ラスボスからは逃げられない! 作:宇宙きのこ(ミズガルズ産)
特にアイゴケロスとパルテノスはとんでもない大御所でビックリしました。
爆裂的な衝撃が大陸を揺らす。
大隕石の直撃にも勝る威力を秘めた獅子王の攻撃は華奢な【バルドル】を纏った人物に受け止められていた。
突風で銀の髪を揺らしたその人物は何の意思も持っていない無機質な瞳でレオンとルファスを見つめている。
風でフードが捲り上げられ、皺だらけの顔と完全に白髪に覆われた頭部を晒した魔女は瞳を煌々と輝かせていた。
その色は鮮やかな蒼であり、極寒の星の様に何の熱もない。
「確か、獅子王レオンは暫定とはいえマファール陛下の十二星天に加入する予定でしたな?」
レオンの意思など欠片も考えずにメリディアナは大義名分を作っていく。
傍から見れば無茶苦茶かもしれないが、それでも理屈は大切だと彼女は知っている。
じっと【バルドル】を直視し固まったルファスを尻目に魔女は言葉を続ける。
「と、なりますれば。今の一撃は陛下の失態」
背後に控えるユニットに振り返ればその瞳がカシャンと無機質に瞬いた。
情報収集の為の機能の一つとして画を保存する機能をこれらは有している。
有り体に言えばカメラだ。
メリディアナを殺そうとするレオン、そしてその獅子を従える様に傍らに佇むルファス。
中々にいい出来の一枚が保存された。
実際の真実はどうだっていい。
メリディアナが挑発しただの、まだレオンはルファスの配下ではないだのといったことは問題ではない。
ルファスの配下になるかもしれないレオンが先に手を出した。
ここが重要なのだ。
情報の検閲と操作は施政者の基本スキルである故に魔女はいい素材が手に入ったと皺を深める。
「ふーむ。今のはヒヤッとしましたわい」
「寿命が縮まったとは正にこの事」
まぁ、元より余り残ってはおりませんがと反応に困る冗談を口にする。
欠片も動揺などしていなかった癖に老婆はいけしゃあしゃあと述べる。
その次にこれは困りましたなと魔女は笑う。
そんな中、獅子王レオンは愕然と震えていた。
全身全霊の一撃を躱すでも防ぐでもなく、片手で止められた現実が彼の頭を停止させていた。
何だこいつはと睨むが【バルドル】の骸の如き相貌はピクリとも動かない。
正体不明の何かは不気味でしかない。
「何と恐ろしい事か。で、あれば───」
────我が身を守らねばなりませぬな。
メリディアナも人類、それも共同体のかなりの地位にある人物だ。
それが攻撃を受けたという事は……兵器たちは正統なる防衛を行わなくてはいけない。
“獅子王”の排除は元より決定事項、それを邪魔してくるのならばもう一つ不幸な事故が起きるかもしれない。
たとえばうっかり獅子王の傍にいたルファス・マファールを戦いに巻き込んでしまい、彼女となし崩し的に戦闘を行ってしまうとか。
勝敗はこの際どうでもいいのだ。
名高き覇王の力を検証できれば希少なユニットであろうと壊れても構わない。
何ならルファスの手によってメリディアナが死のうと問題はないし、本人もそれは了承している。
兵器群を支持し彼らが作る未来の為に全てを投げ出す人材はまだいるのだ。
彼らはすこぶる諦めが悪いのだ。
アリストテレスの計画を成就させるために命など惜しくもない。
作ったまではいい。
再現したのは確実。
しかし本当にそうかは判らなかった贋作が動き出す。
一致団結。
魔女の瞳が怪しく輝いた。
彼女もまた人間種、故に種族スキルはこれだ。
理想には程遠いが出力だけならば勝っている。
全てはあの夜を再現するために。
最高のアリストテレスによる操演を再び。
メリディアナを経由し兵器群より意思を送られた“吸血姫”が糸を手繰られて動く。
真っ青な瞳には本来の彼女が持つ覇気や生命力はなく、寒々とした殺意だけがある。
それは一瞬でレオンの視界から消え去り、その文字通り目と鼻の先に現れた。
「ぁ」「?」
再度起きたあり得ない事にレオンが反応さえ出来ずに眼を剥き、ルファスは反応して動く。
