ラスボスからは逃げられない! 作:宇宙きのこ(ミズガルズ産)
『縺翫∪縺医?縲?縺阪◆縺?〒縺阪k』
意味不明の言葉ともいえないナニカを垂れ流しながら勇者は聖剣を握りなおし佇む。
背筋をしっかり伸ばし、規律と礼節さえ見た者に抱かせる佇まいは何処か高貴な騎士を彷彿とさせた。
そこにあるのは、先ほどまで喚き散らしていた竜王とは似ても似つかぬ佇まいだった。
規律と礼節。品位と知性。
厳しい修練の末にようやく身につく類の、流麗で無駄のない立ち姿。
見た者が思わず高貴な出生を連想してしまうほどに整った姿勢。
こうしている間にも、体内に突き立っていたアロヴィタイトは消化され続けていた。
否、消化などという穏やかな言葉では足りない。
喰らい尽くしている。
自分を貫いていたはずの異物を、己の中へ取り込み、即座に力へ変換し、より強い何かへと組み替えている。
その結果として、“勇者”の出力はなおも上がり続けていた。
もちろん代償もある。レベルという器、その枠を超えて分母を無視したままステータスだけが膨れ上がっているのだ。
肉体に掛かる負荷は凄まじいどころではない。
細胞は絶えず熱を吐き出し総身は白く発光し始めていた。
熱量の限界を超えた肉体が自壊と増幅の両方を同時に起こしている。
このままなら、かつてのノーガードのように破裂しても何らおかしくない。
その上でとてつもない激痛に苛まれているはずなのに“勇者”はそれを考慮する素振りすらない。
全ての竜頭から熱が吐き出される。
胸部からは凄まじい勢いでプラズマが噴き続けていた。
龍の頭からブレスという名の排熱を行い、能力をさらに増幅する。
それら全てを受けて聖剣バルムンクはますます輝きを増していった。
もはやそれは剣というより、女神の権能の凝縮体だった。
ポルクスから授けられた勝利の証であり勇者の象徴。
純粋なアロヴィナスの加護を宿し、システム領域にさえ干渉し得る聖なる一振り。
女神の愛を形にした勇者というお気に入りへのプレゼント。
そこへ更に、アロヴィタイトが大量に流れ込む。
後の世においてその名で呼ばれる異質な物質を吸収しバルムンクは純粋極まりない女神の権能そのものへと近づいていた。
真なる所有者の意思に、剣は応え続ける。
それがどれほど壊れた魂であろうと。
どれほど歪んだ残骸であろうと剣は文句ひとつ言わない。
いや、ともすれば己の所有者を使い捨てた世界に聖剣もまた思う所があったのかもしれない。
“勇者”が動く。
先ほどまでのラードゥンのような、感情に任せた暴威ではない。
より静かで、より速く、無駄がない技術だった。
流麗だった。
剣士として完成された者の、洗練された斬撃。
それでいて一太刀ごとに位相を裂き、女神の権能そのものでしらみつぶしに空間と領域を削り取っていく。
剣王アリオトなど比較にならぬ、真の天才が振るう完ぺきな剣技だ。
『縺薙l縺ァ……縺雁コ励※……縺?≧』
音とも言葉ともつかぬ呪詛の如き発声が漏れる。
意味は分からない。
だが、その剣は明確な意思のもとで振るわれていた。
アリストテレス卿は、そこで初めて明確に回避を選んだ。
受けられないからではないが、もしも万が一にでも通れば面倒だからだ。
“勇者”の斬撃は理論上では本体に届きこそしないが今の勇者であれば位相そのものをしらみつぶしに切り刻んでくる可能性があるからだ。
女神の権能というのは何でもありだ。
この存在の凄まじい拒絶と敵意という方向性を宿したソレは届きうる可能性がある。
卿の姿がゆらりとずれる。
完ぺきな足運びで最短の動作で躱す。
剣閃はそこを通過し背後の泡宇宙の膜に無数の裂傷を刻んだ。
裂けた膜の縁から、青とも白ともつかぬ光が洩れる。
一撃の余波だけで、幾つもの世界膜が斜めに断ち切られていた。
“勇者”は止まらない。
一歩。
二歩。
三歩。
騎士めいた端正な足運びのまま距離を詰め、斬撃を重ねる。
横薙ぎ。
袈裟。
逆袈裟。
刺突。
息もつかせぬ連撃。技と技の間に切れ目などなく、舞う様に繋がり続ける。
ミズガルズの歴史においてこれほどの剣を振るうものはいない。
過去においても、未来においても彼は最高の剣士だろう。
しかしアリストテレス卿はそれを躱し続ける。
彼の瞳には変動する数式が告げる未来が見えている。
先読みともまた違う、純粋な未来視のようなものだ。
どれだけ相手が優れた剣を振るおうとどのタイミングでどこに攻撃が来るか判るならば安全な場所に移動を続ければいい。
