「センゴク、どういうことじゃ!?」
「やかましいぞ、ガープ。一体何のようだ?」
海軍の本部がある町、マリンフォード。
海軍元帥センゴクの部屋にガープが新聞を片手に持ったまま、騒がしい声を発して入ってきた。
「どうしたもこうしたもあるものか! ヒロトの奴め、何故こんな真似を……」
ガープは険しい顔をしてセンゴクの机に新聞を叩き付けた。その一面には魔剣士の一味の件が公表されている。
センゴクはその姿を見て、同じく自分の机にしまっておいた新聞を手に取り、内容に目を通した。
記事には『かつて時代を騒がせた一味、突然の復活!』と新聞に書かれている。
「何がどうあれ、アイツなりの考えがあっての事なのだろう。アイツが考え無しに動くような奴では無いことはお前も知っているだろう?」
「確かにそうじゃが……重要なのはそんな事じゃない。ヒロト自身の事もあるが……何よりもこいつのことじゃ!」
そう言いながら、新聞に載っていた写真に写っている少年を指で差して、センゴクに分かるように見せていた。
「! こいつは……まさか」
「お前が思っとる通りじゃ。明らかに面影がある。というよりも、あやつそっくりじゃ」
「ガープ…さてはお前、私に黙っていたな……?」
ジト目で見つめられたガープは思わずやらかしてしまった……、とばかりに顔を歪め、視線を逸らした。それだけでセンゴクにはバレバレである。
「お前はどうしてこうも厄介事ばかりに首を突っ込む! ロジャーの件といい、息子の件といい、今回の件といい……そもそも、なぜ私に知らせなかった!? ヒロトの件に関して一任されているのは私だとお前も知っているだろう!」
「姪と甥の頼みを断り切れるか! わし以外に適任はおらんじゃろう! 第一、こいつに海兵になってもらおうと手を尽くしてきたわしの苦労がお前に分かるか!?」
お互いに言いたいことを言い合い、ヒートアップし続ける2人だったが、1人の人物が部屋に入ってきたことによって収まった。
「全く、何を言い争ってるんだい。そんな事をしている暇なんてないよ」
「おつるちゃん……」
「過ぎたことを気にし続けても、どうにもならないよ。重要なのは何をどうするかだ」
つるの仲介によって一先ずは落ち着いた2人だった。彼女も新聞を持って来ており、視線を新聞に向けたまま話し始めた。
「それで、政府から何て言われたんだい?」
「とりあえずは、様子を見ろとのことだ。下手に刺激して敵に回られるのは政府としても嫌なのだろう」
「そうかい……それで、この写真に写ってるあの子そっくりの少年については、政府は何か言ってきたのかい?」
「いや、特に何も指示されることは無かった。重要なのはヒロトが何を考えて今回の行動に移したのかを一刻も早く把握しろとのことだ」
3人が知っているヒロトという男は海軍に良い感情を持っていない事は把握済みだ。それでも自分たちに協力し続けてくれていたのは、彼自身が3人に救われた恩義のためだと言っていたのを聞いている。
「あの子たちにとってあの出来事は、今も強く根付いてるってことなんだろうね。仕方なかったのかもしれないが、同情は隠せないさね」
「……おつるちゃん、ラグナはどうなっておる?」
「今回の件を聞いて、少し驚いてはいたよ。でも、それ以降は何も音沙汰無しさ」
「そうか……アイツの事だから、何かしでかさんか心配なんじゃがな…」
以前起こったことによって変わってしまった人物の事を思い浮かべながら、ガープは懐からせんべいを取り出してかじり始めた。
センゴクは空いた湯飲みに茶を入れて、飲みながら新聞に目を通している。
「一味の総勢は40人近くか……全体の実力を考えても、四皇と一戦交えられるほどの戦力なのかは疑わしいな」
「センゴク、まさかとは思うが、あの子にアイツらの誰かを相手にさせようと考えている訳じゃないのかい?」
「そうは言っておらんよ、おつるちゃん。ただ、この事を知った四皇の誰かが動き出さないかを危惧しているだけだ」
「あやつは特にあの2人とは関係があまり良くなかったと記憶しているが、実際のところはどうなのか分からんからのう…」
かつてまだ一味が活動を続けていた頃、彼らは一部の四皇と何度か戦ったことがあるのだ。あくまでそれは海軍が把握している情報に過ぎないのだが……。もしかしたら、全員とも一戦交えているかもしれない。強者たちを相手に出来るほどの規模を持っていたこともあったのだ。