レオンが一瞬とはいえコレを見失ったのは特殊な歩行術を用いた訳でもスキルを使った訳でもない。
単純に早すぎたからだ。
レベル1000という頂きの中においてもなお別格に位置する獅子王を以てしても追えない程に。
気付けば目と鼻の先に吸血姫がおり、攻撃を行っていた。
全てがゆっくりと進んでいく。
圧縮時間の上に更に走馬灯が重なった事で辛うじてレオンは吸血姫の動作を見る事が出来た。
彼の目の前でパキ、パキと音を立てて指が閉じて拳が握られていく。
小さな子供の手にしか見えないがレオンにはそれが今まさにこの星に突き刺さらんとする大隕石に見えた。
もしくはいま正に自分の首を刎ねようとするギロチンの刃か。
実際その直感は正しい。
コレは世界の限界を突破しており、今のレオンならば一撃で葬れるほどの力を有しているのだから。
兵器群の有する現状最強戦力がこの吸血姫だ。
や。
指が迫る。
アレは己の首を軽々と刎ねるだろう。
め。
死はもう間近。
盛者必衰の道理に従いレオンの命はここで終わりだ。
「失せよ、贋作」
全てが終わる間際、横合いから飛んできた黄金色の閃光が偽りの吸血姫を弾き飛ばした。
怒りに満ちた彼女はことここに至って容赦なく力を振るう。
一対の黒翼が神々しく広がる。
黄金の髪が更なる光を宿し、穂先の朱色は燃え上がった。
先に見たベネトナシュは酷い有様ではあったが、それでもまだ再起する見込みはあった。
しかしコレは何だ?
ガワと能力だけ似せて作られた吸血姫の人形だ。
しかもそれが【バルドル】を被っているのが余計にルファスを苛立たせる。
これには何も入っていない。
ベネトナシュの悲嘆も、絶望も、プランに対して抱いていた歪んでいるとはいえ燃え上がるような熱も。
ただ彼女のスペックだけを模倣し、彼女から戦闘能力以外の全てを削ぎ落したつまらない奴隷だ。
コレは存在そのものがベネトナシュへの侮辱である。
【威圧】
天翼族の行使するモノでありながら決定的に何かが違うソレが世界に叩きつけられる。
幾ら負傷しているとは獅子王レオンが一瞬で意識を奪い取られるそれは正しく驚天動地の威力だ。
放たれる超大規模の圧。
ミズガルズが悲鳴を上げ、女神の世界が揺れた。
ルファス・マファールが本気で戦闘を開始した合図でもあるソレは一切の敵対者をねじ伏せる必滅の波動だ。
兵器たちのレベルは今のところはどうあっても1000。
普通ならば膝を屈する筈だというのに何の変化もない。
確かに【威圧】は強力なスキルであるが、対抗策の数も多い。
兵器たちもシステム上では繋がっている故に誰か一体でもユニットが防御アクセサリーを装備していれば問題ない。
それに何よりの話として兵器たちはルファスに怯えていなかった。
保護対象に怯える親がいるものか。
レベル4200の化け物を相手にむしろ興味深いと無機質な視線を向けている。
素晴らしい、ここまで生物は進化できるのかと感嘆さえ覚えているようだ。
創造主がアレらである以上、その因子を強く受け継いだモノとしてそういった機微には疎いのかもしれない。
そう、メリディアナでさえルファスに敬意を払えど屈服などしていないのだ。
規格外同士の衝突による余波は彼女をして想像を絶するものがある。
故に魔女は【エクスゲート】を展開しその中に身を潜らせた。
大型戦闘ユニット達もまたこの後の展開に巻き込まれない為に退避。
蒼い瞳のベネトナシュが動く。
彼女はルファスに吹き飛ばされた衝撃のまま何度も地面を跳ねては転がり続けていたが、急にピタッと停止した。
完全なる停止、減速ではなく一瞬で100から0へと全ての運動エネルギーが消え去ったようだ。
生物とは思えないほどに角ばった動きで吸血姫は動く。
魔神族の所持していたクラスを用いて【スキル・エクスコアレス】を発動させ【瞬歩】と【瞬歩】を融合。
あの夜に竜王を翻弄していた【ブースト】を作り発動させる。
【ブースト】は【瞬歩】よりも早く、的確で、小回りの利く素晴らしいスキルであった。
