ラスボスからは逃げられない!   作:宇宙きのこ(ミズガルズ産)

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下ごしらえは終わりつつある感じです。


アウラの“懺悔”

 

 

 

「へぇ、こりゃ中々につかいこまりぇてんね」

 

 

壊れた金具を見ながら“職人”は端的に感想を述べていた。

あと2時間ほどで日没になるプルートの夕日に髪飾りを翳し、淡々と彼は状態を分析していた。

 

 

 

彼はルファスが今まで見てきたどんなドワーフよりも色黒で、太い腕と指をしており、そしてもはや前掛けの様になってしまっている立派な髭の持ち主のドワーフである。

なるほど確かにこれは“職人”だと頷いてしまう程に威厳ある姿をしている。

 

 

 

そして何よりも特徴的なのはとてつもない訛のある発音であった。

リュケイオンやユーダリルでも聞いた事のない程の訛。

時折何を言っているのか判らない程に彼の発言はイントネーションから言葉遣いまでが独特で、率直に言うと聞き取りづらい。

 

 

 

「どうでしょうか……?」

 

 

 

アウラが質問する。

白い翼をパタパタと動かし、彼女は娘に変わって職人と交渉をし始めたのだ。

間違っても失礼がないように。

 

 

 

前提として彼女は貴族として多くの知識を持っている。

もちろん他種族の重役がどういった性質をもっているかなども。

だからこの目の前の職人の訛が古いドワーフの言語に非常に近しいという事を彼女は理解していた。

 

 

これは決して田舎者の粗忽な言動ではない。

むしろこれを使うという者はドワーフの……。

 

 

 

美女と会話できてうれしいのか職人の眼がにっこりと笑顔の形を作った。

 

 

 

 

「一時間くらいで直しぇるね。 新品同然、いや、何百年も大丈夫なくらいにしてやるばい!」

 

 

 

 

「……本当に大丈夫なのか?」

 

 

 

 

外見こそ説得力に溢れているがどうにも言動がおかしい職人にルファスが疑惑の瞳を向けるがアウラは娘の肩を強く抱いて頭を振った。

「そんな事を言うのはダメよ」といつもより僅かばかり強い口調で言えばルファスは素直に頷くのであった。

 

 

 

「暫く周りば歩いて時間ば潰してきんしゃい。

 そん間に仕上げとくけん、一時間したらここしゃぃ戻っといで!」

 

 

 

 

アクセサリーを作業台の上に置き、腕を鳴らしながら職人が言う。

ルファスは母を見た。アウラは頷くだけであった。

 

 

 

「……見ていてもいいか?」

 

 

 

 

一時的にとはいえ自分の宝物が自分の眼の届かない所に行ってしまうのを恐れた故の言葉であった。

“職人”を未だ信じ切れないというのも理由の一つだ。

確かに素晴らしい腕の持ち主なのだろうが……ルファスは根本的な部分で人間不信な部分があるのだ。

 

 

 

そんなルファスの言葉に“職人”はこれ以上ない程の笑顔を見せるとフンフンと鼻息を鳴らし、指の開閉を繰り返す。

少女の髪飾りへの思い入れの強さを直感で理解した彼は腕によりをかけると決意したのだった。

 

 

 

「構わへん! 美人しゃん二人に見よってもらえるなんて最高ん環境だ!!」

 

 

 

「プルート最高ん職人の腕ばじっくりと見ていうてくれやな!!」

 

 

 

 

 

大きな声で己こそがプルート最高だと宣言する“職人”であるが、不思議な事に周囲のドワーフを始めとした

通行人たちは一切の文句などを言わなかった。

 

 

むしろ遠巻きに──ルファスとアウラの邪魔にならないように配慮しつつ───彼の仕事を一目見ようと野次馬の様になるだけであった。

普段のルファスであればこれがどれほど異常な事なのか理解できていただろうが、今はそんな余裕などなく気づくことはない。

 

 

 

大切な大切な宝物。

本当に直してくれるのか、という事だけを考えていた彼女は瞬間……大丈夫だと悟った。

 

 

「……っ!」

 

 

 

 

理屈ではない。

直ると理解したのだ。

【アルケミスト】のクラスを持ち、プランから手ほどきを何度か受けて基礎を作っていた彼女だからこそ理解できた。

 

 

 

“職人”の目つきが先ほどの様な穏和な物から、とてつもなく深みのあるモノへと変わった事を彼女は把握し、身震いした。

間違いない、この人物は自分などよりも【アルケミスト】として、否、技術者、芸術家として遥か高みにいると。

事実として彼の指は太く先端が硬質化しているというのに、恐ろしい程に緻密な動きをしている。

 

 

 

髪飾りを丁寧に分解し、パーツを手際よく並べていく。

十を超えるパーツが一つずつ並べられた。

折れた金具もそこには含まれている。

 

 

