赤き星の旅路   作:月影海斗

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流星の旅路編
第18話 海賊狩り


 

 

 波の音。鳥の鳴き声。身に染み渡る心地よい風。

 空を見上げると青空が広がり、日の光が強く輝いている。

 そして目の前に一面に広がっているのは海だ。広大な海の上を一隻の小型船を進ませながら、シオンは前を見続けていた。

 

 彼がドーン島を出てからそれなりに時間も経過している。海図を見ながら自分の目的地がどこにあるかを把握しつつ、自分が進む航路も決めてある。

 しばらくは暇かと思ったシオンは持って来た荷物の中から数冊の本を取り出し読み始めた。この狭い場所では体を動かすことも出来ないので、今はじっとしながら島に辿り着くのを待つしかない。

 

 そのまま時間もある程度経ち、切りの良いところまで読み終えた彼の目の前に島が見えてきた。見たところ、村もあるようだ。

 少し早いが今日は休むかと考えたシオンはその島の浅瀬に船を停めた。

 村の住人は突然の旅人の来訪を快く受け入れてくれたようだったので、シオンは安心して宿で一夜を過ごすことが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、シオンは村の酒場に居た。

 のどかな朝を迎えたが、ドーン島以外で朝を迎えたことが新鮮だったのか変な感じだった。これは旅立つ者のあるあるかなと思いながら、朝食を食べていた。

 懐から海図を取り出して、次はどこに寄ろうかと考え始めた。時間はどれだけ掛けても構わないと言われている。よっぽど信頼されているのかと思うとつい笑みを浮かべてしまう。

 

「坊主、旅人かい?」

 

 酒場の店主らしき人に話しかけられ、「そんなところです」と返しておいた。

 大海賊時代になってからも、海賊の数は増え続けている。ヒロト曰く、当時は海賊があまりにも増えすぎたため、海軍顔負けの仕事の量だったとの事だ。仮に自分がもし同じ場面に見舞われたら一体どうなることか。肉体はともかく、精神が疲れることだろう。

 

 そんな時代が続いている中で、子供が1人で旅をしていることを酒場の店主は珍しく感じたようだ。彼が言うには、ここにはあまり旅人は訪れないからこの村の見知った顔しか来ないらしい。それでも、営業できているのは彼らのおかげだと口にした。

 

 それを聞いたシオンは、フーシャ村のマキノさんの酒場を思い浮かべた。彼女の酒場も同じように村の住人に愛されている。それと同時に、あの酒場で大海賊と言われる〝赤髪〟と呼ばれるシャンクスと過ごした自分とルフィの思い出が呼び起こされた。

 

 自分は彼と共に過ごした時間は少ないが、その記憶は今でも根強く残っている。あの一件があってもシャンクスは明るく陽気な雰囲気を自分たちに見せてくれた。ルフィをからかい、それに対してルフィが噛みつき、自分はその様子を《赤髪海賊団》の船員たちと共に笑いながら見守る。短い時間ではあっても、自分にとっては大切な思い出の1つだ。

 

 島を出て2日目にして、もう故郷が恋しくなったのかと脳裏によぎったが、これもまた旅のあるあるかなと思い、考えてても仕方ないと笑みを浮かべた。

 

 

 

 そんな思い出に浸っているシオンだったが、自分と店主だけだった酒場に1人の青年が入ってきた。短く刈った緑色の頭髪、左耳には3つの雫型のチャームを下げた金のピアスをしている。何より、彼の腰には3本の刀があること。その佇まいから剣士であることが察せられた。

 

「隣、邪魔するぜ」

 

「ああ。構わないよ」

 

 青年はシオンの隣に座り、酒を注文した。見たところ歳はそれ程離れていなさそうだった。あまり視線を感じさせないように、隣の人物を注意深く観察する。敵意は感じられないため、体に力は入っていないが、何か言葉で表せないようなものをこの人物から感じた。

 

 酒を出されると、彼はそれを口にし始めた。つい先程まではシオンと店主の2人の話し声が聞こえていた酒場だが、今は沈黙が流れていた。それを破ったのは酒場の店主だ。

 

「緑髪のお兄さんも旅人なのかい?」

 

「ん? どういう意味だ?」

 

「この村に見知らぬ人間が訪れるのも珍しくてな。そっちの赤髪の坊主も旅人らしいんだ」

 

 それを聞いた青年がシオンの方に顔を向けてきた。シオンは彼に頭を軽く下げて、「どうも」と口にした。

 

「お前、見た感じ強そうだな」

 

「そうかな。そういう君はどうなのかな」

 

