ラスボスからは逃げられない!   作:宇宙きのこ(ミズガルズ産)

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「凄い!! 本当に凄いっ!!!」



───エル級の原理を理解したメグレズ。





野生の魔神王が現れた!

 

 

ゆっくりと、全長150メートルにもなる超大型の戦闘ユニットは彼方を向いた。

獣脚類の恐竜を思わせる蒼い結晶の怪物は彼方───10キロほど先に魔神族の勢力が存在する事を認識した。

 

 

 

 

レベル1000が最低でも10以上。

その他も雑兵とはいえない800級の力を持つ高レベルの者達だ。

総数は数百、一昔前ならばあの地にいる魔神族だけで人類を絶滅に追い込めただろう。

 

 

 

 

彼らは遠くにいきなり現れた結晶の恐竜を見て固まっている。

明らかに敵だというのに誰も攻撃をしない。

本能がアレに近づいてはいけないと囁いているのかもしれない。

 

 

 

大本たる女神の力により近いエル級を前にすれば彼らは所詮は不純物に過ぎないのだから。

 

 

 

 

エル級を構築するアロヴィタイトにアリストテレス兵器群の意思が流れ込み、それは凄まじい速度で演算/入力を開始。

偉大なるアリストテレスの御業を見るがいい。

最高のアリストテレスの力の一つが再現されて振るわれる。

 

 

 

【任意コード実行/座標移動】

 

 

 

文明殲滅兵器の真骨頂にして最大の特徴が披露された。

偉大なるアリストテレス卿が行使したかつての奇跡がここに再現される。

そも、あれも厳密には“技術”である故に原理とやり方さえわかれば誰でも出来るのだ。

 

 

 

エル級は150メートルにもなる巨体を持つ故に飛行はできない。

しかしそんな事は些事である。

この怪物の前に距離など意味をもたないのだから。

 

 

 

星の裏側にいようと、何なら太陽系でなくてもいい。

一度座標を認識されてしまったらそれで終わりだ。

超広範囲に広がる文明を駆除するのに最も厄介な移動時間の問題はこれで解決できる。

 

 

 

 

エル級の姿が掻き消える。

ベネトナシュの様に目視できない速度で動いた訳でもなく、ましてや【ステルス】で姿を消した訳でもない。

 

 

 

単に己の現在位置を再定義しただけだ。

不可能を可能にするアロヴィタイトとアリストテレスの技術を組み合わせれば座標を書き換えるなど容易いことである。

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!!」

 

 

 

 

目の前に突如として現れた怪物を前に魔神族が眼を剥く。

蒼い結晶の身体が輝きを放ち、大きく口を開けたエル級は咆哮を上げた。

力なきものを挫折させ、強き者でさえ息を呑む圧倒的な存在感と力がここにはある。

 

 

 

 

『──────ッッ!!!!』

 

 

 

 

人の可聴領域を超えたソレは惑星中に響き渡る。

レベル限界を踏破した力を誇る様に、新しいアリストテレスの時代の幕開けを告げる様に。

これこそルファス率いる十二の星と真っ向から衝突可能な存在だ。

 

 

 

 

惑星中の誰もがソレに反応を示す。

 

 

 

 

獅子王は屈辱に悶えながらも身震いした。

決して彼はソレを恐怖とは認めないだろう。

 

 

 

吸血姫は顔を顰め嫌悪を露わにする。

既に共同体の盟主の座は降りたが、概要だけは知っていた彼女はいまだに世界に残り続ける男の遺産に不快感も露わにしている。

だからあの怪物にはしっかりと首輪をつけておくべきだったのだと内心で零す程に。

 

 

 

魔王は言葉を失っていた。

技術と執念で神の領域を犯す人の底知れない業に一種の感動さえ感じてしまっていたのだ。

 

 

 

覇王は瞑目する。

もはや言葉もない。

彼女は彼女の目的を果たす、それだけだ。

 

 

 

 

 

そして魔神王は───立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

エル級が大きく腕を振りかざす。まるで見せつける様に。

悪趣味な処刑人が処刑斧を咎人の前で弄る様に。

 

 

 

恐竜と同じ様に余り大きくなく、人の様に器用な動作も不可能に見えるソレに“力”が集まっていく。

魔力でも天力でもない。純粋な神の御力だ。

 

 

 

