ラスボスからは逃げられない!   作:宇宙きのこ(ミズガルズ産)

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プラン「ヴァナヘイムの件でムシャクシャしていた。少し反省している」





野生の魔王があらわれた!

 

 

 

 

プラン・アリストテレスがヘルヘイムに潜ってから30分。

ルファスは彼が潜っていた門をじっと見つめたまま動かないでいた。

近くにある適当な岩に腰を下ろし、翼を折りたたんで彼女はじっとポータルを眺めていた。

 

 

真っ赤な瞳の中に渦巻く感情は余りに混沌としており、彼女自身自分がどうしてこんなことをしているか判っていない。

 

 

 

そんな彼女にガザドは硬い声で話しかけた。

 

 

「一度上に戻らねーか? そこで座りこけてても何にも変わんねーぞ」

 

 

 

「いい。ここに居る」

 

 

 

ルファスの声には有無を言わさない圧がある。

どれだけの力で引っ張ろうと決して譲らない意地のようなものさえそこにはあった。

ガザドは腕を組み考えると即興で【錬成】を用いて四肢を持つゴーレムを製作し、紙にスラスラと何かを書いて渡す。

 

 

 

受け取ったゴーレムが走り去ると彼はルファスの近くに腰かけた。

ふんっと息を吐いてポータルを睨みつける。

彼もまた意地っ張りな性格である故に、どうやってもルファスがいう事を聞かないと直感で判ってしまったのだろう。

 

 

「そうかい。

 じゃあ俺もここから動かねえぞ。

 アリストテレス卿からお嬢ちゃんの事を任されたんだからな、俺は絶対に約束を破らねえのが信条なんだ」

 

 

 

「勝手にしろ」

 

 

ルファスはガザドを視ようともしない。

彼女の目線はヘルヘイムに固定されて決して動かないのだ。

ぐっと彼女は己の腕を抑え込む。震えるソレを彼女は力づくで黙らせた。

 

 

 

なまじ中途半端にマナを認識できる能力をもつことが仇になった。

彼女の全感覚はヘルヘイムに蔓延するマナがどれほど濃厚なのか朧とはいえ感知してしまったのだ。

 

 

カチカチカチと歯が微かに鳴った。

出来ればここから今にも逃げ出してしまいたかった。

怖い、怖い、全身が震える。プランの潜った世界は正に地獄である。

 

 

恐ろしい。

おぞましい。

この世の全ての泥をぶち込んでかき混ぜたかの様な、濁流の如き鍋の底。

 

 

それはレベル130に至って浮かれていた彼女の世界観を再度塗り替えるに値するものであった。

幾ら人類種の中で頂点に近い実力を持つとはいえ、自分などあの中では雑魚に過ぎないと思い知らされる程である。

 

 

彼女の本能は全力で逃走を提案していた。

少しでも気を抜けば翼は浮力を発揮し、自分をこの坑道から逃そうとするだろう。

しかしそれを彼女は意地で抑え込んでいた。

 

 

 

私はルファスだ。

私は強くなるんだ。

私はプランを殺すんだ。

私はプランよりも強くなるんだ。

 

 

あの男が一人で潜っているというのに、自分が逃げるなど許される筈はない。

帰ってきたら文句の一つでも言ってやる。

勝手に決めて、勝手に行動して、こういう時だけ私の意思を無視するなと。

 

 

お前の命が誰のモノなのかもう一度教えてやる、と。

 

 

 

「ただ待ってるだけってのもアレだからな。

 嬢ちゃんの話を聞かせてくれねえか? 何、それくらいはいいだろう?」

 

 

 

ガザドの言葉にルファスは目だけでドワーフを見た。

 

 

 

「……面白い事なんて、何もないぞ」

 

 

 

「それを決めるのは俺だ。勿論、お代はちゃんと払うぜ」

 

 

 

ガザドが腰にぶら下げていた革袋を漁り、何かを摘まんで取り出す。

ほらよ、とルファスに掲げて見せたのは宝石の原石であった。

エメラルド、ルビー、サファイア……彼女でも知っている有名な宝石の原石だ。

 

 

ほらよ、とそれらをルファスに差し出す。

少しだけ躊躇ってから少女は気に入った宝石……自分の瞳と同じくらい真っ赤なルビーを手に取って眺める。

とても綺麗だった。加工すれば更にピカピカに光る事まちがいなしの逸品である。

 

 

 

ルファスはそれを見て少しだけ己の中の恐怖と緊張が和らぐのを感じた。

 

 

 

探るような目でガザドを見ると彼は人懐っこく、素朴な笑顔を浮かべている。

仕方なくルファスは折れる事にした。

受け取ってしまったからには仕方ないと自分に言い聞かせながら。

 

 

 

「少しだけだからな……?」

 

 

 

やったぜ、と満面の笑みを浮かべる髭面の小男にルファスはため息を漏らすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘルヘイムとはミズガルズの遥か地下に存在する魔境である。