彼はソレらを一目見ただけで全て判ったようだった。

 

 

この部位だけを取り換えても他の部分も近い内に同じように壊れてしまうなと。

見るに彼女は天翼族だ。

ならば数百年、いや、彼女の命が尽きるであろう1000年先まで保つようにしてやると職人は決めた。

 

 

 

一つの一つの寸法から役割までを一瞬で彼は理解し、瞬時に横の荷物入れから幾つものミスリルなどの原石を取り出し、何と手作業でソレを削り始めた。

指先と工具に【錬成】を絶えず発動させ続け、ミスリルの硬度を瞬間的に“硬く”して掘り出しているのだ。

プランとはまた違った方向性の異常な【錬成】の使い方である。

 

 

【錬成】で何かを作るのではなく、何かを作る為の道具として【錬成】を用いるという発想の転換はルファスの大きな衝撃を与えていた。

 

 

 

「すごい……」

 

 

 

心からの感嘆であった。

もはや彼女はこのドワーフの腕を疑ってなどいない。

瞬きさえ忘れて芸術を凝視する娘の頭をアウラが優しく撫でた。

何かに夢中になるルファスの姿はアウラからすれば愛おしくてたまらないものなのだ。

 

 

 

 

 

カリ、カリ、という音がどんどん早くなり最終的にはカリカリカリガリリリリと掘削しているような音に変わった。

一から彼はパーツをこの場で作り出そうとしていた。

それも壊れた部分だけではなく、髪飾りを構築する全てのパーツを。

 

 

もはやこれは修理ではない。

一からの作り直し、産まれ代わりに等しい。

 

 

 

図面さえ引かない。

完全に一目見ただけで“職人”は髪飾りの構造を含めた全てを理解し、あっと言う間に一つ彫り上げた。

“職人”は誇る様に作り上げた金具の一つをルファスの前に翳すとニカッと悪戯小僧の様に微笑む。

 

 

 

───どげんや? すごかやろう?

 

 

 

ルファスは何度も大きく頷いた。

「すごい、すごい」と心からの賛辞を贈る。

普段の男の様な口調も忘れ、彼女はドワーフと言う種が魅せる芸術に魅了されていた。

 

 

 

 

 

きっちり1時間。

“職人”の言葉に嘘偽りはなかった。

彼は新たに作り上げたパーツを組み立てると、外見上では全く変化のない髪飾りをルファスに渡す。

 

 

 

一目見ただけでは元と何も変わっていない。

重さも含めて全く、何もかも元通りである。

しかし、ルファスには判っていた。

これが元よりも遥かに頑強性を足されており、この先の自分の生涯全てについてこれる程の耐久力を手に入れたのだと。

 

 

単純な【アルケミスト】の能力だけではない。

純粋な技量によるものだと彼女は理解し、興奮を覚えた。

ドワーフとは、実に、実に凄い種族だと。

 

 

 

「もぅ大丈夫。完全に直ったじぇ」

 

 

 

裏表、重さなどを確認するルファスに彼は言う。

こく、こくと少女は無言で頷く。

想像以上の素晴らしい出来栄え。

 

 

頭に装着するが、前と全く変わらない使い心地である。

“プルート・ワン”という看板に偽りなしの腕前であった。

 

 

 

「お嬢しゃんたちん時間に合わしぇて補強もしとぅ。……これきゃも大事につきゃいや」

 

 

 

 

「うん……ありがとう」

 

 

零れるのは母以外にはほぼ見せた事のない素の笑みと感謝であった。

良かったわ、と頭を撫でられながらルファスは職人に敬意の眼差しを向けて感謝を述べるのだった。

 

 

 

会計……これだけの技術に対してかかった値段はたった10エル。

この10倍でもいいのにと少女は思いながら支払いを終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に良かった……また会いたいな」

 

 

 

何度も何度も髪飾りを撫でながらルファスはしみいる様に呟いた。

母と共に自室に帰った彼女は、以前も泊まったプルートにおける高層建築の最上階にいる。

プルートの全体を一挙に見渡せるここは一等地という言葉こそが相応しい。

 

 

 

 

地平の果てを見れば先まで夕日を零していた太陽は既に殆ど没し、僅かな光を零すだけである。

代わりに空を満たすのは満天の星。

ここが地の底とは思えない程に精巧に再現された星夜はルファスの心に小さくない感動を与えるに値するものだ。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

アウラは心の底から自分の贈ったプレゼントを大事にする娘を愛おしく想い、微笑んでいる。

椅子に腰かけた彼女は先ほどから幾度も嬉しそうな顔をして髪飾りを撫でるルファスをただ見つめていた。

視線を感じたルファスが母を見返す、するとルファスは頬を紅く染めて恥ずかしそうに眼を逸らした。

 

 

 

 

