ラスボスからは逃げられない!   作:宇宙きのこ(ミズガルズ産)

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皆様、応援ありがとうございます。
想像以上の反響に心臓がバクバク言ってますが
何とか頑張っていきます。


私と同じだね

 

 

 

 

「ど、どうでしょうか……?」

 

 

 

「うむ。美味であった。よい腕をしているな、アリエス」

 

 

 

恐る恐るといった様子で自らの作った料理の感想を聞いてくるアリエスにルファスは微笑みながら答えた。

アリエスの務めているレストラン……『キングクラブ・スヴェル支店』はカルキノスが人類の主要国家に一つずつ持っている支店の一つだ。

彼は複数の支店を転々としているらしく、今はドワーフたちの首都かレーギャルンにいるかもしれないとのことだ。

 

 

そんな中、アリエスはこのスヴェル支店を受け持ち、ルファスの帰還を待つ間この地で働いていたそうな。

もちろん飲食店としての名目もあるゆえ、カルキノスから料理を教えてもらい、免許皆伝を手に入れた上でだ。

なおアリエスは絶対にバロメッツという羊にも見える食材と羊肉は使わないらしい。

 

 

 

 

(立派に働いてたんだな………。

 いや、俺だってやろうと思えば就職なんて楽勝だし……!)

 

 

日本における自らの体たらくを思い出し「彼」は少しだけ居心地が悪くなった。

元の世界における彼といえば、20代を超えても親の脛をかじり、毎日毎日オンラインゲーム三昧という悲しい存在。

しかもゲームでは美女のキャラを作って覇王ごっこをしていたというおまけつき。

 

 

 

…………。

 

 

やめよう、と「彼」はかぶりを振った。

哀しくなる。さっきとは違う意味で頭痛になりそうだった。

ごめんなさい、ご両親。

ルファスの身体から帰れたらしっかり働きます、と「彼」は決意した。

 

 

 

アリエスがルファスに出したのはトウモロコシのスープ。

色とりどりな野菜で彩られたサラダ。

牛肉のステーキ。焼きたてのパンなどを始めとした基本的なフルコースだ。

締めにはこの世界にもあったらしいメロンが出てきた。

 

 

 

素直に美味しかったというのがルファスの感想である。

空腹であったというのを考慮してもアリエスの料理の腕は多種多様な店が並ぶスヴェルの商業区画で他と渡り合えるだけの実力はある。

なによりアリエスの料理からは懐かしい感じがした。

 

 

昔よく食べていた味だった。

あの時は余り考慮していなかったが、カルキノスの腕前は本当にすごかったんだなと改めてルファスは感じ入る。

キラキラした瞳で自分を見つめてくるアリエスに柔らかくルファスは語り掛けた。

 

 

この店を訪れてからというものあれだけ湧き上がっていた苛立ちも頭痛も全てが無くなり、今の彼女は非常に機嫌がよかった。

 

 

 

「さて。余がこのスヴェルを訪れた理由だが。

 今は十二星天を手中に戻す旅の最中でな。

 この国にも其方の回収を目的にきたのだ。其方は一人目となる」

 

 

 

「……メグレズともあっていくんですよね?」

 

 

探るような調子でアリエスが言う。

ルファスは一瞬だけ虚を突かれた様な顔をしたが、直ぐに頷いた。

 

 

「あぁ。奴の顔も見ていこうと思ってな。案ずるな、戦いなどせんよ」

 

 

「あの……じゃあ、僕がお力になれると思います。

 一応、あいつとは話をつけてお店をやっているので」

 

 

 

ほぉ、とルファスは感嘆した。

アリエスにとってメグレズとは仇敵にも映っておかしくはないはずなのに、そんな相手と手を結べたのかと。

そんな彼女の心境を汲んだのかアリエスは苦笑しながら言った。

 

 

脳裏をよぎったのは狂いきった蠍の女。

憎悪と狂気に塗れて暴れ回る彼女にアリエスは己を投影し、見苦しいと思った。

 

 

 

「実際僕もあいつら(七英雄) を恨んでた事もあります。

 でも、怒りに任せて動くのは簡単だけど……。

 それを飲み干して、もっと大局を見たいと思ったんです。

 だって僕は貴方が信じてくれた十二星天のアリエスなんだから」

 

