赤き星の旅路   作:月影海斗

16 / 26
前半は話が早く進みます。


第15話 希望と絶望

 

 

 ルフィが来てから半年、色々なことがあった。僕たち4人は相変わらずチンピラを倒している。そのためか、僕たちの悪名は中心街にまで広まってるそうだ。

 また、村長さんやマキノさんもルフィの様子を見に来てくれたときに、僕たち4人の服の丈を合わせてくれた。そのときのエースがマキノさんに照れているときの様子は微笑ましいものだった。サボやルフィは笑っていたけど……。それだけでなく、手料理も振る舞ってくれ、その日は良い1日だった。あの人が来るまでは……

 

 

 

 

 

 

 

 僕たちがマキノさんの手料理を食べているときに、それは唐突に訪れた。

 

 

「やっぱ、航海にうまいメシは欠かせねェよな。海に出たら一番腕の良い料理人を仲間にするぞ」

 

「おれが最初に海賊になるからそれは無理だな」

 

「ズルいぞ! おれが一番に海賊になるんだ!」

 

 

 ルフィが言葉を発した次の瞬間、ダダンたちが一斉にブーッ!! と口に含んでいた物を吹き出した。どうしたのかと思い、彼女たちが見ている方向を見ようとしたら、

 

 

「うぉっほん!」

 

 わざとらしい咳払いだが、その声には聞き覚えがあった。あぁ……なるほどと即座に思い至った。ルフィとエースは案の定、ダダンたちと同じように吹き出している。

 その人物は、ルフィの実の祖父にして、僕とエースをここに預けた人物。理不尽の極みと言っても過言ではない男――ガープだった。

 

 

「お前らがなるのは海兵じゃと分からんのか!!」

 

 2人の頭に拳骨を落とし、さらにはダダンにも教育がなっていないという理由で拳骨を落とした。はっきり言おう、ダダン……哀れである。

 

 その後も、ルフィが口を滑らせたことでサボを巻き込み、3人と理不尽は家から飛び出していった。僕は隠れてやり過ごした。むしろ、ルフィたちに気づかれなかったことが悲しくなった。

 

 夕飯も食べ終わり、マキノさんたちが帰ってしばらくしてから、じいちゃんが帰ってきた。

 

「あっ! じいちゃん、お帰り」

 

 

 僕は努めて笑顔でじいちゃんを出迎えた。さすがに僕も拳骨を喰らいたくないから緊張している。

 

 

「おお、シオンか。すっかりお前のことを忘れとったわ」

 

 

 やっぱり忘れてたのかよ、この人。内心でため息を吐いた。

 

 

「今日は様子を見に?」

 

「それもあるが、ヒロトからお前に伝言を頼まれての」

 

「ヒロトさんから伝言?」

 

「『しばらくは顔を出せなくなるかもしれない。どうしてもやらなければならない用事ができた。すまない』とのことじゃ。まったく……自分の甥のことを見守るんじゃなかったのかのぅ」

 

「ヒロトさんが大変な立場だってのは理解してるよ。それに海軍の方だって、あの人に色々と頼んでるんでしょ?」

 

 

 僕の言葉にじいちゃんはばつが悪そうな顔をした。この人もこの人なりに僕たちのことを想ってくれているから悪いとは思っているのだろう。それは嬉しいと感じている。

 

 

「そういえば、悪魔の実を食べたらしいな」

 

「うん。聞いたの?」

 

 

 言外にヒロトさんから? と尋ねると、じいちゃんは頷いて応えた。

 

 

「ヒロトから聞いたらしいが、その悪魔の実の以前の持ち主はお前の伯父でもあり、わしの甥じゃからな。わしとしても思うところは色々とある」

 

「そっか。ちなみに、この話を他の人には?」

 

「いや、知らせるつもりはない。じゃが、その力はあまり人前では見せないことじゃ。強すぎる力はいずれ自らを滅ぼすこともあると心に留めておけ」

 

 

