚く罵り出す。

 

 

 

どうやら彼女は絡み酒の傾向が強いらしい。

 

 

 

「きさまはいづもそうだ! そうひゃって! うなづいてればすむとおもってふな!!」

 

 

 

 

プランを眷属にするという目的の他にもウルズの泉が復活しポーション等の生産が再開されたエルフ達と交渉するのも彼女の役目である。

優れた医薬品やポーションはミョルニル復興において幾らあっても困らないのだから。

ちなみにこの課題は既に達成されていた。

 

 

 

元よりベネトナシュにはさっさと帰ってほしいと思っていたロードス王は彼女の希望を全て叶えていた。

駆け引きも何もあったものじゃないが、ロードスは本当に早く彼女に帰ってほしかったのだろう。

王としてはここでミョルニルを支援しておけば後の時代まで続く恩を売れるという打算もあるかもしれない。

 

 

 

「ロードス陛下」

 

 

 

「無礼講である。酒を嗜む者なら一度は経験しておいた方がいい」

 

 

 

プランから「何とかしてくれ」という視線を送られたロードスは茶を飲みながら徹底的にプランを見ようとはしない。

己の国で暴れてくれた仕返しとしてはこれでも有情な方かもしれない。

昔ベネトナシュに執拗にねらわれた事も関係があるかもしれないが。

 

 

 

 

「わだしをみ……っ……」

 

 

 

口元を押さえてベネトナシュが足早に去っていく。

何時もならば極めて優れた肉体がアルコールを完璧に処理してくれるために悪酔いなどしたことはない彼女にとってこれは未知なのだろう。

吐き気を催すなど初めての経験に彼女は戸惑いなら逃げるように手洗いに向けて去っていった。

 

 

 

プランは無言でソレを見送ると、次に痛い程に感じる視線の先に眼を向けた。

そこにはルファスがいた。

例の如く彼女の周りにも何本もの瓶と、更にはエルフ特性の清酒の入ったとっくりも。

 

 

 

ジィィィイと真っ赤な瞳でルファスはプランを睨む様に見ている。

もう少しマナを込めれば彼女は本当に目から光線を出せるかもしれない。

 

 

ベネトナシュに絡まれていた師の首元──吸血痕──をただ睨んでいた。

どうにも彼女はこの傷が気に入らなくてしょうがないらしい。

 

 

 

 

エルフ達の飲む清酒のアルコール濃度は非常に高いことで有名だ。

具体的には30パーセントくらいである。

ドワーフ達でさえ「悪くねぇ」とこぼす程には濃く、普通は水などで割って飲むものだが……。

 

 

 

余り酒に詳しくないルファスだ。

そのままイッた可能性は十分にある。

プランは微笑みながら視線を微かに空に向けて天を仰いだ。

 

 

 

(薬をもらっておこう)

 

 

 

自分のではなく二日酔いで苦しむことになるルファスとベネトナシュの為に。

ちなみに彼は酒は飲んでいない/飲めない。

癌と呪詛と【アンタレス】のせいで臓器がぐちゃぐちゃになっているプランにとってアルコールなどもってのほかだ。

 

 

 

つまり状況はとっても簡単だ。

ミズガルズ屈指の戦闘力を持つ酔っ払い二人に囲まれた健常者という図になる。

ロードスもまた平常であるが彼はとにかく存在感を薄くし、黙々と茶を飲んでは肴に舌鼓を打っている。

 

 

……彼は機会を狙っているのだ。

この場から退去するチャンスを。

 

 

 

我関せずをひたすら貫く姿勢を崩さないがプランは彼を逃がす気はなかった。

一人よりも二人の方が負担は減るのだ。

最低でもベネトナシュはあちらに押し付ける為の算段を彼は考えている。

 

 

 

ルファスをもう一度見る。

何やらさっきよりも一人分ほど距離が近くなっているのが気になるがそれ以外は変わらない。

 