いつからそこにあったかは不明だが、何千、何万年も前の書物にはその存在を示唆する一文がある事からとてつもなく永い歴史を持つことは確かな地であった。

一説によれば女神が人類と袂を分かつ際に遣わした龍の内の1柱が暴れ回った影響によってこの地は形成されたとする論文もあったほどだ。

 

 

 

……アリストテレスはその仮説が正しいことを知っていた。

かの地には■■が眠っており、恐らく自分の寝台を整える際に身じろぎした時に作られた空間であろうと彼らは当たりをつけていた。

■■とはそれほどに巨大極まりない存在なのだ。

 

 

 

更に言うとマナは重力に引かれる性質がある事をアリストテレスは知っていた。

引力、斥力、重力は決定的にマナに干渉できる力があると彼は実験の末に導き出していた。

高度4キロメートル程になると大気中のマナの密度は一気に低下し、成層圏辺りになるとほぼほぼ0になるという事実を彼らは突き止めている。

 

 

逆に重力の発生源である星の中核に近き地下世界には地層の様に高密度のマナが集積するのは道理と言えた。

だからこそヘルヘイムの魔物たちは地上に比べてはるかに強大なのである。

常に高密度のマナに晒され、その中で形成された強大な食物連鎖を繰り返せば結果として強大化が続くのは当たり前の話だ。

 

 

 

では、そもそもの話として何故地下世界のヘルヘイムに魔物が……否、魔物の元になった生物がいたかと言うと……ここで語るのはやめておこう。

 

 

 

 

巨大な目玉がいた。

10メートルほどの不気味で、恐ろしい程の威圧感を持つ目玉だ。

分厚い肉の鎧に包まれた目は全方位に肉の触手を伸ばした肉食生物であり、捕食の際は眼孔が縦に裂けて口を露わにするという怪物だった。

 

 

ゲイザー・ドミネイター レベル270

 

 

 

骨に最低限の腐敗肉だけが絡みついて動くドラゴンがいた。

動くだけで周囲に腐敗と瘴気を撒き散らし、腐った肉を滴らせながら徘徊するドラゴンゾンビである。

この竜は背中に巨大な口を持ち、そこから伸びた触腕で哀れな獲物を捕食する能力を持っていた。

 

 

腐纏ドラゴン レベル390

 

 

 

地上においてもおなじみの生物がいた。

黒光りする装甲に、頭部から伸びるのは二本の触角。

ただしサイズは桁違いである。どう見繕っても20メートルはあるソレは、地上の同族と同じか、それ以上の俊敏性を持っていた。

 

 

 

ヘルヘイム・コックローチ レベル 250

 

 

 

 

ヘルヘイムに満ちたマナが宿る事により、意思を持ち始めた鉱石がいた。

地上における蟹に近い姿をしているソレは、ヘルヘイムにおける食物連鎖の上位者である。

巨大な無機生命体ともいえるソレは、分類としてはゴーレムに当たるのだろうが、確固たる自我があり、捕食への貪欲な飢えを常に抱き続ける怪物であった。

 

 

 

ヘルヘイム・キャンサー レベル430

 

 

 

まだまだ。紹介しきれない程の魔物たちがうじゃうじゃといる。

 

 

多くの罠があった。

空間が歪められた回廊があった。

魔物が擬態し、侵入者を捕食するための部屋があった。

 

 

 

膨大極まりないマナはヘルヘイムを満たし、歪めている。

ここは人知を超えた魔界、ヘルヘイム。

正に地獄の名を冠するに相応しい悪夢の地下世界である。

 

 

 

 

だが……そのどれもが意味をなさなかった。

本来は最大でも群れ単位でしか動かないヘルヘイムの魔物たちは魔王の手によって組織化され、連携して動くようになっていたが全ては無駄であった。

 

 

 

侵入者を最初に感知したのはゲイザー・ドミネーターであった。

巨大な目玉の視力は仮に地上にこの存在がいたとしたら月面に置かれたノートを読み上げることが出来る程に優れているが、この魔物の優れているところはそこだけではない。

眼球を覆う肉鎧は些細な振動を感知するセンサーとしての役目をもっており、それは今まで感知した事のない振動と音を捉えていた。

 

 

 

ドドドドドゥドゥドゥドゥドゥエドゥドドドドド────。

 

 

 

 

意味の分からない効果音にゲイザーは目玉を瞬かせた。

同時に目を細めて侮る。どうにも向かってくる存在のマナの濃度はあまり高くないようだ。

自分に比べてレベル的には弱者であり、今日の食事はこいつで決ま……。

 

 

 

 

瞬間、ゲイザーの身体は文字通り()()()()()()になった。

肉片はミクロのサイズよりも細かく消し飛び、血飛沫は瞬時に蒸発する。

魔物を構築していた物質的な肉体は分子/原子単位で結合が解け、内包していたマナだけが収奪された。

 

 

 

 

