原作開始まではまだかかりますが、原作が始まってからは基本的に原作沿いで進める予定です。
一隻の海軍の軍艦が偉大なる航路を進んでいる。
甲板には何人もの海兵がいる中、1人だけ明らかにビーチチェアでくつろいでいる男がいた。
その男、クザンはアイマスクを付けながら、自らは何もしようとせず、己の部下たちに任せっきりになっている。
彼の部下たちはもう慣れている様子だったが、上司としてはどうかと他の者たちから思われても仕方ないのかもしれない。
そんな様子のクザンに1人の海兵が近づいた。
「クザン大将……いつまでそうやってるんですか?」
「別に、おれァただじっとしてるだけだからさ、そんなに気にすんなよ」
「そうは言われましても……」
自らの上司のだらしなさを感じた金髪にブルーグレーの瞳をした海兵は肩を落とす。
海軍大将はそれぞれが一つの正義を掲げているが、クザンという男が掲げる正義は『ダラけきった正義という』ものだ。
性格もダラけており、気の進まないことにも頭を働かせようとしないという、海兵としては大丈夫なのかと言いたくなるような男なのだ。
それでも、性格は基本的に冷静沈着であり、職務は全うしている。
「珍しく自分から言い出したと思えば、結局はこうなるんですか…」
「そんなに張り切りすぎても後で疲れるだけだ。もっと気を楽にした方がいいんじゃないの?」
「遠慮しておきます。性分ですので」
「全く……真面目だねぇ」
「貴方がだらしないだけです」
現在、クザンが率いる一隻の軍艦は〝魔剣士の一味〟との接触及び、彼らの目的について問うという任務の元、彼らを捜索している。
いくつかの書類を見ながら金髪の海兵は言い始めた。
「一応、目撃情報は各地で上がってはいますが、ほとんどが数日経過すればいなくなるというものばかりです」
「やれやれ、アイツらは何をしようとしてるんだか…」
「それを知るための此度の任務ですよ」
肩を竦めるクザンに対して、海兵は至極真面目な雰囲気を出しながら話し続けている。
あの件が公表されてから既に2ヶ月近くが経過しているが、未だに見つかってはいないのだ。むしろここまで見つからなければ、避けられてると言っても良いのかもしれない。
「電伝虫との連絡も全然つかないとなれば、こりゃあ本格的に海軍との関係を切ろうと考えてるのかもな」
「物騒なことは言わないでくださいよ。仮に彼らと敵対関係になれば、それこそ四皇とまでは言いませんが、七武海と同等以上か……」
「それも実際のところ、どうなのか……」
「どういう意味ですか?」
「そのままの意味だ。アイツらの戦力はおれたち海軍でも知り得ていないほどの規模の可能性もある。七武海と同じくらいだと考えてたら足をすくわれるぞ」
確かにそうなってしまったら恐ろしいなと海兵も同意を示す。
それに彼らはここ十数年の間、表舞台から姿を消していたのだ。その間に実力を上げていたとしてもおかしくない。
覇気の扱いに関してもかなりの実力を持っている者が多く、悪魔の実の能力者がいるのは確かだが、それがどのような能力なのか判明していないことも考えると頭が痛くなるなというのが2人の共通の見解だった。
「クザン大将はあの人と親しい間柄とお聞きしましたが、その通りなのですか?」
「まぁ……親しいっちゃ親しいかな。アイツが本部に顔を出したときに何度か話に付き合った仲だしな。手合わせもしたこともある。海軍という存在を嫌っているアイツがおれと関わるって事に疑問を抱かないことも無かったが、おれとしては特に気にはならん」
「そうですか……」
何故か残念そうな雰囲気を出す男。それがどうしてなのか一瞬考え込んだクザンだったが、「そういえばこいつは……」と呟いて何かを察したような顔を浮かべた。
彼の過去を知っているクザンは彼に尋ねた。
「そういや、お前はどうなんだ」
「どう、とは……?」
「以前、お前から聞いた話だとアイツらに恩があるんだろ? 確か、孤児だった頃、海賊に襲われかけた魚人に助けられたんだっけ? その魚人も今はアイツらの一味に加わっていた筈だしな」