 じいちゃんからの忠告に僕は頷いた。確かに脅威と思われれば、真っ先に狙われる可能性もある。それに、あのとき怒りに身を任せて剣を振るったが、それが良かったことなのか未だにはっきりとしていない。それでも、兄弟が危険が迫ったら、僕は……

 

 その後、じいちゃんはこの家で一夜を過すことになった。エースたちは帰ってきたが、今回の一件を機に4人で独立しようと決めた。僕もそれには乗っかった。4人で過ごせるならいいかなと考えたためだ。

 

 次の朝、僕たちはダダンの家を出て、一際大きな木の所に秘密基地を作ることにした。4人で協力し、何日か費やしたが完成させた。そこからは、この場所でほとんどの時間を過すようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 独立してからも色々なことがあった。その中で大きな出来事が、海賊王と戦ったナグリというおじいさんに海賊について教わったり、戦いの技術を教えてもらったりしてくれたことだ。ヒロトさんとはまた違った教え方だったから僕にとっては新鮮だった。その過程で、ルフィがエースの父親が海賊王だと知ったときは、エースがルフィとサボに切れて、僕も巻き込まれて4人での大喧嘩になった。仲直りはできたけど。最後にはその人に見守られながら、4人で大虎を倒した。こうして、命の危険を感じたことはあったが、毎日が楽しく過ごせていたんだ。

 

 

 

 でも、そんな日々は唐突に崩れ去ってしまったんだ。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 今日は4人でいつもどおりに模擬戦をしていた。今はエースとシオンが戦っている。サボやルフィは2人の戦いをじっくり見ている。

 

 

「どうした? 動きが鈍いぞ」

 

「まだまだ……これから…だよっ!」

 

「いいぞ、シオン。エースなんかぶっ倒しちまえ!」

 

「お前なぁ……2人がやるときはいつもシオンを応援してるよな……」

 

「にしし。だってシオンはおれの仲間になるんだ。仲間を応援するのは当たり前だ」

 

「はぁ……お前も頑固だな。あれからもずっとシオンを勧誘して……ッ!?」

 

 

 サボの言葉が急に途切れた。ルフィはその様子に首を傾げたが、彼が向いている方向を見てすぐに理解した。2人の目の先にはエースとシオンがいる。だが先程までと違うのがシオンの様子が明らかにおかしかったのだ。いつもならまだ動けるはずのシオンが地面に倒れたまま動かないのだ。3人はシオンの元に駆けつけ、体を起こそうとした。

 

 

「シオン! おい、どうしたんだ!?」

 

「エース! あまり強く揺さぶったらダメだ!」

 

 

 体を揺さぶってどうしたのか聞こうとしたエースだったが、サボに止められた。サボはシオンの体に異常がないかを確かめている。その様子をルフィを不安そうに眺めていた。

 

 

「マズいな、凄い熱だ。道理で朝から調子が悪そうだと思ってたんだ」

 

「どうする、このままおれたちの基地に連れて帰るか……?」

 

「ああ。一先ずはそうしよう。おれがシオンを運ぶから2人はおれとシオンの荷物を頼む」

 

「「わかった!!」」

 

 3人はシオンを連れて、すぐに自分たちの基地に戻った。シオンを寝かせ、濡れたタオルを額に乗せて様子を見ている。

 

 

「おれと一緒に過ごし始めてから熱を出したことなんて一度も無かったってのに……」

 

「こればかりはおれたちじゃどうしようもできないな。仕方ない、ダダンたちの助けを借りるしか無いか」

 

「食いもん食ったら治らないのか?」

 

 

 2人がどうするべきかを悩んでいたらルフィが意見を出した。それを見て2人は一斉にため息を吐いた。それにルフィはムッとしたのか声を荒げた。

 

 

「何だよ、2人して! しっけいだぞ!」

 

「あのなぁルフィ……そんなので治ったら航海に船医は必要ないぞ」

 

「こいつを1人で航海に出させたら色々と心配だな……」

 

 

 あまりにも無知な弟に2人の兄は弟の将来に不安を覚えた。2人はシオンがガープから貰った医学の本のおかげでそれなりに病気の対処法は理解している。だが、悪化するかどうか不安があったため結局ダダンたちの力を借りることにした。3人はシオンを連れてダダンたちの家に向かった。