 2人が話し始めたのを気に掛けてくれたのか、酒場の店主は奥へと入っていった。

 

「刀3本も持ってるなんて、ひょっとして三刀流の使い手かい?」

 

「へぇ……よく分かったな。大抵の奴らは刀3本も持ってるのを見ると、全部使うなんて思わない奴も多いんだけどな」

 

「どんな使い手だとしても良いと思うけどな。人それぞれさ」

 

「お前の隣に置いてある刀はお前のか?」

 

 シオンの隣に置いてある刀に視線を移して青年に対して、「そうだ」と言って返した。興味深そうに見てくるので、見てみるかと尋ねたシオンだったが、青年は「いや、いい」と断った。

 

「これでも昨日、旅に出たばかりなんだよね」

 

「どこの出身だ?」

 

「それはあまり口に出来ないかな」

 

「訳ありって事か……」

 

「そんな風に思っておいてくれて構わないよ」

 

 自分の出身地を伝えるのは良いことではないだろう。万が一、人伝に自分を匿っていた場所を知られれば、その地が危険に晒されるかも知しれないからだ。ましてやあの場所はシオンだけでなく、エースもいたのだからバレればマズいことになる。

 

 そんな訳ありの事情を察したのか青年がこれ以上聞いてくることは無かった。

 

「そういえば、旅人って事なら舟は持ってるのか?」

 

「小型船なら持ってるけど、どうかしたのか?」

 

「実を言うと、頼み事があるんだが……」

 

 何やら困っている様子にシオンは話を聞くことにした。

 彼は舟でこの島に辿り着いたが、その途中で舟が破損してしまい、代わりの舟を探していたらしい。それで、この島を出るときに自分も次の島まで乗せていって欲しいとの事だ。

 

「別に構わないが、旅をしてるのは修行か何かか?」

 

「確かに、そんなところに近いな。おれは世界一の剣豪になることを目指している」

 

「世界一の剣豪か……随分と壮大な夢だな」

 

「お前は笑うか?」

 

「いや、良い夢だと思うよ」

 

 世界一の剣豪という言葉を聞いた瞬間、シオンの脳裏にルフィのことがよぎった。アイツもまた海賊王になるという壮大な夢を持っていたなと、つい口元が緩んでしまった。

 そんなシオンの様子が気になったのか、青年が「どうかしたのか」と訊いてきたが、何でもないで済ませた。

 

 

 

 そうと決まれば、旅支度をしなければならないなと思い至り、島の浅瀬で先に待っていると伝えておいた。青年はまだ酒を飲んでいるみたいだったため、シオンは物資の買い出しに出かけた。

 

 ある程度の食料を補充し、小型船が停めてある浅瀬に向かい、青年を待った。しかし、時間がある程度経っても青年が来ることはなかった。

 こんなに分かりやすい所に来れないのかと思ったシオンは、村の中を捜索し始めた。

 

 捜し始めて15分後、全くの真逆の方向に彼はいた。どうやらこの人物はとんでもない方向音痴のようだと、知らなかったとはいえ、先程までの自分を殴りたくなってしまった。

 しかも、本人に悪いと思っている自覚が無いのが余計にたちが悪かった。

 とりあえず、また迷子になってもらっても困るために、青年に気を配りながらシオンは小型船が停めてある浅瀬に向かった。

 

 

 

 なんとか無事に辿り着くことができ、出航しようとした矢先、村の住人たちが顔を出しに来た。どうやら見送りに来たらしい。

 ただの旅人にここまでする必要は無いと断ろうとしたシオンだったが、久々に訪れた2人の旅人を送らせてくださいと一点張りだったため、その気持ちを素直に受け止めた。

 2人は村の住人に見送られながら。海へと小型船を進ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 村を出てからある程度の時間も経った。

 シオンは本を読みながら時間を潰し、青年は小型船に積んでおいた酒を飲んでいた。当然、シオンの許可はもらっている。

 

「そういえば、お前の旅の目標を聞いてなかったな」

 

 不意に青年が話しかけてきたのを見て、シオンは本を読むのを止めた。

 

「そうだったな。俺はこの海を自由に生きたいんだ」

 

「自由に? そんなの普通に出来るだろ」

 

「いや、俺の知っている奴は自由に生きることが出来なかったんだ。その半ばで命を落としてしまった……だから俺は、そいつの分まで自由に生きたいんだ」

 

 シオンが頭に浮かべていたのはサボのことだ。決められた人生を歩むことよりも自由に生きることをサボは選んだ。島に4人でいた頃の中で最もそれを望んでいたのかもしれない。

