ラスボスからは逃げられない! 作:宇宙きのこ(ミズガルズ産)
「君の提案はよく判った。実にいい案だと思うぞ」
ヴァナヘイムを訪れたプラン・アリストテレスとの会議において、ジスモア・エノクは彼の出した考えに笑顔でそう答えた。
ルファスの実父であり、アウラの夫でもある彼は大事な大事な家族を預けている男と実に楽しそうに会談をしていた。
彼の現状は実に順風満帆と言っていい。邪魔な枷もなくなり、新しい恋を手に入れ、周囲との折り合いも悪くない彼は天翼族内において押しも押されぬ立ち位置を得つつあった。
竜王の脅威に備えつつある人類は当然として物流も活発化させており、結果として天翼族の空路輸送はかつてない程の利益を上げていた。
結果としてエノク家は更に多くの富を手に入れ、エノクの発言力は増しつつある。
ジスモアはプランから受け取った何枚もの書類に目を通しつつ笑う。
人間のクラウン帝国、ユーダリル商人連合、ドワーフのプルート、エルフの光の森、そしてリュケイオンを始めとした都市国家群の署名がそこにはあった。
言うまでもないがこれらはとてつもない重要書類である。
各国の王や、指導者、またはそれに準ずる立場の者たちの意見が纏められたモノなのだから。
もちろん傲慢な天翼族といえどこれらを無下にする様な事はしなかった。
それどころかジスモアはこれらに書かれた内容に新たなチャンスを見出していた。
「なるほど、確かに我々としても得はある。いや、得しかないと言っていいだろう」
本当に楽しそうに、嬉しそうな顔でジスモアは言った。
「我々としても
駆除するにしても……血で汚れるのが嫌なんだ」
まるで増えすぎた家畜か害獣を語るような口調であるが、ジスモアのいうアレらとは人間、天翼族のことである。
何てことはない。翼の色が濁ったモノ、形がおかしいもの、翼の大きさが揃わないモノ。
俗にいう濁翼、もしくは混翼と言われる被差別者たちのことだ。
定期的にヴァナヘイムはアン・ブーリンの様に間引きを行っているが、それでも処分しきれなかったものも大勢いるのだ。
そしてヴァナヘイムは絢爛豪華な天翼族の首都であり、要塞である。
空を飛べるという絶対的な強みを持つ天翼族が守護するミズガルズでも屈指の防御能力を誇る都市国家だ。
ここに大規模な侵攻が来ることはまずありえない。天翼族自体が強い上に、頂上には龍が眠っているからだ。
誰も全長1万キロをこえる怪物を起こしたいなどとは思わないだろう。
さらに付け加えるならば魔神族は
まるで本能的に龍の存在を知るかの様に、小規模な襲撃や偵察こそあれど侵略、といったことは決して行わない。
しかしてヴァナヘイムにはもう一つの顔がある。
ヴァナヘイムの下層、天翼族の都市の少し下。
街中に張り巡らされた水路と下水の網の奥には混翼の者たちのスラムがある。
産まれながらに世界に拒絶され、打ち捨てられた彼らは言わばヴァナヘイムの淀みだ。
天翼族という偉大なる白翼たちが生きていくうえで零れ落ちた垢ともいえる。
天翼族の彼らへの対応方針は……無視である。
恐ろしいまでの徹底した無視。存在を認識しない/認めない。
子供たちが時折ちょっかいを出して嬲ったりすることもあるが、それだけ。
誰も彼らを助けない。
目の前で死にかけていようが、子供たちにリンチされたり火をかけられていようが、餓死寸前であろうが、無視である。
野垂れ死んだ場合のみ街の外観を損なわせたり異臭を放つ可能性がある故に処分に赴く程度の存在だ。
舌打ちと共に力尽きた物を乱雑にズタ袋に放り込み、適当に焼却処分。
それが混翼のモノに対する普通の扱いであり、これまでも、これからも変わらない方針だ。
誰も汚物に触れたいとは思わないだろう。
彼らは変わらないとプランはもう見切りをつけていた。
だから自分たちが変わるしかないと思い、行動を起こしたのだ。
混翼の者たちを引き取りたい。見返りに金を払う。
それが今回彼の提示した話であった。
「あの劣悪種たちを引き取ってくれるとは、正に渡りに船だな。
是非彼らを使い潰して欲しいものだ。
穢れた翼が人類の未来の礎になるというのならば奴らも生まれてきた意味というものが出来るという訳だ!」