「えぇ……その時にあの人に――ヒロトさんに会いました。私が…俺がこうして海兵としていられるのもあの人のおかげです。他の方々とも面識もありますし、少しだけ鍛えて貰ったこともありますよ。ですが……あくまでそれは私事です。もし不足の事態になったときは、恩人であろうと公私の区別はつけますよ」
つまりは敵になったとしても、助けてもらった恩を理由に手を抜く気はないということかとクザンは勝手に納得したようだった。自分としてはあまり戦いたくないなと考えていたのだが、ふと先程の『不足の事態』という言葉にある出来事を思い出していた。
かつてクザンは友が命懸けで逃そうとした少女を見逃した過去がある。その少女は成長し、今もなお賞金首として追われる立場にあるが、気にかけ続けてはいるのだ。
あの悲劇を機に自らの正義を決定づけた自分にとって、彼の一言は何かを感じるものがあったのだ。
(言葉では簡単に口に出せても、実際にその場面に直面したら、本当にそうは思えねぇかもしれねぇがな)
海軍での、自分の正義とは何かを悩んだ過去がある自分だからこそ、そう思えるのだろう。
海兵になってから自分の部下になったこの男の性格を把握しているクザンにとって、彼が言った一言は妙に不安を感じさせるようなものだった。
ともかく、考えすぎても仕方ないかともう一度ビーチチェアに深く寄りかかったときだった。
「うん? クザン大将、どうやら連絡が入ったようです」
別の海兵が慌てた様子で電伝虫を持って来ていた。
誰からだと尋ねれば、センゴク元帥からだと言ってきた。それを聞いたクザンは嫌そうな顔を浮かべた。
何か追加の任務でもあるのか、そうだとしたら気が重いなと内心で思ったが、表情に出ずとも長年連れ添った部下にはバレバレだったのか、険しい顔で「早くして下さい」と言われたクザンは肩を竦めながら受話器を取った。
「おれです」
『クザン、奴らの居所が判明した』
「そうですか、それで……態々その事を伝えるだけに連絡してきたんじゃないんでしょ?」
『…………察しが良いな。つい先程判明したことだが――』
元帥からもたらされた一報に、クザンも近くにいた海兵たちも驚きを隠せなかった。
「……確かなんですね?」
『当たり前だ。このようなこと、冗談でも言えん』
「なるほど、分かりました。それじゃあ、すぐに向かいます。最悪の場合……おれの判断に任せてもらっても構いませんね?」
『無論だ。この事に関して任せているのはお前だからな。ただし……近隣に住民がいるようであればくれぐれも被害に気を付けることだ。いいな?』
「言われずとも分かってます。それじゃあ、失礼します」
受話器を置いたクザンは立ち上がると、近くに置いておいた『正義』の文字が入ったマントに袖を通した。
「すぐに指示を出せ、リョート。一刻も早く奴らより接触する必要がある」
「了解しました。クザン大将」
金髪の海兵を後ろに伴ったクザンは、軍艦の進路の指示を出そうと行動に移した。
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ヒロトやシオンたちはある一つの王国に数日間滞在し、各々が自由に行動していた。
ある者は踊りの練習を。ある者は戦術の指南を。ある者は船の手入れを。ある者は武器の手入れを行うなど、時間を有意義に活用していた。
そして、ある一つの場所でも。
「はあぁぁぁぁ!!」
「まだまだぁ! そんなんじゃ俺に傷は付けられないぞ、シオン!」
赤髪の少年――シオンと黒髪の男――ヒロトがぶつかり合っている。鍛錬の真っ最中だ。
2人は剣を使用せずに、己の拳や足を使って戦っているが、シオンには擦り傷といった怪我が多く見受けられ、息も上がっている。対するヒロトは、ほとんど傷を負ってはいないし、まだまだ動けそうだった。
「はぁ……はぁ……さすがに、強いな…」
「これぐらいで息が上がっているようじゃまだまだだぞ。今のお前の状態だと四皇には軽くひねり潰される」
「そう、ですか……世界の壁は、広いな」