自覚はあった。

先ほどから浮かれ、何度も子供の様な顔と行動をしているという自覚は。

「自分はルファス・マファールで、この人の娘なんだからもっと大人の様にならないと」と彼女は自己暗示を繰り返し、そっと髪飾りをテーブルの上に置く。

 

 

 

「……続けていいのよ?」

 

 

 

 

「もうっ……!!」

 

 

 

 

珍しい母の悪戯っ子の様な言葉にルファスは頭を振って答える。

カルキノス辺りの軽薄さがもしかしたら移ったのかもしれない。

あの蟹、母に色目を使うだけでなく悪影響まで与えるとは絶対に許せないと彼女は責任を転嫁することにした。

 

 

 

暫くのあいだ翼を大きく動かし、母に抗議するような顔をしていた彼女であったが……やがてソレも収まる。

予定とは大分変わってしまったが、それでも家族でこのような所に来て、一緒に色々な事を楽しめるというのはルファスの心に小さくない影響を与えていた。

 

 

 

「夢みたいだって思ってる。まさか、こんな日が来るなんて」

 

 

 

 

事実“夢だった”のだ。

ヴァナヘイムで地の底の様な生活を送っていた時に母と語り合った展望は。

あの時は二人で抱きしめ合い、励まし合う為であった。

 

 

 

しかし今は現実となってここにある。

 

 

 

 

「ルファス……」

 

 

 

 

アウラは知っている。

14歳、レベル500になった夜に娘がプランに宣言した言葉を。

15歳、更なるレベル上昇を果たした暁にプランを殺すとルファスが断言していたことを。

 

 

 

強さだけを狂信的に求め、その果てに破滅へと走ろうとする娘を彼女は知っている。

 

 

 

 

「……お母さん。私に何か話があるんだよね?」

 

 

 

瞳の中に確信を宿し、ルファスは母に言った。

彼女は薄々ではあるが悟っていたのだ。

普段は滅多に自己主張をしない母が今回の様な……自分と二人っきりを望むことなど何か理由があるのだろうと。

 

 

 

 

「────えぇ」

 

 

 

頷けば、ルファスは微笑んで「やっぱり」と笑う。

 

 

ルファスの言葉に彼女は驚くことはなかった。

あぁ、やっぱり気づかれていたかという気持ちだけがある。

“どうして?”という疑問は無い。この二人には、言葉にしづらい深い繋がりがある。

 

 

 

 

「ずっと、貴女に謝りたかったの……私は選択を間違えてしまったから」

 

 

 

「…………」

 

 

 

髪飾りを一度撫でてからルファスは母の前に座り向かい合う。

リュケイオンに移ってから4年、思えばこのようにじっくりと母子で話をした事など余りなかった。

プランに憎悪を向ける娘を窘めながらも、心から注意した事さえなかった。

 

 

もう、時間は残されていない。

ここで臆病を見せたら、それこそ永遠に後悔することになるだろう。

 

 

 

「ごめんなさい。

 貴女の苦しみを私は見て見ぬふりをしていたわ。

 ……いつかきっと、あの人が戻ってくれるって夢ばかりを見ていて、すぐ隣の貴女を見ていなかった」

 

 

 

ヴァナヘイムの苦しみの中、ルファスの味方はアウラだけであった。

いつもいつも蔑まれ、苦しめられ、罵倒をされて傷ついて帰ってきた彼女を抱きしめ、撫でてやり、子守唄を聞かせたのはアウラだった。

母親として傷ついた娘を抱きしめる、それは素晴らしい事なのだろう。

 

 

 

しかしそれ以上は何もしなかったというのも事実だ。

追放され、名前を実質奪われていたとはいえ彼女も元は大貴族の妻。

ヴァナヘイムの中では居場所こそなかったものの、残った伝手などを使えば娘と自分の居場所を外界に作る事なども出来たかもしれなかった。

 

 

 

しかし何もしなかった。

いつか、きっと、必ず。

夫を信じるという綺麗な言葉と幻想に縋り、生傷を増やして帰ってくる娘の為に何かを行動に移した事はなかった。

 

 

 

つまるところ彼女は諦めていたのだ。

自棄になっていたと表現してもいいだろう。

夫に捨てられ、種族に捨てられ、ゴミの様に打ち捨てられて……心の何処かで何もかも、自分の命さえも諦めてしまった。

 

 

 

 

 

「私はあの人に縋っていたの。

 いつか判ってくれる、元に戻ってくれるって……本当は戻る事はないって判っていたのに」

 

 

 

ルファスは知る由などもないがジスモア・エノクは心からアウラを愛していた。

彼女もまたそんな夫を心から愛している。たとえ過去の夢を語る愛した彼に戻る事は無いと判っていても。

 

 

 

「……ごめんなさい。もしも貴女がまだ世界を憎いというのなら、その原因は私にあるわ」

 

 

 

 