 

髪の毛一本。

どころか原子一つ程度でしかないが、それでも女神アロヴィナスの力をダイレクトに振るえばどうなるか。

その結果を断じて見たくなかった魔神族たちは吠えた。

 

 

 

 

 

「止めろォ───!!!」

 

 

 

 

複数のレベル1000。

数百のレベル800から900台の魔神族たちが躍りかかる。

あらゆるスキルと魔法がエル級に叩きつけられる。

 

 

 

 

レベル1000の個体が放つ多種多様な物理攻撃スキル。

体力配分も何もなく我武者羅に放たれたソレはエル級の異常極まりない装甲を欠けさせる事も出来なかった。

エル級には最低限レベル限界を超えてなければ損傷を与える事も出来ないのだ。

 

 

 

数百の魔法の乱打はもっと酷い結果になった。

アロヴィタイトは超高密度の純粋な力の結晶である。

ソレに対して薄い魔力をぶつければどうなるか?

 

 

 

 

即ち───吸収である。

 

 

 

更に輝きを増したエル級が腕を一振り。

膨大で純粋な力が衝撃として放たれる。

それは枯葉を嵐が吹き飛ばす様に何もかも全てを吹き飛ばす。

 

 

 

抵抗など出来ない。

防御姿勢など無意味。

恥も何もかも投げ捨てて背を向けて逃げようと無駄。

 

 

 

ミズガルズの表面積、その0,5パーセントを抉りながら閃光は突き進む。

 

 

 

 

「ぁ」

 

 

 

 

魔神族と彼らが築き上げた城塞。

その全ては何の抵抗も出来ず吹き飛んだ。

膨大な光の濁流にのみ込まれ、欠片も残さずに消滅したのだ。

 

 

 

 

戦闘でさえない。

これぞ正しく殲滅だ。

試運転は問題なく完了、レベル1000の軍団を相手に圧勝が可能だという計算結果は正しかった。

 

 

 

 

エル級の姿が再び掻き消える。

経路も何もなく点から点へとこの兵器は跳躍する。

 

 

 

 

怪物の姿を認めた瞬間こそこそと逃げようとしていた魔神族の眼前に跳躍し、彼らが悲鳴を上げる前に足を振り下ろす。

プチっと蟻でも踏むかのように魔神族は踏みつぶされて死んだ。

そうしてから最後の拠点を葬るためにエル級は再び座標を再定義しこの場から掻き消えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人のドワーフが水晶玉に映る光景を凝視していた。

瞬きさえ惜しいと言わんばかりに、食い入るように、網膜に焼き付けるが如く。

アリストテレス兵器群を超える事を望んでいた筈の男はいつの間にか徐々にソレに魅せられ出している。

 

 

 

 

「すげぇっ……」

 

 

 

 

漏れる声は吐息交じりだった。

どんな酒を飲んでもここまで魅了はされないだろう。

頭がぐるぐるし、思考にさえ霞がかかる。

 

 

 

理屈でも何でもない。

純粋に彼は一人の創造者として焦がれていた。

自分もあんなものを作りたい、もっとすごいモノを作ってみたいと初心に帰っているのだ。

 

 

 

握りしめた指は震えていた。

エル級の余りに圧倒的な力に彼は惜しみない喝采を送る。

はっきりいってアリストテレスの作品は彼から見ても芸術の域にある。

 

 

 

ユグドラシル級の発想は彼からしても埒外だ。

エインヘリアル共々デザインセンスは最悪だが。

 

 

 

あの全身が水晶で構築された恐竜など彼をしてもどんな原理で動いているのか全く判らない。

ルファスをも想起させる圧倒的な力には見惚れるしかない。

デザインセンスだけはどうしようもなく最低だが。

 

 

 

その上でこの作戦にはまだいくつかの新兵器が投入されるというのだから本当に底が見えない。

 

 

 

ぶるぶると全身を微かに震わせ、彼は思いっきり背を逸らして大笑いを上げた。

ゲラゲラと無垢な子供の様に。

 

 

 

 

「はははははは!! もう素直に認めるしかねーな!!」

 

 

 

 

「本当にとんでもねえな!!! すげえよ!! 本当になッ!!!」

 

 

 

 