「私の方からクザンを向かわせておこうと思う。アイツならばヒロトとも親しかった筈だ」
「大丈夫なのか、センゴク。あやつが素直に頷くとは思えんが……」
「元帥命令だの何だのと説得はしておく。ボルサリーノはともかく、サカズキに任せれば一触即発になりかねん」
「ま、そんなところだろうね。とりあえず、あたしは――」
3人が話している最中のことだった。部屋のドアが勝手に開けられたのだった。
「あらら、皆さんお揃いで。一体何を話しているんですか?」
「クザン、お前なぜ勝手に入っているのだ。ノックぐらいしろ」
「手厳しいですね、センゴクさん」
咎めるように言ったセンゴクだったが、当の本人は全く反省の色が無い。
そこへもう1人の海兵が入ってきた。
「失礼します、センゴク元帥。こちらにクザン大将が伺ったとお聞きしまして……」
「ああ、そこにいるぞ」
「そうですか、良かった。実はクザン大将から元帥にお話があるとお聞きしましたので、私も付いてくるようにと……」
「どういうことじゃ、クザン」
説明を受けた3人がそれぞれ疑問符を浮かべた。ガープが訊いたが、すぐには答えず、いつも感じられるような雰囲気がクザンから全く感じられないほどの真面目な雰囲気を出しながら彼は口を開いた。
「ヒロトの件、おれに一任させてもらえませんか?」
ガープとつるはその言葉を聞いて少なからず驚いていた。センゴクは黙ったまま見つめ続けている。
「本気なのだな?」
「……ええ」
「……はぁ、分かった。お前に一任しよう。ただし、軍艦を使って向かうことだ。何があるか分からんからな。それとだ、知ってて我々に何を話していたのかをわざわざ訊くな」
「分かってますよ。それじゃあ、失礼します」
クザンは1人の海兵を引き連れて部屋を出て行った。
残されたセンゴクを除いたガープとつるが一斉にため息をついた。
「やれやれ、噂をすればなんとやらとは言うが、まさか本人からとはね」
「まったくじゃ。一体どういうつもりなのか」
「…………」
「センゴク? どうしたそんな深刻そうな顔して」
「…………何やら嫌な予感がしてきた」
センゴクの言葉の意味が分からず疑問符を浮かべたガープと、同じ風に思ったのかつるも深刻そうな顔を浮かべていたのだった。
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新聞に魔剣士の一味についての記事が世界に出回った頃、それはある者たちの元にも知らされていたのだった。
・ある女が治める国での出来事
「おれを呼び戻したのは何の用だ、ペロス兄」
「そう慌てるな、カタクリ。私だってお前を呼び戻せと言われて何の事かは聞いていないのだからな」
「まさか、ママに?」
「ああ、そうさ」
お菓子に包まれた国にある城の中を2人の男が歩きながら話していた。
彼らは1つの部屋の前に辿り着くと、ドアを開けて入っていった。
「ママハハハ! よく来たねェ、可愛い息子たち」
巨体の女が椅子に座りながら2人を出迎えた。
「ママ、おれを呼び戻したのはどういう理由だ?」
「そう慌てるな、カタクリ。こいつを読みな」
彼女は新聞をカタクリに渡し、その隣にいた男――ペロスペローも載っている記事を読んだ。
「これは……」
「懐かしい顔だねェ……おれの誘いを断って以来になるか」
「ママ。私たちを呼んだのは、まさか……」
驚きを顔を出さないカタクリに対して、ペロスペローは驚いていた。それと同時に自分たちが呼ばれたことに察しが付いた。
「ああ、そうさ。奴らがこの海に来るっていうのなら歓迎してやろうと思ってねェ……」
「一戦交えようということか?」
「それはアイツ次第だよ、カタクリ。ともかく、奴らが新世界に来ればすぐにでも出れるように準備しておきな。アイツの力、海軍の手元に置いておくのは惜しいからね」
巨体の女――シャーロット・リンリンの言葉を受けた2人は話を終えたのを機に、女王の間と呼ばれる部屋を出た。
「やれやれ、とんでもないことになってしまったな」
「ああ……だが、奴と一戦交えられると考えるだけで、面白い」
「珍しいな、カタクリ。お前がそんな事を言うとは」
「ふっ……」
好戦的な笑みを浮かべているカタクリを見ながら、ペロスペローはこれからすることを考え始めたのだった。
・鎖国国家にある一つの島での出来事