違う、と思わず叫びそうになる娘にアウラは己の中にある最もどす黒い感情を隠すことを止めた。

娘に軽蔑の眼差しを向けられることになろうと、これだけは明かしておかないといけない事実なのだ。

 

 

 

「あの日……私が肺を痛めた時……安心したの」

 

 

 

それはアウラが肺炎を患いながらも数少ない食事を娘に分けていたことの真相。

明らかに違和を肺に覚え、呼吸が難しくなっていくというのにジスモアにさえ何も言わなかった事の裏側。

 

 

 

 

「これで終われるんだって、私は……」

 

 

 

あの時、彼女は死を受け入れたのだ。

娘を置き去りにし、何もかもを捨てて楽になれる事に喜びを抱いていた。

狂わされた夫と、その隣にいる自分じゃない女性を観なくていいというのは彼女にとっては救いであった。

 

 

 

「だから私を許さないで。私は貴女が思うようないいお母さんじゃ……ない……」

 

 

 

唇を噛み締めて断言する。

 

 

私は貴女を我儘に巻き込んでしまった。

私は貴女に母親らしいことなんてしてあげられなかった。

ごめんなさい。どうか許さないで。恨むのならば私を恨んで。

 

 

 

綺麗なんかじゃない醜いエゴの発露。

言葉とは裏腹に許しを求める汚い言葉。

悲劇の主役面をした鼻持ちならない傲慢な言葉。

 

 

 

何もかも判った上でアウラは娘に腹の内を全てさらけ出した。

嫌われてもいい、憎んでいい。何なら殺されていいとさえ彼女は思っていた。

娘がそれで何の関係もない恩人を手に掛ける事になるくらいだったら、ずっとそっちの方がマシだと。

 

 

 

 

 

「………───────」

 

 

 

 

 

ルファスは……無表情で母の内面を聞いていた。

そんな彼女の中に宿った感情は……よく判らないものだった。

彼女は髪飾りを手に取り、装着する。

 

 

 

今が分岐点だと彼女の直感が悟っていた。

見れば母の腕は震えている。

翼もまた痙攣するように小刻みに動いていた。

 

 

 

心の底を完全にさらけ出す。

それがどれほど恐ろしい事か彼女には想像もつかない。

誰も信じられず、虚勢を張り仮面を被って生きている彼女にとっては……素直になるというのは想像を絶する苦行だから。

 

 

 

 

母は一歩を踏み出した。

もしかしたら踏み外しかねない一歩を怖がりながらも確かに。

だったら娘である自分には答える義務があると彼女は悟り……一度全てを捨てた。

 

 

 

強い私。

覇者を目指す私。

プランを殺したい私。

レベル500の人外の力をもつ私。

 

 

 

あらゆる鎧を脱ぎさり、ルファスはただのルファスになった。

むき出しになった感情のままに彼女は年相応の少女として喋った。

 

 

 

「お母さん。それでも私はお母さんが大好きだよ」

 

 

 

母の細い手に触れる。

びくりと震えるが、直ぐに止まった。

 

 

 

「うん……ちょっとショックだったけど。

 それでも……変な話だけど私は今の話を聞いて安心したの」

 

 

 

ヴァナヘイムにおける母の顔を思い出す。

曖昧な、あらゆる全てを諦めた様な笑顔を浮かべていた顔を。

当時のルファスにとって母とは絶対の味方で、何があっても自分を守ってくれる守護者で……悪く言ってしまえば人というよりは無条件に己を守ってくれる物として見ていた節さえあった。

 

 

そんな母にもしっかりと黒さや弱さがあったという事は、変な話ではあるがルファスに少しばかりの安心を与えていた。

 

 

 

「それにね、今だから言うけど……実は私も一度、お母さんを捨てようとした事があるんだ」

 

 

それは“子隠し”にたぶらかされた時の話。

されどにじみ出た言葉はルファスの中に積もっていたうっ憤であり、間違いなく彼女の帳から湧いてきた感情。

 

 

 

 

“母の顔を思い出す”

 

“弱い女だと彼女は思ってしまった”

 

“いつもいつも父に虐められ、暴力を受け、それでいて何もできない弱い女”

 

 

 

 

「……それ、でも……私は……」

 

 

 

私達、同じことをしてたんだね、とルファスは苦笑した。

あぁ、やっぱり自分たちは親子なんだなと。

 

 

 

なおも食い下がるアウラにルファスは微笑んだ。

彼女は胸の中にある黒い感情が殆ど枯渇していくのを感じていた。

今まで自分の強さを支えていたソレが消えていく……されど、彼女は受け入れた。

 

 

もう目を逸らす事は出来ない。

リュケイオンにおける暮らしにおいて得られる平穏が心地いいという事実は。

受け入れた瞬間、胸の中が軽くなるのをルファスは感じた。

 

 

肩に乗っていた不可視の重りが消え去ったような気さえもした。

口が軽い。あれだけ恐ろしかった本心を容易く伝えられた。

 

