ラスボスからは逃げられない!   作:宇宙きのこ(ミズガルズ産)

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プランたちの“作戦かいぎ!”

 

 

「“勇者”キタボシ・ナナコよ!」

 

 

銅鑼を力いっぱい叩いたような重々しく巨大な声が玉座の間に響く。

左右に何百と言う文官/武官が並んでも全く問題ない広大な空間は正しくクラウン帝国という超巨大国家の威容を端的に表している。

何十段もある階段の上に拵えた玉座よりアルカスは奈々子に笑顔を浮かべて声を掛けていた。

 

 

 

王と臣下というよりは対等な友人同士の会話の様な雰囲気である。

前提として十代の少女を自分たちの勝手な理屈で呼び寄せておきながら、居丈高に振舞う程アルカスは恥知らずではない。

 

 

 

「はい」

 

 

対する奈々子は直立不動で皇帝の前に立っていた。

勇者である彼女はアルカスと対等かそれ以上の立場であり、頭を下げる必要などないのだ。

 

 

 

その態度に「不敬だ」等と声を上げる者はいなかった。

むしろ誰もが彼女を興奮/奇異/恐怖の眼で見ている。

 

 

異世界より呼び声に応えてやってきてくれた来訪者。

ミズガルズを救ってくれる救世主。

誰よりも強い勇者様。

 

 

 

しかしそれでも“本当に強いのか?”という猜疑はやはり付きまとっている。

伝承に謳われたマイクと呼ばれる色黒で屈強な肉体をした勇者……如何にも強者といった立ち振る舞いの人物ならともかく奈々子は本当に少女にしか見えないからだ。

ルファスと行っていた模擬戦でも見れれば話は別だが、アルカス以外は誰も知らない故に仕方ない。

 

 

 

「此度は我らの呼び声に応えて頂き、深く感謝する」

 

 

 

「汝の献身、博愛こそ正しく女神の寵愛を得るに値する気高き魂の証明であろう!」

 

 

 

玉座に座りながらではあったが、アルカスは頭を下げ勇者に敬意を表明した。

続く様に左右に並んでいた数百の臣下が奈々子の前に跪く。

 

 

 

「……」

 

 

映画のワンシーンの様な光景に奈々子は眩暈を覚えたが、表面上は顔色一つ変えていない。

余りに緊張しすぎた結果、彼女は己の現状を何処か第三者の視線を通してみているような錯覚さえ覚えていた。

瞬きを数回した後、奈々子は視線をアルカスに戻した。

 

 

 

ニッコリと視線のあった皇帝は人懐っこそうに笑う。

身長3メートルを超える大男を通り越したクマの如き偉丈夫だというのに、子供のような無邪気な笑顔であった。

パク、パクと何回か唇を彼は動かした。

 

 

 

“だ”

“い”

“じょ”

“う”

“ぶ”

 

 

 

 

皇帝としての厳粛な顔と彼個人の気安い男としての顔を器用にアルカスは使い分けていた。

そんな祖父が孫を見るかの様な視線に奈々子の中の緊張が少しだけ穏和される。

奈々子はからからの唇を舐めて潤わせた後、口を開いた。

 

 

 

段取りは前もって終えている。

リハーサルは何回か繰り返しており、一言一句とまではいかないものの会話の流れには台本がある。

この儀礼は言わば対外的な意味合いが強いのだ。

 

 

 

ルファスと共に頼まれた魔物討伐と言う依頼に対する返答を彼女は行う。

まず第一歩。勇者として踏み出す為、皆に認めてもらうために。

 

 

 

「アルカス陛下。聞けばこのマルクト近郊の火山に魔物が住み着いたと聞き及びました」

 

 

 

「如何にも」

 

 

 

 

一瞬の間のあと、奈々子は己の意思で宣言した。

女神さまに選ばれたからだとか、呼び出されたから仕方なくだとか、そんな考えは全て消した。

そういう言い訳はいらない。

 

 

 

(私がやりたいからやるんだ)

 

 

 

“誰かが困っていたら助けるのは当たり前”

 

 

 

そんな青臭い常識と理想を彼女は本気で信じていた。

少なくとも「現実なんてこんなものだ」と拗れたくはなかった。

 

 

 

“勇者”としてまずは第一歩。

彼女は勇気を振り絞った。

 

