赤き星の旅路   作:月影海斗

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第12話 麦わらの少年

 

 

「これだけ大きな野牛を仕留められて良かったね」

 

「ああ。今日はご馳走だな」

 

 

 今の僕は7歳、エースは10歳だ。時が流れるのも早いなと、最近しみじみと感じる。

 シャンクスさんから預かった首飾りは森に行くときにはダダンたちに預けてある。森の中で無くしたりしたら大変だからだ。ダダンたちには大切な物だからどうしてもお願いと言っておいた。土下座込みで。効果はどうやらあったらしい。

 

能力の方もあれから猛特訓して、少しずつ慣れてきているし、獲物の狩りにも、チンピラをやっつける時にも役立っている。まぁ、前世ではやってはいけないことをとうとうやってしまったが……。正直言うと、心の中で相手には申し訳ないなとは思っている。あの時の山賊はそんなことは思わなかったけどね。ましてや、僕の大切な友達を傷つけようとしたのだから構わないだろう。

 

 

 それにしても、あれからフーシャ村に行ってないが、ルフィは何をしているのだろうか。僕やシャンクスさんが来なくなってから寂しくしていないだろうか。ルフィのことは何故か弟みたいに思っていたから、心配になってしまう。そんなことを考えながら、僕とエースは野牛を引きずりながら帰った。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「じいちゃ~ん。だからおれは海賊王に~」 

 

「何が海賊王じゃ! お前を生温いフーシャ村に置いたのは失敗じゃった。よりによって海賊ぅ!? 馬鹿たれが! お前もエースもシオンも海兵になるんじゃ!」

 

「いでででで、おれゴムなのになんで痛ぇんだ……離してくれよ、じいちゃん!」

 

「あの赤髪のシャンクスなんぞと馴れ合うとは言語道断じゃ!」

 

「おれはシャンクスみたいな強い男になるんだぁ!」

 

 

 コルボ山に破天荒な男と、シオンやエースの元に新たな嵐を巻き起こす少年の叫び声が響き渡った。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 家との距離が近づき、エースと話しながら進んでいたとき、騒がしい声が家の方から聞こえた。

 

「騒がしいな。おい、シオン。今日ってヒロトが来る予定あったか?」

 

「確か無かったと思うよ。ここしばらくは忙しくなるって言ってたから」

 

「てことは、大方ジジイの奴が来たのか…」

 

 

 エースが訝しげな表情をしたが、僕は苦笑いをした。じいちゃんが来て良いことなんて全然無いからね。あんな祖父もそんなにいないとは思いたいが……

 

 家が見えてくると、そこに2人の人物がいた。1人は、予想通りのじいちゃんだった。さっきの大声はこの人だったか。

 それよりも、僕はもう1人の姿に目を疑った。その人物が被っていた麦わら帽子に見覚えがありすぎたからだ。その少年は紛れもなく、フーシャ村にいた少年――ルフィだった。

 

 

「ホントもう、ボチボチ勘弁しておくれよ。シオンは7歳でエースの奴はもう10歳だよ」

 

「そうか、もうそんなか! 元気にしとるか!」

 

 

 笑っているじいちゃんにドグラが引き取るように頼むが無視されていた。哀れ、ドグラ。というか手に負えないと言われたが、あまり迷惑は掛けてないと思うけど……。ここにいる山賊たちにもいつも助かるって言われてるし。預けられたことが迷惑だと言われたら反論は………………うん、できないな。

 

 そうこうしている内に、ルフィをここに預けるという話になった。エースの様子が気になったから顔を見たら……! 