アリストテレスは既に光速のほぼ半分にまで加速しており、鎧を含めた彼の質量は80キロを超える。

そんな存在が時速5億4000万キロの速度で衝突してきたらどうなるかの答えがこれであった。

魔物であれ、生物であれ、重くて速いモノがぶつかってきたら死ぬ(亜光速タックルは耐えられない)という単純明快な事実がここにはあった。

 

 

 

更に衝突の破壊力を極限にまで高めるため、アリストテレスはインパクトの瞬間に【サイコスルー】を行使し、発生した衝撃を全てつかみ取り、相手に叩きつけていた。

原理としてはルファスとの試験の際に行った木剣に【サイコスルー】を纏わせていたベクトル操作と同類の技術である。

その結果彼は無傷だ。全ての破壊力は相手に押し付け、自分は何の痛苦も感じないという実に効率的な作業であった。

 

 

 

 

余りの破壊力により世界はこのダメージ量を処理しきれない。

亜光速の衝突による攻撃など考慮されていない故にミズガルズの方式が撓む。

本来設定されていた9万9999ダメージという限界の壁を越え、瞬間的に桁数が幾つも跳ね上がった数値が表示された。

 

 

ミシ、という亀裂が世界に微かに走る。

光速の突破というのは神のみに許された御業だ。

何故ならば女神の座す至高なる宙は世界の外にある故に、そこに至る為の技術こそが光を超えることなのだから。

 

 

 

故にアリストテレスがこの加速技術をもっているのは当然と言えた。

 

 

 

ヘルヘイム全体を重低音が襲った。

【サイコスルー】により欠片のロスなく破壊力はゲイザーに叩き込まれたが、それでも微かに漏れ出た小さな余波は地下世界を揺らすに足るエネルギー量であった。

 

 

 

驚天動地とはまさにこの事である。

ヘルヘイムの魔物たちは何事かとアリストテレスを見た。

彼はゲイザーを葬った後は特にアクションを見せず佇んでいた。

 

 

 

上下にとてつもない速度でバウンドをしている結果、彼の姿は()()()()ている。

あってはならない事象を処理しきれない世界はアリストテレスという被写体描写を半ば投げ出し、その結果として彼の姿にノイズが走り始めた。

ジジジジジと蠅の羽音のようなエラー音をばら撒きながらアリストテレスは優雅に一礼する。

 

 

彼は視界と【観察眼】に捉えた無数の魔物たち、ヘルヘイムの怪物どもを見て思った。

 

 

 

※ ただのEXP(経験値)だ。

 

 

 

 

見下されていると魔物たちは直感した。

このレベル的に劣る地上からの迷い子は、よりにもよってただの人間如きがヘルヘイムの強大な魔物である自分たちを見下していると。

唸り声が上がる。怒りを宿した眼光がアリストテレスに突き刺さる。

一匹一匹が地上の国を消し得る力を持つ魔物たちがこぞってアリストテレスに殺到した。

 

 

 

※ 残り36体。

 

 

 

人間の姿が消え去る。

貯められた速度は更に加速を繰り返す。

亜光速にまで加速し、体感時間が圧縮される。

こんな程度では女神に挨拶に行くのに何年かかることやら。

なんとも欠伸が出る速度であるが、仕方ない。

 

 

 

最初にヘルヘイム・コックローチが獰猛に飛びかかる。

強酸性の体液を口から吐きかけ、人間ならば秒もたたずに骨まで溶け堕ちる攻撃を行いながらカチカチと牙を噛み合わせて食いかかった。

が、アリストテレスを捉えるのに彼の速度は余りに遅すぎた。

 

 

彼の瞬発力はマッハ30に及ぶ。

しかも彼は地上の同族と同じく、徐々に加速するのではなく瞬間的に最高速度に達する事ができた。

だが残念ながらアリストテレスはこの哀れな虫けらの万倍を超える速度を誇る上に反応速度、思考速度、知識量など全ての面で上を行っている。

 

 

 

 

吐きかけられた溶解液をみてアリストテレスは微笑んだ。

 

 

 

※ アリエスに遥かに劣る。

 

 

 

一秒間に9億回以上行動できる彼はその内の一回を用いて【錬成】を発動させ、吹きかけられた溶解液を無害な水へと変換した。

残りの活動回数は946079999回しかなくなった。

目視など不可能な速度でアリストテレスは掠った水分を蒸発させコックローチに突っ込む。

 

 

ミスリルに匹敵する甲殻をこの魔物はもっていたが、何の意味もなかった。

砕けるを通り越して、アリストテレスが横をかすめただけで()()るように散ったのだ。

音さえなく分子構造を木っ端みじんに砕かれた虫けらは先のゲイザーと同じように自分に何が起こったかさえも判らずに消え去り、マナだけが収穫される。

 

 

 

【バルドル】が稼働を続ける。

ヘルヘイムに満ちるマナを絶えず吸収し続け、アリストテレスに無尽蔵のSPを供給し続ける。

彼は連続で【錬成】を発動させながら移動し続けた。

 