そして何より、このスキルは一度発動させると優先度は6に設定されているため、あらゆる行動を無視して行う事が出来る。
他のスキルを発動時に攻撃モーションに入っていようが、何なら相手の攻撃を受けている時であっても高速で前進を可能にするスキルだった。
予備動作なしで吸血姫は覇王の眼前へと空間を滑りながら移動した。
ルファスをして速いと思う程の速度だというのに全く足は動いていない。
直立したままスライド移動したとしかいいようがない奇怪な動作である。
この動きに加速という概念はない。
瞬間的に0から100まで速度の数値が切り替わるのだ。
手足が動く事もないので予備動作からどう動くかも読めない。
更に兵器たちの動作において殺意は付随しないため、そこから見切るのも困難だ。
如何にルファスが武術を納めたとしても無理なモノは無理である。
ゾクリと背筋に冷たい何かが走る。
ベネトナシュの動きにルファスは■■■を幻視した。
───この動きを彼女は知っている。
前提としてこれらを作ったのはプランである。
故に兵器たちが最も効率的な動きとして創造主たるアリストテレスを参照するのは当たり前だ。
咄嗟に腕を交叉させて防いだのは本能だった。
レベル的にはずっと下の筈であるがもしも予想が正しければこの戦いは一筋縄ではいかなくなる。
吸血姫は構わずに軽いジャブをルファスに打ち込む、しかも連続で。
片膝をつき、吸血姫はルファスの腕に何度も何度も軽快なパンチを放った。
ガ、ガガガガガガ───。
1200。
1340。
1100。
ルファスの30万を超えるHPからすれば端数にもならない量の痛打が走る。
確かに鋭い一撃ではあったが先に戦った本物と比べればその速度は遅い。
ダメージなど今のルファスにとっても大したことにはならないが……。
問題はそれではない。
「ぐっ!」
身体が浮き上がる。
連続で放たれるソレの全てがクリティカル判定であり、防御を貫通してダメージを与えてきた。
ジクっとした痛みがあったが、恐ろしいのは一瞬だけとはいえ肉体が硬直し浮き上がってしまったことだ。
不味いとルファスの本能が警鐘を鳴らす。
竜王との戦いにおいてさえ発動しなかった生存本能が蠢く。
しかしもう遅かった。
吸血姫は覇王に比べれば弱い。
普通に戦えば勝てないだろう。
なので、兵器たちは徹底的に何もさせずに潰すことにした。
暫定この世界で最も強い存在に対して何処まで之が有効か知る滅多にない機会を逃がすつもりなどない。
何もさせない。これは戦いではなく狩りである。
狩りにおいて獲物にあらゆる抵抗を許さない嵌めを行うのは基本だ。
ベシベシベシベシベシベシベシベシ。
ジャブがルファスの身体を揺らすたびにルファスの身体は微かに浮いた。
すさかず【サイコスルー】の念力により力の方向性が操作され、背中から強く地面に叩きつけられる。
しかし反動でまた微かに浮き上がり、そこにジャブを撃ち込まれて硬直したまま再び地面に落とされる。
しかも一回ごとに速度が溜まっていくという訳の判らない現象が発生したせいで徐々にルファスが受ける衝撃は強くなり続けるという理不尽だ。
背中から叩きつけられるせいで翼が軋みを上げた。
跳ねる。
叩きつけられる。
跳ねる。
叩きつけられる。
どうやっているのか判らないが器用にも吸血姫は空中で膝をつきながらもジャブをルファスのあらゆる個所に打ち込み地面に落としては跳ね上げるを繰り返す。
覇王の身体は一動作ごとに硬直してしまい、このままでは何も出来ずに終わってしまうだろう。
どれだけルファスが強かろうと、どんな能力を持っていようと、使わせずに倒してしまえばいい。
言うは易しだが本来ならば絶対に不可能な事を吸血姫は実行し続けていた。
見る見るうちにHPが減っていく。
全身を襲う衝撃と痛苦にルファスは舌打ちし、思考を回す。
認識を数段切り替え、彼女はコレをベネトナシュの劣化品からベネトナシュを模したおぞましい兵器へと改めた。
このままでは勝てない。
少なくとも本来の力を行使しなくては。