最小の間隔で【任意コード実行/座標移動】を行い続ければ好きな時に好きな場所に存在できる。
それをもちいて回避を続けながら彼はどうするか考えていた。
選択肢が多すぎる。
余りに多くのことが出来るため、逆に少々困るほどだった。
アリストテレスは67人が統合された思考を回転させて決める。
そうだ。
あれを使ってみよう。
幾度かの使用データは持っている上に今は乱数を排除する不死鳥の炎もある。
で、あればどうなるか見てみたい。
マントの内側から取り出すはお馴染みの【アンタレス】だ。
プラン・アリストテレスが作り上げた少しばかりの代償を求められる無限ドーピング剤だ。
薄い容器の中で揺れるそれは、かつての原型を留めてはいても、もはや同じ薬ではない。
配合比率は幾度も調整され、不死鳥の炎によって不純物と乱数要素は焼却され、狙った効果だけを残すように徹底的に削ぎ落とされている。
この薬剤をまた作っているとルファスにバレた時は凄まじい筆舌に尽くしがたい顔をされたが、それももう過去の話である。
彼は迷いなくそれを自らに注射した。
薬液が血へ混ざる。脈動と共に全身へ巡る。
だが、肉体にはかつてのような変化は何も起こらない。
筋力は増さない。骨格も変わらない。
皮膚も、神経も、筋繊維も、細胞も、何一つ膨張しない。
上がるのは、ただ一つだけ。
幸運だ。
攻撃力でも防御力でもない。
体力や速度でもなかった。
ミズガルズにおいて余り気にされていない数値だ。
何故ならば直接的な戦闘能力や身体能力の向上を実感できない値だからである。
これは肉体の強度に紐づけされる値ではなく器の耐久を直接要求しない数値。
ゆえにアリストテレス卿は思案していた。
この値はいくら上げても肉体には負荷を与えない、と。
そして、その読みは正しかった。
ステータス欄の「幸運」が際限なく跳ね上がり始める。
桁を増やし、桁を食い潰し、表示領域を押しのけ、やがて数値としての形を失ってなお伸び続けた。
文字列は崩れ、表示は乱れ、意味を持たぬ記号へと変質していく。
まだまだ止まらない。
なおも無限に“幸運”だけが上がり続ける。
名実ともに今のアリストテレス卿は全宇宙で最もラッキーな存在になっていた。
そも、アンタレスの問題は無尽蔵に上がり続けるステータスに対してレベルという分母が耐えきれないことだ。
理論上ではレベル1の存在にレベル1000を超えるステータスを付与させることも可能ではある。
しかしそうなった場合、肉体はその負荷に耐え切れずに爆散するだろう。
分不相応なステータスを付与されたものはソレに耐え切れない。
そんな当たり前の答えをこの薬は証明してくれるが「幸運」だけは肉体に負荷がかからないのだ。
加速しながらアリストテレス卿の「幸運」は際限なく跳ね上がっていく。
桁が増え、表示欄を圧迫し、やがて数値としての体裁を保てなくなる。
文字列は崩れ、記号が滲み、意味を持たぬ羅列になってなお上昇を続ける。
それでもまだ上がる。さらにさらに上がる。
並列して不死鳥の炎が揺れた。
焼かれているのは物質ではない。
これの能力である「望んだものだけを焼く」という効果をアリストテレス卿は悪用していた。
即ち不確定要素や乱数。
眼に見えぬほどの微細な誤差など曖昧な揺らぎをこれは潰してくれる。
99.999999999999999999999%成功するものを100にするのがこれの力だ。
未来を濁らせるものが炎に舐め取られ、世界はアリストテレス卿にとって最も都合のよい結果だけを選び始める。
不運は焼却され、偶然は丹念に潰されて確率は調律される。
数式は全てがアリストテレスの思い通りだ。
それがどうしたと言わんばかりに“勇者”が動いた。
女神の権能そのものと化したバルムンクが、宇宙と宇宙の狭間を裂いて迫る。
ここには地面もなければ空もない。足場と呼べるものさえ存在しない。
ただ無数の泡宇宙が漂い、世界膜同士が遠く脈打っているだけの、果てしなく不安定な空間だ。
そんな中でも彼の剣技は史上類を見ない程に研ぎ澄まされていた。
アリオトという男がもしもこれを見たら見惚れながら何も出来ずに両断されていただろ。
あぁ、こんな凄い剣を受けて死ぬなんて剣士として最高の最期だと受け入れるのは間違いない。
放たれた一閃は、確かに完璧だった。
速度と角度、込められた「力」の割合、みなぎる殺意。
どれもこれも比類なく美しく調和している。
