ラスボスからは逃げられない! 作:宇宙きのこ(ミズガルズ産)
突然の乱入者に一瞬だけ眼を見開いたルファスであったが、直ぐにその顔には虚無が戻る。
余りに深すぎて誰にも、それこそ本人にさえ判らない絶望と憎悪が渦を巻き自分の邪魔をするカルキノスを威嚇する。
即ち翼が蠢き鋭利な形状に変化したのだ。
もはや彼女のソレは翼ではなかった。
彼女の意思に応じて変化/変異し彼女を傷つける全てを排除する自立した防衛機構である。
何百もの刀剣の切っ先がカルキノスに向けられる。
いや、カルキノスだけではない。
彼女はこの世の全てに刃を向けていた。
彼女を包む様に全方位に刃が出現し、まるで剣山の様であった。
何もかも拒絶し近寄らせまいとする彼女の恐怖がそこには込められていた。
そう、ルファスは怖がっているのだ。
いるかどうかも判らない敵を恐れている。
父親が母親を殺し、己をも殺そうとしてきた光景は繊細な彼女の心をズタズタに引き裂き、あらゆる全てへの絶望と憎悪に塗りつぶしてしまう程のトラウマだ。
しかしカルキノスは瞬き一つしなかった。
じっとルファスを見つめて動かない。
攻撃さえしない。
「どいて」
「嫌です」
ミシっとルファスの握りしめられた拳から嫌な音がする。
強く握りすぎたソレからは血が滴っている。
この男の頑強性を嫌と言う程に知っている彼女は遠回りをすることにした。
「彼はどこ?」
ぐるりと周囲を見渡す。
少なくとも見える範囲にプランはいなかった。
もしかしたら何処かの草むらに隠れているかもしれない。
気配探知は……出来ない。
変異を無茶苦茶に歪めてしまった結果なのか、今の彼女は戦闘能力以外のあらゆる能力に大幅なデバフが掛かっていた。
思考はもちろんのこと、普通ならば直ぐにでも判りそうなプランの位置を知る事さえ今の彼女には出来ない。
深すぎる負の感情が少女の瞳を濁らせてしまっているのだ。
「知ってどうなさるおつもりで?」
「ころすの」
無機質な声でルファスは答えた。
何時もの様な覇気に満ちた快活とした声を知る者が聞けば耳を疑うような声音であった。
深い谷底から響いてくる様な不気味で生気のない声だ。
「…………」
余りに変り果てたルファスの姿にカルキノスの顔に悲しみが浮かぶ。
彼は己の縄張りである屋敷に珍しい気配が近づいてきたことを知っていた。
何処かルファスに似たソレがプランに接触していたことも。
プランが許可を出したというのならば何の問題もないと考え……これが結果だ。
誰もが不幸になっている。
誰が悪い、誰々のせいだと彼は糾弾するつもりはなかった。
彼はここで食い止めるつもりであった。
不幸は起きてしまった、しかしそれ以上は決して連鎖などさせないと。
「NOです。それだけはさせません」
「……あなたを殺してから探す」
「それもNOです!!
