赤き星の旅路   作:月影海斗

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第13話 怒り

 翌日、エースが外に出ると、ルフィも外に出てエースに付いて行こうとした。僕は後から行くとエースには言ってある。

 

 

「おれも連れてってくれよー! 友達になろう!」

 

 

 エースは気にせずに走って行った。ルフィも後を追いかけようと、走って行った。

 

 

「このクソガキが! お前はうちの雑用をやるんだよ!」

 

「まーま。お頭」

 

「さっさと連れ戻しにおいで!」

 

「ダダン。ルフィの分まで僕がやるから任せて」

 

「……まったく、あの2人にも見習ってもらいたいもんだよ…」

 

 

 僕としては、ルフィのことを応援している。エースにも友達が増えて欲しいと思っているからね。ルフィ曰く、僕とは友達だからエースを追いかけて友達になりたいとのことだ。こんな良い子が毎日傷だらけで帰ってくるのを見ると、心が痛くなる。手助けはしてあげたい。でも、あくまで傷の手当てや、もし危ない目に遭った時に助けるだけだ。エースに追いついて仲良くする方法はルフィに任せるしかない。

 

 

 そんな日々が、1ヶ月、2ヶ月、雨の日も、風の日も、ルフィは必死にエースを追いかけ続けた。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 ある雨の日、森の中をおれは足早に歩いていた。後ろからは相変わらず、あのルフィが付いてきている。

 

 

「こんなとこまで付いてくるなんて、しつこい奴……ん?」

 

 

 下の岩陰から何かが見えた。ってあれは!? まずい! と思っておれは茂みに隠れた。

 巨大な生物がアイツに近づいた。アイツはおれのことだと思ってそこにいる奴を見たが、

 

 

(コルボ山の主……! アイツだけはおれやシオンがまともにやっても勝ち目はねぇ……!)

 

 

 ルフィはコルボ山の主――巨大な虎に睨み続けられて逃げようとしていない。

 

 

「(何故逃げない!? 喰われるぞ!)くっ…アイツ!」

 

 

 一歩踏み出そうとしたが向こうからも何かが来ていた。それは虎と同じ大きさの熊だった。ルフィは相変わらず座り込んだまま逃げようとしていない。仕方ない、アイツをあそこから引っ張りだそうと考えたとき、

 

 

 「“流星”!」

 

 

聞き覚えのある声が聞こえた。直後、一筋の光がルフィの近くまで来て、ルフィを抱えてその場所を離れていた。

 離れる直前、その光の正体と目が合った気がした。そいつはおれに向かって頷いているように思えた。

 

 

「まったく、無茶しやがって。(それにしても、ルフィの奴。あそこからすぐに逃げようとしないなんて大した奴だな)」

 

 

 おれは自然とホッとした表情をしながらルフィのことを少し感心していた。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 ルフィがエースと出会ってから3ヶ月経過した。僕はあれからも、ルフィがエースを追いかけるのを見守っている。もちろんエースやサボの資金稼ぎにも協力はしている。

 また、ルフィをどうしても助けないとヤバいときには能力を使って助けている。いくらゴム人間であろうと、油断すれば命を失いかねないからだ。それに、僕にとっては世話をしている内にルフィも大切な存在になっている。ただ、エースは僕がルフィの世話をしていることは好ましくないように思っているようだ。

 サボとも話したが、エースに懐いていた僕が他人に好意的になっているのが彼にとっては、やっぱり気に食わないみたいだ。

 

 

 そうこうしながら時も経ったが、ルフィとエースが仲良くなれるのはいつになることかと、内心でため息を吐いていた。そろそろ仲良くなっていて欲しいと思いながら、僕は『中間の森』に向かっていた。家の手伝いや狩りなどで遅くなってしまったために、エースたちと合流するのが遅くなってしまった。すると、向こう側からサボの声が聞こえた。だが、その声は焦っている。一体何事かと思って走ってそこに向かった。

 

 

「サボ! エース! どうしたの!?」

 

「シオン!? 何でここに……」

 

「色々とやることがあって遅くなったけど……って、そんなことよりどうしての? サボの焦った声が聞こえたけど……」

 

「そうだ! 実はな――」

 

 