「ウォロロロ……! おもしれぇ奴が出てきたもんだな」
巨大な二本の角を生やした巨体の男が酒を飲みながら新聞を手にしている。
「どうするんですか、カイドウさん?」
「どうせなら、こっちから手を出してみるってのみ良いかもなぁ……!」
黒と紺色を基調とした服にヘルメットとマスクを装着した翼を生やした大男は、カイドウという男に尋ね、スキンヘッドに金髪の弁髪の太った男が面白そうに言った。
「おい、クイーン。カイドウさんに何を勝手に意見してるんだ……! こっちが先に訊いてるんだからテメェは黙ってろ、この能なし……!」
「あ゛ぁ!? テメェこそ黙りやがれ…! この拷問好きの変態野郎…!」
「よせ、お前ら…! 勝手におれを置いて言い争ってるんじゃねぇ…」
「「すまねぇカイドウさん!! このバカのせいで……」」
互いに険悪な雰囲気となっていた2人はカイドウに止められて謝ったが、罵倒を欠かすことは無かった。
一方で2人の目の前に座っているカイドウはというと、新聞の写真を見続けていた。酒を飲みながら何かを考えている。すると飲みきった酒の入っていた瓶を投げ捨て、意を決したように立ち上がった。
「決めたぞ……! 船を出せ!」
「ということは……」
「どういうことだ?」
「おれが直々に会いに行って、どれだけ実力が上がっているか試してやろうじゃねぇか!」
カイドウの決断にキングは頷き、彼と共に今いる場所から出た。
残されたクイーンは一体どういうことか腕を組んで考えていたのだが……
「えェ~~~~~!?」
意味を理解したクイーンの叫び声が誰もいない空間に響き渡ったのだった。
・鯨を模した船での出来事
「オヤジ、新聞見たかよい」
「マルコか……もちろん見たさ。あの若僧がもう一度表舞台に出てくるとはな」
船室にて、白ひげを生やした男とまるでパイナップルのような髪型の男――マルコが話し合っていた。
興味深そうな顔をする男に対してマルコは分からないといった顔を浮かべている。
「オヤジはアイツの考えは見当が付いてるのかよい?」
「大体はな……。いずれ会えた時に訊いてみるさ」
「ま、今はおれたちに関係はあまりなさそう――」
マルコが話している途中で、部屋がノックされた。
ドアを開けると入ってきたのは半裸の1人の青年だった。彼は新聞を片手に興奮しているように話し出した。
「オヤジィ! 見てくれ!」
「落ち着けよい、エース。何をそんなに興奮しているんだ?」
「って、マルコ居たのかよ」
「いたら悪いか…」
「グラララ……そんなに慌ててどうした?」
「そうだ! これを見てくれ」
出されたのはさっきまで2人が話していた事についての記事だった。それなら既に知っていると伝えたマルコだったが、エースはそうじゃねぇと言い、掲載されている写真に写った1人の少年を指差した。
「こいつがどうかしたのかよい?」
「おれの弟なんだ」
「ハァ!? こいつがお前の弟か!?」
「おう! おれの自慢の弟だ。しっかり者でおれが幼い頃によく助けてくれてたが、無茶ばっかりする奴だったんだよなぁ。おれとも良い勝負してたし……それと――」
弟について語り出したエースに、また始まったとばかりにマルコは肩を落とした。
彼がこの海賊団に加わって間もない頃、隙あらば自分の弟たちについて語っていたのだ。最初こそは微笑ましいと感じた海賊団の面々だったが、こうも聞かされ続ければ辛く感じるのは仕方ないだろう。
最早、最早、エースがブラコンだということは全員が理解していると言ってもいい。そして、今回の犠牲者は自分かと思ったマルコは深いため息を吐いた。当の語っている本人はそんな事などお構いなしにというより、もう既に聞いた話だから放っておかれてるのに気付いているのかも怪しい。
とはいっても、そんな弟が新聞に載っていたのを見て喜ばない方が無理があるかとマルコは諦めようとした。
しかし、エースは弟自慢の話がヒートアップしてきたのか、どんどん声量が大きくなってきた。さすがにここまで暴走させるのはマズいと感じたマルコが止めにかかった。
「ああもう! 分かった、分かったよい! その話はまた今度でいい!」
「ちぇっ……何だよ、これからだってのに…」
拗ねたような顔をしたエースに、マルコは内心で「うちでは末弟でこんな感じなのに、長男として大丈夫なのか」と言わんばかりに苦い顔をした。