 

 

「(え? 何でこんな不機嫌そうな顔してるの!? エースってルフィと初対面だよね!? それとも初対面だから警戒してるってこと!?)エース……? どうかした……?」

 

「………………」

 

 

 無視された……。ここまで不機嫌になるなんてあの時以来かも。僕やサボには過去を知ってもなお受け入れたから仲良くしてくれているけど、警戒心はまだあるみたいだ。というかルフィが走り回っている元気一杯の姿に心が癒やされるように感じた。

 一緒に暮らすなら挨拶ぐらいしようかと思って、野牛から降りようとしたら、エースに服を強く掴まれた。相変わらず無言のままのエースに問いただそうとしたら、

 

 

「うわっ!? 唾! 汚っねぇ!」

 

 

 エース!? さすがにそれはやりすぎだよ! 初対面の相手に唾を吐くなんて……。案の定、ルフィもめっちゃ怒ってるし。

 

 

「おぉ、エース! シオンもおったか!」

 

「や、やぁ……じいちゃん久しぶり…」

 

 

 さすがに挨拶しないのは失礼かと思って挨拶したが、この険悪な2人の間にいるのも辛いから、エースに離してもらうように促したが全然離してくれない。2人を知ってる身としてはホントに辛いです……。辛いって2回も思っちゃった。

 

 

「ルフィ。黒髪の方がエース。赤……色の方がシオンじゃ。歳はエースがお前より3つ上。シオンとは同い年じゃ。今日からこいつらと一緒に暮らすんじゃ。仲良うせい」

 

 

 じいちゃん、今僕の髪の色を言うとき言い淀んでませんでした? もしかして赤髪って言おうとして言い直しましたよね? まぁ、自分の孫を海賊と同じように呼ぶのがじいちゃんにとっては嫌だったみたいだけど。

 

 

「えぇ!? 決定ですか!?」

 

「何じゃ」

 

「「「お預かりします!!!」」」

 

 

 たった一言でダダンたちを黙らせるとはやっぱりこの人は凄いな。じいちゃんはそのままルフィを置いて帰った。

 

 

「シオン。降りるぞ」

 

「えっ? う、うん」

 

 

 ようやく喋ったと思ったら素っ気なかった。エースに手を引かれてそのままルフィの横を通り過ぎた。ルフィは僕のことに気がついていないのかエースに謝れと言い続けている。さすがの僕もここまで気づかれないのは悲しいよ。仕方ないから、後でエースがいないときにルフィに話しかけよう。

 

 

 

 

 野牛を運ぶためにエースが僕から目を離した隙を伺って僕はルフィに話しかけた。

 

 

「やぁ、ルフィ」

 

「あぁ! シオン! お前ここにいたのか!」

 

「うん。さっきはエースがごめんね。ああ見えて優しい奴だからさ。あまり怒らないでやって欲しいんだ」

 

「……わかった! そうする!」

 

「うん。よろしくね」

 

 

 ダメだ。健気過ぎて直視できそうにない。ルフィとエースがこれから仲良くなれるかが心配になってきた。

 

マグラたちに呼ばれ、僕たちは家に入った。他の山賊たちはルフィが預けられることに不満を言っていたが肉を出されたことで、そのまま飛びついた。

 ルフィも肉を取ろうとしたが、弱肉強食を掲げる山賊たちに阻まれ一つも取れなかった。

 

 

「……ほら、シオン。お前の分だ」

 

 

 気を取れられている間にエースが僕の分の肉を取っておいてくれたみたいだ。そのままお礼を言って、僕もエースと一緒に肉を食べ始めた。

 

 

「おれ山賊大っっ嫌いなんだ」

 

「黙れクソガキ! アタシらだってお前らみたいなの預けられて迷惑してんだ! ここにいたくなきゃ好都合! 出てってその辺で野垂れ死んじまえ!」

 

「メシ食い足りねぇよ。おれもあの肉食いてぇ」

 

 

 ルフィのしょぼんとする様子に僕の心が傷ついていく。分けたいとは思っているが、エースが取ってきてくれた僕の分を渡したらエースがどうなるかわからない。

 

 

「あの肉もこの肉もエースとシオンが取ってきた野牛の肉だ。アタシらに分け前を渡すことで食卓に並ぶんだ」

 

 

 今の生活に慣れてしまった僕としたは何の問題もないが村で暮らしていたルフィにとっては大変なことだろう。

 ダダンが掃除・洗濯・靴磨き・武器磨き・以下略をするようにルフィに言っていた。後は、一日に茶碗一杯の米とコップ一杯の水を保証、後は自分で調達するようにも言った。

 