 

 

「斯様な地に魔物が居ついたとなれば、マルクトの民たちは不安をおぼえることでしょう」

 

 

 

300年前の先代の勇者と同じ様に、彼女もまた誰かの為に刃を振るうのだ。

それがまるで当然であるかのように。

 

 

 

「私にその魔物の討伐をお任せください。

 まずは貴方たちを助けたいのです」

 

 

 

 

「……ありがとう、勇者よ」

 

 

 

不安を抱きながらも誰かの為に戦おうとする少女の顔を前に、アルカスは肘掛けをヒビが入るほど強く握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「情報を纏めましょう」

 

 

 

部屋に集まったルファスと奈々子を前にプランは開口一番そう述べた。

彼はいつも通り微笑みながら二人の少女に視線をやった後、まさかのゲストを見て一礼する。

 

 

 

「よろしくお願いいたしますね、メグレズ様」

 

 

 

「はい! ……それと「様」はいらないです。自分などまだまだ未熟者ですから」

 

 

 

興奮を隠し切れない表情でエルフの少年──メグレズは答える。

まさかの助っ人にルファスはプランを「大丈夫なのか?」という視線で見た。

予想通りの彼女の反応に笑いを噛み締めながら答えてやる。

 

 

 

「アラニア殿の推薦なんだ。経験を積ませてやって欲しいと頼まれたのさ」

 

 

 

「それと、勇者の初陣にエルフ族が協力した、という実績も欲しいみたいです……」

 

 

 

小さくメグレズが付け加える。

クラウン帝国が勇者を呼んだことは既に各国に知れ渡っている。

各々の国がどう動くか考える中、エルフはこう出たらしい。

 

 

 

どんな形であっても勇者の手助けをした、という記録さえ残ればそれだけで後の影響力も変わってくるのだから。

少なくとも何もしなかったよりはマシだ。

それほどまでに勇者というのはミズガルズにおいて特別な存在なのだ。

 

 

 

「メグレズさん、今日は一緒に頑張りましょうね!」

 

 

 

「はい!」

 

 

 

エルフと冒険。

ファンタジーの王道な展開に興奮を隠しきれない奈々子が笑顔でメグレズに告げると、彼の耳がピィンと天を衝き、ルファスが眼を丸くする。

自分の翼はそういう用途のためにあるから当然として。

 

 

 

(そこ動くんだ……)

 

 

 

エルフの耳って動くんだなと思いながら自分の耳たぶを触ってみる。

もちろん動かせ……できそうな気がしたがやめておいた。

こんなことの為に身体を最適化するのは嫌であったし、何より癖になったら困る。

 

 

 

「……」

 

 

メグレズは深呼吸すると、顔つきを変えた。

無邪気に未知に憧れる少年のものから100年以上は生きているエルフの顔へと。

意外かもしれないが、この部屋での年長者は彼なのだ。

 

 

 

「勇者ナナコ様。アリストテレス卿。そしてルファス・マファール殿」

 

 

 

一人一人の名前を丁寧に読み上げた後、彼は膝をついた。

今回自分たちが任された任務がどれほど重いのか彼は正確に把握している。

決してこれは子供の遊びではないのだ。

 

 

 

「私の名前はメグレズ。

 光の森、森林同盟に名を連ねる氏族の男。

 此度は私の様な若輩者をこのような栄光ある面々の末席に加えて頂き、深く感謝いたします」

 

 

 

 

当然の話として彼もまた覚悟を決めている。

魔物討伐の際に命を落とす可能性があることも含めてだ。

しかし、それでもなお好奇心が勝った。

 

 

 

メグレズの夢はとても単純なものだ。

彼は最高の魔法使いを目指している。

アラニアの様に指の動きだけで何十もの魔法を乱射できるような、いや、それ以上の使い手を彼は目指しているのだ。

 

 

 

ミズガルズ最高の魔法使いになる。

そして、エルフの森では見られなかった多くの未知を知りたいという探究心。

それがメグレズという男の芯である。

 

 

 

その為ならば命を賭けてもいい……いや、賭けて当然だと思う程に彼は覚悟を決めていた。

既に遺書は書き上げており、アラニアに渡されている。

仮に死んだとしても問題ない手続きは終わっていた。

 

 

 