 

 

 

「不安なら何度だって言うよ。────私は貴女を愛しています」

 

 

 

 

それは母に言われて最も嬉しかった言葉。

始めて与えられた“肯定”だった。

生きていていい、笑顔になっていい、愛されていいという肯定だった。

 

 

 

感極まったアウラはルファスを抱きしめた。

白い翼が彼女を包み込む。

母からの抱擁を少女は目を閉じて受け入れ……口が勝手に動き出す。

 

 

今しか言えない、かつてアリエスに一度だけ零した本心であった。

4年の間に抱いてしまった想いが初めて口からあふれ出す。

 

 

 

「……今の生活が、すごく……心地よくて……。

 このままじゃ私は、弱くなるんじゃないかって……」

 

 

 

黒い翼が答える様に母を覆う。

本来ならばあり得なかった光景がここにはある。

すれ違いの末に本心を伝え合う事など出来なかった筈であった。

 

 

 

「皆より強くならないといけないってずっと思ってた。

 だって、そうじゃないと……みんな私に酷い事するかもしれないって、怖いの……」

 

 

 

一度漏れればもう止まらない。

産まれてから抱き続け、そして目を逸らしていた己の弱さがあふれ出てくる。

誰よりも強く在れと己に課し続けてきた少女の根底にあったのは恐怖だった。

 

 

「わたしが、つよくないと、お母さんだって……あんしん出来ない……」

 

 

 

彼女の怖い事。それは何てことのないモノであった。

誰だって思う、当然の話だ。

 

 

ルファスは傷つけられるのが怖い。

ルファスは騙されるのが怖い。

ルファスは自分のモノを取り上げられるのが怖い。

ルファスは大切な人を傷つけられ、奪われるのが怖い。

 

 

 

ルファスは、今の幸せを失うのが怖くてたまらない。

そしてソレを可能なのがプラン・アリストテレスである。

二人の後ろ盾である彼はルファスとアウラの生殺与奪を握っているのだから。

 

 

 

「あの人の気が変わったら……全部無くなっちゃう」

 

 

 

ルファスは悪夢を見た事がある。

プランがジスモアの様な顔をして、自分に愛想をつかす夢を。

「どうしてお前の様な懐かない奴を守る必要がある?」と吐き捨てられる夢だ。

 

 

納得いく話だ。

欠片も懐かず、愛想もなく、ひたすら憎まれ口と殺害予告だけをとばしてくるガキを大切に思う理由なんてないのだから。

しかし、それでもルファスは彼に靡けない。

 

 

 

弱さを見せられないし、何よりそうする方法が判らない。

 

 

 

 

「もしかしたら、それは明日かもしれない……」

 

 

「もしかしたら、影で私たちの事を鬱陶しく思っているかもしれない……。

 だって、私、何も好かれる事なんてしてないから……っ」

 

 

 

ルファスは震えていた。

母の衣服を皺が出来る程に握りしめ、どうしようもないどん詰まりに心を揺さぶられていた。

 

 

 

「……だから、殺さないとダメだって思ったの。

 あの人を超える力を手に入れて殺せば、自由になれて……。

 皆が私達の事を怖がる様になるって思ってたから……」

 

 

 

 

恐怖され、畏怖される存在になる。

そうすれば誰も自分たちを侮らず、見下さず、攻撃してこなくなるのだと。

力という後ろ盾によって自由と権利を得る、ソレが彼女の目指すやり方だった。

 

 

少し考えれば判るおかしな話だ。

おかしいと誰もが言うだろう。

しかし、しかし、ならばどうすればいいか彼女には判らないのだ。

 

 

ルファスは他者との付き合い方が判らない。

物心ついた時から攻撃と拒絶しか受けてこなかった彼女には、他人にどうすれば認めて貰えるかなんて判らないのだ。

 

 

これはアウラの責任でもあった。

彼女は泣きじゃくる娘を抱きしめた事はあっても、そこから先などしなかった/教えなかった。

当時の何もかも諦めていた彼女にとっての救いは己の死だけであり、それ以外はどうだってよかったというのが本心だったのだから。

 

 

 

 

「────プラン様が貴方を裏切ると……今も?」

 

 

 

「………………………」

 

 

 

母からの問いかけにルファスは10秒近く沈黙する。

今までの彼を思いだす。

 

 

 

嘘つきで、秘密ばっかりの男。

口うるさい事も多く、ふざけたお節介ばかりの男。

何かあると直ぐに焼き菓子で誤魔化そうとしてくる男。

知識豊富で色んな事を知っているのに、変な所で抜けている男。

 

 

 

 

ふざけた奴ではあったが……彼はこの4年間、一度だってルファスを馬鹿にしなかった。

黒い翼を貶す事もなく、悪いことをしたら注意こそすれど暴力など振るわなかった。

ジスモアとプランは違う。彼が最初から■■だったらよかったのにと、気づけば思ってしまっていた。

 