レディ、貴女には誰も殺させません!!!」
ルファスの瞳がぎょろっと動いてカルキノスを見た。
目的を達成するためには排除しなくてはならない障害として彼女は彼を見たのだ。
レベル1000、誰もが例外なく歴史に刻まれる最高峰の存在は眼力だけでカルキノスを威嚇する。
瞬間、ルファスを中心に空気がかき混ぜられた。
ざわざわと木々が揺らぎ、大地には微かなひび割れが走った。
本来物理的な影響などないはずのソレは、ルファスが使えば話が違う。
憤怒を込める。
憎悪を練り込む。
絶望を叩き込む。
みんなみんなわたしを苦しめるの。
だからみんな消えちゃえ。
この世の全てを呪う少女の、悲鳴が放たれる───。
【威圧】
瞬間、リュケイオンを中心にとてつもない圧が世界へと向けて放たれた。
世界の何もかもを呪い続けるソレは遠く離れた国の人々にさえ眩暈を引き起こさせるほどの絶望が込められていた。
「ぐっ……!!」
まともに受けたカルキノスは微かに膝を落とすが……ドンっと一度だけ大地を強く踏みつけると屈しかけた身体を持ち上げる。
「大したことっ、ないですねぇ……!」
奥歯を噛み締めながら彼は叫ぶようにルファスへと言った。
「以前のレディのpunchの方がずっとずっと、powerfulでしたよ!」
答えはなかった。
【威圧】で無力化できないと悟った彼女は拳を振るう事にしたのだ。
大地を抉り取りながら踏み込み、一瞬でカルキノスに迫るとその腹部に打撃を叩き込む。
限りなく光速に近い拳はほぼ無尽蔵の質量を得て目障りな壁へと叩きつけられた。
大砲が着弾したかの様な衝撃と重低音が響き、カルキノスの「く」の字に身体を折り曲げた。
【アクベンス】というカウンタースキルを持つ彼であるが使わない。
先に宣言した通り、ルファスもプランも、両方を助けると彼は決めているのだ。
「がっッ……!」
肺の中の空気を無理やり吐き出されて一瞬だけカルキノスは意識を失いかけるが、倒れない。
ミシとあばらにヒビが入り、一歩だけあとずさ……らない。
彼は真っすぐにルファスを見つめ、まだ希望は無くなっていないと訴えかけた。
「レディ……お母さんはまだ亡くなってはいません……あの方はいま戦っているのです」
「ですからどうか、お戻りになってください……」
貴女の力が必要なのですと彼は続ける。
「……どうせだめに決まってる」
ルファスは頭を横に振る。
母が生きていると言われても彼女の心は晴れない。
この世は自分に理不尽しか齎さないと諦めきった彼女にとってカルキノスの言葉は希望などではなく、更に深い絶望への誘いにしか聞こえなかった。
その言葉にカルキノスの顔に苛立ちが浮かんだ。
プランとルファス、二人を蝕む諦観についに彼は限界を迎える。
「いい加減にしてください!」
血を吐くような叫びであった。
リュケイオンの街を駆け巡り、助けを求めて回ったカルキノスはプランがルファスを追っていったあとに何が起きたかを知っているのだ。
いま町中の人々がアウラを助けようと屋敷に集っている。
とある人物は家族の為に蓄えていたポーション類を惜しみなく差し出した。
とある人物は包帯などの医療用品などを持ち寄り、カーテンなどを切り分けてあっという間に彼女を隔離する医療部屋を作り上げた。
とある人物は付け焼刃ではあるものの身に着けていた医療知識でピオスのサポートを。
ルファスに野菜をよく渡していた恰幅のいい中年女性は助産婦などの経験もあるため、血まみれのアウラを見ても臆せずに懸命に点滴などを行っている。
肉屋の男性はピオスの指示に従いリュケイオン中の人々にありったけの回復アイテムを求めて走り回っている。
魚をよく少女に渡していた男は巨大な桶を幾つも運んできて、その中に清水を満たした。
“子隠し”騒動で我が子を失った経験もあるとある夫婦はあれ以降に身に着けていた【プリースト】のクラスの力を用いてピオスを天力で癒し、彼の体力と気力を回復させ続けた。
アウラの命が危ない。
ただそれだけで理由も聞かずにリュケイオンの人たちは彼女を助けるために全力を尽くしていた。
その熱狂ぶりは先にルファスが放った【威圧】を誰もが跳ね除けてしまうほどである。
レベル1000の彼女が放つソレは心の弱い者であれば絶命さえしかねない威力が宿っているというのにだ。
だが「うるさい。今は忙しいんだ」と少女の絶望を大人たちは相手にもしなかった。
ルファスちゃんには悪いが、今は相手できないと彼らは諦めた少女の戯言を聞き流しただけである。
そして“子隠し”に唐突に我が子を奪われた者たちが多数いるリュケイオンにはこの手の悲劇を心から拒む者が数多くいるのは当然と言えた。
死ぬな。死ぬな。
娘さんを置いていくんじゃない。
ルファスちゃんを置いていっちゃだめだ。
夜中だというのにプランの屋敷にはたった一人の女性を助けるためにリュケイオン中の意思が集まっていた。
誰も彼もがアウラを助けようと必死であった。
そんな光景を遠くから見つめていたアリエスも何かを決意したような顔をしていた。
誰も諦めていない。
“いつでも、何でも申し付けて下さい。その子の笑顔が見たいんです”
あの時の言葉を誰もが守っていた。
だというのにそんな美しい光景を知らずにこの世の全ては不幸ばかりだと沈み切った顔を見せるルファスをカルキノスは気に入らなかった。
そして、そんな彼女を助けることを放り出そうとしたプランに対しても彼は友として本気で怒っていた。
「エノク夫人も、リュケイオンの皆だって必死に頑張ってる
というのに、貴方達二人は何をしているのですか!!」
天を衝くような彼の迫力にルファスは思わず後ずさっていた。
「…………」
プラン・アリストテレスはカルキノスの言葉を聞き、自分が失敗を上塗りしていたことを自覚していた。
どうやらまた自分は間違えていたらしい。しかし、まだ挽回はきく。
※ どうしたい?