「私のレベルは170。

 クラスは【メイジ】などを中心に魔法職を取っています」

 

 

 

レベルを明かす際に彼はちらっとプランを見た。

銅色の果実を食した事によりレベルを跳ね上げた彼が製作者に興味をもつのは当然と言えた。

 

 

 

 

「我が命を貴方たちに預けます」

 

 

 

「……承りました。

 だけど、貴方の役目は生きて帰る所まで含めてのもの。絶対に死んじゃダメです」

 

 

 

現代の日本では決して見られない死を覚悟した瞳を前に奈々子はたじろぎかけたが、直ぐに踏みとどまり返答する。

祖母が骨折した時にも感じた『死』という言葉を前に奈々子は顔を強張らせつつも諭す様に言う。

 

 

 

「皆で一緒に勝って帰りましょう! 

 私は皆を助ける為にここに来たんですから!!」

 

 

 

誰一人取りこぼさないと宣言した勇者にルファスは肩を揺らして笑い、プランは眩しいモノを見るように眼を細めた。

そしてメグレズは……眼を瞬かせた後に頷いた。

 

 

 

 

「では改めて今回の依頼内容と情報を確認しましょう」

 

 

 

話が一通り纏まった事を察したプランが口を開く。

彼は微笑みながら部屋に用意されていた黒板にサラサラと文字を書き連ねだした。

 

 

 

“クリフォ火山・魔物討伐”

 

 

 

「依頼主はアルカス陛下。クラウン帝国からの公式の依頼となるね」

 

 

 

凄まじい速度でプランは黒板にチョークを走らせ出す。

言葉にするよりもこうやって文字に起こした方がじっくり見れる上に、変な個所があれば検証も出来るのだ。

ちなみに奈々子はミズガルズの文字を当然の様に読めるし書ける。

 

 

勇者として活動するのに不備がないようにそういった常識は女神が与えてくれているのだ。

 

 

 

“クリフォ火山”

 

 

マルクトから北東に70キロ離れた位置にある火山。

標高4450メートル。

 

 

 

クリフォ火山に大規模な魔物の群れが巣を形成しているのが発見された。

竜王による魔物の招集以来かの地に魔物の姿はなかったことから、恐らく外部から移動してきたものだと思われる。

数度の偵察の結果、鳥獣系の魔物が最低でも300匹ほど発見されている。

 

 

推察になるが渡り鳥の様にミズガルズを周回していた魔物たちが翼を休ませるために一時的な仮拠点としてクリフォ火山に巣食ったのだと思われる。

魔物たちの平均レベルは推定で70~90と高レベルであるが、ルファスの【威圧】を使えば幾ら数が揃おうと意味はないのでこれらは障害にはならないだろう。

 

 

 

 

 

「……仮拠点なら、放っておいたら出ていくんじゃないですか?」

 

 

 

プランの説明に奈々子が感想を口にする。

言葉こそ上げなかったがルファスも同意見だったので視線を向けた。

 

 

 

 

「いくら魔物と言えどミズガルズ中を飛翔するのには相応のエネルギーが必要になります」

 

 

 

「何千、何万キロも飛びまわるのですから、当然補給がないとやっていけません」

 

 

 

魔物であろうと生物であろうと簡単な理屈だ。

“お腹が減ったら動けなくなる”というのは誰でも判る話であろう。

 

 

 

「そうなると魔物たちにとって手ごろな弁当がここにあるな……」

 

 

 

トントンと足の爪先で地面を───このマルクトをルファスは示した。

数十万単位のフレッシュな肉を満載した巨大な“ピザ”は魔物にとって最高のお弁当になることだろう。

 

 

ルファスは黒板に書かれていた「これらは障害にはならないだろう」という一文を目ざとく見つけ出し、皮肉るように微笑んでいた。

ほら、勿体ぶらずにさっさと言えという意思を込めて彼女は話を進める。

 

 

 

「それだけじゃないんだろう? 