 

 

【錬成】【錬成】【錬成】【錬成】

 

 

 

彼が通った軌跡をなぞるように場に延々と【錬成】が残り続ける(当たり判定設置)

魔物たちがうっかりその空間に身体を侵入させると、それは致死性のトラップとして機能した。

 

 

哀れな犠牲者はヘルヘイム・キャンサーであった。

レベル400オーバーの怪物で、地上に出れば国一つ容易く潰せる異形はヘルヘイムにおいても上層に位置する捕食者だ。

彼の装甲の堅牢さはミスリルさえ超えた領域にあり、事実上地上の存在では傷一つ付けられない程に頑丈である。

 

 

かの竜王との初戦においても数多くの個体がドラゴンたちの暴虐から生還したといえばどれだけ頑強か判るものだ。

 

 

が、しかし。

地上の何者よりも硬く再生能力さえある装甲は残念ながら【錬成】によって存在そのものを別物へと作り替える事は想定されていなかったらしい。

 

 

肉体構造が作り替えられる。

ヘルヘイムの豊潤なマナを取り込み変異しているとはいえ、魔物たちの身体を構築するのは極端にまで突き詰めてしまえば分子、原子の集合体だ。

その結合が容易く解かれた上で全くの別物へと作り替える。

瞬間、彼の身体はボロボロの炭に変換され、一歩を踏み出した瞬間に崩れ落ちた。

 

 

 

これで終わりではない。

アリストテレスに慈悲はなく、容赦もなかった。

【錬成】は終わらない。露出されたマナにまでその術は作用した。

 

 

 

【狼の冬】

 

マナがこねくり回される。

優れた芸術家が彫刻を作り上げるようにアリストテレスは世界を自分が素晴らしいと思った形に作り替えるのだ。

何故? という疑問は意味をもたない。それに対する返答として彼は世界の真理を知っている。

 

 

 

※ 芸術の完成だ。

 

 

自分が出来ると思ったから出来る。

不可能は可能にするためにある。

必要なモノは必ず見つける。ないというのならば作り出す。

 

 

何代も前の当主はエルフに問われたことがある。

そんなことをして何の意味がある? お前の目的は何だ、と。

 

それに対してアリストテレスはこう答えた。

 

 

※ できるからだよ。

 

※ ならばやるべきだ。

 

 

 

星を見る者たちは先に進み続ける。

地獄を死で満たしながら。

 

 

 

 

※ 35

 

 

 

マナによって新たに生誕した大狼たちが魔物たちに襲い掛かる。

その速度はアリストテレスのソレに勝るとも劣らぬものであり、魔物たちは成すすべがなかった。

狼の牙は魔物たちの頑強な表皮/甲殻を軽々とかみ砕き、肉を食みマナを啜る。

 

 

ドクン、という鼓動音と共に狼たちはその力を増す。

実体であり概念であり、魔法であり、天法であり、そのどれでもない彼らは純粋なマナを摂取することにより更に強くなるのだ。

 

 

戦いの趨勢は数秒で決した。

飢えた獣の群れは止まらない。

瞬く間に10を超える魔物たちが捕食された。

 

 

一定量のマナを取り込んだ狼は自らを複製する。

一つが二つに、二つが四つに。

強さはそのままに数だけが倍増した。

 

 

 

※ 20

 

 

 

勝てないと判断したのか魔物たちは逃げ出した。

見下していた人間に背を向けて、恐怖に狂った荒い吐息を漏らしながら無我夢中で。

しかしこれは明らかな失策でしかない。

 

 

獣に背を向けるというのは決してやってはいけないことなのだから。

更に9体の魔物が捕食された。

 

 

 

人の身体に鳥の翼と頭を生やした体型だけ見れば天翼族に似た魔物が翼を食いちぎられ、羽を撒き散らした。

懸命にアリストテレスに立ち向かった牛頭人身の魔物は胸の中央、心臓に弾丸を打ち込まれ、体内で炸裂した【剣の冬】により不気味な刀剣オブジェに作り替えられた。

 

 

※ 11

 

 

植物のツタの集合体の如き植生の魔物が無慈悲に狼たちに群がられ、花弁を散らす。

 

 

※ 

 

 

蠢く泥のようなアメーバ状の生物が狼たちに踏み荒らされ、その存在を維持できなくなるまでバラバラにされた。

狼の群れとノイズ塗れで既に全身が見えなくなり始めたアリストテレスに追い詰められた魔物は震えながら後ずさり続け、壁に背を打ち付けた。

 

 

※ 

 

 

ボロボロのズタをまとった蟲と人が奇妙に融合した様な魔物であった。

カチカチカチカチと人がそうするように顎を鳴らし続け、震えている。

この魔物は迫るアリストテレスから身を庇う様に両腕を上げて目を瞑り、必死に声なき懇願をした。

 

 