 だが、それは天竜人によって邪魔をされてしまった。彼の無念は計り知れないだろう。

 だからこそ、自分は兄の分まで自由に生きたいとシオンはあの日、誓った。

 

 その様子を見ていた青年は少しの間、瞠目していた。彼は空を見上げると、口を開いた。

 

「おれにはある約束を交わした奴がいた」

 

「約束?」

 

「そうだ。そいつとは何回も勝負し合ったが、おれは全然歯が立たなかった。そんな時に、そいつから悩みを打ち明けられて、互いに約束をした。どちらが先に世界一の剣豪になるかって約束をな」

 

「それは、良い約束だな」

 

「あぁ、だがそいつは命を失った。だからこそおれは強くなって、いつか必ず世界一の剣豪になってみせる。そうおれは死んだアイツに約束した」

 

 そう言いながら、青年は近くに置いておいた3本の内、1本の刀を掲げた。

 

「何だか、ある意味で似たもの同士なのかもな、俺たちって」

 

「ふん、否定は出来ねェな」

 

 互いに不敵な笑みを浮かべるシオンと青年。そんな状態がしばらく続いていたが、不意に感じた気配にシオンは戦闘態勢に入った。それを見た青年も刀に手を掛けた。

 

「どうした?」

 

「どうやらお客さんが来たみたいだな」

 

 シオンが見ている方角には海賊旗を掲げた1隻の船が近づいてきていた。

 

「海賊か、それなりに人数は多いみたいだな」

 

「お前、相手の数が分かるのか?」

 

「まぁね、それでどうする?」

 

「どうするってのは?」

 

「敵意が無いのならこっちから襲うつもりはない…………と考えたんだけど、なッ!」

 

 突如、迫ってきていた大砲の弾をシオンは船を飛び出して2つに斬り落とした。

 

「どうやら相手さんはそのつもりみたいだ。それで、あそこに行こうと思うけど、君はどうする?」

 

 海賊船を指さしながらシオンは青年に聞いた。すると、不敵な笑みを浮かべていた彼は刀3本を腰に差して立ち上がった。

 

「上等だ! 喧嘩売って来やがったんなら、買うってもんだ」

 

「りょーかい。そんじゃ、俺に掴まってて。あっちまで飛んでいくからさ」

 

 その言葉に従うように、青年はシオンに掴まり、シオンは船を飛び出した。

 空気そのものを蹴る(・・・・・・・・・)ように移動し続けるシオンに対し、海賊船からいくつもの砲弾が撃たれたが、それを難なく躱し続け、海賊船の甲板に降り立った。

 

「な、何だこいつら。空を飛んで来やがったのか!?」

 

「本当は違うんだけどね。まぁいいや、後ろの連中は任せてもいい?」

 

 正直に言えば、この程度の相手ならシオン1人でも片付けられるだろう。だが、今の彼は協力して敵を倒すという気持ちが大きかった。現に、彼の背中合わせになるように、青年が両手に2本、口に1本の刀を咥えた、三刀流の構えをしていた。

 

「こんな奴らに遅れを取るつもりはねェよ。まぁ、おれの後ろの奴らはお前に譲ってやる」

 

 強気な言葉を返され、それに応えるようにシオンも腰に差していた刀を抜いた。

 

 敵の様子を見ていた2人だったが、海賊の方から声が聞こえてきた。

 

「さ、3本の刀の使い手……ま、まさか……〝海賊狩り〟ロロノア・ゾロか!?」

 

 1人の海賊から発せられた言葉によって海賊たちの間に動揺が広がった。それを聞いたシオンは興味深そうに青年――ゾロに話した。

 

「へぇ……君って異名持ちだったんだな」

 

「勝手に言われるようになっただけだ。……それよりも、おれも聞きたいことがある」

 

「何かな?」

 

「お前、名前は?」

 

「…………シオン」

 

 簡潔に答えると、ゾロは「そうか」と言って敵を見据えた。シオンも同様に敵を見据え、いつでも動けるような態勢だった。

 

「ひ、怯むな! 敵はたったの2人。数でやれば敵うまい。野郎ども、かかれぇ!」

 

 敵の大将と思われる者のかけ声と共に海賊たちが襲いかかってきた。その声と同時にゾロは駆け出して戦闘へと入った。

 

「それじゃあ、初陣と行こうか。『三日月』やるぞ」

 