 

 久しぶりに顔を出した4人にダダンたちは戸惑っていたが、シオンの状態を見てすぐに4人を家の中に入れ、看病をし始めた。熱のせいかどうかは分からないがシオンは魘されている。3人は不安そうにしながらも彼を看ている。その様子を見て心配に思ったのか、ダダンは今日は泊まっていくように言い、3人もそれに同意した。

 

 

「おれはちょっと夕飯の調達に行ってくる。ルフィとサボはどうする?」

 

「おれも行くぞ!」

 

「おれはシオンの看病を続けるよ」

 

 

 エースとルフィは夕飯の調達に出かけ、サボはシオンの看病を続けた。

 

 

「すっかりタオルも熱くなっちまったな。水を替えてくるか」

 

 

 部屋を出ようとしたサボだったが服を強く掴まれた。自分の服を掴んでいたのは寝ているはずのシオンだった。未だに魘され続けているが、何かを言っている。

 

 

「……かないで」

 

「? どうした、シオン?」

 

「い、かない……で……さ、ぼ」

 

 

 夢の中で何か辛いことでもあったのかと思いながら、サボはシオンの手を握りしめた。

 

 

「おれならここにいるぞ。だから、安心しろ」

 

 

 優しく諭すように言うと、シオンに伝わったのか先程までとは違い、落ち着いてきたようだった。その後は、エースたちが獲ってきた物を食べ、4人で久しぶりにダダンの家で眠りについた。

 次の日も、シオンの熱は下がっていなかった。夜に嵐が訪れていたようだったため、シオンを任せた3人は秘密基地へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 僕の視界が炎に包まれていた。これが夢だとは理解している。でも、僕の前に広がっている景色はグレイ・ターミナルだった。いつもと違うのは炎に包まれているということだ。

 

 

――なんだこれ。一体何が起こってるんだ

 

 

 誰かの叫び声が聞こえ、その方向に視線を動かした。そこには2人の人物がいたが、その姿に僕は愕然とした。

 

 

――エース? ルフィ? どうしてここに? ダメだ……逃げないとダメだ!

 

 

 2人が炎に包まれている中で柱に縛られていた。僕は2人に手を伸ばしたが炎に阻まれて見えなくなってしまった。再び誰かの叫び声が聞こえ、視線を動かした。そこにいたのは、

 

 

――サボ? どうしたの? 一体何が……

 

 

 ふと頬に熱い何かが流れたようにに思い、頬に触れた。流れていたのは涙だった。手に向けていた視線をサボに移すと、彼は笑顔だった。

 

 

『シオン。アイツらのこと頼むな』

 

 

 そう言って彼は僕に背を向け、炎の中に歩いて行った。

 

 

 ――ま、待って! サボ! 行かないで! 

 

 

 

 

「待って…! はぁ、はぁ………夢、だったのか…」

 

 

 何とも物騒な夢だと思った。周りを見渡すと、見覚えがある部屋だった。どうやら熱を出して眠っている間にダダンの家に移されたみたいだ。体を動かそうとしたら思ったより力が入らず、横に倒れてしまった。僕が音を立てたことに気づいたのか、ダダンが部屋に入ってきた。

 

 

「起きたかい…」

 

「ダダン……僕はどれくらい眠ってたの?」

 

「ざっと2日間ぐらいさ。エースたちが急に来たときは何事かと思ったよ。アイツらに会ったらちゃんと礼を言っておくことだね」

 

 

 3人には迷惑を掛けたみたいだ。とりあえず今はまだ休めと言われ、休もうとしたら、外が騒がしくなった。僕はダダンの制止も聞かず、外に出た。目に映った光景を見て、僕は愕然としたまま動けなかった。

 

 

「何だ、何だ、大声で」

 

「北の空だ! 町の手前……グレイ・ターミナルが燃えている……!」

 

 

 僕は思わず崩れ落ちた。それと同時に思い浮かぶことがあった。それを考えた瞬間、僕は血の気が引いた。

 

 

(まさか、あの夢の通りなら……!)