殺さないで。

殺さないで。

降参します。

どうか殺さないで、と。

 

 

だが宙の闇よりも冷たく、昆虫よりも無機質で、刀剣よりも鋭い蒼い瞳は淡々と魔物の行動に取り合わず、周囲の狼をけしかけた。

 

 

悲鳴が響き、それも直ぐに消えた。

 

 

 

※ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔王は地獄と蔑まれ畏怖されるヘルヘイムにおいても別格の存在であった。

彼は産まれたその瞬間から支配者として君臨する使命と力を帯びた魔である。

あらゆる意味で地上の存在とはかけ離れた異形こそ魔王アイゴケロスだ。

 

 

 

悪魔染みた禍々しい蝙蝠の翼。

山羊の頭。

人間の上半身。

下半身は存在せず、渦巻く魔力の奔流がそこにはあった。

 

 

彼は絶大な自負をもって己こそが最強にして究極の悪魔だと断言していた。

自分こそが至高。他の存在など全て等しく塵。

己以外の命など意味はなく、自分だけがあればよいと。

 

 

 

彼の思考もまた悪魔と表現されるに相応しい構造をしている。

彼にとって弱者の命など何の価値もなく、絶対強者たる自分に弄ばれ、壊されるだけの玩具にしか映っていない。

 

 

彼が命に見出す価値はただ一つ。

苦しむ姿が見たい。

絶望する姿が見たい。

涙を流し、苦痛に悶える姿が見たい、だけである。

 

 

悪意だけが彼を満たし、突き動かすのだ。

 

 

 

正に悪魔。魔王。おとぎ話に伝わる邪悪なる存在の現身。

それこそがアイゴケロスである。

そんな彼がヘルヘイムを掌握した後、地上世界に這い上がり絶望と混沌を撒き散らしてやるという野心を抱いたのは当然の帰結といえよう。

 

 

 

彼にとってただ一つ誤算だったのは竜王の存在であった。

ヘルヘイムから地上世界につながる道を物理的に掘り進めたまではよかったが、よりにもよって開通した先が彼の縄張りのど真ん中であったということだ。

当初彼は竜王を侮っていた節があった。

 

 

確かに強いが所詮は女神の理に囚われし走狗。

理より逸脱せし自分が負けるはずないのだと。

 

 

 

だからこそあの展開は彼をして理解不可能であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『うぅ~ん? なかなかだけど、それでぜんりょく なのかな?』

 

 

 

僕はまだ半分くらいしか出してないよ? と竜王は囀る。

舌ったらずの可愛らしい少年の声と、今の彼の姿は恐ろしい程にかけ離れていた。

 

 

 

11の首を携えた竜王の姿は更なる異形へと変貌していた。

魔王をしておぞましいとしか形容できない怪物の姿である。

ヘルヘイムでさえこんなものはいない。いてはならない。

 

 

レベル1000の状態では魔王を相手に確実には勝てないと判断した彼は、半分ほど力を解放したのだ。

つまり彼もまた、世界の法則を超えていた。

そも、世界の理より外れたモノを狩る事を使命とするものが規格外の力をもっていない訳がないのだ。

 

 

 

蜘蛛の様な八本の脚と人間の様な上半身。

腕もまた6本にまで増え、それぞれが開閉を繰り返している。

顔は蛇のそれは既に溶け堕ち、石膏像染みた無機質な仮面が張り付いている。

 

 

仮面の眼窩の中では不気味に蒼い光が燃え上がるように点滅を繰り返し続け、残忍な喜びを湛えていた。

 

 

そして何よりも目をひく変異が……竜王ラードゥンの全身には夥しい量の竜の顔が張り付いていた。

それどころか身体の至る所から蛇竜が触手の様に生えており、それら一つ一つが独自の意思をもっているのか口を開けて牙をむき出しにしている。

よく見れば彼の身体の全ては人間の様な単一の筋肉で構成されてはいなかった。

 

 

 

101にも及ぶ竜たちが絡み合い、編み込まれて彼の身体は構築されている。

かつての彼の異名である「100の頭を持つ竜」という言葉を彼は完全に体現していた。

三桁にも及ぶ竜の心臓は無尽蔵の活力を竜王に供給し、ほんの微かに漏れた余波だけで空間を焦がす程の熱量を放っている。

 

 

 

竜王ラードゥン。

レベル 1450(出力50%)

 

 

これこそ地上世界における怪物の中の怪物である。

ヘルヘイムにおいてもここまで歪み切った異形は存在しなかった。

そんなものが地上に産まれていたという事実をアイゴケロスは信じられなかった。

 

 

 

『すっごいのを みせてあげる』

 

 

 

竜王は笑う。

彼の意思に答えて100ある内の30の首が動き出す。

途端に高まる天力の気配に魔王は驚愕した。

 

 

天法がいくつも、ひっきりなしに発動しようとしていた。

 

 

【まさか……】

 

 

 