ははははと心から楽しそうに彼は笑い杯を手に取りワインに口をつける。
キミもそう思うだろう? と視線で問われればプランは深い微笑みを浮かべて答えた。
そんな彼にジスモアは気を良くしたのか更に笑顔を強めた。
「聞けば最近の君は素晴らしい活躍をしているそうじゃないか。
プルートやユーダリルの件は俺の耳にも届いているぞ」
ジスモアはプランを見つめる。
瞳の奥にあったのは紛れもない敬意であった。
基本的にヴァナヘイムから動かない彼にとって、自由にミズガルズ中を駆け巡り、方々で成果を上げるプランは羨ましく思える存在なのかもしれない。
「かくいう俺も嬉しい報告が一つあってね。是非、聞いてほしい事がある」
ジスモアは少しだけ恥ずかしそうに頬を赤く染めてプランに顔を近づけた。
囁くように彼は言った。
「近々……あと1年か2年ほどで俺も結婚することになった。
今は色々と調整中ではあるが、その時になったら是非アリストテレス卿を招待したい!」
「それは……おめでとうございます。心からの祝辞を述べさせてください」
プランの脳裏をよぎったのはアウラであったが、彼はそんなこと全く感じさせず祝福に溢れた顔に切り替えてジスモアを称賛する。
しかし、次に彼から飛び出てきた言葉に僅かだけプランは驚く事になる。
「ありがとう!
だが俺も
彼は何でもないかの様に口にした。
まるでアウラの事など忘れ去ってしまったかのように。
事実彼の中ではもう、アウラとルファスの存在は殆ど消し去られていた。
内心で抱いた苛立ちと憤怒を完全に笑顔で覆い隠してプランはジスモアを称える。
「誰でも初めての事には緊張を抱くでしょう。閣下は何も間違ってはおりません」
「君はいつも俺の欲しい言葉を判っているようだ。
本当に人間種に産まれてきたのが惜しいと思うぞ。
本当に君が天翼族であったならば、どれほどヴァナヘイムに利を齎せた事か……」
ジスモアは怪しく輝く瞳でプランを見た。
口元には皮肉気な笑みが浮かびあがる。
先ほどまでの人生全てが巧く回っている成功者の顔から、一人の疲れ切った男に戻る。
「───
「………………」
ジスモアの言葉にプランは小さく顔を横に振った。
聞いても意味がないと彼は思っている。
彼が個人として二人を煙たく思い暴力を加えていたとしたら、それはジスモア個人の責となるが、この問題はもっと根が深くどうしようもないという事を彼は良く知っている。
天翼族が一万年以上も続けて育んできた差別意識など、プランにはどうしようもないのだから。
そんなプランの諦めを見たジスモアは深い共感を覚え、面白そうに笑う。
こいつも自分と同じ、何かを諦めた同類だという愉悦を噛み締めながら。
「仕方ないだろう?」
ぽつりとジスモアは漏らす。
ルファスやアウラ、ヴァナヘイムにおける同族には決して見せない彼の本心の言葉であった。
彼の言葉にはどうしようもない諦観と悲嘆と絶望が入り乱れていた。
「仕方ない事だ」
繰り返す。自分に言い聞かせるように。
他の誰でもない、自分を縛る様に。
娘が己に呪いをかける様に、彼もまた自分に呪縛を与え続けていた。
「アレはどうしようもない事だった。俺だって頑張ったんだ」
だって仕方ないじゃないか。
だってどうしようもないじゃないか。
ミズガルズに生きる多くの人々が患う病である“諦観”に彼もまた罹患していた。
みんな本当は知っているのだ。
女神の愛に包まれていると言われるミズガルズだが、その実態はどうしようもない悪意の坩堝だと。
この世界は残酷だ。
この世界は理不尽だ。
この世界はおかしい。
この世界は苦しみばかりだ。
ミズガルズとは、地獄だ。
そんなこと皆知っている。
だけど自分ではどうやっても変えられないから諦めるのだ。
仕方ない、と乾いた笑顔を浮かべて。
「そもそも俺の何が悪い?」
「閣下」
ジスモアの瞳がプランを見ていた。
プランの何十倍も生きてきた男の目の中には、相応の経験と苦しみがあった。
「俺は何も悪い事はしていない。アレが産まれた時から全てがおかしくなった!」
「閣下」
ジスモアの言葉は止まらない。
プランの無機質な制止さえも振り切り、彼は己の潔白を主張し続ける。
「何で俺だったんだ! 何で俺の娘になんか産まれてきたんだ!!