部屋の家具がガタガタ震える程に笑い転げた後にミザールは椅子にどかっと座り込み、もっと大きな声で叫びをあげた。

彼はドワーフの中でも随一の拘りのあるクリエイターだ。

だからこそアリストテレス兵器群の根底に何があるか判ってしまう。

 

 

 

優れた製作者は時に作品を通して相手の思考や思想を理解することもあるという。

故にミザールはこれを作ったというアリストテレスの、プランの心境に指をかけてしまう。

 

 

 

「だがぁぁ……気に入らねぇっっっッ!!!」

 

 

 

 

己に言い聞かせるように断言する。

発想も技量も何もかもが次元違いのあった事もない男を彼は全力で否定した。

根底に薄く垣間見える諦観がどうしても彼には気に入らない。

 

 

 

ミザールはアリストテレス兵器群の事を知るために多くの文献を読み漁ってもいる。

当然、その中にはかつてプルートに立ち寄ったかの者が何を成し遂げたかも。

ヘルヘイムに繋がってしまったこの国を守り、その深淵にヘルヘイムの方が遥かにマシと思われる地獄を置いて行ったことさえ。

 

 

 

かつて彼のファンを名乗った男はアリストテレスの異形を余すところなく記録し残していたのだ。

 

 

 

だから彼は叫ぶ。

作品の隅々からにじみ出るどうしようもない諦めに苛立ってしょうがないと。

これを作った奴は何処までも人という存在に対して何も期待していない。

 

 

 

兵器群はその特徴として徹底的に人の仕事の最低化を図っている。

最悪これを指揮する者は認可を下すだけでいい。

 

 

 

ボタンを押すだけで発射されるエクスゲート弾道ゴーレム。

人が介在しなくとも増えていくゴーレム軍団。

人の代わりに大規模な建築作業などを行ってくれる巨大昆虫。

 

 

 

 

兵器群はいつの間にか人が扱う道具ではなくなりつつある。

人を保護という名目で管理/統率する機構に変わり始めているのだ。

ミザールはそれがどうあっても悲しかった。

 

 

こんなすごいモノを作れた男がどうしてと。

もうちょっとだけ人を信じてほしいと。

 

 

 

 

「お前ならもっと違うモノが作れただろうが!!」

 

 

 

「何でそういう方向に行くんだ!!!」

 

 

 

ドワーフにとってゴーレムとは芸術品だ。

どんなデザインにするか、どんな用途にするか、悩んで悩んで脳を絞りつくして出力する分身に等しい。

しかし兵器群は違う。拘りも何もない無機質な効率の権化だ。

 

 

 

そこには個人の信条、拘り、ロマンもない。

何ならドワーフ達があれだけ己の作品に注いだ愛情さえ。

 

 

 

 

「俺は認めねえ……俺はあんたよりすげえものを作って見せる……!」

 

 

 

 

お前には負けないと決意を表明するが、同時に彼の心に巣食う弱さが囁いた。

ほんの小さな種に養分が注がれたソレは芽を出す。

蒼く透き通った天力がパチパチとドワーフの頭を満たす。

 

 

 

 

───どうやって?

 

 

───兵器群は既にレベル限界を超えた力を再現しつつある。

 

 

───今更オリハルコンなんて使った所で何が出来る?

 

 

 

 

ドワーフは囁きかけてくる劣等感から逃げる様にノートを取り出し書き足していく。

新しいゴーレムの設計図たるソレはあらゆる意味でアリストテレスの真逆をいくコンセプトが描かれていた。

 

 

プロトタイプもすでに完成し後は詰めていくだけ。

 

 

おおよそ戦闘には向かない人間と同じ姿。

それも何の戦術的優位性を齎さない人間の少女の姿をしている。

動力源はエクスゲートを用いた反応炉。

最近手に入れたこの世で一つしかないとされる聖域の守護者の一部を組み込みたい。

 

 

 

そして何より。

最も特徴的な要素が一つ。

それは“心”を与えたいという願望だった。

 

 

ルファスと共同で作り上げる予定のミザール渾身の傑作。

ただスペック競争するだけでは決して勝てないアリストテレス兵器群への答え。

 

 

 

やり方など判らない。

しかし彼はそうあってほしいと願っていた。

ミザールがあらゆる全てを注いで作り上げようとしたその作品の名はリーブラといった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第四拠点は地獄絵図と化していた。