彼らは天法担当の首であり、本体のラードゥンとは別の判定の元に動いている。

つまり今の竜王はレベル1450の本体のほかに100本のレベル1000の首を従え動く一塊の魔物の群れである。

 

 

更に魔物では本体ありえない事が起こっている。

彼の首は全て『クラス』をもっていたのだ。

何もおかしいことではない。彼は世界の枠組みを超えているのだから、出来ない訳がない。

 

 

高位日属性天法が、ひっきりなしに乱射される。

一つ一つの首が息を揃え、次々と天法を行使した。

 

 

 

『ふぉとんうぇっぽん』 

 

 

味方の攻撃力を上昇。

当然コレは三桁の首全てに適応された。

レベル1000の軍団は更なる活力を得る。

 

 

『れい・ぶろっく』

 

 

味方の対物理防御力を上昇する天法だ。

ただでさえ強固極まりない竜王の身体は更に強固になった。

もはや魔王以外の面子では竜王の鱗に傷どころか、汚れさえつけられないだろう。

 

 

『れい・ばりあ』

 

 

『れい・ばりあ』

 

 

『れい・ばりあ』

 

 

味方の対魔法防御力を上昇させる術。

アイゴケロスの能力の殆どは魔法に準ずるものである故に竜王は念入りに己に防御バフをかけた。

 

 

『ふぉとん・ふぃーるど』

 

 

 

味方が受けるダメージを他の誰かに肩代わりさせる領域を形成する術だ。

彼はこれを用いて下僕の竜たちの損傷を全て自分に向ける。

ヘルヘイムの魔物の雑魚の攻撃など、いくら受けても竜王は秒にも満たない時間で復元を完了させる故に彼の軍団は実質不死身となった。

 

 

【馬鹿な………】

 

 

魔王は動けない。

竜王の発する気配が乗数的に跳ね上がっていくのを感じ、下手に動けないのだ。

 

 

『はははははは!! おどろいてる!! どう? すごいでしょ!』

 

 

 

竜王の哄笑が止まらない。

そして彼の首もまだまだ動く。

 

 

 

 

『りじぇねれいと』

 

 

一定時間HPを自動回復させる天法。

元より常識外れの復元能力を持つ竜王の肉体とこれは奇妙な相互反応を引き起こし

彼の全ての首のHPは1秒間に99999の回復力を得るに至った。

 

 

『まな・りじぇねれいと』

 

 

 

一定時間SPが自動回復するスキルだ。

竜王はこれにより事実上無尽蔵のスキル行使を可能とするだろう。

 

 

 

『すぴーど・おぶ・らいと』

 

 

 

単純にして強力なスキルである。

その効果は味方の速度を倍化させるものであり、天法の乱射速度が倍化した。

 

 

『おーら・ばーすと』

 

『おーら・ばーすと』

 

『おーら・ばーすと』

 

 

味方の全ステータスを上昇する凶悪な天法だ。

竜王は見せつけるようにこれを幾重にも重ねた。

ラードゥン達のステータスが跳ね上がる。

 

 

 

『えれめんと・りあくたー』

 

『えれめんと・りあくたー』

 

『えれめんと・りあくたー』

 

『えれめんと・りあくたー』

 

『えれめんと・りあくたー』

 

『えれめんと・りあくたー』

 

『えれめんと・りあくたー』

 

 

指定した属性のダメージを一定時間半減させるスキルだ。

竜王はこれを7度発動させ、全ての属性を網羅させる。

 

 

 

 

 

竜王がやっている事はただのバフの重ね掛けだ。

しかしその速度がおかしい。

普通天法……それも中位以上のソレを用いれば次の術の発動までのクールタイムが生じる筈なのだが、竜王にはそれがなかった。

 

 

聖域の乙女に代々受け継がれる固有のスキルとして『ザヴィヤヴァ』というものがある。

高位天法の制限解除、という一見すれば地味だがその実悪夢でしかないスキルを竜王は力技で行っている。

それも単純な戦闘能力では弱い部類に位置する彼女とは違い、素の状態でさえミズガルズの頂点に君臨する竜王が、だ。

 

 

 

何てことはない。

彼の首は全てが別々の判定をもっている故に、世界としては一人一人が息を合わせてスキルを発動している、としか受け取られないからだ。

一人で高位の術を発動させてしまうとクールタイムが必要になるが、この場合はあくまでも30人の独立した個人が術を使っていると判断されている。

 

 

 

その上で完全なローテーションを竜王は組んでいる。

30の頭の27番目が術の行使を終えた頃には、既に最初に術を発動させた1番目のクールタイムは終わっているように彼は計算していた。

 

 

竜王の6本の腕が解けた。

腕1本につき5匹の竜で編み込まれていたソレらは元の竜の姿に変換され、合計30の竜が咢を開き魔王へと向ける。

喉の奥で不気味に光るのは各属性を練り込まれて作られたブレスだった。

 

 

星の瞬きの様に輝くソレは魔王に狙いを定め、解放の時を待ちわびている。

 