ミズガルズにとてつもない負荷がかかるが致し方ない程にコレは強い。
これは本物の彼女から全てを取っ払い、ただ戦闘と殺戮に特化させた怪物だ。
単純な戦闘能力に加えてアリストテレスの技術さえ導入されたコレは例え彼女であっても油断は出来ない。
手足を動かさず移動し、スキルも何も使わないただの連続パンチで覇王を翻弄し続ける現実がここにはある。
しかし普通ならば意味不明の事だが、彼女はコレを知っている。
知っている身からすれば───甘いと言わざるを得ない。
本物のアリストテレス卿と比べれば何と温い事か。
両翼が変形する。
巨大な三日月の形となり、地面に叩きつけられる前に主を抱擁し、滞空させることによりこの連鎖を破壊する。
追撃を試みようとする吸血姫に対しては鋭利な剣の形状となった翼膜が襲い掛かる。
吸血姫は始まった時と同じように地面をスライド移動し後退。
十分な距離を取った後は直立し動かない。
様子見をしているというよりはゴーレムが新しい命令を待機しているような無機質さだ。
簡単に言えば小手調べの時間は終わりだ。
兵器たちとしてもこの程度で覇王を倒せるなどとは思っていない。
ボール遊びの様に翻弄されて終わってくれるほどにルファス・マファールは温くない。
吸血姫を騙る怪物と黒翼の覇王は暫し見つめ合った。
殺気も害意もなく、ただ純粋に両者を見ているだけだ。
やがてルファス・マファールが口を開く。
優美な闇黒の三日月を玉座とし中空に腰を下ろした覇王には性別問わずあらゆる者を魅了する華があった。
かつてとは違い彼女は己の力の一つとしての魅力を自覚している。
立ち振る舞い、選ぶ言葉の単語。そして口調。
誰もが見上げる天蓋として完璧に彼女は振舞う。
「猿真似だな。創造主を模倣しても決して其方では至れん」
「吸血姫を騙る人形よ。其方らは何処まで耐えられる?」
深紅の瞳が輝く。
体内の小宇宙にも匹敵するマナが活性化し、それは容易く女神の法を突き抜けた。
1枚。
レベル1999。
2枚目の壁にぶち当たるが問題なく撃ち抜く。
彼女にとって世界の法など塵紙よりも脆い。
3枚。
2999。
かつての“竜王”が至っていた領域だ。
当時において誰よりも強く先を征く存在だった彼は既に過去の遺物だ。
もはや黒翼の覇王はラードゥンよりも強くなった。
仮に忌々しい蜥蜴が戻ってきたとしたら地獄を見せる為にルファスは強くなった。
4
5
そのレベル実に4200。
誰よりも先に進み続ける力がその真価を発揮する。
そしてもう一つ、彼女は先にベネトナシュと戦った時と比べて更なる発展を遂げていた。
ロードス王が予言した疫病の女王を無力化し支配した彼女はその過程である少女を配下に加えていた。
その名をディーナ。
十二の星たちの十三番目として受け入れられた覇王の影、翼が落とす闇に身を潜める共犯者。
女神の端末として産まれ、己を神と同一視していた少女を人形から人へと変えたルファスは彼女の助力を得て己の力を整理し、相応しい型にはめている。
世界の管理者としての力さえ取り込み最適化したルファスの心身はもはや前例のない域に至っている。
かつてのラードゥンでさえ【勇者】という一応はミズガルズに過去より存在するクラスだったが彼女は違う。
その称号は心優しく誇り高い人たちのモノ。
己とは何の関わりもない異世界に身命を捧げた彼らの名をルファスは決して名乗らない。
何故なら彼女は勇者というには余りにも禍々しく、何より優しくはない。
ルファスのクラス欄に存在してはならないモノが表示される。
グラップラーだのメイジだの、ウォーリアーだのといった役職とは決定的に違うものが。
【ジ・アークエネミー】
ミズガルズという女神の舞台/箱舟の敵を冠するこの世に二つとない彼女だけが保持する【クラス】だ。
放たれるのは天力と魔力の複合波動、会得して以来使ったことのない力が開帳の喜びに震える。
いや、使う必要がなかったというべきか。
これを用いなくとも彼女は余りに圧倒的すぎた。
片手で“竜王”を火星まで引きずり込み、巨大蠍を太陽まで蹴り上げる埒外の身体能力をもっているのだから。