「マルコ……」
「ん? 何だよい?」
呼ばれたマルコはエースを放っておき、彼が持って来た新聞に視線を落としている自分のオヤジの近くに寄った。
「こいつを見て、何か思ったことはないか?」
「こいつって……エースの弟か? いや、特に何も思わないが……」
「……そうか」
自分のオヤジ何を思ったのか分からないといった表情を浮かべるマルコ。もう一度、エースの弟の顔を見てみたが、やはり分からないままだった。
一方で、白ひげはその少年の顔を見てある人物を思い浮かべていた。それは、自分とも長きにわたって争い、酒を飲み交わした男が率いる海賊団に所属していた人物であると共に、その海賊団が解散した後もある人物と共に海賊として活動していた人物の事が頭をよぎったからだ。
(まさかとは思うが、こいつはあの小娘の……ということは――)
確証も何もない。自分にとっては無関係の筈だが、気にならずにはいられない。もしそうだとしたら……何かとんでもないことになりそうだ。そう思った〝白ひげ〟だった。
・ある島での出来事
「お頭、客だ」
「ん? 一体どこのどいつだ?」
お頭と呼ばれた男は、寝ていた身体を起こしながら訪れた客の姿を見た。
「よう、〝鷹の目〟じゃないか。こんな時間に来るとは、珍しいこともあるもんだな」
「呑気なものだ……」
七武海に属し、〝鷹の目〟と呼ばれる男――ジュラキュール・ミホークは呆れたような声で告げる。
「それで、おれに何の用だ?」
「貴様には伝えておいた方がいいと思っただけだ。それに……ただの暇つぶしだ」
取り出したのは1枚の新聞。今、強者たちを動かしている記事が掲載されているものだ。
ミホークから受け取った男はその記事に目を通す。
「こいつは……!」
「懐かしい顔だ。貴様と同様に勝負していた頃を思い出してしまった」
それを聞いた、この場にいた面々もざわめきを見せる。今のミホークの言葉で彼らはそれが誰のことなのかを察したのだ。何人かは男が持っている新聞に目を通そうとし、それを見越していたミホークがもう1枚の新聞を取り出し、彼らに渡した。
「40人近くの一味か……あの頃よりはまだ少ないな」
「だが、奴が本気になればそれは軽く越えるだろう。そうなれば、貴様と事を構えることもあるかもしれないな」
「アイツに限ってそんな事はねェと思いたいが……」
新聞を膝の上に置いて頭を搔きながら話していた男だったが、急に言葉が止まった。
ミホークはどうかしたのかと疑問を感じ、男の横顔を見る。彼の目が見開いており、何か思いがけないことでもあったのかと感じ、尋ねた。
「気になることでもあったか」
「…………いや、随分昔の知り合いがいて驚いただけだ」
『知り合い』という言葉を聞いてミホークが思い出していたのは、ある小さな村での面白いガキの話だった。その少年に自分の大切な物を預けたと聞いているが、写真を見る限り、この一味にその人物は居なかったはずだと記憶している。
その様子を察したのか、男は語り始める。
「お前には話してなかったな。実を言うと、あの村であったのは1人だけじゃない」
「もう1人いたというのか?」
「ああ……お前なら見れば分かるはずさ」
新聞をミホークに手渡し、写真に写った1人の少年を指差した。見たミホークは驚きを見せる。
「この少年……面影がある。まさか、奴の……」
「そうだ、アイツの子供さ」
なぜか哀愁が漂うような雰囲気を見せる男。疑問に思いながら、もう一度少年の姿を見ると、見覚えのある物があった。それはかつて、ミホークの隣にいる男が預かっていた物のはずだ。
恐らく会った際に預けたのだろうと結論づけたが、同時に引っ掛かるものがあった。
この少年が身につけている物の重要性は一番この男が理解しているはずだ。それを無関係の人物に預けるかと思ったが、すぐに思い至った。この男が預ける気になった理由が。
「〝赤髪〟、もしや貴様は――」
赤髪の男――シャンクスは笑みを浮かべながら、空を見上げる。
自分が知る1人の人物と1人の少年のことを思い浮かべながら、その瞳は一際大きく輝いている、赤い星を見続けるのだった。
前話でオリキャラの容姿やボイスを書きましたが、合わないと思ったら自分でイメージしたもので全然構いません。作者の好みがバリバリに溢れたものなので。
感想があればお待ちしてます。返信できるかどうかは怪しくなりそうですが。