 

 

 

「ロードス陛下。ウルズの泉の状態は如何でしょうか?」

 

 

 

「問題は発生しておらん。幾度も繰り返すが、感謝するぞアリストテレスよ」

 

 

 

会話の取っ掛かりを兼ねた泉の状況確認をすればロードスは淡々と答えて感謝を述べる。

本当に色々あったが今回の遠征における大目標は完全に果たされていた。

【ウルズの泉】は力を取り戻し【エリクサー】も完成、更にはベネトナシュが対竜王へのやる気を見せるという最高の結果だ。

 

 

更にもう一つ、ロードスは個人的に喜ばしかったことを口に出した。

 

 

 

「メグレズの奴にもいい刺激になった事だ。

 あ奴はどうやら其方を研究することにしたらしいぞ?」

 

 

 

 

茶を啜りながらプランを指さす。

 

 

 

「この人を?」

 

 

 

いつの間にかプランの隣にまで接近していたルファスが頭を傾げた。

近づいてきていたのは気配で判っていたが、どうしてわざわざ自分の隣にまで来たかプランは判らなかったが。

 

 

 

「其方ら、あ奴に対して色々と見せたであろう?」

 

 

 

「不死鳥の件にウルズの泉、そして……」

 

 

 

ロードスの視線がルファスに向けられる。

彼女が【バルドル】を着込んで行ったマナ収奪は正しく神話にて語られる所行であった。

レベルという概念を陳腐化させる正しく神をも恐れぬ所行だ。

 

 

ルファス・マファールは究極の個でありながら全体を底上げするために力を配分する事さえ可能である。

更にはそんな強化された全体を最適に運用できるアリストテレスが彼女の隣にはいる。

これが何を意味しているか判らない程にロードスは呆けてはいない。

 

 

竜王の打倒が叶った後、その空席に二人で座る事も可能だろうということだ。

本人たちにやる気があるかどうかではない。“出来る”というのが問題なのだ。

 

 

 

 

そしてメグレズ。

彼はルファスとアリストテレスの異常さを正確に把握してしまっていた。

 

 

 

 

普通ならば「何か凄い事が起きている」で済まされるだろう。

しかしメグレズは学者である。

最高の魔法使いを目指す彼はあらゆる知識を貪欲に吸収しており、その中には歴史も入っている。

 

 

 

その場では無理でも何かが引っかかったら後で歴史書を読み返すことなど誰にでも出来る。

だから【バルドル】がウラヌスの再現を目指したものだと理解することが可能だった。

更にはルファスのソレは正しくウラヌスの再臨だと判ってしまったのだ。

 

 

神話の存在が目の前にいる。

魔法の深淵を目指す者に対してソレがどれほどの幸福であるかは語るまでもない。

 

 

 

 

しかしメグレズの最も強い注目はプランに注がれていた。

ルファスは凄まじいがまだ納得できる。

ウラヌスに連なる血筋だと思えば先祖返りやら何やらと色々と理屈に落とし込む事ができるのだから。

 

 

 

だがアリストテレスは違う。

何もかもが意味不明なのだ。

理解のとっかかりさえつかめない。

 

 

 

正しく未知なのだ。

 

 

 

敵を押し流す魔法である【タイダルウェイブ】を背から放出して空を飛ぶ?

空中で身体を固定してグルグルと回る事でナニカを調整する?

【一致団結】を用いて他者との意識/意思を重ねる?

