赤き星の旅路   作:月影海斗

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第10話 旧友

 

 

 現在、僕は能力に慣れるための修行中だ。ホシホシの実の能力は中々のもので、近距離と遠距離の攻撃をどちらもこなすことができる。

 ただ、まだ能力のコントロールができていないのか、技を放つと頭が痛くなるときもある。まだまだ特訓が必要だな。でも、確実に強くなる道に立ててはいるだろう。僕だっていつまでも守られるままではいられないんだ。

 

 

 

 

 

 

 ある日、不思議な夢を見た。少年が何かを叫んでいる。そして、少年の目の先には麦わら帽子を被った赤髪の男がいた。その男は自分が被っていた帽子を少年に被せていた。それにしても、その場所がこの山に来るまでに過ごしていた場所に思えたから何とも現実味のありそうな夢だなと思った。

 だが、どうしてもそれが気になり続けていた。そのため、つい聞いてみたんだ。

 

 

「フーシャ村に行ってみたい?」

 

「うん。ダメかな?」

 

 

 能力の修行に付き合ってくれていたヒロトさんに聞いてみた。彼は腕を組んで考え込んでしまった。

 あの村にいたのは半年近くだ。記憶に残っていることも少ないだろう。覚えているとしたら、風景ぐらいだろうか。

 

 

「どうしても行きたいのか?」

 

「うーん。どうしてもって聞かれるとなぁ……行ってみたいかな」

 

「……分かった。明日連れて行こう」

 

「ホント!? ありがとう!」

 

 

 

 

 修行も終わり、家に戻ってエースにこの事を伝えたら、凄く微妙な顔をされた。何でだろうと疑問に思ったが、どうしても行きたい理由を伝えたら「しょうがねぇな」と言われ納得してもらった。

 

 

 

 

 翌日、ヒロトさんが家の前まで来てくれた。それにしても、前から思っていたことだがヒロトさんは黒好きだ。いつも黒色の服装ばかりしている。他の色の服装は持っていないのだろうか。魔剣士と呼ばれる理由の一つは服装にもあるのかもと思ってしまった。その内、魔王って呼ばれたりして……

 

 

「じゃあ、行くか。しっかり掴まってろよ」

 

 

 僕が頷いたのを確認するとヒロトさんは少しの間目を閉じた。すると次の瞬間、見ていた景色が森から村に変わった。

 この人は瞬間移動が使える。この力も悪魔の実と関係があるらしい。物も飛ばすこともできるし便利な力だと思う。というより、この力を戦闘に活用されたら強力だろう。

 

 

「この村に来るのも久しぶりだな。あまり変わってないようで何より……」

 

 

 辺りを見回していたヒロトさんが固まってしまった。顔を見ると目を丸くしていた。僕も気になって見ている方向を見た。そこにあったのは、

 

 

「海賊船!? 何でここに……」

 

 

 海賊船が留まっていた。龍を模した船首が特徴的だと思った。

 しかし、何故海賊船がこの村に留まっているのだろうか。村の様子を見る限り略奪が目的ではないようだ。拠点として活用しているだけだろうか。

 

 

「あの悪ガキが何でここに来てやがる……」

 

 

 不愉快そうな口調でヒロトさんが発したことに少なからず驚いた。いつもは穏やかなこの人がここまで口調を荒げる相手がじいちゃん以外にもいたとは。

 

 

「ヒロトさん。大丈夫?」

 

「……あ? あ、ああ大丈夫だ。すまないシオン」

 

 

 僕のことをすっかり忘れていたようだ。いつもの調子を取り戻したのか、謝ると僕を抱っこして村を歩き始めた。さっきの様子も気になるが触れない方がいいだろう。

 それにしても、この村を訪れるのも数年ぶりだ。懐かしい気もするし、僕にとっては短い時間過していたとしても故郷みたいな感じなのかな。行く先々で色々な人に会ったが誰もが穏やかな人たちだった。この人たちがこの穏やかな村を形成していると思うと、安らかな感じがする。

 

 しばらく歩いていると、前からメガネの人が歩いてきた。その人は僕たちに気づくと目を丸くして近づいた。

 

 

「ヒロトか! 来ておったのならわしに声をかけんか!」

 

「お久しぶりです村長。シオンがこの村に来たいと言ったので連れてきました」

 

「ん? おお! お前がシオンか! 随分と大きくなったのう」

 

 

 2人で会話をしていたが、僕に気づくと優しそうな表情を向けてくれた。

 

 