 

 

【認めよう。今は貴様が強い……】

 

 

魔王は素直に己の力量が今はまだ竜王に届かない事を認めた。

ここで戦っても無様に敗北するだけだと。

ならば彼が行う事は一つ。

一度拠点に戻り、力を蓄えてやり直すことだ。

 

 

 

 

指を一本動かし、配下の魔物全てを己の盾にするように移動させ……ブレスが放たれた。

 

 

『どっかぁーん!! きゃははははははは! どかぁぁぁん!!』

 

 

子供の様に竜王ははしゃぎ回った。

 

 

発射。

 

 

30発同時収束ブレス。

 

 

 

月。火。水。木。金。土。日。の複合属性ブレスは惑星を穿つ程の破壊力がある。

幸い地上に向けて放たなかったため、惑星の重力を振り切り、太陽系の外に向けて膨大なエネルギーの奔流は飛び去って行った。

盾にした数百の魔物は秒も持たずに蒸発したが、それでも刹那程度の時間は稼ぐことに成功した。

 

 

 

魔王は自らの身体を一度分子サイズのマナの塊にまで圧縮/変換しヘルヘイムに繋がる大穴へと加速し落下……彼は逃げたのだ。

こうして竜王と魔王の初会合は終わりを迎える事になる。

長い長い両者の戦いはこれからも続くのだ。

 

 

 

『よっわぁ~い! ざぁこ♪ ざぁこ♪』

 

 

 

けたけたと響く嘲りに魔王は復讐を決意した。

 

 

 

 

 

 

魔王は目を開けた。

ヘルヘイムの最下層、星の核に最も近い個所に彼の住処はある。

竜王に与えられた傷を癒しながら、次の地上攻撃計画を練っていた彼は己の拠点の異変を感じ取ったのだ。

 

 

 

魔王の意思は直ぐに地上とヘルヘイムの間に構築した拠点『タルタロス』に向けられる。

ドワーフたちの国であるプルートにポータルを開き、そこを基軸に地上に攻撃を行う計画が彼にはあった。

その為に稼働している『タルタロス』は空間を弄りまわして作られた広大極まりないダンジョンである。

 

 

 

100年以上前から魔王が地上への攻撃拠点として用意して仕上げたソレはアイゴケロスの自信作であった。

 

 

全108層にも及ぶダンジョンを維持するのはヘルヘイムの魔物の生命力を搾り取って製作された魔力炉心3機。

猟犬代わりの魔物は万にも及び、無差別に徘徊する魑魅魍魎は数千。

更には無数の数えきれないトラップに、内包空間は拡張、異界化されているため大陸一つ分にも匹敵する面積を確保した前代未聞の超巨大ダンジョンだ。

 

 

 

例え地上のドラゴンたちが総動員で攻め込んで来ても守り切れる自信が魔王にはあった。

更に付け加えるならば地層と一体化したこれを外部から破壊するということはミズガルズそのものを破壊するのに等しい程に星とダンジョンは同化している。

故に女神を信奉し、曲がりなりにも彼女の世界の秩序の守護者を自称する竜王にこれを破壊することはできない。

 

 

 

竜王の追撃を振り切り、ゆっくりと力を蓄えた上で魔王は地上に戻るつもりであった。

今度は自分だけではなく、恐らく深海にて誕生を果たした同胞と手を組み竜王を葬る、と言うのが彼の次のプランである。

 

 

 

 

そんな魔王の未来を守る要害である『タルタロス』が震えていた。

比喩でも何でもなく、あらゆるところから破砕音が響いてくるのを魔王は感知した。

 

 

 

【何が起きている?】

 

 

 

魔王は眼を閉じ、己の意識をタルタロスに向けた。

そして見た。意味不明なモノを。

 

 

 

 

 

亜光速でピンポン玉の様に飛び跳ねるナニカがいた。

ソレに触れる、もしくは近くを掠めるだけで魔王がダンジョンに配置していた魔物が解けるように消し飛んだ。

既に全体の半数以上の魔物が為すすべなく消し飛ばされ、その身に秘めていたマナを収奪されている。

 

 

 

収奪されたマナはこねくり回され、狼の形へと変貌し、他の魔物たちに襲い掛かり出す。

百を超える規模で【狼の冬】はダンジョン中を飛び回り、最高効率でアイゴケロスの軍団を血祭りにあげていた。

既に竜王との初戦で受けた被害と同等以上の損害をヘルヘイムの軍団は被っており、立て直しにはかなりの時間を要する事だろう。

 

 

 

それだけではない。

その奇妙なナニカは明らかに魔王のダンジョン構造を知り尽くしているかの様な動きをしている。

配備しておいた罠は悉く回避され、無効化され、何なら魔物を追い込み発動させる為に逆に利用さえされる始末だ。

 

 

 