 

 

不死鳥との戦いにおいて観測した世界を若きエルフは永遠に忘れないだろう。

あんな、あんな世界があったなんて想像もしていなかった。

 

 

 

何もかもが判らない新世界に至る筋道をプランは持っている。

メグレズは少なくともそう考えているようだった。

更に言うと天翼であるルファスならばエルフの時間を用いてたっぷりと観察する時間はあるがプランはそうもいかない。

 

 

 

 

他種族とも積極的に交流するメグレズは己たちと他種族の過ごす時間が違う事をはっきりと認識している。

何はともあれこのあっという間に老いてしまう人間を優先すべきだと彼は考えたのだろう。

 

 

 

「というわけである。余からも深入りと詮索はしないように言っておくが……」

 

 

 

「いえ、自分の様な粗忽者が未来あるエルフの若者に興味を抱いて貰えるなど栄誉でしかありませんよ」

 

 

 

完璧に張り付けた笑顔と軽い言葉でプランは流す。

その仮面の下で彼は「困ったものだ」と自嘲した。

既に崩壊しているが彼の最初期の人生計画はこんなはずではなかった。

 

 

 

やることを全て片付けたらエルフにリュケイオンを委ねて自分はさっさとミズガルズから消えるつもりだったのだ。

歴史に名前を残すなどもってのほかである。

ましてやエルフの若者に己の技法を嗅ぎつけられてしまうなど考えもしていなかった。

 

 

まさか教える訳にもいかない。

さて、どうしたものかと彼は頭を捻るのだった。

 

 

 

「……」

 

 

 

赤みのかかった頬でルファスは腕を組み大きく何度も頷く。

まるでプランのファンだと公言していたあのドワーフの様に。

“繋がり”から彼の心をある程度読み取れる彼女はほくそ笑んでいた。

 

 

 

変な話であるが彼女はプランがこういった事に頭を悩ませているのを見て喜んでいた。

もちろん悪意からではなく安心感でだ。

厄介なファンを得てしまいどうあしらったものかと考え込む今の彼は正しく人間そのものである。

 

 

 

昔のそれこそ出会った当初のプランだったら悩むことさえしなかっただろう。

ロードスを通じて抗議を送るなり何なりしてメグレズの接近さえも許さなかった筈だ。

本人は自覚していないだろうが彼は間違いなく普通の人間の感性を育みつつある。

 

 

アリストテレスを真人間に矯正するという計画を彼女は捨ててはいない。

何十年かけてでもやり遂げるつもりだった。

その果てに彼の中にいるご先祖様にも成仏してもらう。

 

 

 

 

「さて。そろそろベネトナシュ王も戻ってくることであろう」

 

 

 

一通り伝えるべきことを伝えたロードスが立ち上がる。

よたよたとした足取りでこちらに向かってくるベネトナシュを彼は感知し、逃げるべく動くのだ。

レベル1000か、もしくはその領域さえ超えた酔っ払いの相手などごめん被るというのが彼の偽らざる本心だ。

 

 

 

それに、と一瞬だけルファスを見る。

この変わり種の天翼族が男に向ける“念”は更に巨大化していた。

恐らくだがベネトナシュとプランが交戦したのを見て、更に想いを深めたのだろう。

 

 

見ていて心臓に良くない程にルファスのプランに向ける執着は巨大で恐ろしい。

7000年間生きてきたロードスであるがここまでのモノを見るのは初めてだ。

 

 

大前提として血を残しさえしなければアリストテレスのやる事に彼は口を挟む気はない。

絶対である契約さえ守ってくれれば彼はそれでいいと割り切っている。

 

 

 

「陛下」

 

 

 

「あとは若い者同士で交流を深めるのだ」

 

 

 

身の丈を上回る杖を軽々と取扱いながら部屋から退出しようとする。

ズルズルとマントの裾を引きずりながら消え去ろうとする彼にプランは無感情に声をかけた。

 

 

 

 

「陛下。ベネトナシュ様がお戻りになられます」

 

 

 

「問題はない。既に彼女とは話を済ませている」

 

 

 

「エルフと吸血鬼という二大種族を統べる者が接する機会など滅多にありません」

 

 

 

「長ければ良いというものではない。大事なのは質である」

 

 

 

「自分だけでは荷が重いのです」

 

 

 

「余は其方を信じている」

 

 

 

「陛下」

 

 