龍さえ一振りで頭部から尾まで真っ二つに出来る程の太刀筋だった。
何もかもが理想的だ。
本来ならどれほどの防御も両断していた。
だが当たらない。
いや、当たってはいる。
今回に限ってはアリストテレス卿は判定を弄ったりダメージ数値を書き換えてなどいない。
アリストテレス卿は避けようとさえしなかった。
ただ、ほんのわずかに身じろぎをした。
その瞬間、勇者の斬撃は天文学的な偶然によって、彼の身体を構成する全ての原子と原子の隙間だけを正確になぞる軌道へずれた。
これは全くあり得ない事ではない。
原子と電子の間には距離が空いており、実際はスカスカだ。
バルムンクを構築する原子とアリストテレスの原子はその電子と原子の間のスカスカの隙間を潜り抜けた結果、剣はアリストテレス卿を切れずにすり抜けたのだ。
なあに言葉にすれば簡単な話だ。
たまたまここで完璧かつ同時に全ての原子にトンネル効果が発生しアリストテレス卿に有利になるように働いただけである。
彼は運が良かった。
それに尽きるだけだ。
たまたま都合がよく原子同士がすり抜け合うことが何回も起きているだけの話である。
あり得ない? 起きているではないか。
こんなことは正直に言って狂気だ。
しかし結果として起きた。
切っているのに、間違いなく切断軌道は通っているのに切れない。
まるで最初からそこに当たるべきものがなかったみたいに刃だけが通り抜けていく。
“勇者”の目が細まる。
次の斬撃。
今度は空間そのものを削るような突きだった。
アリストテレス卿は無意識に肩を落とす。
ただそれだけの、疲れた人間が見せるような何気ない仕草だった。
天法も魔法もスキルもリボルバーも使わず佇むだけ。
その瞬間、遥か遠方に漂っていた二つの泡宇宙があり得ない確率で互いの表面を掠め合った。
おきたのは宇宙規模の膜衝突。
本来なら何百万年、何億年待とうと起きるかどうかも怪しい偶発事故。
だが今この瞬間に限って、それは起きた。
まぁ、なんて運がいいのだろうか。
余波が走る。
宇宙膜の干渉で生じた衝撃が狭間全体へ伝播し、勇者の刺突軌道を弾いてしまう。
さすがの宇宙規模の大衝撃は勇者も堪えたのか剣はあらぬ軌道に曲がった。
刃はアリストテレス卿の頬先を外れ、代わりに自らの肩口を浅く裂く。
“勇者”は止まらない。
むしろさらに殺意を増して動く。
そこに動揺はなく、明らかに先のラードゥンとは違う。
この怪物は静かで完成されている。
それゆえに余計に遥かにアレよりも厄介……の筈だった。
三撃。ミス。
四撃。ミス。
五撃。ミス。
神速の剣閃が狭間を埋める。
どれもが必殺で、どれも本来なら届いていた。
だが何故か全て無駄に終わってしまう。
アリストテレス卿は考えてすらいない。
足場のない空間で、ただ本能のままに身体をわずかに傾け、視線を動かし、袖を払う。
ふらふらと踊っているというよりは日常の動作をしているように軽く体を動かしているだけ。
ふらふらと右左に揺れているだけだ。
レベル1の子供でも出来るような動きだった。
それだけで最高の結果が連鎖する。
例えばこうなる。
刃が迫る。
その寸前、勇者の体内で幾つかの細胞が偶然にもアロヴィタイトを取り込みすぎていたことが発覚する。
その細胞群が突然死を起こし、局所的なエネルギー制御が破綻。
胸部の深部で微小な暴発が起き、斬撃の軌道がほんの僅かにぶれてしまい当たらない。
次の斬撃。
今度は完全に入ったように見えた。
だがその瞬間、勇者の心臓が何の前触れもなく心不全を起こす。
死にはしない。直ぐに再起動し予備の心臓が生成されて動き出す。
しかし拍動が一瞬だけ乱れ、全身に巡っていた力の流れがそこで詰まる。
そのわずかな遅れで、剣の伸びが失われる。
だがもう遅い。
最も深く刺さるはずだった一撃は、アリストテレス卿の服の端を掠めることすら出来ずに抜けていった。
“勇者”がさらに踏み込む。
星々を切り刻む程の乱舞。
それに対してアリストテレス卿は、ただ目を細めた。
その程度の動きしかしなかった。
なのに今度は、狭間に漂っていた極小の塵としか呼べぬ粒子群があり得ない密度で勇者に向けて飛んできた。
恐らくどこかの宇宙同士の配列が少しだけズレてしまい、その結果、重力と反発力によって押し出されてちょうど飛んできたのだろう。
何とも運が悪い話ではあるが、間が悪かったのだから仕方ない。
本来なら何の意味もない宇宙塵。
何かの事故で何処かの宇宙からはじき出されて飛んでいた亜光速の物体たち。