 

 

褒めてくれた。

体調を崩した時は母と共にいつも傍にいてくれた。

勉強を教えてくれた。

ゴーレムを一緒に作った。

アリエスと共にいるために尽力をしてくれた。

 

 

自分の存在を認めてくれた。

 

 

もう答えは出ていた。

ただ、今まで認められなかっただけで。

 

 

 

 

ふるふる。

 

 

 

少女は小さく頭を横に振った。

 

 

 

「だいきらいだ、あんな人……」

 

 

 

だけど。

 

 

 

 

「……ころしたくない」

 

 

 

「もっと、いっしょがいい……」

 

 

 

少女は心の底から一言だけ呟き、己の本心を自覚する。

それでも失いたくないと思いながらも自分で壊そうとしている矛盾が彼女を苛む。

 

 

嫌だ失うのは嫌だ。

でも殺さないと自分たちはいつか捨てられるかもしれない。

だけど殺したくない。だがそうなると、自分たちは本当の意味で自由になれない……。

 

 

 

堂々巡りであった。

終らない矛盾が彼女を内側から串刺しにし続けている。

アウラは震え続ける娘を強く抱きしめ、彼女の中の恐怖が和らぐまで共にいるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プルートには幾つもの秘密の坑道があるというのは周知の事実であった。

都市区画を基点とし、蟻の巣の様に何十何百という道が張り巡らされているのがプルートであり、その全てを熟知している存在はドワーフの中でもほんの一握りである。

そんな中の一つ、殆どの者……それこそガザドでさえ知らない薄暗い道を二人の男が歩いていた。

 

 

 

 

 

「お前しゃんの所ん二人に出会うたぞ。 凄よかい子たちやった」

 

 

 

 

一人は“職人”である。ドワーフの短足で、のっしのっしと自信に満ちた足取りで薄暗い中を進む。

そして彼は相変わらずの訛の混じった言葉で隣を行く人物……プランに話しかけた。

 

 

 

「ありがとうございます。仰る通り、あの二人にはいつも助けられております」

 

 

 

恭しく一礼し、まるで従者の様にプランは振舞う。

ソレもそのはずである、何故ならばこの“職人”の名は───。

 

 

 

 

「モリア王陛下……ルファスの件、まことに感謝いたします」

 

 

 

プルートの王にして全てのドワーフの頂点に立つ男、ドワーフ王モリア。

それが“職人”の真名である。

時折彼はふらっと軽い変装を施してプルートの民に紛れ込む事があり、その時は気づいていても誰も指摘しないというのがプルートの暗黙の了解であった。

 

 

護衛さえもつけない行為であるが、彼のレベルは例の果実によって既に500近い為に必要ないというのもある。

本来ならば1000まで一気に跳ね上げる事も可能であるが、持ち得る技術と身体能力のバランスが崩れる可能性があるために彼は少しずつレベルアップを行っていた。

 

 

 

 

「これが終ったら会いにいってやりんしゃい。

 あん髪飾りに宝石ばはめ込んだんお前やろ? 大事にしとったぞ」

 

 

いい仕事をしたと何度も頷き、満足そうに笑いながらモリアはプランに言う。

芸術家でもある彼にとって、物を大事にする者というのは好意に値するのだ。

 

 

 

「ありがとうございます。

 しかし、今回は母子でゆっくりと旅行を楽しんでもらいたいと思っていますので……」

 

 

 

プランは平然と言葉を続ける。

次の彼の言葉に対し、もしもここにルファスがいたら果たしてどんな顔をしていだろうか。

 

 

 

 

「自分はあの二人の家族ではありませんから」

 

 

 

リュケイオンに迎えた当初、ルファスが言った言葉はいまだに彼の中に残っている。

 

 

 

“いつまで……こんな事を続けるの? 家族ごっこはうんざり”

 

 

 

プランも同意することである。

傍から見たら自分のやっていることは滑稽なおままごとであり、気持ち悪い所行であると彼は自覚している。

 

 

 

ルファス・マファールとプラン・アリストテレスは家族にはなれない。

事実としてそれだけがある。

 

 

決して。絶対に。

何があっても揺らがない壁がそこにはあった。

彼は身の程を弁えている大人だ。

 

 

 

ジスモアとアウラとルファスだけが家族である。

自分は部外者で、ただの後見人で、あの二人の寿命には到底追いつけない人間だ。

余計な事はしない。それが大人というものなのだ。

 

 

 

 

ルファスが一歩を踏み出すならば、その分後退するのがプランという男であった。

変わったと言われながらも、この諦観だけは決して消えない。

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

モリアはため息を小さく吐く。

わざとだろうな、と思いながら彼は腰の袋から幾つかの結晶を取り出し、掌の上で転がす。

サファイアの様な美しい宝石であった。しかし、これはサファイアではない。

 