「シオンです。えっと……お久しぶりです?」

 

「まぁ、お前が小さい頃に会っておったからのう。覚えていなくても仕方ないか」

 

「ところで村長。この村に海賊が来ているみたいですが……」

 

「おお、そうじゃった。心配せんでも拠点として活用しておるようじゃから問題ない」

 

「ところで、船長ってどんな奴でしたか?」

 

「確か、麦わら帽子を被った赤髪の男だったはずじゃが」

 

「はぁ……やっぱりそうだったか。ありがとうございます。俺たちはまだ用事があるので失礼します」

 

 

 村長さんに一通り礼を言うと、僕を連れて再び歩き始めた。会話の内容から考えると、今来ている海賊の船長さんとこの人は知り合いなのかもしれない。だが、関係性はあまり良くないようだが……

 

 

 歩いていると、酒場のようなものが見えてきた。多くの声が外まで聞こえるところから、大所帯みたいだ。もしかしたら、さっきの船の海賊たちがいるのかもしれない。と思っていると、

 

 

「バカ野郎ォォォォォ!!」

 

 

 でっかい怒鳴り声が酒場から聞こえた。何かあったみたいだ。ふとヒロトさんを見上げると、顔に手をあてて空を仰いでいた。

 

 

「この声はやっぱりアイツか……。まったく……」

 

 

 ため息を吐いて心底残念そうな感じだった。この人にここまで思われるとはその麦わら帽子の人も気の毒だな。

 そう思いながら、酒場を通り過ぎていった。しかし、僕は気づいていなかった。僕たちを酒場の入り口から眺めている者がいたことに。

 

 

 

 

 

  

「とりあえず、見て回れる所はあらかた回ったぞ」

 

「うん。ありがとう」

 

 

 僕たちは今、海の近くに来ている。波の音や潮風が気持ちよく感じる。とはいえ、能力者である僕が海に落ちたらアウトだ。気軽に海の近くに来ることはできないだろう。

 2人で他愛もない話をしながら時間が過ぎるのを感じながら座っていたときだった。

 

 

「おいおい。懐かしい奴がいるじゃないか」

 

 

 男の声が聞こえ、後ろを振り向いた。そこには、麦わら帽子を被り、目に3本線の傷がある赤髪の男がいた。そして、その近くには目の下に絆創膏を貼った黒髪の少年がいた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「どうせお前のことだ、気づいていたんだろ」

 

「そんな顔しなくてもいいじゃないか」

 

「お前に色々と手を焼かされたのを忘れた覚えはないからな、シャンクス(・・・・・)

 

 

 不愉快そうな顔をしながらヒロトは麦わら帽子の男――シャンクスに言った。当の本人は肩をすくめていた。

 

 

「シャンクス。こいつ誰だ?」

 

「おれの知り合いさ。ルフィ(・・・)、すまないがあっちの方に行っててくれないか。ちょっと大事な話をしたいからな」

 

 

 その言葉に多少は食い下がろうとしたが黒髪の少年――ルフィは渋々この場を離れた。

 ルフィが離れた後、この場にはヒロト、シャンクス、シオンの3人が残った。しかし、この大人2人の間にはただならぬ緊張感が走っていた。

 

 

「ところで、そいつは誰なんだ。おれにも紹介してくれよ」

 

「……俺の子だ」

 

 

 その言葉にシャンクスは目を丸くしたが「なるほどな」と言って元の表情に戻った。

 彼はヒロトの側に近づき、しゃがんでシオンの顔を覗き込んだ。

 

 

「よろしくな、おれはシャンクスだ。赤髪海賊団の船長をやってる」

 

「は、初めまして、シオンといいます」

 

 

 丁寧にお辞儀をすると、シオンはシャンクスに頭を撫でられた。

 

 

「それにしても……アイツと同じ髪の色で、やはり目の色が――」

 

「それについては言うな……。シオン。すまないが、あそこのルフィの相手をしてやっててくれないか?」

 

 

 ヒロトの言葉に頷くと、シオンはルフィのところへ走って行った。ルフィの元に辿り着くと、お互いに話し始め、ルフィは元気そうにシオンを連れ回している。その様子を2人は微笑ましそうに眺めていた。

 

 

 

 

「それで、お前が海に出ずにこの場所にいるということは、アイツが関係しているのか?」

 

「俺たちの境遇は理解しているだろ。自分の身を守れるようになるまでは俺がアイツを守ってやらないといけないからな」

 

「そうか……。ところで、さっきアイツがお前の子供と言っていたが――」

 

