赤き星の旅路   作:月影海斗

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第9話 星の輝き

 

「ったく。2人して小っ恥ずかしいこと言いやがって……」

 

 

 口調は偉そうだけど、エースの表情は緩んでいる。それにちょっと赤くなってる。僕とサボはその様子にニヤニヤしていたが、途端にエースが唇を尖らせた。

 

 

「何だよ、2人してニヤニヤしやがって。気持ちわりぃぞ」

 

「いやぁ、エースの反応が面白くてな」

 

「うん、今のエース。すごく可愛いらしいなと思っちゃった」

 

「んなっ!? か、可愛くなんてねぇよ!!」

 

 

 顔を真っ赤にさせながら否定してきたが、その様子がまた可愛らしいと思った。とにかく、エースの方も落ち着いたみたいだ。エースの感情の方も話をする以前までの状態ではなくなっている。よかったと内心でホッとした。

 

 

 それよりも、疑問に思うことが増えた。どうして僕は、エースの感情を読み取れたのだろうか。今度ヒロトさんにでも聞いてみようかと思った。

 

 

「ところでシオン。どうしてここに連れてきたんだ?」

 

「そうだ、おれも気になってたんだ。ここの近くで待ってろって言われたけど…どうしてだ?」

 

 

 考え事をしていたら、エースとサボが聞いてきた。そういえば2人にはここに来てもらった理由を話してなかったな。落ち着いて話しができる場所がいいと思って連れてきたが、この時間帯に来てもらいたかったという理由もある。

 

 

「2人とも、空を見てくれる?」

 

 

 僕の言葉に疑問に思いながらも2人は空を見上げた。すると、2人は驚いていた。僕も2人と同じように空を見上げた。そこに広がっていたのは――

 

 

「スゲェ。星があんなにたくさん」

 

「ああ、おれもこんな風ににきれいな星空を見るのは初めてかも」

 

 

 先程までは曇り空だったが、今は雲一つ無い星空だった。

 この場所は僕にとって、この山の中のお気に入りの場所だ。以前、狩りをしている最中にここを見つけたが、動物の気配もせず、きれいな池が広がっていたところが印象的だった。

 さらに、ヒロトさんに頼んでエースに内緒で夜にこの場所を訪れたら、他の場所で見るよりも星がたくさん輝いていた。

 

 

「以前から2人にこの景色を見せたかったんだ」

 

 

 一緒に同じ景色を見たいというのは僕の我儘だ。でも、きれいな場所を見つけたら、それを誰かと共有したいと思うことは良いことじゃないかと思っている。

 この時間帯にこの場所に来ると、何だか心が安らぐような感じがする。

 目を閉じてこの安らぎに浸っていたら、サボが思いついたように声を上げた。

 

 

「そうだ! どうせならさ、この場所で一緒にキャンプでもしないか?」

 

「キャンプ? つっても、おれメシも持って来てねぇぞ」

 

「それなら大丈夫だよ」「おう! 大丈夫さ!」

 

 

 僕たちの言っていることがよく分からないという風な顔をエースは浮かべている。ここに来る際に、サボには事情を話してある。エースと話をしているときにサボの力を借りるためだった。おかげで、いつものエースに戻ってもらうことができた。

 

 それに、サボが気づかれなかったのはもう1人のおかげだ。今からすることはそのもう一人が関係している。

 気配を探り、ある気配を感じた方向に合図を送った。すると、音も無く一つの大きな風呂敷が現れた。

 

 

「これって、まさか……」

 

 

 エースには察しがついたようだった。サボが結ばれた風呂敷を解くと、そこには大量の弁当が入っていた。

 あまりにもたくさんの量にエースは口から唾液を滝のように流していた。腹から大音量の音を響かせ、顔が赤くなったがすぐさま弁当を食べ始めた。

 僕たち2人も食べる様子を見せつけられ、腹を鳴らしてしまった。お互い目を見合わせ、恥ずかしくなったが、笑みを浮かべ弁当を食べ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~、よく食べた」

 

 

 食べ終わり、エースとサボも食べ終わって一段落している。3人揃って寝転がり再び星空を眺めている。このままここで夜を過すのもいいなと思った。

 

 

「それにしてもシオン、お前相変わらず食べないな」

 

「エースが食べ過ぎなんだよ。普通の人ならあれぐらいが普通の量だと思うよ」

 

「それなら、この山で過しているおれたち自体、普通じゃなくないか?」

 

「確かに、サボの言うとおりかもね」

 

 

 このまま時間が過ぎ去っていくのを静かに感じていた。ふと誰かの足音が近づいてきて、僕たちは起き上がったが、現れた人物に安心した。

 

 

「お前ら、ちゃんと食べたか?」

「ヒロトさん!」「さっきぶりだな」「ヒロト……」

 

 

 僕、サボ、エースの順番でヒロトさんに声をかけた。応えるように片手を上げると、僕らの近くに座った。ヒロトさんはエースの方に手を伸ばして頭を撫でまわした。

 

 

「良かったな。エースのこと、大切に思ってくれる人がいて」

「…………おう」

 

 

 照れくさそうにしながらも、撫でられることに拒否感はしないみたいだ。微笑ましそうに眺めていると僕の視線に気づいたのか、慌ててヒロトさんの手を離させていた。

 