 

えへへ、と恥ずかしそうに笑うアリエスの頭を思わずルファスは撫でてやっていた。

かつて己の憎悪に呑まれそうになった「少女」を知っている彼女からすれば、アリエスは己が一人では出来なかったことを実現させた偉大な存在に見えた。

 

 

「アリエス、其方は強いな。余は嬉しいぞ。

 これからもどうか()を助けてくれ」

 

 

「……ありがとうございます。その言葉だけで報われます」

 

 

 

 

幸せそうにはにかむアリエスはルファスの些細な変化に気づく事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルファスが熱を出したとプランが聞いたのはちょうど彼女の誕生日を意識し始めた頃であった。

10歳を控えたルファスに何をプレゼントしようか考えていた時に入ったその報はプランの心を引き締めさせた。

彼女たちをリュケイオンで引き取ってからちょうど1か月が経とうとしていた頃の話である。

 

 

二人の男が廊下で立ち話をしていた。

両者とも表情は神妙なモノを浮かべている。

 

 

「では、原因は不明と」

 

 

 

プランの問いにルファス母子のかかりつけの医者のような立ち位置になったピオスが答えた。

 

 

 

「検査の結果では異常は見当たりませんでした。

 医学的に観れば彼女は健康そのものです。

 しかし現実として熱にうなされている……」

 

 

 

人を癒す司祭としてサポート系のスキルと、様々な医療の知識を持つ彼の言葉にプランは無言で頷いた。

 

 

 

「今回の件では私にできる事はありません。基本を守ってください。

 感染の危険性を考慮し母子の部屋は分離させたままにし

 娘にはしっかりとした栄養のあるものを食べさせ、睡眠を取らせるのです」

 

 

 

他にも水分の補給やら、汗を拭くことやらの模範的な子供が病気になった時の対処法をピオスは挙げていく。

 

 

「アウラ氏が看病したいと言っているが……許可は出来ないな。

 彼女も同じように病み上がりで、何があるか判らない」

 

 

「それが賢明でしょう。二人とも寂しがるでしょうが必要な処置なのです」

 

 

 

少しばかり視線をさ迷わせてからプランは考える。

己の中に渦巻く大量の知識を検索し、その中から意見を取り出そうとしているのだ。

当面は対症療法でいくとして、やはり原因は突き止めなければならない。

 

 

今回を乗り切れたとしても次が大丈夫という保証は誰もしてくれないのだ。

ミズガルズは命が容易く消えてしまう世界だからこそ、考えすぎということはない。

 

 

 

原因は急激な環境の変化か?

それとも以前食べさせた“リンゴ”の副作用?

だとしたら夫人にも同じような処置をしたのだから、同じようになってなければおかしい。

 

 

ストレス。

風土病。

リュケイオンに満ちる高濃度のマナ。

ルファスの黒い翼に見られる内部的な変異……。

 

 

何はともあれ油断は出来ない。

命は時として呆気ない程の弱さを見せることがある。

 

 

ピオス司祭が顔を微かに顰めた。

苦虫をかみつぶしたような顔で彼はあまりよくない報告をする。

 

 

「それと……周辺のマナの濃度が微かな変動を見せています……。

 また、例の現象が起こるかもしれません」

 

 

 

「“子隠し”か。気を付けるように市民たちに伝えておいてほしい」

 

 

 

マナが満ちるリュケイオンでは度々奇妙な現象が発生する。

死んだ筈の人の幻影や幻聴があった、物が消えた、意味の分からない手紙が届いた等、怪奇としかいいようのない事が多発することがある。

大抵は気味が悪い程度で済むが“子隠し”だけはとてつもなく危険でおぞましい現象である。

 

 

数年に一度、リュケイオンには世にも恐ろしい現象が訪れる。

 

名前の通り子供がふとした瞬間に消えてしまうのだ。

夜、自室で寝ている我が子を見届けて朝起きてこない事を不思議に思って様子を見に行けばもぬけの殻だったというふうに。

これの厄介な事は、何も夜にだけ起こるというわけではないことだ。

 

 