アリストテレスはプランに問う。
己たちの器である彼が重傷を負っていても彼らは欠片も動じてはいない。
むしろここが分岐点であると瞬時に悟り、見守る姿勢を崩さない。
彼らは基本的には人類を思っている。
この腐った世界を何とかしたいという理想を抱いた者達でもある。
その為にはベネトナシュにしたような非道な手を使う事もあるが、最終的には当代の決定と意思を尊重するという方針は変わらない。
当代の心に変化が訪れつつあるのを彼らは知っている。
何の執着もなく欲もなかった存在がソレを抱きつつあるのを。
そして、女神への嫌悪が微かに変貌していっていることも。
何も残さず朽ちるつもりだった男の心が変わりつつあるのは彼らにとっても喜ばしい事である。
故に問うのだ「どうしたい?」と。
昔のプランならば「何も」と返していただろう。
失敗した時点で全て投げ捨ててしまう無機質さ、無感動さが彼の根幹であったからだ。
しかし……。
「彼女を助けたい」
産まれて初めて彼は己の願いを口にしていた。
30年の人生の中で初めて彼は人間らしい欲望を抱いたのだ。
※ 殺した方が早い。
今のルファスであってもやり方は幾らでもあるとアリストテレスは囁いた。
例えばノーガードにしたように体内に『インフィニティ』を置いてきて弱体化させる。
例えばオークにやったように臓器を抜き取る。
例えば竜王にやったように反発係数を弄り、通常の何倍もの感度で地面を跳ねさせてHPを削り切る。
例えば【サイコスルー】で“回転”を纏わせた弾丸を彼女に打ち込み、一回転ごとに当たり判定を発生させてHPを消し飛ばす。
例えば【瞬歩】と【サイコスルー】の合わせ技で彼女をすり抜けながら、首元に天力と魔力を収束させ【エクスゲート】を瞬間的に挟み込んで斬首する。
あの状態のルファスであっても殺し方など百も二百もある。
しかしプランは首を横に振った。
こうしている間にも刃の突き刺さった腹部から血はどんどん流れていく。
だが血を失い命が削れているというのに彼の頭と胸は今までのどんな時よりも活発で晴れ渡っていた。
「助けたい」
※ 好きにするといい。
アリストテレスは一言だけ呟くと、そのまま沈黙する。
プランは自分の身体に【観察眼】を使い、状況を確認していく。
大量出血。
このままでは失血死するだろう。
刃は臓器を傷つけている。
アウラと同じかそれ以上の大怪我だ。
下手に動けば腸が零れるかもしれない。
体内に【デネブ・アルゲティ】に酷似した一種の呪詛を確認。
ルファスの絶望を練り込まれたソレはプランという存在を呪い続け、傷の回復を阻害し続けている。
状態は最悪を通り越している。
このままいけばプランは死ぬだろう。
そんな中にあって……彼は微笑んだ。
初めての感覚であった。
痛みが、ではない。
死ぬという事を意識した事がないわけではなかった、ここまで身近に感じても何にも思わない自分に彼はため息を吐く。
【バルドル】の尻尾を目の前に持ってくる。
先端を展開し、【アンタレス】で満たされた注射針を取り出した。
ノーガードに用いた時より改良を繰り返し一応は様になっているがソレは万全の状態で用いた場合の話だ。
間違っても死にかけで内臓が零れそうなときに用いるものではない。
だが彼に提示された条件は二つに一つであった。
即ち、いま死ぬか、後で死ぬかだけだ。
つまり最初から何も変わらない。
彼女のこれからの1500年……いや、もっと長くなるかもしれない人生の為に自分のこれからの50年を使うのだ。
一瞬の躊躇もなくプランはアンタレスを己の腹部に突き刺した。
治せないならば、作り替えればよい。
プランもまたアリストテレスである故に、そのような発想が出来た。
一瞬だけ冷たい感覚を彼は覚えたが……次に燃え上がるような痛みが襲ってくる。
ゴボリと臓器が【アンタレス】を吸い込み、膨らむ。