 

「わかった」

 

「わかったんかい! 泣いたりするところだろそこは」

 

 

 まぁ、ルフィだからかな。と思ってしまう自分がいた。

 

 

「昔じいちゃんにジャングルに投げ込まれたこともあるし、ミミズもカエルもヘビもきのこもここが森なら腹一杯食える。それに、おれはいつか海賊になるんだ。それぐらいできなきゃな」

 

 

 ブッ!! じいちゃん、あなたは実の孫にもそんなことさせてたのかよ。ってか、ルフィも全然普通じゃなかったよ! 

 

「ほーら見ろ、逞し過ぎだよ! だから嫌なんだよ、ガープの孫は!」

 

「まーま、お頭」

 

 ふと誰かに服を掴まれたと思ったらエースだった。見ると、既に食べ終わっていた。顎をクイッと扉の方に向けていたから外に行くぞと言いたいのだろう。ルフィのことも気になるが、エースのことは断れないからそのままエースについて行った。

 

 

 

 

「おーい! 待ってくれよー! おーい!」

 

 

 後ろの方を振り返るとルフィが追いかけてきた。やっぱり、あそこでじっとしては居られなかったみたいだ。ルフィはエースに唾を付けられたことは怒ってない友達になろうと言った。エースにどうするか聞こうとしたら、ドォォン! と音が近くから聞こえた。

 

 

「ちょ、エース!? 何やってんの!?」

 

 

 まさかの木を蹴ってへし折り、その木がルフィへと転がりだした。

 

 

「うわぁぁぁぁぁ!! 行き止まりだぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 うわぁ……あれ、ルフィじゃなかったらヤバいことになってるよ。木と岩に挟まれてぺしゃんこだよ。

 

 

「エース……「あァ?」ごめん……何でもない」

 

 

 エースがめっちゃ怖い。何でこんなに怒ってるんだろう。これ以上怒らせると僕にまで八つ当たりしそうだから無言で付いて行った。

 

 

 

 

 橋の所まで来て、後ろから気配がしたから振り返った。それに気づいたのか、エースも振り返ると傷だらけになりながらも付いてきたルフィの姿があった。

 エースはルフィに近づき、ルフィはエースが自分に話しかけようとしてくれていると思ったのか、嬉しそうにしていた。だが、長くエースと過してきた僕なら分かる。エースは実力行使に出るはずだ。それは、やめた方がと思ったら、

 

 

「シオン」

 

 

 その3文字+ギロリとした睨みで手を出すなと言いたいのが分かった。あまりの形相に僕も冷や汗をかいた。

 僕が橋を渡ったのを確認すると、エースは鉄パイプを使ってルフィを殴り飛ばした。

 

 

「うわぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!」

 

 

 叫び声が谷に響きながらルフィが橋から落ちていった。エースはそれを確認した後、橋を渡って僕の方へと来た。

 

 

「エース……さすがにやり過ぎだよ」

 

 

 僕は頬を膨らませてエースに抗議しようとした。我ながら幼稚くさい方法だが、仕方ないだろう。警戒心が強いのは僕も理解している。でも、そこまではやらなくてもいいはずだ。するとエースが拗ね顔になった。

 

 

「別にアイツはどうでもいいだろ……」

 

「どうでもって……ルフィは友達だよ」

 

「友達……?」

 

 

 エースがさらに不機嫌になった。もしかしてと思うが……

 

 

「エース……もしかして、僕がエースやサボ以外と馴れ馴れしくする奴がいるのが嫌なの?」

 

 

 尋ねるとエースが口を結んでそっぽを向いた。どうやら図星みたいだ。嫉妬かよ! まったく……このブラコン兄貴は……。もうこうなるとしばらくはこのままだと思うからそのままサボが待ってる所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、グレイ・ターミナルでサボと合流して金策集めに奔走した。エースの方は相変わらず不機嫌なままだった。色々と前途多難だ。