太陽の光の下であろうと“子隠し”は発生する。

昼間や朝、ほんの数分目を離すだけで我が子を失った親も数多くいる。

リュケイオンの掲示板が失った我が子を求める探索依頼で埋め尽くされる光景を知っているプランは気を引き締めた。

 

 

どれほどの凄腕の冒険者を雇って探索しようと、“子隠し”に攫われた子供が返ってくる事はない。

いなくなった時点で死んだと考えるしかないのだ。

勿論プランとて領主として何もしないわけではない。

 

 

発生直前にはリュケイオン周辺のマナの濃度が上昇すること、動植物たちの行動の変化などが起こることを突き止めた上で市民たちに警告を流すようにしている。

もう少しで“子隠し”の本質に到達し、これを無力化できると彼は考えていた。

 

 

 

「天法を込めた聖水は既に用意しております。

 前もってプラン様が危険な家庭のリストを作成しておりますので、後は配るだけですね」

 

 

「頼んだ。……あんなモノに民を奪われてたまるモノか。

 何時でも対処できるように準備は進めておいてほしい」

 

 

 

怒りを見せて断言するプランにピオスは頷き、聖水の配布を始める為に彼は教会に戻っていった。

 

 

「さて」

 

 

青く輝く瞳が窓の外、マナ濃度が高まりつつあるリュケイオンの地を観測していた。

これから忙しくなるという予感があった。

 

 

計画を見直さなくては。

 

 

【観察眼】が連続で使用される。

出力された情報を更に、更に、更に細かく精査していく。

周辺のマナの濃度を“見て”から目を細める。

 

 

 

プランの瞳にはどす黒いマナの渦が映っていた。

正しくソレは影の様であった。

不思議な事にそれのステータスを開くと、次から次へと何者かの人名が表示される。

 

 

ベネルーシュ。

アイオーティア。

パンナコッタ。

ガーネイシャ。

ブーリン。

 

 

 

まるでソレは多くの人の集合体であるというかの如く次々と名前が変わっていく。

影は手の様な形をして此方に伸びている。

いや、正確にはプランの屋敷に向かって伸びていた。

 

 

 

 

プランの屋敷には子供は一人しかいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭が痛い。

身体の節々が痛い。

芯の部分は熱いのに、薄皮一枚下はとてつもなく寒く、震えが止まらない。

 

 

余りの気だるさに動けなくなったルファスはヴァナヘイムでも経験したことのある倦怠感と戦っていた。

咳こそ出ないものの、身体にかかる負担はあの時と同等か、それ以上であった。

眼も開けていられない。

ぐるぐると天井が回っていて、吐いてしまいそうだ。

 

 

 

着せられたシャツが汗で肌にこびりついて気持ち悪い。

翼は己の意思に反して痙攣を繰り返し、ばさばさと動いていて煩い。

今まで何の良いことも自分に齎さなかった黒い翼は、こんな時でも自分を苦しめるのかとルファスの憎しみを煽った。

 

 

そしてもう一つ、ルファスの憎悪を煽る存在がいた。

 

 

「検温の時間だ。これを使ってくれ。

 ……汗も酷いな、新しい服を用意させよう」

 

 

水銀式の体温計を差し出してくるプランだ。

彼は何を思ったか、ルファスに付きっ切りで看病をしている。

部屋の一角に小さな机と仕事の書類を持ち込んで、そこで執務をしながら、ルファスから目を離さない。

 

 

 

青く輝く瞳で少女に起きている変化を逐一観察し、レポートを付けていた。

チリンと手元にもった鈴を鳴らせば屋敷で雇われている従者が入ってくる。

朗らかな笑みを浮かべた恰幅のよい女性であった。

 

 

「彼女を着替えさせてやってくれ。それと体温を測るのを忘れない様に」

 

 

それだけ言うと彼は背を向けてまた何かの書類を捌き始めた。

ペンが紙の上を走る音だけが響く。

 

 

 

「ルファス様、失礼いたしますね」

 

 

女性が自分に近寄ってくるのをルファスは抵抗できずに眺めていた。

プランに触れられるよりはマシであると自分を納得させ、手際よく服を脱がされる。

あっという間に全身を暖かいタオルで拭かれ、新しい服を着せられ、ベッドメイキングが完了する。

 