複数回の変異と進化を遂げた巨大な昆虫の群れがわらわらと魔神族に集り、次々と貪っていたからだ。

黄金色に体色を変化させた巨大な蜘蛛とアリ、更にはそれらを統率する超巨大個体までがアンカーより次々と送り込まれ、組織だった抵抗も出来ずに魔神族は食われたのだ。

 

 

 

 

更には瞬間的に表れたエル級がダメ押しとばかりに逃げ惑う魔神族を踏みつぶし、殲滅は問題なく完了。

もちろん囚われていた人質たちは全員救助済みであり、広間に集められて治療を受けていた。

臨時で作られたテントの中には屍と見分けがつかない程に見るも無残な被害者たちが横たわっており無言で治療を受けている。

 

 

 

もはや彼らは苦痛の声さえ漏らさない。

身体は無事かもしれないが、心は死んでいるのだから。

魔神族は食料を出来るだけ長持ちさせるために彼らをギリギリまで使い続けていたのだろう。

 

 

 

人が学習するように魔神族も【峰うち】などを用いてどうあっても死ねない状態で彼らを保存していたのかもしれない。

そんな彼らを派遣された天翼族の治療部隊は献身的に治療を行っている。

とにかく何を置いても命を繋ぐ。精神の治療はそれからだと彼らは知っているのだ。

 

 

 

しかし現実は残酷だった。

一人、また一人と息を引き取っていく。

どれだけ声をかけようと、どれだけ天法を行使しようと何の意味もなく。

 

 

 

エリクサーさえ彼らを治せない。

身体は無傷だというのに死んでしまう。

 

 

 

死体だけが増えていく。

心臓に電気ショックを与えようともう無駄だった。

彼らに欠けているもの……それは生きようとする意思だった。

 

 

 

延々と拷問を受け続け、大切な人も皆殺しにされた彼らは心底ミズガルズという世界を嫌悪し、拒絶していた。

こんな世界で生きるのはもう嫌だと思うのを誰が責められる?

彼らの身体から抜け出たナニカは誰にも気づかれず二つに分かれ、一つは上に、もう一つは下へと消えていった。

 

 

 

 

混翼たちが顔を顰める。

どれだけ根気強く治療しようと次々と人が死んでいくのだ。

彼らが味わう無力感は想像を絶するものがあった。

 

 

 

天法を増強する結晶を使い身体を治そうと、何ならエリクサーを飲ませようと駄目だった。

きっとエリクサーを超えるアムリタであろうと、神話に伝わる「水」の天法であっても無理だろう。

これ以上生きたくないという被害者たちの決意を前に全ては無意味である。

 

 

 

 

そこにあるのは傷一つない綺麗な死体だけだ。

どれだけ生命力を増幅しようとしても0は何をかけても0なのだ。

時間の経過と同時に死体袋が増えていく。

 

 

 

最終的に生きる事を選んだのは全体の2割にも満たない数だった。

魔神族に散々に尊厳を踏みにじられた彼らを支えたのはきっと綺麗な感情ではなかった。

 

 

 

 

 

そして拠点の奥で発見されたゴミ捨て場では、何千人分もの人骨が山と積み重なっていたことを記しておこう。

人が残飯を捨てるような気楽さで捨てられていたソレは全てがかつて生きていた誰かだ。

これらの供養を後日行う事をゾディアックとアリストテレスは決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソドムを守る全拠点の陥落を完了させた兵器群は部隊を整える為に一度攻勢を中止し第四拠点で再編成と補給を行っていた。

無数の異形たちが蠢くかつての魔神族の拠点の上空にカストールはアルゴーを停泊させ降りる。

次々と船に死体を納めた袋が積み込まれていくのを無表情で見送った後、彼は自分を待っていたアイゴケロスと合流する。

 

 

 

魔王は上機嫌な様子を隠さずにカストールに話しかけた。

 

 

 

「ルファス様のご命令を果たせる時は近い」

 

 

 

「残りはソドム本体だけ……だが」

 

 

 

 

アイゴケロスの言葉に頷きながらもカストールは懸念を表する。

どうにも全てが上手く行き過ぎている。

アリストテレス兵器群の極悪さは十分に判ったが、それでもアイツがこのままで済ませるとは思えない。

 

 

 

 