 そう言って、僕は今日起こった出来事を聞いた。ルフィがとうとう『中間の森』まで追いついて、話をしている最中に少し前からこの島にいるブルージャムという海賊の手下がやって来たとのことだ。エースがその手下の金を奪ったために取り返しに来たらしい。そして、ルフィが捕まってしまい、エースたちとの知り合いだということもバレた。奪った金の在処を白状させるために拷問を掛けているらしい。

 

 それを聞いた僕は、頭に血が上っているように感じた。思い出すのはフーシャ村でのことだ。あの時もルフィは危険な目に遭っていた。ルフィが危ない。それだけで、僕を動かすのは十分だった。

 

 

「サボ。案内して」

 

「おい、シオン! 何もお前が行くことは――」

 

「それでも! ルフィが危ないんだ! このままじゃアイツは……!」

 

「……分かった。なら3人で行くぞ」

 

「ああ!」「うん!」

 

 

 直ぐさま、僕たち3人はルフィがいる場所に向かった。念のため、腕輪は外してある。途中で場所を変えてないかガラクタを漁っている人たちに聞いて、ルフィがいる建物の前に立っていた。

 

 

「おれとサボでアイツらの気を引く。その間にシオンはルフィを助けろ」

「分かった。任せて」「頼むぞ、シオン」

 

 

 エースとサボは頷き合い鉄パイプで建物の壁を殴って入った。

 

 

「「やめろぉぉぉぉぉ!!」」

 

 

 エースが入ったと同時に手下の1人を倒した。その後、エースとサボが手下たちの親玉と思われるポルシェーミと手下たちと戦闘に入った。その隙に僕は建物の中に入り、背負っていた剣でルフィを縛っていた縄を切った。

 

 

「シオンゥウ……」

 

「ルフィ! 大丈夫か!?」

 

「う゛んん……!」

 

 

 ルフィを抱えたまま、相手を睨み付けた。

 

 

「ポルシェーミさん! もう1人のガキだ!」

 

「何っ!?」

 

 

 ルフィを救出できたから後は逃げるだけだ。そう思ったのかサボがエースに声を掛けた。

 

 

「逃げるぞ! エース!」

 

「……先に行け!」

 

「っ!? バカ……! 早くしろ!」

 

「一度向き合ったら――おれは逃げない!!」

 

「ガキが! 調子に乗るなァ!」

 

 

 エースとポルシェーミが再び戦い始めた。相手の方が遙かに巨体だ。助けに行きたいが、ルフィを抱えたままではダメだと思い、地面に下ろそうとしたら、

 

 

「エース!!」

 

 

 サボの大声が聞こえた。見ると、エースの片腕から血が流れ、彼は片腕を押さえていた。それを好機とみたのかポルシェーミがエースを足で押さえつけた。サボも助けに向かったが、首を掴まれてしまった。ポルシェーミがエースに向かって剣を振ろうとしている。

 

 

 

 

 

 エースが死ぬ? 僕の兄ちゃんが? そんなこと……そんなことは……!

 

 

「やめろぉおぉぉぉぉ!!」

 

 

 ――ドクン!

 

 

 僕の叫び声と同時に、辺りの空気がビリビリと重くなり、風が動いたように感じた。ポルシェーミを除いた手下たちが突然、気を失った。

 

 

「なっ!? おい、どうした!? お前ら!」

 

「今のは?」 

 

「風が動いた?」

 

「頭がクラクラする……」

 

 

 奴が戸惑っていたが、そんなことお構いなしに僕は怒りに身を任せていた。剣を強く握りしめ奴を睨み付けた。

 

 

「許さない……」

 

「あァ? このガキ……! お前の仕業かぁぁぁぁ!!」

 

 

 サボを離し、エースから足をどけ、僕へと剣を振り下ろした。

 

 

「「「シオン!!!」」」

 

 

 3人が叫んだが、今の僕には何も耳を通らなかった。

 

 

「お前だけは! 絶対に許さねぇぞ!!」

 

 

 突如、全身から光が溢れ出し、その光が剣にまとった。ポルシェーミが振るった剣をはじき、横薙ぎに剣を振るった。

 

 

「“流星剣”!」

 

 

光の斬撃が繰り出され、奴の腹に命中。そのまま奴は壁に吹き飛ばされた。強力な一撃だったため、意識を失ったようだ。僕は剣を背中の鞘に収め、”流星”を解除した。まとっていた光が消えると緊張が解けたのか、前のめりに倒れた。