だがその一粒一粒が、ちょうど刃の進行方向に最悪の角度で衝突し剣筋はズレてしまった。
結果、無数の斬撃はアリストテレス卿を外れ、どこぞの泡宇宙の膜へ吸い込まれていく。
ピカ、ピカと宇宙の中で勇者の剣戟はそこそこの破壊をまき散らした後に霧散した。
ピッ♪
気まぐれで指先を右にふる。
その瞬間、勇者に流れ込み続けるアロヴィナスの力が微かに暴発しわき腹に巨大を穴を抉った。
ドォンという重低音を上げて80匹以上もの竜が吹き飛んだ。
ピッ♪ ピッ♪
気まぐれで指先を左に振る。
その瞬間、勇者の片目にだけプラズマ放射の残光が最悪の角度で入り、視差が狂い、うっかり自分の竜の首を落としてしまう。
ピッ♪ ピッ♪ ピッ♪
気まぐれで指先を右に振る。
その瞬間、遥か遠くで崩れた泡宇宙の断片が狭間を滑走し、勇者の背を強打する。
勇者はまるで玩具の様にクルクルと何処かの宇宙泡に衝突して侵入した瞬間、運悪くそこは超新星爆発の瞬間だったらしく身体の大半が吹き飛ぶ羽目になった。
ピッ♪ ピッ♪
ピッ♪ ピッ♪
気まぐれで指先を左に振る。
ズタボロの状態で【エクスゲート】を開き戻ってこようとする勇者を更なる不運が襲った。
たまたまその宇宙では真空崩壊が発生したらしく、無限に膨らもうとする「泡」をまともに受けてしまったのだ。
9割以上の命の残機が問答無用で吹き飛び、事象の消滅と再編をくらいながら勇者はアリストテレス卿に向けて射出された。
はたから見たらコメディかもしれないが、実際にコレを受けたら理不尽と叫ぶことさえ出来ないだろう。
全て偶然の連鎖だ。
運がいい、何て運がいい。
既に勇者はズタボロだった。
全身のあちこちは崩れ、補修と再生と適応を同時に回し続けなければ形さえ保てぬほどに損壊している。
それでも呻きはない。
悲鳴も、憤怒も、恨み言も、何一つ漏らさない。
いや違う。一つだけ例外があった。
『縺ッ縺ッ縺ッ縺ッ縺ッ繝上ワ繝上ワ繝上ワ??シ』
今までは声どころか音とさえ認識できなかった勇者の呟く呪詛。
あらん限りの負の衝動に満ち満ちていたソレが初めて違う色を帯びていた。
即ち───『喜』である。
勇者は笑っていた。
ただしそこに宿る感情は決して美しい感情ではない。
まるで復讐を目前にした時に滲み出るような壮絶な害意を混ぜ込んだ泥の様な笑だった。
“勇者”の眼差しが揺れる。
だが恐怖ではない。
そこに宿る光は、むしろ深まっていく。
痛みの向こうで何かを見出した者の目だった。
これならば、もしかして、と。
宙の狭間に響かせるように勇者は笑う。
バルムンクを子供の様に振り回し、片手で己の顔を抑え込み身体を揺らした。
あえて最も近しい感情を挙げるのならば恍惚だ。
そう呼ぶほかなかった。
美しい喜びでも、狂気じみた愉悦でもない。
もっと透き通った、壊れた願望に近いもの。
絶対に叶うはずがないと思いつつも諦めきれなかった夢が叶うかもしれない時に出る感情だ。
あぁ、こいつ達ならば、もしかして。
続いてたまたま近傍を漂っていた一つの泡宇宙が、極めて稀な膨張不全を起こした。
通常なら安定を保つはずの世界膜が内側へわずかに潰れる。
その反動で泡の中から圧縮された暗黒物質めいた何かを吐き出す。
本来なら観測さえ困難なダークマターの一種。
それがあり得ない角度で射出され、勇者の左脚へ直撃した。
足が吹き飛んだ。
脚部を構成していた竜たちの一群が、質量ごとごっそり削ぎ落とされた。
だが勇者は微動だにせず足を再生させてアリストテレスを凝視していた。
そしてアリストテレス卿は静かに右手を下ろした。
余興はこれくらいでいいだろう。
特別な構えではない。
ただ、次の処理へ移るだけの動作で、その所作に感傷はない。
わずかな感慨はあっても、それで手を止める理由にはならない。
たとえこれが何であろうと。
どういう産まれであろうと。
ミズガルズ、いや……リュケイオンの害となるのならば消えてもらわなくてはならない。
しかし敬意は大事だ。
不愉快な竜王はともかく勇者であるのならば相応の礼節は必須である。
アリストテレス卿は恭しく敬意をこめて一礼した。
ソレがこれに向ける最後の手向けだった。
対して勇者は剣を顔の前で翳し暫しの黙礼にも似た動作を行う。
泡宇宙が脈打つ。
狭間を漂う無数の世界膜が、遠くで明滅する。
その全てを背景にして二つの外れた存在はなお向き合っている。
一方は女神に最も近かった残骸。