それらは断裂した筋肉の膜や他の傷ついた臓器を無遠慮に圧した。
ノーガードの時は無節操に強化を施された臓器が破裂し、血管が幾つも吹き飛んでいたが、さすがに改良を施したコレはそのような事にはならない。
しかし激痛は変わらない、平時であってものたうち回るほどの苦痛が止むことなく男を襲う。
これは麻酔無しで開腹手術をするようなものであり、皮肉な事にプランはアウラが味わっている痛苦と同じモノを抱いたのだ。
「────ぅッッ!!」
奥歯にヒビを入れながらも彼は【観察眼】を止めない。
【ターゲティング】を併用し、自分の身体がどうなっていくかを確認し続ける。
たっぷり3秒ほど激痛を味わいながら、彼は少しずつ慣らし、次に【錬成】を自分の肉体に用いた。
絶えず自壊/強化/変動を続ける肉体は言わばあらゆる数値が定まらないあやふやな状態である。
【錬成】を用いて変わろうとする数値を弄るのは難しくはあったが、不可能ではなかった。
バラバラに分解していく船をその場で修理しながらどうにか航行しているようなものであるが、やるしかない。
「ッっ…………!!」
人間は一定以上の痛みを浴びせられると悲鳴さえ出ないのだなと彼は何処か客観的に自分を分析しつつ動く。
時間はあまりない。カルキノスのやせ我慢は素晴らしいが、そう長くはもたない。
臓器にかかる負荷をフレーム単位で管理/処理しつつ彼は立ちあがった。
ジュゥゥウと【アンタレス】を打ち込んだ個所から煙があがり、肉が沸騰を繰り返す。
痛覚神経を直に焼かれるような痛みはプランであってもキツイものがあったが、彼は荒い息を吐きながら何とか一歩踏み出した。
秒どころかフレーム、サブフレーム単位で彼の肉体は如何に自分の身体が壊れていくかを喚きたてていたがプランは気にしなかった。
もはや無謀などという言葉では表しきれない所行だ。
相変わらずどうすればルファスを助けられるかは判らない。見当もつかない。
しかし、あの状態から戻す方法なら一つだけ心当たりがある故に彼は動くのだ。
殴打。
小さな拳が腹部に叩き込まれる。
肺の空気が押し出され、カルキノスは咳き込んだ。
やろうと思えば今受けたダメージを1,5倍にして反射するスキル【アクベンス】を行使できるが、彼は使わない。
殴打。
鼻が曲がった。
【アクベンス】を彼は使わなかった。
殴打。
右足が折れた。
膝の皿が割れ、ぐらつくが彼は倒れない。
【アクベンス】を彼は使わなかった。
殴打。
顎を撃ち抜いたソレは彼の歯を3本ほどへし折ったが、カルキノスの顔には己の苦痛に対するモノよりもルファスに向ける憐憫が強く宿っていた。
自分が受ける肉体的な痛みより、母の生存さえ諦めてしまう程の絶望に襲われた彼女を彼は心から悲しんでいた。
それが気に入らないと思ったルファスは更に何発も彼に拳を叩きつける。
余りの頑強さに己の手さえも皮がむけ、骨が軋むが彼女は気にしない。
自分の命さえどうでもいいという絶望が彼女を突き動かす。
それでも【アクベンス】をカルキノスは使わない。
殴打。
奥歯が割れた。
殴打。
左腕があらぬ方向をむく。
高レベルの魔物でなければとっくに死んでいる攻撃を受け続けながらも、彼は一度たりともルファスに反撃をしない。
「……なにしてるの」
もはや無事な個所などない程に打ちのめされたカルキノスに対してルファスは心からの疑問を投げかけた。
全く意味が判らない事であった。
間違っても弱いわけではないカルキノスが自分に対して何の反撃もしないことが。
実の所、今のルファスとカルキノスの戦闘スタイルの相性は最悪だ。
物理攻撃主体の彼女に対し、必中カウンターを擁するカルキノスはメタと言っていい程である。
しかしそんなことは彼には関係ない。
何故ならばルファスは敵ではないからだ。
ボロボロになりながらも彼はいつもの様のニッと快活な笑みを浮かべた。