 

 

 僕はすぐにグレイ・ターミナルに向かおうとした。だが、それはダダンに止められた。

 

 

「お前、何考えてんだ! まだ病み上がりなんだから大人しくしな!」

 

「離せ、ダダン! あそこにはエースたちが……!」

 

 

 ダダンたちの顔が驚愕に染まった。数秒、そのままの状態が続いたが、すぐに行動し始めた。

 

 

「お前たち、グレイ・ターミナルに向かうよ!」

 

「お頭、本気でニーか!? あそこはきっと火の海ですよ!」

 

「ガキどもを放っておけるかい! シオン! お前は家で待ってろ! 邪魔なだけだ!」

 

 

 ダダンたちは武器を持ってグレイ・ターミナルへと向かっていった。その様子を僕は崩れ落ちたまま眺めていた。今の僕にはどうすればいいか分からなかった。

 

 

(どうすればいいんだ……教えてくれよ、――!)

 

 

 首の辺りに手をあてていたが、何かに触れた。それはシャンクスさんに預けられた母さんの首飾りだった。宝石が赤く輝いていたが、ふと誰かの声が聞こえた

 

 

――守るんだ。君の大切な兄弟を

 

 

 周囲を見渡したが、誰の気配もしなかった。視線を首飾りに移し、もう一度触れるとまた声が聞こえた。

 

 

――君の手で、守るんだ! シオン!

 

 

 はっきりとした口調で言われ、僕の揺らいでいた心は落ち着きを取り戻した。ふと目線を下に移すと、首飾りの宝石は先程までより輝きが鈍くなっていた。僕はすぐに家に戻り、自分の剣を背負い、グレイ・ターミナルへと向かった。

 

 

(そうだよな、兄弟は僕が……()が守るんだ……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 グレイ・ターミナルは今、炎に包まれていた。このことが起こった原因は国の恥部と認識したゴア王国の差し金でブルージャム海賊団が放火したからだ。彼らを上手く口車に乗せたことで、今回の事を起こさせたのだ。だが、彼らは用済みとなり、口封じのために炎に包まれるグレイ・ターミナルに取り残されてしまったのだ。

 

 そんな中、エースやルフィもこの場所にいた。2人は今回の事を知ってしまったために、ブルージャムによって縄で柱に縛られていた。だが、エースが縄を切ったおかげで脱出できたのだ。

 しかし、逃げる道中にブルージャムと鉢合わせてしまい、2人は危機に陥ってしまう。そのとき、エースから発せられた力によってブルージャム以外の部下は気絶。エースが撃たれそうになったときにダダンが駆けつけたことで彼の命は助かった。

 

 その後、この場から逃げようとしないエースのためにダダンは残り、他の山賊たちはルフィを連れてこの場から逃げ、エースとダダンはブルージャムとの戦いに入った。戦いの結果はエースたちの勝利で終わった。だが、周囲は炎に囲まれ、道が塞がれていた。

 

 

「くそッ! どこにも逃げ場がねぇ!」

 

「だからって、行くしかねェだろ!」

 

 

 行く手を炎によって遮られていたが、エースは走り抜けようとした。それはダダンの制止にとって止められた。

 

 

「何しやがる!?」

 

「お前は、アタシが責任を持って連れて帰るって、皆に啖呵を切っちまったからねぇ」

 

 

 そう言って、ダダンはエースの前に立った。

 

「アタシの後ろを付いてくるんだ。絶対に離れるんじゃないよ」

 

「そんなことしたら、お前が……っ!? ダダン! ちょっと待て!」

 

「何だい! 早くしないと逃げられなくなるよ!」

 

「静かにしろ! 何かが聞こえるんだ」

 

 

 2人は黙り、耳を澄ませた。辺りは炎が一面に広がっているため、バチバチと燃える音がしかしないはず、そうダダンは思ってた。だが、もう一度耳を傾けると、何かの音がした。

 

 