 見る者を魅了するような美しい刀身をした己の刀に言い聞かせるように言うと、シオンは刃の根元から切っ先まで手をあてると、刃が光を纏った。

 長年の鍛錬の末に、彼は一部分に光を纏わせられるようになった。体全体に光を纏うとスピードや攻撃力が増す。だが、拳や足などの一部分に纏わせると、それらを使った攻撃の威力は“流星”の状態になるよりも強い。

 

 

「“流星剣”」

 

 

 横薙ぎに刀を振るい、流星の如き飛ぶ斬撃が海賊に襲いかかり、次々と直撃した海賊たちを吹き飛ばしていった。吹き飛ばされ、甲板に倒れ伏した彼らは傷を負い、血を流しながらも動いていることから命はあることが分かった。

 

「加減はした。死にはしないさ」

 

 シオンとしては相手を気遣うように言ったつもりだが、海賊側としては馬鹿にされているように感じたのか、残っている者たちが銃を一斉に構えてきた。

 

「近距離で敵わないなら遠距離で対応するか。けどな……」

 

 次の言葉を発する直前、一斉に銃弾が放たれた。普通の人間なら撃たれれば致命傷になるだろう。

 

 シオンは刀を至るところに振り続けた。上に、下に、横に、斜めに。いくら銃弾が放たれようが、彼に当たることはなく、1つ残らず斬り落とされていった。

 

「この程度の銃弾なら簡単に斬り落とせるさ」

 

 再び刀を構えると海賊たちが一斉に数歩下がっていった。ちらりと後ろを見ると、ゾロも海賊をほとんど倒していた。

 

「(そろそろ終わらせるか)ゾロ、伏せてろ!」

 

「あぁ? って、ちょっと待て!?」 

 

 慌てて姿勢を屈めたゾロの姿を確認すると、シオンは刀を円状に振り抜くと、先程と同じように斬撃が彼の周囲に飛んだ。その一撃は残っている海賊たちを斬り倒した。

 

「こんなものか……」

 

 刀を鞘に収めると、不意に気配を感じた。下の方を除くと小舟があり、そこにはオレンジ色の髪をした女の子がいた。近くに大きな袋があり、逃げだそうとしていることから、この船の物を奪ったのだろうとシオンは思った。

 

「このガキィ……! ここまでやりやがって……!」

 

 振り向くと、大将の男が剣を振り下ろそうとしていた。はぁ、と息を吐き、拳を後ろに構えていたときに、

 

 

「鬼……斬り!」

 

 

 聞き覚えのある声が聞こえたと思えば、目の前を何かが通過し、大将の男が血を流しながら倒れていった。視線を横に向けると刀を振り抜いた状態で静止しているゾロがいた。

 

「やるね」

 

 ゾロは刀を鞘に収めながら振り向いたが、その表情は不機嫌そうだった。

 

「お前なぁ……やるんなら先に言っとけ」

 

「でも、しっかり反応してくれただろ」

 

「全く……んで、これからどうする?」

 

「やることは終わったし、先に進むか」

 

 可愛そうとは思わなくも無いが、こちらに手を出してきた相手が悪いかと考えれば構わないかとシオンは思い、小型船に戻ると再び船旅に戻った。

 

(それにしても、あのオレンジ髪の女の子は何だったんだろうな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人里がある島に辿り着くと、「おれはここで降りる」と言い、ゾロと別れることとなった。

 

「すまねェ、助かった」

 

「大丈夫さ。案外、こっちもゾロと一緒にいられて楽しかったし」

 

 多少は名残惜しく感じるがゾロと違い、シオンは行かなければならない場所がある。

 ここに来るまでの道中に、ローグタウンに一緒に来ないか誘ったがゾロはそれを断った。そのために、ここでそれぞれ各々の目的のための道を進むことになるだろう。

 

「あんまり柄じゃねェんだが、お前とはまた会えそうな気がする」

 

「奇遇だな。俺も同じ事を思ってたよ」

 

 お互いに笑みを見せて、最後はシオンから手を差し出して握手をした。その後、自らの小型船に乗り、ゾロの見送りを受けながら、一人旅に戻っていった。

 

 

 

 シオンとゾロ。この2人の再会は遠からぬ未来に訪れることになるとは、お互いに思ってもいなかった。

 

 

 

 

 




これから私生活が忙しくなってくるので投稿頻度が空くと思われます。個人的な願望としては週に2話は投稿したいと考えていますが、1話が限界ってことになるときもあるかもしれないのでご了承ください。

キャラまとめでオリ主を含めたオリキャラのイメージキャラボイスも紹介しようと考えていますが、容姿も紹介した方がいい?(容姿は大体、他作品のキャラの容姿が多いです。多少変更もする可能性もある)

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