一方は女神の世界から最も遠くへ落ちた異物。
互いに女神の世界を否定する者らは暫し静寂を以て相対し動き出す。
アリストテレス卿は【錬成】でもう一つ、全く同じリボルバーを作り出して両手に一つずつ装備する。
勇者は更に権能を宿した聖剣をもって迎え撃つ。
右手に一つ。左手にも一つ。
どちらも先ほどと寸分違わぬ、古風で男性向けにカスタムされたリボルバー。
竜王を、あるいは女神に最も近かった残骸を撃つには、あまりにも矮小であまりにも場違いな武器にしか見えない。
だが見た目に意味はない。
アリストテレス卿の手にかかれば、武器とはただの処理のための道具でしかないのだ。
“勇者”がバルムンクを構え直す。
権能を宿した刃は、今や光というより法則の塊に近い。
振るえば空間や概念を裂き、届けばその先の世界そのものを削り落とす女神によってもたらされる勝利そのものだ。
先のラードゥンよりも怪物はより洗練された形で聖剣を扱っていた。
何よりそのたたずまいには気品があった。
ならば、こちらも応じよう。
アリストテレス卿はそう言わんばかりに、ほんのわずかに足を開いた。
【任意コード実行/座標移動】
次の瞬間、彼の姿は消えた。
否。消えたのではない。
余りにも自然に座標移動を行ったせいで、視界からページが一枚抜け落ちたように見えただけだ。
さっきまで正面にいた。
と思えば、次の瞬間には斜め上。
さらに次には真横。
そしてもう一度瞬きをした時には背後にいる。
動いているのではない。
動作は全く繋がっていない。
動作と動作のあいだが存在しないかのように、彼の身体は常に“勇者”の剣が届かない場所へだけ現れる。
映像のフレームが抜けたような、不気味なまでにカクついた挙動。
だが、その一つ一つの停止位置は異様なほど正確だった。
“勇者”の斬撃が走る。
だが斬るべき場所には、もういない。
その一瞬の隙に、アリストテレス卿は右手のリボルバーを発砲した。
乾いた発砲音によって放たれるのはただの濁った蒼い光を伴うマナ弾だ。
見た目は取るに足らない、光の粒にも満たないような小さな弾丸だった。
だがその内側へ卿は女神の世界から一つのスキルを引き出し、その判定だけを丁寧に重ねていた。
【針万本飲ます】
一万固定ダメージ。
本来ならただそれだけの取るに足らぬ固定値を与えるスキル。
弾丸は“勇者”の肩口に命中した。
ダメージが走る。
ぴたりと一万。
一切の誤差なく。余計な増減もなく。
一万という数値だけが世界の処理として押しつけられる。
“勇者”は微動だにしなかった。
その程度の損傷、今のこの怪物にとっては傷にもならない。
残機も再生も補填もある。
それらを思うに無視して差し支えない。
実際、最初の一発はその認識で正しかった。
“勇者”の剣が返る。
権能を宿した一閃が、またしてもアリストテレス卿のいた場所を切り裂く。
だがもう彼はそこにいない。
ほんの一瞬後には、別の座標で、別の体勢で、左手のリボルバーを構えている。
二発目が放たれた。
今度も見た目は変わらない。
同じく取るに足らぬ、小さなマナの弾丸。
だが着弾した瞬間、“勇者”の全身を構成する竜たちのいくつかがまとめて弾け飛んだ。
一億。
何の前触れもなく、その数値だけが確定する。
“勇者”の残機が複数、一瞬で消し飛んだ。
胸部が裂ける。幾つかの首が吹き飛ぶ。
肩から腕にかけての竜群がまとめて爆散し、再生しようとしたそばから次の損壊が重なる。
即座に補填は始まる。
失われた命も、破損した構造も、女神の力が埋め戻そうとする。
だが、その補填を待たずに、損傷だけが膨れ上がった。
アロヴィタイトを食んでいた細胞が減ったせいで内部に打ち込まれた【剣の冬】が活性化し何本かの剣が内側から食い破り現れる。
そして、三発目。
今度は明らかに違った。
弾丸そのものは相変わらず小さい。
乾いた音も、発射の所作も、これまでと変わらない。
だが“勇者”は、見た瞬間に理解してしまった。
あれを受けたら終わる。
根拠でも論理でもない。
積み重ねられた破壊と、身体の各所へ刻み込まれた損耗と、あの異物が放つ処理の気配がその確信だけを強制的に与えてきた。
弾丸が来る。
その瞬間、“勇者”は初めてなりふりを構わなかった。
全身を維持していた竜たちの結合を、一時的に自ら解いたのだ。
本来なら絶対にやらない。
人形として固定し、秩序立てて束ねていた構造をわざと崩すなど、自傷に等しい行為である。