 

検温の結果も出た。37度9分。

一時は40度を超えてた事を考えるに、これは大きな進歩である。

 

 

最後に優しくルファスの頭を撫でてから女性は退室した。

真新しい陽の香がするベッドに身を預け、ルファスはプランの背を見た。

彼はこちらを見ないが、意識だけは向けられていると彼女は察する。

 

 

 

「……新しい生活には慣れたかい?」

 

 

 

やがて沈黙を破りプランが声を発した。

柔らかい声であった。

まるで己の娘と何とか接しようとする父親の様であった。

 

 

クズめ、父親気取りか。

内心吐き捨てながらルファスは顔を歪めつつも答えを返す。

もちろんいう事なんて決まっている。

 

 

「全然。最悪。こんな街、大嫌い」

 

 

 

「そうか……まだ一か月だからなぁ……じっくり時間をかけていこう」

 

 

 

ははは、とプランは笑う。

自分の言葉で全くダメージを与えられない事にルファスは苛立つ。

彼女にとってプランという男は恩人などではない。

 

 

今まで彼女を苦しめ続けてきたこの世の理不尽が擬人化したような存在なのだ。

 

 

父には相手にされなかった。

存在さえも無視された。

 

ヴァナヘイムの天翼族はルファスの話を聞いてくれさえしなかった。

それどころか害虫を追い回す様に甚振られ、苦しめられた。

 

 

同年代の子供たちに至ってはルファスをいじめることに何の疑問も……虐める理由さえもなかった。

誰もルファスの話を聞いてなんてくれなかった。

 

 

母を除けば初めてであった。

向き合って話を聞いて、反応を返してくれた存在は。

 

 

 

自分の言葉が他者に何らかの変化を与える……そんな当たり前の事にルファスは夢中になっていた。

憎悪と憤怒を言葉に乗せて否定と共に叩きつける。

するとプランは朗らかに笑って窘めてくるが、時折隠し切れない傷ついた顔を浮かべる時があった。

 

 

それが楽しかった。

産まれてからずっと苦しめられる側だった自分が他者を苦しめる側に回る、そんな逆転現象を彼女は楽しんでいた。

何てことはない、彼女は自分がやられた事を何の関係もない他人にやり返しているだけであった。

 

 

 

これは一種の防衛術であった。

誰も信じずに生きてきた彼女の処世術といっていい。

彼女は他者を憎悪して生きていく。

 

 

ルファスの心の内には排他と拒絶と憤怒だけがある。

母さえも鬱陶しく感じる時が最近は存在した。

 

 

彼女は全てを憎悪し、そうする事を楽しんでいた。

憎しみに塗れれば塗れる程、自らの力が強くなるのだと彼女は信じている。

今はまだまだ弱いが、いつか必ずこの世の全てに己の味わった苦しみを味わわせてやるという決意だけが彼女の胸中を満たしていた。

 

 

 

「いつまで……こんな事を続けるの? 家族ごっこはうんざり」

 

 

 

真っ赤な瞳で睨みつけて言う。

思いつく限りの言葉の刃を投げつけた。

プランがこちらを向いた。

彼の青い瞳を見る度にルファスは憤りに拳を握りしめたくなる。

 

 

 

「自分の命が尽きるまで……。

 いや、尽きた後もこの屋敷を使ってくれて構わないよ」

 

 

「それは何年後?」

 

 

うーん、と腕を組んで男は考える。

ミズガルズの人間の寿命はエルフや天翼族に比べればとても短い。

病や魔神族や魔物に襲われずに天寿を全うするとしたら、肉体の耐久年数は……70歳くらいだろうかと彼は考えた。

 

 

今が25歳なので、少しだけ長めに時間を取ったとして、大体50年かと結論づける。

 

 

「全て順調に行ったとしたら、自分はあと50年は生きると思う」

 

 

 

「…………50」

 

 

眩暈を感じてルファスは枕に顔を押し付けた。

50年もこの不愉快な存在の顔を見なければいけないのか、と。

本当にうんざりだった。

幾ら天翼族の命が果てしない永さを持つとはいえ、苦痛に塗れて過ごす50年は1000年にも感じられるだろう。

 