何でアウラの子として産まれてきたんだあいつはッッ!!」
「落ち着いて下さい」
ジスモアはプランを睨みつける様に見た。
己の同胞、同じ諦めた男を。
同じように仮面を被り、諦めを抱きながら生きている仲間を。
「あんな奴、生まれてこなければ良かった!
あいつのせいで俺もアウラも人生を無茶苦茶にされた! ふざけんじゃねえ!!」
「…………ジスモア閣下、どうかご自愛ください」
虚空に向かって血を吐くような怨嗟をばら撒く男にプランは柔らかく語り掛ける。
彼には彼の理由がある。
が、それにしても今の言葉に相当な不快感を覚えてしまったが、何とかソレを彼は飲み込んだ。
息を切らし今までたまりにたまったうっ憤を吐き散らした彼の顔に再度仮面が張り付けられプランを見据える。
「すまない。俺とした事がつい我を忘れてしまったようだ」
「閣下とて人の子。
その双肩にどれほどの重荷を抱えているかは私には想像も出来ません。
……時にはこういう事も必要と考えます」
ありがとう、とジスモアは恥ずかしそうに笑った。
何処かルファスに似た雰囲気の笑顔であった。
ルファスの外見はアウラそっくりだが、内面は父の要素を色濃く受け継いでいるのかもしれない。
「つまりだ、その……。
俺としても二人のあんな扱いが甚だ不本意だったのは本当なんだ。
だが俺に何が出来た? どうしようもなかっただろ?」
「仰る通りです。全ては女神の悪戯。誰が、何が悪いという話ではありません」
プランの言葉にジスモアは満足そうにうなずいた。
心の奥底に閉じ込めて見ないふりをしていた黒い欲求を肯定された彼は心から喜んでいた。
「そうだ。君の言う通り」
うん、そうだと何回か頷いてから彼は机から書類を取り出しサインをした。
これはヴァナヘイムのスラムに関する通行許可である。
プラン及び、各勢力がスラムより“塵”を運び出すことを許可する旨がそこにはあった。
「好きなだけ連れていって構わない。
だが気を付けるんだぞ、あいつらは穢れた翼と同じくらい心根の腐り切った奴らだ」
ジスモアは嗜虐的な顔を見せた。
きっとルファスを殴っていた時にもこんな顔をしていたのだろう。
助けを求めてきた娘を嬲っていた様に彼は混翼のモノを見下し、嘲ていた。
「間違っても恩返しなど期待はしないことだ。
あいつらにそんな殊勝なモノを求めるだけ無駄だぞ」
その次に吐き出された言葉にもプランは完全な笑顔でただ一礼するだけであった。
「ルファスの様に」
──────。
ヴァナヘイムのスラムは美しい上層の町とは相反する様にあらゆる負の要素が練り込まれた煉獄であった。
太陽光は殆ど入らずに薄暗く、悪臭と人々の苦悩に満ちた悪夢がここにはある。
都市の下水を利用して作られた区画の壁や床は所々に元が何であったのか判らないヘドロの様なモノがこびりついており
更には足元には常に濁った水がついてまわり、歩くたびにヌチャヌチャという何とも言えない音がした。
正にこの世の“最下層”でありもしくは人々の精神の闇を凝縮された“病み村”ともいえる地がここである。
一応は天翼族として飛行能力を持つ混翼たちはヘドロなどからの細菌感染を恐れているのか
開けた空間の壁や天井などに簡易な小屋を張り付ける様に作りそこに住んでいる様であった。
まるで登山家が一時の休憩としてテントを崖に引っ掛けているような光景である。
濁った空気に鼻が曲がるほどの悪臭。
汚れた水に、意味不明な塵の数々。