血を零しながらも彼は変わらずルファスに笑いかけた。
「ミーはgentlemanですからね! いつだってレディとフレンドの味方なのですよ!!」
「…………」
何の感慨もない瞳で一瞥してからルファスは瞼を閉じた。
鬱陶しかった。こんな自分などほっといてほしかった。
どうせこの世には悪い事しかない。世界は自分を苦しめるだけだ。
アン・ブーリンは正しかった。
自分を愛さない世など何もかも壊してしまえばいい。
「……いつか、今日の事がjokeの話題になる日がきます。
ミーは信じていますとも、貴方たちをね」
少女の憎悪と怒りを目の当たりにし、己の命に危機が迫っていてもカルキノスはルファスを思いやる姿勢を崩さない。
それがたまらなく怖くてルファスは拳を構える。
今度こそ殺すという意思を込めるが……カルキノスは明後日の方向を向いて口を開いた。
大切な友人に彼は語り掛けた。
「YES! HEROの帰還ってやつですね」
足音を立てて男───プランが近づいてくる。
【瞬歩】も【座標移動】も使わず、ただ歩いている。
刺された腹部から常に真っ赤な煙が噴き出ており、沸騰する湯の表面の如く肉が常に泡立っていた。
一分一秒一フレーム、更に短い間隔で彼の身体は【アンタレス】によって茹でこまれている。
回復を阻害されるならば、肉体を常に変異させ続ければいいという力技による解決であった。
代償として死ぬほど痛いが死ぬことはない。少なくとも今、この場では。
【バルドル】を纏ってこそいるが、兜は脱いで素顔を晒している彼の顔には微笑みがあった。
無機質なものではなく、先に怒りを見せたカルキノスに何処か遠慮しているような、怒った友にどうやって謝ろうか悩んでいるような顔だ。
「まさか。
「HAHAHAHA!
ついにミーのtimeが来ちゃう感じですね!
……それはそうと後でお話があるのは変わりませんよ?」
駄目かぁ、と肩を落としてシュンとするプランは彼の隣に並ぶと肩を軽く叩いた。
瞬間「changeです」と呟いてからカルキノスは数歩下がってから崩れる様に座り込んだ。
とうに限界を超えていた彼は己の役目は終わったと悟り、後は友に託したのだ。
ずる、ずると這いずりながら消え去っていく彼をルファスは気にも留めない。
彼女が見るのはただ一人だけであった。
「ルファス」
「…………」
向かい合う。
青と赤の瞳が交差する。
ルファスは唇を噛み締めプランを壮絶な瞳で睨みつけた。
プランはまるで何時ものなんて事のない会話でもするように言った。
「家に帰ろう。お母さんが待ってるよ」
「やだ……!!」
どうせ助からない。
どうせ無駄だ。
心にしみ込んでくる声を拒絶する様にルファスは頭を振った。
翼が形を変えて鋭利な刃となりプランに切っ先を向ける。
敵意と拒絶と恐怖。ルファスの内心を塗り固めたソレを見てプランは瞑目する。
……実の所、彼はルファスを助ける方法を閃く事は出来なかった。
ただ「助けたい」という一心だけが彼を突き動かしている。
産まれて初めて彼は無計画な事をしようとしていた。
「貴方なんかだいきらいっ!!
わたしに近づかないでっッ!!!」
ルファスがありったけの拒絶を声に乗せて叫び、プランに飛びかかる。
真っ赤な瞳にどうしようもない憎悪と絶望を宿らせ、身体に負荷を掛けながら彼女はプランを殺すべく動くのだ。
全身からどす黒いマナを噴き上げ、肉体が悲鳴を上げながら変異を繰り返す。
ルファス・マファール────レベル1000の頂に無理やり達した彼女はあらんかぎりの力をもってプランを殺すべく迫る。
つまり、現状は一言で纏められる。
スペックだけ見ればこのルファスは原作時間軸のレベル1000状態の彼女と同じか上回ってる部分さえあります。
しかし実際に戦ったら手も足も出ずに惨敗しそうではあります。