だがそれでも、今は避けなければならなかった。
骨格がばらける。肩が落ちる。
腰がずれる。首を成していた竜たちが一瞬だけ散り、胸郭を形成していた何匹かが背中側へ滑る。
美しかった騎士の輪郭が、ぐしゃりと崩れた。
その歪みで、弾丸は“勇者”の中心を外れた。
通り過ぎた先で、狭間に浮かぶ泡宇宙の一つが静かに砕ける。
世界の膜が数字ごと抉り抜かれたように、一瞬で消失した。
余りに呆気ない一撃だったが、弾丸一発で宇宙を一つ消したのだ。
累乗。
アリストテレス卿は、先ほど会得した一億という数値を、今度は別の場所へ差し込んでいた。
一万×一万。
その演算の並びの一部へ、掛け算ではなく指数として数字を置く。
それだけで固定ダメージは、人智の想像から完全に外れた怪物へ変質する。
そんなものをまともに受けて、生きていられるはずがなかった。
“勇者”がぐらりと揺れる。
だがアリストテレスは待ってはくれない。
四発目が飛んだ。
今度は避けきれない。
そう見えた瞬間、“勇者”はバルムンクを逆手に持ち替え、片腕を振るう。
開かれるのは【エクスゲート】である。
天力と魔力を一瞬で編み込み空間をほどく。
この世界の構造を知っているからこそできるスキルではない技術だ。
弾丸はその中へ吸い込まれた。
座標をずらし別の場所へ飛ばす。
飛翔先の命中点ではまた宇宙が消えたか、銀河団がまとめて吹っ飛んだかもしれない。
荒業。無茶苦茶だ。
だが今の“勇者”には、それしかなかった。
そして、その時だった。
“勇者”の体内で、何かが目を覚ました。
マナ・キャンサー。
ルファスの為に残した未来を創るための兵器群の中核となる存在。
やがて来る先の未来で覇王と死闘を演じることになるおぞましき遺産。
まだ試作であり完成形には程遠い。
戦闘時、弾丸として相手に打ち込み感染させる程度の小規模なもの。
まだ自立行動は出来ず、単純な戦闘時にしか使えない程に簡易的な存在だ。
だが、その本質はすでに同じだった。
侵食。
増殖。
簒奪。
女神の力を餌として、世界の構成そのものを食い荒らす死病。
最初の一発で、“勇者”の内部にはそれが埋め込まれていたのだ。
そして今、勇者/竜王の体内は最高の環境と化している。
体内に満ち満ちていたアロヴィタイト。
無限に近く流れ込み続ける女神の“力”。
それら全てが、最高の培地になってしまった。
マナ・キャンサーが爆発的に飽和する。
細胞を喰う。肉体を喰う。
循環系に乗り、複数の臓器に腫瘍が膨らむ。
体内に宿るマナを喰う。
外から流れ込む女神の力を喰う。
その循環と供給を、むしろ餌として増殖する。
さらには、存在を支えるシステム側へも噛みつき始める。
無数のエラーと警告が極点に響いた。
“勇者”の身体が、ぼろぼろと崩れていった。
爆散でも断裂でもない。
もっと汚く、もっと静かな崩壊だった。
まるで濡れた紙細工が液状化していくみたいに、整っていた勇者の輪郭がずるりと溶け落ちていく。
首筋が崩れる。胸が垂れる。
腕を成していた竜たちが、形を保てなくなってぽろぽろと零れ落ちる。
それでも、“勇者”は声を上げなかった。
代わりに、その顔だけが笑っていた。
声なき恍惚と壊れた希望。
自分の終わりさえどうでもいいとでも言うように、その眼差しだけが異様に澄んでいく。
これならば。
この存在ならば。
本当に――。
その願いを最後まで言葉にすることはなかった。
次の瞬間、竜王ラードゥンの人格が戻ってきた。
『ぎ、ぎゃ、あ……!? な、なんだ、これ……っ!?』
途端に、空気が変わる。
勇者は消え、怪物が戻る。
勇者の残骸の後に代わりに現れたのは、痛みと崩壊を直視させられた幼稚な暴君だった。
『ぼくのからだが……ぼくのからだがぁぁぁ!!』
『どうなってるのォォォぉおおおお!!??』
液状化して崩れていく自分の肉体を見て、ラードゥンは狂乱した。
今までどれだけ他者をバラし、千切り、泣かせ、壊してきたとしても自分がそうされる可能性など彼は考えたこともなく、現実になった今となっては叫び散らすだけだ。
『女神さまァァァァァァァァ!!!!』
『アロヴィナスさまぁ!!
たすけて! たすけてよぉ!!
こいつ、こいつやばい、ほんとにやばいんだよぉ!!』
崩れゆく口で。溶け落ちる喉で。
虚空の果てにいるはずの女神へ、情けなく救いを求める。
『ころさなきゃ、いまここで、ころさなきゃだめなんだってぇ!!』
『こいつ、こいつほんとにあぶないのぉ!!