 

 

絶対に逃がしてなるものかとプランは矢継ぎ早に言葉を続け、ロードスは何としても退去すべく返答を簡潔に繰り返していく。

その様があまりに……淡々としていながらも喜劇染みていてルファスは噴き出してしまいそうになった。

故に彼女は手を貸してやることにした。

 

 

 

ベネトナシュ程ではないが酒が回っている故にいつもよりもルファスは少しばかり積極的であった。

プランの右腕を掴んで組む。

しっかりと片翼で覆うのも忘れない。

 

 

何か言おうとした男の口には羽根が突っ込まれてもごもごという籠った音だけが出た。

 

 

 

「ロードス陛下。ここからはどうか私にお任せください」

 

 

 

「私のレベルは900。あらゆる問題に対応できるかと」

 

 

 

「うむ。────それでは任せたぞ。若き天翼族よ」

 

 

 

さらばだーと間延びした口調で扉を開けて閉めた瞬間、凄まじい速さで部屋から遠ざかっていくのをプランは察知し肩を落とす。

翼が開かれ解放されたプランは何処かしおしおで覇気に欠けている様子だった。

ベネトナシュはもうすぐそこだ、あと20秒もすれば入ってくることだろう。

 

 

 

 

「大丈夫だ。私もけっこう飲んだけど、前ほどには酔っていないから」

 

 

 

 

「……本当に?」

 

 

 

 

猜疑の視線を向けられたルファスは翼を激しく上下させる。

全くなんて失礼なんだと言わんばかりに彼女は唇を尖らせた。

 

 

 

「ベネトナシュもいるんだ。完全には気を抜けないさ」

 

 

 

「……言ってしまうけど、私はまだ彼女を警戒している」

 

 

 

 

ルファスは本質的には排他的で人間不信である。

そんな彼女が光の森という他所で、しかもベネトナシュという油断ならない存在がいるというのに我を忘れる筈がなかった。

吸血姫の性格を考えるに寝込みを襲うなどはあり得ないだろうが、それでもだ。

 

 

何せあの女は自分のモノを取ろうとしたのだ。

いや、今も諦めていないと宣言している危険極まりない存在である。

下手に眼を離したら何をするか判ったものではなかった。

 

 

 

プランに全身で抱き着きその血を啜る吸血姫の姿は思い出すだけで腹が立ってしょうがない。

 

 

 

己の臓器の一部を活性化させアルコールなどを高速で浄化するなど医学を修めつつある彼女には容易かった。

まぁ、多少は楽しみと言い訳の為に酔いを残してはいるが。

 

 

 

「そこでだ、私に考えがある」

 

 

 

そっとプランの耳元で囁く。

もう直ぐにあの酔いどれ吸血姫が戻ってくることもあり手短に話せば男は頷いた。

なるほど、そういう手もあったかと素直に感心してルファスの考えとやらに彼は同意した。

 

 

瞬間、扉が勢いよく開かれ眼を充血させたベネトナシュが飛び込んできた。

相変わらずアルコールの匂いに塗れた吸血姫はギラギラした瞳でプランを見つけるや否や叫んだ。

 

 

 

「ありすとてれる!! どほにいっていた!!」

 

 

 

「きさま! きょうというきょうはにがはなひからな!!」

 

 

 

自分で部屋を出て行ったというのにどうやら彼女の中ではプランが彼女から逃げたせいで探し回っていたという事になっているらしい。

100歳越えではあるが精神の根幹部分は少女である彼女にとって酔って嘔吐したなどあり得ない事であり、瞬間的に記憶の改変が行われたのかもしれない。

自分は吐いてなどいない、自分がここにいるのはプランが逃げたから探したのだと。

 

 

 

ルファスとプランは一瞬だけ視線を交叉させると目の前の厄介な存在を無力化すべく動き出すのだった……。

 

 

 

 




ベネトナシュは本当にかわいいですね。
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