 

竜王率いる魔物と竜の軍勢、そして魔神族。

それらの対抗するために開発された兵器の一つだ。

 

 

 

「水」属性の魔神族を都合10体ほど圧縮し、加工して作り出された新しいマジック・アイテムである。

魔神族が持つ自我や記憶、思考能力……果ては“魔神族”という形さえ捨てて純粋な魔法に特化させた魔法を発動させるための媒介だ。

仮にこれを解放したら術者の意のままに暴れ狂い、周囲のマナを無尽蔵に取り込んで肥大化する膨大な水が発生することだろう。

 

 

 

そしてソレを魔神族の群れにでも放り込めば後は雪だるま式である。

魔神族を次々と飲み込んで吸収する超巨大なスライムもどきが産まれる事だろう。

今はとりあえず「水」属性だけだが、将来的には「火」を始めとした他の属性の魔神族を用いた兵器の量産計画がほかならぬプランによって進められていた。

 

 

 

魔神族を原材料にした兵器開発は順調に進んでいる。

プルートはここにきて更なる地獄へと変貌しつつある。

携帯できて、誰にでも使えて、それでいて甚大な被害を相手に与える兵器は完成すればミズガルズの歴史を変えるのは間違いない。

 

 

更には一部の技術も開放され、今までは秘術扱いだった“果実”の生産も始まりつつある。

最初期の頃の銅色のリンゴでは精々200か300程度までしか上げられないが、それでもこれは世界を変えうる一歩である。

 

 

幾つもの扉を抜ける。

気付けば周囲の壁は掘り進められた坑道の岩や泥を塗り固めたモノではなく、室内の様な整然とした石へと変わっていた。

まるで宮殿か何かの様に石のタイルがびっしりと敷き詰められた通路を足音を立てながら二人は進み、大きな鉄製の扉を開けた。

 

 

 

 

開けた空間であった。

空虚で、真っ暗で、何もない虚空だ。

何百という人間が収容可能なホールはプルートが設計され、建造された当初から存在している。

 

 

 

これこそかつてのアリストテレス卿が用意しておいた史上最大規模の魔力/天力を用いた施設であった。

当代であるプラン・アリストテレスもこの施設の存在は知っていたが、使うつもりなどなかった禁忌の地。

竜王という明確な巨悪にして何もかもを破壊しかねない存在を認めなければ使う事などなかっただろう。

 

 

 

カツ、カツという足音だけが響く。

部屋の中央には巨大な皿が置いてあった。

まるで祭壇にある神への捧げものを乗せる皿の様であった。

 

 

プランが歩み寄り、彼は指先を軽くナイフで切って血を一滴垂らす。

アリストテレスの血を認識し、主の帰還を悟った部屋が歓喜する様に震えた。

真っ赤な雫が更に落下すると……深紅の光のラインが部屋中を駆け巡り、次に青光りへと変わっていく。

 

 

 

光は天上へと駆け上っていき……やがてドーム状の天井全体を恐ろしい程の量の輝きが満たす。

何万を通り越して億の単位で輝く一つ一つの光に意味がある。

アレらは全て夜空の星……もっというなれば星の集合体である銀河を表している。

 

 

美しい光景であるが、アリストテレスは何の感慨も抱いてはいない。

 

 

 

様々な星があった。

銀河があった。

暗黒の星があった。

恒星があり、恐ろしい勢いで回転する星があった。

 

 

生きている星。死んでいる星。

ガスで満たされた星雲に、銀河を繋ぎとめる中心の暗黒天体。

全てが恐ろしい程の精度で写し取られ、輝いている。

 

 

 

決して乱雑にそれらしく配置された光ではない。

全てが実物の宙と同じ様に配置され、同じように輝きを放っている。

プランが手を翳し、概念的に施設を操作する。

 

 

 

すると夜空の星が様相を変えていく。

ミズガルズを中心に太陽の軌道が描き出される……黄道と呼ばれるモノであり周囲に天球が形成されていく。

ミズガルズの周りを太陽がぐるぐると回り、その外側に12の星座が描き出される。

 

 

 

黄道12星座と呼ばれる美しい絵図であった。

ルファスとあの夜に見た美しい星座を彼は空に描き出していく。

更に天球上に赤道座標を書き連ね、最後には宙を駆け巡る膨大な……それこそ無尽蔵な量のマナの流れを可視化して書き連ねる。

 

 

 

 

結論から言おう。

ミズガルズだけではなく、この宇宙そのものにマナは満ち溢れており、それは潮の流れの様に無限の空を循環し続けているのだ。

そしてこの施設の役割はそんな宙に満ちるマナを蒐集し、加工し、人の身で摂取可能な状態……果実へと変換するものである。

 

 

 