ぼくじゃなくて、女神さまをころしにくるよぉ!!』
訴え喚く。泣き叫ぶ。
自分を助けてくれと。
そしてこのアリストテレスが、どれほど危険で、どれほど今この場で殺すべき存在かを。
自らの崩壊よりも先に女神の危機を叫び続けるのは、信仰か、恐怖か、それとも単に自分が生き残りたいだけか。
身体が崩れていくに連れ、内側で展開していた女神の座へと繋がっていた【エクスゲート】が露出する。
蒼く輝くソレに竜王はありったけの力を込めて孔を拡張し更に強く女神の座へ接続する。
途端に漏れ出る蒼く清浄な女神の力と気配。
今まで竜王が引き出していたそれとは根源的に質も量も違う、正真正銘のアロヴィナス神の力の発露だ。
間違いない、神は今、二人を認識している。
そこにアリストテレス卿は驚きはしていない。
やはりというべきかアロヴィナス神は事の成り行きを見守っていたらしい。
ジスモアを狂わせ、ラードゥンを差し向け、アリストテレスを殺す為に仕組んだストーリーがどうなるかを確認したいのだ。
ソレを踏まえるならば現状はアロヴィナスにとって最高の状態だった。
最初から女神からして見れば、竜王もアリストテレス卿も同じだった。
どちらも異物でどちらも不要。
どちらも、本来ならば自らが編んだ物語の筋を乱す目障りなノイズにすぎない。
しかも下手に強いせいで排除するのは難しいときたものだ。
だが今はとても都合がいい。
二人は自ら宇宙と宇宙の狭間へ出てきている。
ならばミズガルズを巻き込む必要もない。
舞台の外へこぼれたゴミを、まとめて掃き捨てるだけで済む。
極点の向こう。
数え切れぬ世界と宇宙を抱いたまま、その中心に座す女神アロヴィナスは、ほんの指先を向ける。
たったそれだけで十分だった。
時空と次元と時間の向こう側。
宇宙の狭間にでてもなお遠い箇所に座す神の顔を二人は確かに見た。
冷たい風貌の蒼い髪の女。
それがじっとアリストテレスと竜王を見つめている。
『女神さま! 女神さま!
あははははハハハハ!! つながったぁァァァァァァ!!』
ラードゥンは歓喜に満ちた叫びをあげる。
アロヴィナス様がこっちを見た、僕の呼びかけに答えてくれた、勝った、勝ったと本気で思っているらしい。
女神の視線のような意識の流れが一瞬だけラードゥンに差し向けられ、次にアリストテレス卿を見た。
そして一言。
女神は確かにこう呟いた。
貴方たちは必要ありません。
声は静かだった。
怒りも、憎しみも、嘲りもない。
ただ不要なものを不要だと告げる、あまりに無機質な断定だけがあった。
正しく神の如き裁定。
女神に本気で排除を願われるとはこういうことだと示す一例だ。
ピッと極点の向こう側でアロヴィナス神は人差し指を竜王と異物に向けた。
そしてほんの微かだけ、アロヴィナスからすれば極限まで手加減した状態で「力」を差し向けた。
本当に手加減していた。
女神にとってはそうなのだ。
極限まで威力を絞り、余波を抑え、余計な世界を巻き込まぬように配慮した。
それでもなお、多次元宇宙の構造そのものが丸ごと軋みを上げる。
蒼。
ただひたすらに蒼い光が極点の奥から止まることなく溢れ出した。
それは光というより、神の意思そのものだった。
世界を作り壊す事を許されたアロヴィナス神の権能だ。
愛と美の神など偽り。
アロヴィナス神の本質とはただ純粋に強い力を持った神と称するのも憚れる生命体である。
その証明がこの閃光である。彼女は誰よりも何よりも強大な生命体なのだ。
【エクスゲート】が悲鳴を上げる。
数光年規模にまで無理やり拡張され狭間そのものが裂けそうになる。
閃光はまだ先触れにすぎない。
それでも既に幾つもの宇宙泡が触れただけで蒸発するように消えていく。
その余波だけで極点は撓む。
この世で最も強い魔物の力が振るわれる光景に竜王は狂い嗤った。
『あは、あははははははははッ!!』
液状化し崩れていく身体、溶け落ちる口と喉から血反吐をまき散らしながら。
それでも彼は嬉しそうに笑った。
あまりにも醜く、あまりにも無邪気にだ。
『ぎゃははははハハハハ!! おまえはもうおしまいでエエエエエエっす!!』
歓喜と信仰だった。
そして何より、幼稚な自己承認欲求だ。
自分の声は届いて、女神はこっちを見た。
自分の願いに応え、気に入らない奴を殺してくれる。
それでいい。それで十分。
神に祈り、その報いが帰ってきたことを喜ぶのは信徒として当たり前だ。
たとえ自分ごと焼き払われようと構わない。
アロヴィナスはこの世で最も強い最強の魔物なのだから。
その女神に殺されるのなら、それは恐怖ではなく褒美だった。
『ざまぁみろ!! ざまぁぁあみろぉぉお!! アロヴィナス様ばんざあああああああああい!!』
喝采を叫びながら、竜王は崩れていく。
感謝し、讃え、笑いながら、自分が捨てられる側にいることに最後まで気づかない。
女神にとっては自分もまた、アリストテレス卿と同じく不要な異物だという事実を最後の最後まで理解しない。
アリストテレスは閃光に呑まれる寸前、片手のリボルバーをわずかに持ち上げた。
既に弾丸には、幾つもの累乗が上乗せされている。
一万。
一億。
そこからさらに先へ。
本来の固定ダメージの枠を遥かに逸脱し、数値そのものが意味を失うところまで膨れ上がった一発。
銃声はあまりに小さかった。
だが放たれた弾丸は、真正面から女神の力を切り裂いて飛んだ。
蒼い濁流の中を真っ直ぐに穿ち、神の閃光の一筋を抉り取りながら奥へ進む。
女神から見れば、あまりにも些細で、あまりにも取るに足らない逆流。
故に気づきもしない。
それは確かに届いた。アロヴィナスの爪先に。
その先端の、さらに欠片にすら満たぬごく微小な一部。
神の身体と呼ぶのも烏滸がましいほどのほんの端。
そこがほんのわずかに削れた。
あまりに小さく、あまりに軽微。
その程度では女神はやはり気づきもしない。
視線も、意識も、何一つそこへ向かない。
だがアリストテレス卿にとっては、それで十分だった。
これで終るにせよどうであるにせよ、必要なことを行うのだ。
【マネー・ゲッター】
本来ならば落ちている小銭の所有権を得るスキル。
余りに弱く、余りに意味のない雑魚スキルとして誰も見向きもしなかったソレ。
しかし「所有権」というあいまいな概念に対してこれは明確に効果を及ぼすことが可能な数少ない能力である。
アリストテレスが用いることでソレは誰のモノでもないナニカの所有権を得るスキルへと変わっている。
削れた爪先の、欠片とすら呼べぬ断片を、彼は確かに回収した。
直後、女神の放つ力がさらに一段跳ね上がった。
蒼色の濁流は狭間を押し流し、宇宙泡を一つ、また一つと消していく。