 

 

もう少し身体が大きくなったらここを出て行ってやると彼女は決めた。

母は……恐らくこの男は何も言わなくとも面倒を見てくれるだろう。

 

 

 

自由だ。

今のルファスは自由を求めていた。

母の介護も、プランの押し付けも、街の奴らのうざったい善意もない、広い世界に出ていきたい。

 

 

身一つで何もかもが思うがままの世界を夢見て彼女は瞳を閉じた。

今はこの鬱陶しい倦怠感を治すことが最優先だ。

 

 

「おやすみ」

 

 

 

最後に耳に届いた声を彼女は無視した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

微かな物音を感じてルファスは目を覚ました。

起き上がれば、あれだけ身体を悩ませた倦怠はなくなっていた。

その代わり、夥しい量の黒い羽が周囲に散乱している。

 

 

全て自分から抜け落ちたものらしい。

少しだけ翼が軽くなっていた。

見てみれば、真新しい光沢のある羽が生えそろっていた。

 

 

今の時間は夜であった。

小さな虫の鳴き声と月の微かな灯だけがあった。

 

 

周囲には誰もいない。

プランが座っていた机には誰もおらず、綺麗に整頓されていた。

今夜彼がここに戻ってくる事はないと確信し、ルファスは小躍りしたくなった。

 

 

どうしようか、と考えた節……コンコンという音が窓からした。

まるで誰かがノックしているような音であった。

ここは二階であり、音のした窓にはバルコニーなどはない。

 

 

背筋に冷たいモノを感じたルファスは掛けられていた毛布に包まる。

睨むように窓を見つめた。

しかし、次の瞬間に響いたのはそんな彼女の警戒心をほぐすかの様な柔らかい少女の声であった。

 

 

「おーい、開けてー。

 ちょっとだけでいいからさ、お話しようよー」

 

 

まるで近所で友達と会話するかの様な声音であった。

 

 

「…………?」

 

 

首を傾げながらルファスは窓に近づいた。

恐る恐るカーテンを開ければ、そこにいたのは己と同い年くらいの少女であった。

背中に生えているのは濁った色の翼……彼女もまた天翼族である。

 

 

灰色の髪をした少女であった。

ルファスと同じような真っ赤な瞳が可愛らしい子である。

彼女はニコニコ笑いながらルファスを見ていた。

 

 

 

「やった。やっぱり私と同じ子だった! 貴女も天翼族でしょ? 私もなんだ」

 

 

「貴女……だれ?」

 

 

 

にこっと少女は笑った。

 

 

「私はアンっていうの。アン・ブーリン。

 天翼族だったんだけど……ほら、翼が()()だったからさ」

 

 

己の濁った翼を彼女は指さした。

黒くなりかけた翼はそれでもあちらこちらに白も残っており、結果として斑模様に近くなっていた。

形もよくない。右の翼は先端が欠けており、左の翼は微かに根本から捻じれていた。

 

ルファスをして思わず「醜い」と思ってしまう翼であった。

そして故に天翼族がアンをどういう目で見たかは想像に容易かった。

痛い程にルファスは同情した。

 

 

 

「それでね、遠くから貴女の事を見てたんだけど。

 ()()()()貴女なら、仲良くなれるかなって思ったの。

 ちょっとだけお散歩にいかない?」

 

 

 

「…………少しだけなら」

 

 

考えてからルファスは頷く。

一度部屋に戻り、寒くならない様に一枚羽織る。

そうしてから彼女は窓を開けた。

 

 

 

 

「行こっか!」

 

 

差し出された手をルファスは握った。

ずっと夜風のあたる外にいたせいなのか、その手は恐ろしい程に冷たかった。

 

 




本編に入りきらなかった部分をちょっとだけ捕捉。


アリエス

少しだけ原作から変わった羊。
ちょこまか自分の周りを飛び跳ねて鬱陶しかった魔神族を潰して、
その首を手土産にメグレズと交渉した。



マルス

誰? 
冗談はともかく彼の勇姿を見たい方は原作をどうぞ。
何と作者直々の挿絵を貰っている凄い奴なのです。

また漫画版におけるルファスとの激闘は正に名勝負でした。









アン・ブーリン

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