 

 

「なぁ、シオン。エースの奴は何であんなに不機嫌になってるんだ?」

「実は――」

 

 

 サボに事情を話すと、深いため息が返ってきた。サボは僕の気持ちが分かってくれたみたいだ。当事者になったら分かる。あの2人の間に挟まれると相当辛い。

 

 

「エースの奴、大人気なさすぎるだろ。そのルフィって奴はお前にとっては友達なんだろ?」

 

「うん……。サボは何とも思わないの?」

 

「ん? 何がだ?」

 

「エースは僕に友達がいたことが気に食わなかったみたいだけど、サボは何とも思わないのかなって」

 

「はぁ……あのなぁシオン。おれは別にお前に友達ができても気に食わなかったりしないぞ。そりゃあ、そいつがもしとんでもない悪い奴だったらとっちめてやろうと思うけどな」

 

「あははは………」

 

 

 そうなった相手のことを想像したら不憫だなぁと思ってしまった。

 

 

「お前の話から考えた感じ、素直そうな奴なんだろ?」

 

「でも、嘘とかつけないような感じだから、エースのことを考えると……」

 

「……そうか」

 

 

 そう。そこが一番の悩みのポイントだ。ルフィがもし知っても多分大丈夫だと思う自分はいる。だが、うっかりバラしてしまいそうなのだ。一応、じいちゃんの血筋だしね。あの人もうっかり秘密を漏らしてしまうこともよくあるらしいし。

 

 

「2人の仲介役にはなりたいけど、今回のことはエースの方から歩み寄らないとダメだと思うんだ」

 

「確かにあの時は上手くいったけど、あくまでおれたちの関係が良かったことも理由の一つだよな。それに比べると、アイツらはまったくの初対面だからなぁ」

 

 

 僕とサボはお互いに顔を見合わせ深いため息を吐いた。自分で言うのも何だが、エースよりかはしっかり者だとは自覚している。サボと比べると僕よりサボの方がしっかり者って感じはするが……

 

 ともかく、この件については僕とサボは自分から行動せず、万が一のサポートに回るという意見に収まった。もし、サボがルフィに会っても邪険に扱わないように約束してもらった。

 

 その日は、魚を釣って家に帰ったが、ルフィは帰ってこなかった。

 

 

 

 

 それから一週間後の夜、外で犬の鳴き声が聞こえてダダンたちの大声が聞こえたため、エースを起こさないようにして外にでた。

 

 

「ダダン? どうした……ってルフィ!?」

 

 

 爪の傷跡があったこと、あの谷の下には確か狼がいたから、ルフィの傷は狼に襲われたものだろう。ダダンたちがどうして谷底にいたのかを聞いたが、ルフィは答えられなかった。まぁ、エースに殴り飛ばされたとは言い難いのだろう。内心でルフィに土下座をした。

 

 

「何ニーせよ良かった」

 

「良いわけねぇだろ! 厄介者が戻ってきただけだよ!」

 

 

 そう言ってルフィを掴み上げて家の中に入れようとしたが、

 

 

「待ってダダン。せめて傷の手当てだけはさせてあげて

 

「……チッ。なら、シオン。あんたがやってやりな」

 

「分かった」

 

 

 ルフィを家の中に入れた後、僕は傷の消毒をしたり、包帯を巻いたりしてあげた。

 

 

「ごめんなルフィ。何もしてやれなくて…」

 

「いいんだ。これくらいかすり傷だ」

 

「そっか」

 

 

 彼の気遣いが嬉しくなった。傷の手当ても終わり、僕とエースが寝ている部屋にルフィを連れて入った。ルフィは横になると一瞬で寝てしまった。早ッ! と思ったが、余っていた毛布を掛け、自分の布団へと入った。

 

 

「(ねぇエース。僕はさ、エースとルフィには仲良くしてもらいたいと思ってるよ。いつかその日が来てくれるって信じてるから)おやすみ、ルフィ。エース。」

 

 

 

 

 

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