抵抗も残骸も痕跡も許さない。
神の意思は絶対であり逆らう術などない。
空間そのものが「無」へ変わっていく。
何かが破壊されるのではない。
存在していたという事実ごと塗り潰され、最初からそこには何も無かったみたいに均されていく。
それは洪水に似ていた。
濁流。
あるいは、神の意思による一方的な廃棄処理。
とある世界における神話の一場面に似通っている。
あれもまた神による大規模な粛清であった。
必要ないから消す。
ただそれだけの論理で、多元宇宙の一角が押し流される。
ラードゥンは、最後まで笑っていた。
『アロヴィナスさまぁぁぁぁぁぁッ!!』
歓喜と喝采。讃美と熱狂のまま。
己が女神に見捨てられ、同時に処分されていることを理解などしない。
彼の思考は常に自分に都合の良い方に物事を解釈することに特化している。
そのまま蒼い光の中へ溶け、砕け、押し流される。
アリストテレス卿はただ一度だけ掌を開き、そこにあるものを見つめて確認してから動く。
微動だにせず虚空を見つめ、そこに超速で何かを刻みつけていく。
【錬成】によって新しい文字を世界に書きなぐっているのだ。
#include <iostream>
#include <vector>
#include <string>
#include <stdexcept>
class DataManager {
public:
bool isActive = false;
std::string status = "initialized";
void resetStatus() {
this->status = "reset";
this->isActive = false;
}
};
int main() {
DataManager manager;
try {
// --- [Stage 01: Initialization] ---
manager.isActive = true;
std::cout << "System Status: " << manager.status << std::endl;
manager.isActive = true;
manager.isActive = false;
// --- [Stage 02: Process Execution] ---
if (manager.isActive) {
std::cout << "Processing data..." << std::endl;
} else {
throw std::runtime_error("System inactive");
}
System Status: initialized / Processing data... / Process completed successfully. / System inactive / runtime_error / resetStatus() / return -1;
[BOOT] DataManager instantiated
[BOOT] status = initialized
[BOOT] isActive = false
[WRITE] isActive = true
[CHECK] manager.isActive == true
[EXEC] Processing data...
[WARN] status mismatch detected
[WARN] duplicate execution path detected
[WARN] logical split detected
L O G I C C O L L A P S E
if (manager.isActive) {
std::cout << "Processing data..." << std::endl;
} else {
throw std::runtime_error("System inactive");
}
if (manager.isActive)
if (!manager.isActive)
E R R O R
>> rewiring...
>> manager.status = "initialized"
>> manager.status = "reset"
>> manager.status = "in̶i̶t̶i̶a̶l̶i̶z̶e̶d̶"
>> std::runtime_error("System inactive")
>> std::runtime_error("System active")
>> std::runtime_error("Syst3m ???")
} catch (const std::exception& e) {
// --- [Stage 03: Error Handling] ---
std::cerr << "Error encountered: " << e.what() << std::endl;
return -1;
}
Error encountered: System inactive
Process completed successfully.
std::cout << "Process completed successfully." << std::endl;
return 0;
}
return 0;
return -1;
[TRACE] return 0
[TRACE] return -1
[TRACE] return 0
[TRACE] return -1
[TRACE] return null
[TRACE] return ????
SEGMENTATION FAULT
initialized initialized initialized reset initialized error reset error processing processing processing inactive inactive inactive
P R O C E S S C O M P L E T E D U N S U C C E S S F U L L Y.
```
“光あれ”
光だけが世界に満ちる。
世界を押し流す蒼。
無へ帰す意志。
不要なものを捨て去るための神の濁流。
それが収まった後、そこは空白になっていた。
本当に何もない。
まるで最初から、そこには何一つ存在していなかったかのように。
アロヴィナスの力は、神の意思は、不要と判断したものを一切の余韻なく押し流し、ただ捨て去ったのだ。
あぁ、本当にすっきりしました!
女神は座の奥で一人勝ち誇る。