「この音は……」

 

「ああ、多分ここのゴミが何かにぶっ飛ばされてる音だ。でも、一体何が起こって……っ!? ダダン! 伏せろ!」

 

 

 エースはダダンを思い切り押して、彼女を倒れさせた。次の瞬間、光の斬撃が飛んできた。その斬撃は炎を打ち消し、2人の前に道を築いた。

 

 

「何だ? 今のは? ……って、待ちな、エース!」

 

 

 ダダンが呼び止めようとしているが、そんな言葉はエースの耳に入っていなかった。彼は先程の斬撃が飛んできたと思われるところに来ていた。そこには、剣を片手に光をまとい、体のあちこちに怪我をした1人の少年が……エースにとっては大切な弟の姿があった。

 

 

「シオン!? お前が助けてくれたのか……」

 

「エー、ス。よか、った……無事でなに……よ、り」

 

 

 途切れ途切れに言葉を発しながらも、その表情は安堵の表情を浮かべていた。光が消えると、シオンは力が抜けたように目を閉じて前に倒れそうになったが、エースが支えた。

 

 

「お前はッ……! 無茶ばっかり……しやがって……!」

 

 

 ダダンもエースに追いつき、シオンの姿を捉えると驚いていたが、すぐにシオンを背負ってグレイ・ターミナルから脱出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

(何だろう。何か温かいものが顔に当たってる?)

 

 

 俺が目を開けると、真っ先に目に入ったのは、涙を流しているルフィと、嬉しそうなエースだった。

 

 

「シオンゥゥゥゥ!!」

 

「わっ! ルフィ……」

 

「……ったく相変わらず無茶しすぎなんだよ」

 

「エース……ごめん…」

 

 

 号泣しているルフィに抱きつかれ、エースには頭を撫でられた。我ながら恥ずかしく思った。周りの山賊たちは俺が意識を取り戻したことに嬉しがっている。中にはルフィと同じように涙ぐんでいる者もいた。

 その様子に気づいたのか、ダダンも顔を出しに来た。彼女も所々に包帯を巻いているが、そんなに酷い怪我ではないそうだ。俺は全身が包帯まみれだった。火傷も酷かったらしい。

 

 エースにどうやって自分たちの居場所が分かったのか、そんなに怪我を負っていたのかを聞かれたが、怪我を負ったのは、“流星”状態で森の中を移動していたために、減速をかけずに移動をしていた。そのために道中、木にぶつかったり、枝にかすって傷を増やしてしまったり、炎にも遠慮無く突っ込んでいたりしたからだ。居場所が分かったのは気配を探して、炎に囲まれていると思われる場所に2人分の気配がしたから、その方向に向かって炎を打ち消すように“流星剣”を放ったと説明した。

 

 それを聞いた皆は一斉にため息を吐いて、怒った。曰く、何でじっとして居られなかったのだ。病み上がりのくせに何やってるんだ。死んだらどうするんだ。その他、多くの人に説教をされた。ともかく、皆が無事で良かったと思っていたら、気になることがあった。

 

 

「エース、ルフィ。そういえば、サボは?」

 

 

 その言葉に2人は苦虫を噛み潰したような顔をした。理由を問うと、サボはブルージャム海賊団を利用した父親に2人を人質にされ、連れ戻されたとのことだ。だが、サボは無事だということだ。そのことを聞いても俺は何故か安心できなかった。夢で見たあのことが頭から離れないのだ。俺の様子が気になったのか2人が尋ねようとしたときに、先程から居なかったドグラが戻ってきた。だが、その顔は辛そうな顔をしている。

 

 

「サボが……」

 

 

 その言葉に俺はさっきから離れない夢のことが嫌な想像をさせた。それでも、心のどこかでは希望を持っていたんだ。でも、そんな希望はすぐに打ち砕かれた。

 

 

「――サボが、殺された……」

 

 

 希望は絶望へと変わった。

 

 

 




シオンの一人称が僕から俺へと変わりました。切っ掛けはちゃんとあります。

次回はシオンたちが何を思うのか。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。