 

 

「シオン! おい、大丈夫なのか!?」

 

「ごめん、サボ。力が入らなくて立てない」

 

「仕方ない。エース。お前はルフィを頼む。おれがシオンを背負うよ」

 

 

 僕をサボが背負い、エースがルフィを背負って『中間の森』まで走って行った。僕を背負ってくれるとき、エースの顔をチラリと見たが、唇を噛みしめていた。

 

 

 

 

 『中間の森』に辿り着くと、さっきまで大人しかったルフィが急に泣き始めた。ルフィも緊張が解けたのだろう。僕は傷を負わなかったが、エースたちは傷を負っていたため手当てをした。手当が終わった後、自分の鉄パイプを直しているエースにサボが話しかけた。

 

 

「お前、悪い癖だぞエース。本物の海賊相手に『逃げねぇ』なんて。何でお前はそんなに死にたがりなんだよ」

 

 

 一方のエースはそれに答えず、鉄パイプを直し続けている。僕の方はまだ疲れが溜まっているため木の根元に体を預けながら話を聞いている。

 

 

「はぁ……こんなことしちまってブルージャムの一味はもうおれたちを許さねぇぞ。この先追われる」

 

「僕……やり過ぎたかな……」

 

「お前のせいじゃないさ、シオン。お前があの時助けてくれなかったら…おれたちは……」

 

 

 サボが気遣ってくれるが、あの時の自分を思い出すと怒りにとらわれすぎていたように思える。ルフィはまだ泣き続けている。

 

 

「怖がっだ……じぬがどおぼった…」

 

 

 まさに大号泣だ。さすがにそろそろ、泣き止ませようかと思い何とか立ち上がろうとしたら、

 

「あーもう! イライラする! うるせェな! いつまで泣いてんだ! おれは泣き虫も弱虫も大っっ嫌いなんだよ!!」

 

 エースの沸点が限界を迎えたのか、ルフィに怒鳴った。すると、ルフィは泣き止んだ。あまりに急な止まりように僕たちはキョトンとしてしまった。

 

 

「……あ゛り゛がとう゛だずげでくれて……」

 

「テメェ!!」

 

「おいおい、礼を言ってるだけだろ」

 

「そうだよエース。さすがにそれ以上はルフィがかわいそうだよ」

 

「大体、何でお前は口を割らなかったんだ!? アイツらは女でも子供でも平気で殺す奴らだ!」

 

「喋ったら……もう、友達になれねぇ……」

 

「なれなくても死ぬよりいいだろ。何でそんなにダチになりてぇんだよ」

 

 

 確かにエースの言いたいことは分かる。命の危険を冒してまで友達になりたいのは何故なのか。僕はルフィの側に近寄り、背中を撫でて促してみた。

 

 

「ルフィ。話してくれるかな?」

 

 

「だって……だって! 他に頼りがいねぇ! フーシャ村には帰れねぇし、山賊は嫌いだし、お前らがいなかったら、おれは1人になる! 1人になるのは痛ぇよりつれぇ!」

 

 

「お前……親は?」

 

「じいちゃん以外いねぇ…」

 

「おれがいれば辛くねぇのか……?」

 

「う゛ん」

 

「おれがいないと困るのか……?」

 

「う゛ん」

 

 

「お前はおれに……生きてて欲しいのか……?」

 

「エース……」

 

 

 その言葉に僕は胸が痛くなった。どんなに言葉を重ねようと、エースが抱えているものは決して無くなったりしないのだ。僕は心配そうな顔を向けた。でも、ルフィは、

 

 

「当たり前だ!」

 

「……そうか」

 

 ルフィの言葉にエースの心が明るくなったように感じた。他の誰でもない、まだ会って数ヶ月のルフィだからこそ、エースに光を灯せたのだろう。僕はサボの顔を見ると笑顔を向けてくれた。

 

 

「(言ったでしょ、エース。きっとエースのことを大切に想ってくれる人が増えるって)ありがとな、ルフィ」

 

「うん? 何か言ったか?」

 

「いや、何でもないよ」

 

 