【バルドル】にも同様の機能が備えられているが、アレとは規模が違う。

新たに手に入った虹色羊の羊毛を用いてのアップグレードを何度か繰り返せば【バルドル】と同等以上の効率でマナの蒐集も可能になるだろう。

 

 

 

……まだいくつか必要な要素があるが。

 

 

 

 

「施設そのものは問題なく動きそうですね。

 虹色羊の毛を用いて幾つかの回線を補修すれば一応ここは完成となります」

 

 

 

 

「それだけじゃまだ動かんっちゃろう?」

 

 

 

プランは頷く。

言わばここは蛇口にして変換施設であり、まだ肝心の水道は出来ていないのだ。

必要なのは惑星規模、否、星系や星団という規模でも通じる程の巨大なマナの通り道である。

 

 

 

既にアリストテレスはソレを見つけている。最高の道を4つほど。

すなわち惑星中に根を張り巡らし微睡続ける龍の身体である。

 

 

 

月水金を除く4属性の龍はミズガルズという惑星と半ば一体化して眠り続けており、それは女神の号令がなければ本格的な稼働はしないのだ。

そもそも銀河規模の存在密度を持ち、半ば概念生命体と化した龍にとってマナとは血液のようなものだ。

自分の中を流れる血液が少し増えたからと言って気にする龍は存在しないとアリストテレスは知っていた。

 

 

 

仮に起きたら? 

その場合はミズガルズの終わりであるが、女神は今の所それを望みはしないだろう。

もしも本格的に動き出したら残念ながらゲームオーバーである。

 

 

大いなる計画にはリスクがつきものであり、こればかりは賭けになる。

プランがこの施設を使いたがらない理由の一つがソレであった。

 

 

 

しかしそうも言ってられないというのが現状である。

ミョルニルで見た竜王を思い返す。

女神を狂信する彼こそが皮肉なことに女神の世界から最も外れた存在と化している。

 

 

 

女神の意に反して文字通り人類を根絶……いや、ミズガルズそのものを粉々にすることさえ彼はやりかねない。

それも悪意を以てではなく、うっかりでだ。

事実、最後に迎撃した【流星脚】がもしもミズガルズに当たっていたら、星は抉り取られるように吹き飛んでいただろう。

 

 

 

 

クラウン帝国が新しい勇者を召喚しようとしているがプランは正直な話、無駄であると思っている。

たとえ勇者を100人呼ぼうと、アレには勝てないだろう、と。

 

 

 

と、なると女神はどうするか?

己の計画をズタズタにするイレギュラーをどうするか?

そしてラードゥンは言って判る質では断じてない。

 

 

 

女神が何と声を掛けようと、彼の狂った頭では変な変換をされるのは目に見えているのだ。

と、なると……魔神王、もしくは最悪その兄弟たちが動き出す可能性は大いにある。

その日こそがミズガルズ最後の日である。

 

 

それだけは避けねばならない。

ルファスとアウラ、カルキノスにアリエス、そして己のリュケイオンの民たちの未来が閉ざされてしまうのだから。

 

 

 

プランはため息を吐いて施設を軽く操作し状況を確認。

やはりというべきか接続を必要というメッセージが空中に光の文字を描きながら現れた。

 

 

 

 

「エルフたちとの話し合いが必要になりますね。

 彼らの森の地下にある“根”をこちらに引っ張ってくるのです」

 

 

 

 

エルフは森と一体化した集落を築いている。

全長100メートルどころか、キロ単位で天を衝く超巨大な樹木の上に国家を作り上げているのだ。

しかし地震などによる倒壊の心配は決してない。それどころ火事による燃焼さえもエルフたちは恐れない。

 

 

 

何故ならば彼らの住まいの根には「木」属性の龍の身体が鎮座しており、そこから伸びた枝こそが森の正体なのだから。

このプルートが出来た理由しかり、龍とはただ存在するだけで世界に途方もない影響を与えているのだ。

 

 

 

「あまり急ぎすぎんでよかぞ。とりあえず段取りだけつぐでら、少しん休みんしゃい」

 

 

「何でんかんだっちゃ自分ひとりでやるーて思うたら大間違いだぞ」

 

 

 

モリア王の言葉にプランは微笑みを返し「ありがとうございます」と返して頭を下げた。

少しだけ強張った肩を解す様に何回か腕を回してから一息吐く。

すると彼は一つ思い至った。

 

 

 

この施設を自分が使うとは限らない。

しかし未来において誰かが使うかもしれない。

そういった場合の説明書がないことに思い至り、少しだけ悪戯心が湧いてくる。

 

 

使い方やこの施設について大まかな説明を後世に残しておくために、彼は先ほど魔神族から精製したばかりのマナ・ダイアモンドに【錬成】をかけ始めた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




デレの第一歩までようやくこれました。
そして主人公の面倒で頑固な所も徐々に描写を増やしていきたいですね。
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