「それがどうかしたのか?」

 

 

 腕を組んで首を傾げたが、すぐにその体勢を解いた。なぜならシャンクスの雰囲気がさきほどまでの穏やかなものが無くなり、真剣なものだったからだ。

 

 

「本当のところはどうなんだ?」

 

「…………何が言いたい」

 

 

 それに対してヒロトは目を細め、声も底冷えしているのを自覚していた。まるで、それ以上言うのはやめろと警告しているようなものだ。

 だが、シャンクスはそれに屈せず話を続けた。

 

 

「あのシオンという少年からはある奴と似たようなものを感じた。それは、おれが今一番行方を知りたいと思っている奴だ。恐らくお前にとってもな。違うか?」

 

「………………」

 

「おれが思うに、あの少年の親はお前ではない。それに見たところアイツの容姿はまるで――」

 

「――おい麦わら」

 

 

 地面からピシリと音が鳴った。そこには、いくつかの亀裂が入っており、2人の周囲の空間が揺らいでいるようだった。

 ヒロトは睨み付けるように鋭い眼光をシャンクスに向けた。そこには威圧が含まれており、2人には迂闊に近づけないオーラが漂っていた。

 

 

「それ以上言えば、少し痛い目に遭ってもらうことになるぞ」

 

 

 しばらく睨み合いが続いたが観念したようにシャンクスが両手を挙げ、「悪かった」と言った。

 

 

「分かったよ。さすがに遠慮がなかったみたいだ。これ以上は聞かねぇよ」

 

 

 シャンクスの謝罪とこれ以上の追求が無いことに一先ずは納得したのか、ヒロトは威圧を解いた。

 

 

 それ以降は話をせずに、2人で戯れているシオンたちのところへ向かった。大人たち2人が近づいてきたことに気づいたのか、ルフィは片手を振り、シオンはじっと待っていた。

 

 

「どうだルフィ。シオンとは仲良くなれたか?」

 

「おう! シオンとはもう友達だ!」

 

「シオンも友達が増えたのか。良かったな」

 

「うん。ルフィから友達になろうって言ってくれたから。僕も嬉しかった」

 

 

 子供たち2人はそれぞれの保護者(?)の元に向かい、それぞれの心中を伝えた。

 子供2人も混ざり、旅の話や海賊の話をしながら時間は過ぎていった。

 

 

 

 

 時間もすっかり夕方になり、ルフィは自分の家に帰り、シオンは疲れが溜まっていたのか、ヒロトに抱かれながら眠っていた。

 

 

「ヒロト。さっきのことは悪いとは思ってる。だがな、あまり1人で抱え込むなよ。おれにとって、お前は――なんだからな。アイツのこともおれの方でも力は尽くすつもりだ」

 

「分かってるよ……」

 

「そうか。……それにしても、随分気持ちよさそうに眠ってるな」

 

「こいつには特訓を付けているが、今までも子供とは思えないようなことを何回か俺に見せたからな。こんな風に子供らしさを見せてくれるだけでもまだ子供なんだって安心するよ」

 

 

 ヒロトの表情を見て、シャンクスは大丈夫そうかと思いながら、シオンの頭を撫でた。頭を撫でられ顔を歪めて体を揺らしたシオンの様子が面白いと思ったのか、2人は笑いをこぼした。

 2人の間には先程までのギスギスした雰囲気は無かった。

 

 

「それじゃあ、俺たちは戻るよ。お前もしばらくはここを拠点にするんだろ?」

 

「まぁな。お前らはもう来ないのか?」

 

「せめて、シャンクスたちがここを離れるときは見送りに来てやるよ」

 

 

 そう告げて、ヒロトは瞬間移動でフーシャ村を離れた。

 2人が去った後、シャンクスは海を眺めながら呟いた。

 

 

「あの時みたいに3人で……いや、バギーの奴も含めて4人で他愛もない話をしながら過ごせる時がまた訪れて欲しいもんだ」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 偉大なる航路(グランドライン)のある諸島。一隻の船の近くに2人の男女が向かい合っていた。

 

 

「コーティングは終わらせておいたぞ」

 

「ありがとうございます。すっかりお世話になっちゃって」

 

「気にすることは無い。弟子の船出を見届けるだけでも良いことだ。私も随分と歳を取ってしまったしな」

 

「それじゃあ、もう行きます。レイリーさんもお体には気をつけてくださいね」

 

「ああ、君も気をつけて行くのだぞ。テレシア」

 

 

 

 

 

 

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