 適当にはぐらかすとルフィは首を傾げていたが、僕は嬉しくなっていた。それに対して、エースはルフィを泣き虫だと挑発するように言うと、ルフィがそれに乗っかり、言い争いに発展した。

 

 

「お前みたいに10歳になったら、絶対泣かねぇし、もっとつぇぇ!」

 

「おれは7歳でも泣かねェよ! バーカ! 一緒にすんな!」

 

「おれは誰よりも強くなるんだよ! スゲェ海賊になるってシャンクスと約束したんだからな!」

 

「海賊ゥ!? お前が!? なれるか!」

 

「なるんだ!!」

 

 

 2人の間に火花がバチバチと光っているように見えた。すかさず、サボが2人の間に入り落ち着かせた。

 

 

「はーいそこまで。お前ら落ち着け」

「そうだよ2人とも。仲良くなったのは良いけど、あまり喧嘩するのはダメだよ」

 

 

 うんうんと頷くように言うと、エースが口を尖らせてきた。あれ? 何でだ?

 

 

「そもそも! お前が無茶したせいでシオンが大変な目に遭ったんだよ! 巻き込むんじゃねェ!」

 

「何だと!? シオンはおれの友達だ! 一緒にシャンクスと約束した仲だ!」

 

「お前よりおれの方がこいつと長く暮らしてるんだよ! おれからこいつを盗ったお前は気に食わなかったんだよ!  お前なんかよりおれと仲が良いに決まってる!」

 

「ズルいぞ!」

 

「ズルくねぇ!」

 

 

 あははは……僕は口元を引き攣らせながら苦笑いをしていた。ズルい、ズルくない、おれの方だと言い合いを続ける2人に対して表情が綻んできた。というか、やっぱりフーシャ村での一件はエースの独占欲を強くしていたようだ。サボはまだ大人だからいいけど、この2人は……

 

 僕はサボの方に顔を向けると、サボの顔色が悪くなっていた。それを気にせずに2人の頭に拳骨を喰らわした。

 

 

「「いてぇ!! 何するん……だ……」」

 

 

 2人の顔色も悪くなっていた。

 

 

「ねぇ、2人とも。さっきから僕を放っておいて何を言い争いをしているのかなぁ? 僕は2人の所有物じゃないんだよぉ? そ・れ・と・も、折角丸く収まったと思ったらまた言い争いを始めて……2人は僕に能力を使ってボコられたいの?」

 

「「………………」」

 

「発言したいことは?」

 

「「ごめんなさい」」

 

 

 エースとルフィは土下座をして謝ってきた。後から聞いた話だと、目が笑っておらず、僕の後ろに業火を幻視したらしい。それだけでなく、僕の体から光も漏れていてホントにボコられると思ったようだ。

 

 一先ずはお互いに落ち着き、今後のことを話し始めた。僕たち4人はこれから命を狙われることになり、サボが一番その危険が高いということだ。そこで、ある提案をしてきた。

 

 

 

 

 

「エース! シオン! ルフィ! そいつは誰だ!? 何でガキがもう一匹増えてやがんだよ!」

 

「まーま、ダダン落ち着いてよ」

 

「落ち着けるかぁ!」

 

 

 あの後、サボもここに住むことに決めた。僕としても頼れる兄ちゃんが1人増えるだけでも、エースやルフィを落ち着かせるのに協力してくれそうだからありがたかった。というか、見事にしっかり者2人、手を焼く2人と程良くなったな。今回の件で僕にとってのエースはほとんど手を焼く方に分類された。エースとルフィはすぐ喧嘩しそうだもん。

 

 

「よう! おれサボっていうんだ。 ダダンだろ? 今日からよろしくな!」

「よろしくぅ? まさかお前ここに住むってわけじゃ――」

 

 

 ――ブーッ!

 

 

「ぷっ……」

 

「屁で返事するなー!」

 

「ぷっ……あっはっはっは!」

 

「笑い事じゃねぇよ! 大体、シオン! お前がいながら何でこんなことになってんだよ!」

 

「だ、だって……あっはっはっは!」

 

「笑いすぎだー!」

 

 

 これから4人で過す生活。危険な目に遭うかもしれないのに、これから先のことが楽しみになってきた。

 

 

 

 




オリキャラがある程度出てきたら、まとめのようなものを投稿したいと思っています。
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