 苦笑いを浮かべたヒロトさんは僕の方に視線を向けた。その表情はさっきまでと違い、真剣な表情だ。すると、懐から一つの不思議な色をした実を取り出した。僕にはそれがどういうものか理解できていた。

 

 

「それって一体……」

 

「確か、悪魔の実だっけ? ヒロトさん、シオンに食べさせるのか?」

 

「サボ、悪魔の実ってのは……」

 

「悪魔の実は食べると能力者になれるんだ。ただし、食べるとカナヅチになって泳げなくなるらしい」

 

「ハァ!? おい、ヒロト! ホントに食べさせる気か!?」

 

 

 エースが声を荒げるが、気にせずに僕をずっと見つめ続けている。覚悟はあるのかと言いたげな顔だ。

 

 

「この悪魔の実の名は――ホシホシの実(・・・・・・)。かつて、俺の兄さんが食べた悪魔の実だ」

 

「「!」」

 

 

 サボたちはその言葉に驚いていたが、僕は驚かなかった。ヒロトさんに話を聞き終わった時、僕は強くなりたいと願った。そこで、ヒロトさんが出してきた案が悪魔の実を食べることだった。願いの力を受け継いでいる僕が悪魔の実を食べれば、悪魔の実の能力と融合し、より強い力になる。そして手元にあったのが、スバルさんが食べたホシホシの実だったということだ

 

 

 きっと、ヒロトさんはお兄さんの形見を探し続けて見つけたのだろう。それを僕に渡すということは形見を手放すように見えるが、ヒロトさんにそういう考えはないだろう。

 僕にお兄さん力を受け継ぐ覚悟はあるかを見極めようとしている。もう覚悟は決まっている。僕は強くなって皆を守りたい。そう思い、俯かせていた顔を上げた。

 

 

「………そうか、分かった。なら、これはお前に託すよ。ただし、味は最悪だから気をつけろよ」

 

「……うん!」

 

 

 頷いて悪魔の実に思い切りかぶりついた。

 

 

「「食っちまった……」」

 

 

 兄たちが声をハモらせたが、僕はそのまま食べ続けた。食感は普通の果物のようだ。味の方は――――!?!?

 

 

「ウグッ!?」

 

 

 想像を絶する不味さだった。吐き出したい気分だったが何とか堪え、飲み込んだ。たったそれだけで、とんでもない奴と戦った気分だ。

 

 

「よく頑張ったなシオン。ほら、余ってた肉だ」

 

「ったく、無茶しやがって」

 

 

 サボに肉を差し出され、エースに背中を擦られた。肉を食べたおかげで後味の方は大丈夫そうだ。

 落ち着くと、僕の中の何かが混ざり合うような感覚がした。「もしかして、これが?」と言うと、ヒロトさんは頷いて、頭を撫でてきた。

 

 

「能力者になったからには特訓しないとな。とはいえ、まだまだ制御は難しいだろう。おれと修行するとき以外はこれをつけておくといいよ」

 

 

 そう言って、腕輪のようなものを付けてきた。すると、少しだけ力が抜けたような感じがした。

 

 

「それは海楼石を少し改良したものだ。能力を封じることはできるし、頑丈だからな。ある意味、能力を使わない上での特訓にもなるかもな」

「……そっか。ありがとう、ヒロトさん」

 

 

 感謝を伝えると、ヒロトさんはしばらく上を向いて考え込んでいたが、すぐに僕たちと向き合って言った。

 

 

「どうせなら、ここで3人寝るか? ここなら猛獣も来ないしな」

 

「それもいいかもな。3人で寝るってこともしたことなかったし」

 

「うん、いいかも。エースは?」

 

「……別に構わねぇ…」

 

 

 そうと決まれば善は急げだ、とヒロトさんは一瞬で姿を消した。しばらく待っていると、テントを持参してきた。「ダダンたちには伝えておいたから大丈夫だ」と言われたから、心配の種は無くなった。

 テントの中には寝るために必要な物が一式揃っていた。別方向を見ると、ちゃっかり自分の分のテントを用意していたヒロトさんがいた。手際の良さに苦笑いしてしまった。

 

 

 3人揃って寝るのも初めてだ。テントに入ると既に2人は真ん中を空けて両脇にいた。つまり、僕に真ん中に入れとのご所望のようだ。相変わらずのブラコンっぷりに内心でため息をついた。まぁ、僕もブラコンと言われると否定出来なくもないが……。とりあえず横になり、眠りにつこうとした。

 

 

 今回の出来事は万全とは言えなくとも、僕たちの中では解決できたのかもしれない。しかし、ここで終わりのないように思えた。また何か、厄介事が舞い込んできそうだ。

 能力者になってカナヅチになったから2人の過保護にさらに磨きがかかりそうだと内心ガックリしてしまった。後悔はしていないが、この部分はどうにかならないのだろうか。

せめて、同じ年齢か弟が1人でもいれば変わるのかなと思いながら目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 しかし、例え話として考えていたことが現実となって僕たちの生活に新たな嵐(・・・・)を巻き起こすことを、このときの僕は全く予測できていなかった。

 

 

 

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