「この力は余もまだ余り使いこなせてなくてな」
「慣らし運転と言う奴だ。付き合ってもらおうか」
吸血姫再現体の実戦テストを行う筈だった兵器群に意趣返しの様にルファスは言う。
それに対して吸血姫は“コテン”と頭を左に倒した。
パチパチとマスクの中で瞬きをし“一致団結”を深化させる。
“一致団結”
“一致団結”
“一致団結”
途端に発生する膨大な情報の通信。
詳しい原理は省くがマナは情報を記録できるという前提を用いて量子のもつれを再現し吸血姫は途方もない量のデータを瞬間的に受け取った。
同時に此方が得たモノを兵器たちの中核でもあるプルート最下層にあるアレに転送。
種族スキルは誰もが使える見向きもされなかった弱小スキルの筈だった。
しかしアリストテレスが用いるこれは明らかに違う。
繋がる事によりマナを介して多くをやり取りできるのだ。
10倍どころではない程に加速した時間の中で無数の演算が行われその結果が送られてくる。
試行錯誤と幾つもの失敗作の廃棄の末に完成した貴重な“使える”ベネトナシュではあるが覇王との交戦情報を得る為ならば使い捨てても構わないと結論が出る。
可能であればこの戦闘でルファスを抹殺、もしくは保護すべきだとアリストテレス兵器群は結論付けた。
ジジジジジジジ……。
プラン・アリストテレスによる制約。
ルファスを守れ。
彼女の未来を保障せよ。
一瞬のノイズの後に思考が切り替わる。
そもこれらは彼女を護るためにあるという大前提が介入する。
……優先事項変更。
無力化の後に保護を最優先。
ルファス・マファールの抹殺は認可不可。
吸血姫が掌を虚空に翳しアイテムを取り出す。
ソレは小さな一本のシリンダーだった。
ルファスの目がそれを認めた瞬間壮絶な敵意を帯びた。
彼女の過ちの原点である。
あれがあったから彼女はあの夜を超えられた。
あれを使わせてしまったからあの朝に彼らはいなかった。
これこそアリストテレスの秘術の一つ【アンタレス】である。
無尽蔵にステータスを跳ね上げさせる脅威にして狂気の秘薬を吸血姫の人形は躊躇わず己の首に突き刺すのだった。
「何処までも……」
最後まで言わずルファスは奥歯を噛み締めるのだった。
【エクスゲート】で避難した先でメリディアナは一人の少女と向かい合っていた。
美しすぎる程に蒼い髪を揺らし少女──ディーナは老婆を油断なく睨みつけている。
本来ならば表に決して出てこないという誓いを立てていた彼女であるが此度だけは例外と表舞台にたっていた。
それほどまでにこの老いさらばえた人間は厄介で危険なのだ。
プルートの深層に侵入した彼女はメリディアナと兵器たちのおぞましさと強かさをこれ以上ない位に見聞きしている。
だからこそこのチャンスを逃すまいと出てきたのだ。
普段は護衛についている兵器も今は大陸の開拓の為に散らばっている。
最大戦力の吸血姫はルファスと交戦中。
で、あれば今が最大のチャンスだった。
やり方は幾らでもある。
人の意思を捻じ曲げるなどこれまで幾度も行ってきた。
「貴女たちの存在は主の計画を大いに乱します」
「理由はお分かりですね?」
貴女にはここで消えて貰います。
かつての女神の端末であったハーフエルフの少女は一つのスキルを本気で行使した。
全力での行使は自我の破壊さえあり得たが加減はしなかった。
【ケバルライ】
それは対象の記憶を操作し偽りの記憶を刻む力。
効果はそれだけに留まらず人格の書き換えや自我の支配さえも可能とする最悪の能力。
メリディアナをこれで支配しアリストテレス兵器群を丸ごと無力化しようというのが彼女の思惑であった。
これはルファスの命ではない。
影ながらずっと兵器たちの危険性を見て来た彼女の独断である。
放たれる光に老婆は反応さえ出来ずに飲み込まれた───。
本格的にディーナを書ける所まで来れて楽しいです。
もっと彼女の活躍を表現していきたい限りです。
それはそうと彼女ってすごく腹パンが似合うと思いませんか?