 確かにレベル90程の魔物は人々にとって脅威だろうけど、その位ならばクラウン帝国だけで何とかできるはずだ」

 

 

 

「本命の話、聞きたいな」

 

 

 

ルファスに話そうとしていた内容を完全に読まれてしまい、プランは降参する様に両手を上げてから本題を切り出す。

チョークを手に取り黒板に新しい文章を書き始める。

 

 

 

 

 

魔物の群れには強力な統率固体──「長」が存在すると考えられる。

また、魔物たちが火山を住処にしてから急激に火山運動が活性化し始めている事と併せて考えるに「長」の属性は火属性の可能性が高い。

火属性で鳥獣系で、それでいて強力な魔物となると自ずと答えは絞られる。

 

 

 

 

つまり“不死鳥”と呼ばれる魔物が長の可能性が高く、そうなるとこの討伐任務は非常に危険なものとなる事だろう。

 

 

 

 

「不死鳥……まさか。

 だけど、あの魔物の移動経路はマルクトから外れているんじゃ?」

 

 

 

唾を飲み込んでから緊張した声でメグレズが言う。

エルフとして長い年月を生きてきた彼は多くの事を知っており、不死鳥についても知識として修めていた。

更に言うと鳥の魔物として最強の魔物である不死鳥はかなり有名なのだ。

 

 

 

「不死鳥……? 確かフェニックスだっけ」

 

 

 

ゲームやら漫画やら、色々な媒体で度々その名前を見ていた奈々子は感慨深げにつぶやいた。

そうかこっちにもいるんだと思いつつ、まさか本物と出くわす日が来るなんてと現実を噛み締めた。

世界的にも有名な魔法使いの少年の活躍を描いた作品でも大活躍してたなぁと故郷に思いを馳せた。

 

 

 

 

「はい。炎を纏い空を飛ぶアレです。

 かなり強い上に不死身と見紛う程にタフなのが特徴ですね」 

 

 

 

チョークが走る。

中途半端に知っているというのは却って危険な為、一から十まで丁寧にプランは説明を始める。

 

 

 

 

“不死鳥”

 

 

 

竜と並び称される最強クラスの魔物であり、個体数は極少数。

炎を自在に操るというよりは、炎が意思を持って鳥の形をしているといった方が正しい魔物だ。

“不死”という名前が表す通り、非常に再生能力が高く、生半可な攻撃では直ぐに再生してしまう。

 

 

 

また鳥獣系の魔物たちの王族として崇められている存在でもあり“四強”には及ばないまでも大規模な勢力を率いて世界中を渡り鳥の如く飛翔している。

本来マルクトは彼らの移動経路からは外れているのだが、何らかの要因によってクリフォ火山に来てしまったのだろう。

 

 

 

「“何らかの要因”とは?」

 

 

ルファスの問いにプランは予測ではあるがと前置きしてから答えた。

 

 

 

「ミョルニルにおいて“竜王”と“吸血姫”が衝突した際

 ミズガルズの運行そのものに支障を来してしまったのかもしれない」

 

 

 

竜王の所業は世界に対する影響など何も考えていないものであった。

惑星が砕けても構わないと言わんばかりに大規模で致命的な技を次々とを繰り返した挙句、一度はベネトナシュを殺害までしたのだから。

脳裏で想起させられるのはラードゥンが惑星に放った【極・発勁】である。

 

 

惑星の反対側まで届く拳圧はミズガルズを物理的に軋ませ、四季を歪ませた挙句、惑星を循環する風や大地のプレート構造まで狂わせてしまったのかもしれない。

エルフの例の件もそうだが、あの戦いによって狂った世界の循環の影響はこれからもどんどん出てくることだろう。

 

 

 

「…………」

 

 

 

プランの仮説にルファスは、いや、この場に居た全員が絶句と言った表情を浮かべた。

無理もない。戦闘するだけで惑星規模で異常を引き起こすなど想像を絶するとしか言いようがない。

 

 

メグレズが奈々子に視線を向ける。

竜王の規格外さを知り、彼女が臆してしまったのではないかと考えたのかもしれない。

 

 

 

「……それでも、私はやります」

 

 

 

顔を強張らせながら。

冷や汗を垂らしながら。

微かに震えながら。

そんな化け物と戦うなんて嫌だと心の何処かが叫んでいた。

 

 

 

しかしそれでも、奈々子は勇者として逃げようとはしない。

一度やると言ってしまった以上、投げ出すなどありえないと彼女は思っている。

もう少し彼女が歳を重ねていたらまた何かが変わったかもしれないが、それは無意味な仮定であった。

 

 

パンっと自分の頬を叩いてから奈々子は場を仕切り直す為に意識して声を張り上げる。

竜王の話はまた今度。今は眼前の不死鳥を何とかしなくてはならない。

 

 

 

「まずはこの依頼を無事に解決することを考えましょう! 