魔神王オルム。

ここ数百年全く何の動きも見せていない最後に生き残った四強。

その正体をカストールは良く知っている。

 

 

ポルクスは何も言わないが彼とて木龍に連なる身、近い気配くらいは判る。

 

 

 

アレは月龍だ。

世界の調停者が世界の敵を演じているのだ。

何年も、何万年も。

 

 

 

 

彼には判る。

あの男が幾度かアルフヘイムを訪れていた事もあり、その気配は良く知っているのだから。

勇者が死した後、あの男は妹とよく話をしていた。

 

 

 

とんだ茶番だ。

勇者を送り出した女と殺した男が雑談するなど。

恨まれても仕方ない。

 

 

しかしそれでもカストールは妹を庇う。

彼女の苦しみを誰よりも知っているから。

 

 

 

「奴が近くにいる」

 

 

 

暫しの思案の後、奴というのが誰の事か判ったらしいアイゴケロスは一瞬だけ周囲を探る様に目線を遠くに向けた。

確かに言われてみれば臭う。魔神などと名乗っておきながら神聖な気配が色濃く。

ふんっとその上で鼻を鳴らす。

 

 

 

「構わぬ。奴が死のうと、この人形共が壊滅しようと我には関係ない」

 

 

 

「……しかしルファス様のご命令を果たせないのは問題だな」

 

 

 

徹頭徹尾アイゴケロスの思考はルファスを中心に回っている。

彼女の言葉は絶対であり、彼女の言葉はどれだけの無理難題であろうと果たさなくてはいけない。

困ったものだと魔王は首を傾げ───その顔が凶悪な笑顔を形作った。

 

 

 

ククっと喉を鳴らす。

何が面白いのか彼は肩を揺らした。

 

 

 

かつて己に屈辱と敗北を与えたアリストテレス。

あの異質さとおぞましさが魔神王にも向けられると思うと愉快でたまらない。

そして何より、かつてヘルヘイムにおいて並ぶ者なき強者だった自分と対等に近い者が数多く存在する今の地上の混沌が面白くてたまらない。

 

 

 

いずれ偉大なる主が全ての障害を踏みつぶして勝利するのは当然ではあるが、その覇道の波乱万丈っぷりは魔王をして愉快でたまらない。

 

 

 

「くははっ……本当にままならぬものよ。この様な事柄、ヘルヘイムにおいては決して味わえなんだ」

 

 

 

魔王と魔神王と文明殲滅兵器が一堂に会するなどこの場限りだろう。

 

 

 

 

「特に今宵は騒がしくなるぞ?」

 

 

 

アイゴケロスが言い終わった瞬間、まるで合図したかのように世界が揺れた。

 

 

 

鼓膜を突き抜ける爆音が響き、空高く無数の昆虫たちが打ち上げられていく。

ぐるぐると何トンもある筈の黄金色の蜘蛛や蟻が散らされている。

そのまま落ちてこない。星の重力を振り切って吹っ飛んで行ってしまったのだ。

 

 

 

光速と等しい速度で殴られればこうもなろう。

余りに圧倒的な暴力によって宇宙まで吹き飛ばされた彼らはもう帰ってこない。

 

 

 

 

兵器群の端末が接近する存在を検知。

数は───単体だ。

 

 

 

 

 

黒い長髪。青黒い肌。頭部より伸びる一対の角。

そして金色の瞳を備えた威風堂々とした大男だった。

かの者こそミズガルズに住まう誰もが知り、誰もが恐れ、そして憎む者。

 

 

 

 

 

彼こそ数多の魔神族を統べる人類の敵──『魔神王』である。

ミズガルズに君臨する最後の四強が何の感慨も感じさせない足取りでアリストテレス兵器群に向けて歩を進めていた。

 

 

 

 

 

 

 






エル級


敵対勢力を文明ごと滅ぼすことを目的に製造された存在。
ゴーレムと生物の中間に位置する。
アロヴィタイトを大々的に使用した兵器の第一世代。


全身あますところなくアロヴィタイトで構築されており移動/攻撃/防御など全てにおいて女神アロヴィナスの力をダイレクトに振るうことが可能となっている。
故にユグドラシル級よりも戦闘力は数段階上である。


特に厄介なのはその堅牢さであり、敵として覇王の拳を想定されているといえばどれほどのものか想像はつくだろう。


多分装甲値5000以上はある。


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