壁や地面からの不意打ちを狙った攻撃も全て無駄になった。

どうやっているのかは皆目見当もつかないが、このナニカは攻撃をまるで未来予知でもしているかのように動く。

奇襲攻撃が発生する前、まだ予兆も何もない壁や天井の個所に正確に【サイコ・コンプレッション】で製作した爆弾(パワー・ボム)を配備。

 

 

 

魔物が顔をのぞかせた瞬間、圧縮されたマナは瞬間的に解放され大爆発を引き起こし、奇襲者を粉々に吹き飛ばしてしまう。

既に何度もソレをダンジョンで行使された結果として『タルタロス』は至る所に虫食いの様な穴ばかりになってしまっていた。

 

 

ナニカは魔王をして意味不明な動きを繰り返し続けている。

壁に身体を擦りつけるようにして動き回れば、存在がいきなり壁と同化/消滅し、全く違う個所から姿を現す(そんな所に通路は作っていない)……などは序の口。

 

 

直立不動の姿勢のまま床を滑り出したかと思えば、壁に特攻しそのまますり抜けて別の部屋に侵入し仕掛けを動かされる(攻略手順スキップ)

違う、その部屋に入る為には幾つもの工程が必要でと魔王は内心で叫んだ。

320ほどの手順が存在する秘密部屋に意味不明な方法で侵入されたらさすがの彼も虫唾が走るというものだ。

 

 

その部屋に入るために必要な手順は幾つもあったはずなのに、それら全てを無視された魔王の額に青筋が浮かんだ。

何か(タイム)に追われているかの様にソレは次々とタルタロスの仕掛けを踏破/破壊/台無しにして進み続け、気づけば105層まで無茶苦茶にされていた。

 

 

 

1時間たらずで『タルタロス』は半壊にまで追い込まれていた。

普通に地上の者たちが攻略しようとすれば最低でも数十年はかかるであろう超巨大ダンジョンは、たった1時間で攻略寸前に追い込まれている。

 

 

【許せぬ……】

 

 

魔王は隠し切れない怒りを滲ませ、念を『タルタロス』に送る。

遠く離れた地にマナによる分身を彼は送りつけ、己の手で直接侵入者を排除することを決めた。

 

そのレベルは実に800。

侵入者がどれほどの実力者で、奇妙な手を使おうと必ず勝利できるとアイゴケロスは確信していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タルタロス、第108層。そこは広大な凍土であった。

見渡す限りの凍り付いた広大な土地と、天に配備された鼓動を繰り返す巨大な魔力炉だけがある最深部だ。

ここを突破され、炉心を破壊されるなりされたらこのダンジョンは崩壊するだろう。

 

 

心臓ともいえる3機の魔力炉心を配備してある階層に到達したアリストテレスを出迎えたのは白髪の長い髪と髭を蓄えた老紳士であった。

モノクルの奥には残忍に輝く山羊の瞳があり、それはアリストテレスに対する殺意で満ちていた。

 

 

 

【よくもここまで来たものだ。貴様は我の計画を台無しにしてしまった】

 

 

 

魔王は怒りを込めながらつぶやく。

その姿が膨大なマナの濁流にのみ込まれ変わっていく。

山羊と人間、蝙蝠などを掛け合わせたおぞましい悪魔の姿に。

 

 

 

【これは許されざる反逆行為と言えよう。貴様如きが我の邪魔をするなど決して許されぬ】

 

 

 

顕現した悪魔はアリストテレスに怒りを込めて憎悪を叩きつける。

人間はそんな悪魔を首を傾げて見つめていた。まるで値踏みするように。

 

 

 

【故に我自ら貴様の罪に処罰を与えてやろう。───死ぬがよい】

 

 

 

魔王はその瞳を以て眼前の存在を見定めるように視線を送った。

この意味不明な存在の名前とステータスを彼は確認したのだ。

ステータス画面は問題なく表示され、魔王は目を通す。

 

 

 

 

【アリストテレス執行体】

 

 

 

レベル 404 Not Found

 

 

 

 

何だこれは、と魔王は瞬いた。

名前とレベルしか出ず、それさえも表示が狂っていた。

HPやSPなどの表示が一切出ない……いや、そもそも()()()()()ようにさえ思えた。

 

 

 

ノイズに覆われ、既に人の姿をしたナニカと化したソレは魔王を見て一言だけ感想を漏らす。

 

 

 

 

※ 野生の魔王(面白いサンプル)が現れたようだ。

 

 

 

 

ここは地獄。

悲鳴は誰にも届かない深淵の地。






魔王 

分身体ではあるがレベル800の怪物。
不法侵入者に拠点をズタズタにされた彼は被害者である。
次回大活躍する予定。


竜王

兄たちが言われていた【100の頭を持つ竜】
という言葉を本気で体現しちゃった超強化竜王。

マジで頭100本生やしたやべー奴。
本体の1450の他に100本にも及ぶレベル1000の頭が生えているが
これでもまだ遊びの範疇。


主人公

変態と言われると結構凹むので言うのは止めてあげましょう。

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