あらゆる塵がここにはある。
食べかけの食料品などは可愛いモノだ。
腐乱したネズミ、半ば魔物化して巨大化しつつあるミミズやゴキブリ。
それどころかヘドロそのものが蠢きながら動いている所さえあった。
中には奇妙な肉塊が黒い水の上を漂ってもいる。
ネズミなどに齧られて原型を失いつつあるソレにはよく見れば翼の様なモノが……。
バシャバシャと音を立ててその中をプランは歩いていた。
【バルドル】で完全に武装をした彼は背後に複数の【バルドル】を従え黒い村へ気おくれもせずに足を踏み込む。
彼らはゴーレムである。外見だけは己の鎧そっくりに作り上げ【一致団結】で直接操作をしている者たちだ。
外界では不気味で威圧感のある風貌も、このような暗黒の地では恐ろしい程に馴染む。
この村の住人、兵士ですと言われても誰もが受け入れる程に。
影から何人も人がプランを見ていた。敵意と怯えの入り混じった瞳で見ていた。
プラン一行は堂々とした立ち振る舞いで村の一角まで進むと立ち止まり、周囲を見渡した。
【観察眼】で周囲を見ると最低でも30人はこちらを見ていると判明し、彼は両腕を大きく広げて高らかに宣言する。
背後に控えさせたゴーレムたちが背筋を伸ばして直立し程よい威圧感をばら撒く。
「自分はプラン・アリストテレスという者です。
本日は皆様に提案がありましてこの地を訪れました」
返答はなかった。代わりに暗がりから石が飛んできた。
が、直ぐに空中でプランの【サイコスルー】にキャッチされて地面に落下する。
男は何食わぬ顔で淡々と話を続けていく。
「クラウン帝国およびユーダリルの名の下、皆様方にご提案があります」
矢が飛んできた。
しかし空中でそれらは停止しまたもや地面に落下した。
不気味な鳥の骸顔は揺れもせずに来訪の要件を述べていく。
「現在人類は未曽有の危機に陥っております。
“四強”の一つである竜王が大規模な攻勢を企んでおり、近い将来においては大規模な攻勢にでる可能性が非常に高いのです」
今度飛んできたのは魔法であった。
初歩的な火の弾がプランに向かって飛翔してくる。
天翼族は天法を好んで使い魔法は毛嫌いする筈だったが、混翼の者達はルファスと同じく非常にマナへの適正が高いのかもしれない。
が、それはそうと無意味な行為ではあった。
【バルドル】の尻尾が一振りされる。
それだけで炎はかき消されてしまった。
もちろん希少な鉱石をふんだんに使って作られた鎧には焦げ目一つない。
「人類の為に皆様の力を貸していただきたいのです」
「何で俺たちがそんなことをしなくちゃならない?」
始めて声が返ってくる。
暗がりから一人の天翼族が歩いてきた。
ボロボロの布切れを纏った男の天翼族であった。
背に生えた翼も所々が欠けており、一部は赤黒く変色していた。
彼は煮込まれた怒りを宿した瞳でプランを見ている。
「人類の為だと? ふざけてるのか?」
「まさか。自分は本気です」
男はプランの不気味な様相にも欠片も怯まず近寄ると、顔に唾を吐きかけた。
そのまま胸ぐらをつかみ上げるが、プランの身体はびくともしない。
舌打ちをし男は鋭い瞳でプランを睨みつけ憎悪を滲ませながら言った。
「知った事じゃねえな。つまり上のクズ共の為に戦えってお前は言ってるんだろうが」
あんな奴ら一人残らず竜王に殺されちまえばいいんだと男は淡々という。
「おや、誤解があるようですね。
ヴァナヘイムの為に戦えとは言っていませんよ?