 プランさん、何か策や秘密兵器はありますか?」

 

 

 

「勿論」

 

 

 

にっこりとプランは少女を元気づけるように優しく微笑む。

メラクや天翼族に向けているモノとは違う、本当の意味での暖かい顔であった。

当代の勇者を助けるべく彼もまた出し惜しみするつもりはない。

 

 

 

「まず群れの魔物ですが、これらは気にしなくても大丈夫でしょう」

 

 

 

第一の障害として挙げられるのは魔物の大群である。

如何にレベル的には弱いとはいえ、それでも数の暴力というのは侮れないものがある。

しかし、残念ながらプランたちには一定以下の存在を篩にかける事ができる手段があった。

 

 

 

 

ルファスを見れば彼女は判っているといいたげに頷いた。

 

 

 

「ルファスの【威圧】を使います。

 彼女のレベルを考えればこれで戦わずに無力化できるかと」

 

 

 

天翼族の【威圧】はこういう時にとても便利であった。

数の暴力という誰でも判るアドバンテージを無効化できるのだから。

自分より下のレベル相手であれば問答無用で行動不能にする能力はあらゆる面で応用が利く。

 

 

先に彼女が考えた通り、国家中枢でコレを使えば国家機能を麻痺させる事さえ容易いのだ。

 

 

 

本来ならばレベル100にさえ滅多に届かないミズガルズにおいてルファスのレベルは800。

規格外と言う言葉でさえ表現できない次元にいるのが彼女である。

もはや彼女の前では竜さえ戦う事も許されない。

 

 

 

「魔物たちを無効化したあとはメグレズ殿と自分がマッピングを行い、ボスを探し出します」

 

 

 

「風の流れを読むんですね。お任せください」

 

 

 

メグレズが胸を張り、自分に求められている役割を確認する。

エルフの優れた風の魔法とプランの【観察眼】を併用して群れのボスを探し出すという計画を彼は理解しているようだった。

 

 

 

「もしもボスがルファスの【威圧】で無力化されているのならばそれで良し。

 ダメだったら……勇者様のお力を借りたいと思っています」

 

 

 

なのでそれまで戦闘は出来るだけ避けて体力は温存しておいてくださいと告げれば奈々子は緊張した面持ちで頷く。

 

 

 

「戦いは徹底的に避けましょう。

 うじゃうじゃいる魔物たちを全部相手にしていたらキリがありません」

 

 

 

「そして───」

 

 

次にプランは懐に手を差し込み“秘密兵器”を取り出し、全員に見えるように掌の上で転がした。

輝きを放つサファイアの様な結晶体に皆の、特にルファスの視線が釘付けになる。

翼が大きく震え、羽がささくれ立った。まるで危険な存在に警戒するかのように。

 

 

 

是なるはプルートで生産された新兵器の第一世代。

竜王との対決、そしてその後の世界でも人類を魔物や魔神族との脅威から守るために製造されし秘密兵器であった。

 

 

 

 

「もしも魔物の戦闘能力が想定以上だった場合はコレを使用します」

 

 

 

 

「これは……?」

 

 

 

怪しく輝く結晶から眼を離さずにルファスはプランに聞いた。

背筋がぞわぞわしてたまらない。

こういった宝石は好きな筈なのに、何故かこれから眼を離せないのは視線を逸らしたら危険だと本能が囁いていたからだ。

 

 

レベル800の存在に警戒心を抱かせる。

それがどれほど異常な事か。

 

 

 

「自分の作った秘密兵器さ。効果は……」

 

 

 

氷の様な無表情でプランは兵器の概要を説明し、話を聞いた3人は言葉を失うのであった。

 

 

 




結晶体

原作においてメルクリウスが女神の助力を受けて暴走状態になったのを人為的に再現し制御可能にした兵器で、一応はアイテム扱い。
なのでモンスターテイマーやアルケミストが自分よりも強い眷属を作れないという縛りを回避している。


簡単に言えば手持ち可能で誰でも制御できるエビル天然水。
間違っても海に落としてはいけない。

そして既に量産方法は確立済み。
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