皆様が戦うのはほかならぬ皆様自身の為となるでしょう」
プランの頭が切り替わる。
歴代の中でもこういった交渉を得意とした温厚なアリストテレス卿が顔を覗かせ、不気味な圧を声に込め始めた。
穏和なのに冷たい。
人の温情に満ちているのにゴーレムの様で、人の心に沁み込むような奇妙なカリスマのある声だ。
天翼族の男は数歩距離を取り、値踏みする様にプランを見た。
なのでプランは遠回しな事はせず単調直入に切り込むことにした。
「自由と権利が欲しくはありませんか?」
それは余りに甘い悪魔の囁きであった。
誰もが産まれながらに奪われ、羨望していたモノ。
どうあっても無理だと諦め、最下層で腐り果てていくだけの彼らにとっての夢。
罵倒を浴びせようとした男はたじろいだ。
プラン・アリストテレスの蒼い、余りに蒼い、凍り付くような眼光が自分を見ていたから。
想像を絶する程の冷たさが宿るソレは男の憎悪に満ちた頭を急速に冷ましていく。
彼の声が響く。
打ち捨てられた者らは初めて語り掛けられていた。
誰もが彼らを人として扱わず、存在しないものとして扱ってきていたが、今日でそれは終わりだった。
「貴方たちの寿命は1000年を超えると聞きます」
腕を広げプランは続々と集まってきている天翼族たちに声を発した。
周囲の空気を完全に支配し、堂々と彼は自信に満ち満ちた様子で訴えかける。
「人間としての権利を手に入れないまま、その長い一生を過ごすのですか?」
誰かが息を呑む。
この、どうやら、よくわからない存在は自分たちに何かを齎してくれるのかもしれないと考えた。
スラムに叩き込まれ、死を望まれるだけであった混翼たちはぎらついた視線をプランに向ける。
掠れて摩耗しきったはずの“希望”が微かに刺激された結果であった。
「クラウン帝国。ユーダリル。プルート。
これらの国家群は皆様を受け入れる準備があります」
アリストテレスは己の名の下に協力を取りつけた国家の名を羅列していく。
スラムの者達でさえ一度は耳にしたことがある有名な名前であった。
そんな者達が自分たちを必要にしてくれているという事実が彼らの枯れ果てていた承認欲を微かに突いた。
ひそひそと囁きが始まる。
どういうことだ、嘘じゃないのか、そんな都合のいいことがあるのかなどなど。
ルファスに輪をかけて差別と悪意に晒された彼らは同族の混翼以外は基本的に信じないのである。
「もちろん簡単とは言いません。長く困難な訓練や学習の日々が始まるでしょう」
「望みを勝ち取るチャンスを自分は提供しましょう。自由と権利とはそういうものなのです」
「何も難しいことではありません。これはただの提案。自分に出来るのは機会の提供のみ」
さて、どうしますか? とプランは突き付けた。
自分の居場所を勝ち取るために行動するか、否か、と。
「お前は何なんだ……いきなりやってきて、好き放題にいいやがって……!」
天翼の男は怒りと、期待が入り混じった顔でプランを見た。
瞳孔は忙しなく拡大と縮小を繰り返し、背の翼はルファスが興奮した時のように上下に動いていた。
先に自己紹介したはずなのだが、聞こえてなかったのかなと思ったプランは丁寧にお辞儀をした。
「自分の名前はプラン・アリストテレス。
リュケイオンの領主を務めております。どうぞよろしくお願いします」
恐ろしい程に蒼い光を目に宿し、アリストテレスは改めて自己紹介するのであった。
その瞳の中に混翼のモノたちは恐怖と同時に、確かな未来への展望を抱いてしまっていた。
ジスモア
誰が一番悪い?
混翼
ルファス程漆黒なのは珍しいにせよ
最低でも一つの国を割る事が出来る程度の数は存在している模様。