「まぁ、それでも覇気の扱いに関してはよくなってきたみたいだな。後は覇王色の制御が出来るようになれば、とりあえずは及第点だな」
近づいて座り込んでいるシオンの頭を乱雑に撫でるヒロト。疲れが溜まっているので、されるがままなシオンは息を整えている。
「あれから2ヶ月近くが経過してるけど、目的とかはあるの?」
「いや、今のところは特にこれといった目的はないが……強いて言うなれば、知り合いぐらいには会っておきたいかな」
「知り合い……?」
「まぁな。そうなれば、色々と寄り道をしつつ、あそこに……」
旅の進路について話し合っていた2人だったのだが、そこへ近づく複数の人影があった。
それを見たヒロトは特に何とも思ってもいなかったが、シオンは露骨に顔を引き攣らせていた。
「お二人とも~、そろそろ食事の時間ですよ~」
「あらあら、こんな傷だらけになっちゃって…すぐに手当てをしてあげなきゃ!」
何も知らない者が訪れたら……常人ならば叫びたくなるようなものがそこにはあったのだ。
ハッキリと言おう。その者たちの正体はオカマである。
そして、ここはモモイロ島を中心とする王国――カマバッカ王国。
この島にいるのは誰もがオカマなのだ。初めてここを訪れたシオンは驚きのあまり……というより、オカマという存在を実際に自分の目で初めて見た衝撃が強かったのか、しばらく硬直してしまうほどだったのだ。
一味の一部の面々は既にここを訪れたことがあったのか慣れていたようだったが、歳の若い者たち……マークやルティナといった一味としては新参者に含まれている者は当然驚いていた。
中には、「こんな地獄があってたまるかー!」と叫んでいる者、「嘘だ……こんなのただの夢だ……」と現実を受け入れきれないといった反応もあり、まさしく混沌の国といった感想をシオンは抱いていた。
ただ、マークの場合は「こんな人間がいたんだね! 興味深い!」と何やら興奮している様子だった。それを見ていたほとんどの古株たちが一斉にため息を吐くほど、こいつはどこかズレているんじゃないのかと思われてしまう程だった。当の本人は一体どうしたのかと何も分からずに首を傾げていただけだが……。
そんなこともあり、現在の一味はこの地で休息中といったところだ。
ちなみに王国と呼ばれているからには、王と呼ばれる者がいてもおかしくないと思っていたシオンだったが、今は不在中らしい。
名をエンポリオ・イワンコフという。その人物は一味とも知り合いで、自分が不在中でもこの場所を有効に活用しても構わないと言伝を貰っていたのだ。
そのため、シオンたちは彼女(?)たちに歓迎されているし、色々と手伝ってくれている。
怪我の治療を終えたオカマたちが戻ると、入れ替わるようにやって来た人物がいた。
「ヒロト様、シオン様。着替えと体を拭く用のタオルを持って来ましたのでどうぞお使いください」
「いつもすまないな、ライ」
「ありがとうございます、ライさん」
「いえ、私は執事ですので。どうぞお構いなく」
執事と言った青年の名は、ライ。その肩書きの通り、執事服の格好をしている。
ヒロトが不在の時に、マークやルティナたちの世話をしてくれた人物だ。
年齢は20代と一味の中では若い方ではあるが、実力は幹部に連ねていてもおかしくないほどである。しかし、彼は主に食事の準備や身の回りの世話といった事を仕事としているため、自分の方から幹部に名を連ねるのは遠慮しておくと言ったらしい。
それでも、もし幹部になるような心変わりがあればいつでも大丈夫だというのが一味の総意らしい。
「他の皆は集まっているのか?」
「幹部の皆様は広場に集まっております。他の方々もそれぞれで食事をとっておられてます。ただ……シローとゲツガは手が離せないとの報告が……」
「そうか……少し、今後に関して話しておきたかったが…分かった。俺たちもすぐに向かう」
「私は準備があるので、お先に失礼いたします」
頭を下げたライはこの場から離れていった。
シオンとヒロトは渡されたタオルで体の汚れを拭き取り、服を着替え始める。
鍛錬用の服を着て修行していたが、破れているところも多い。そこら辺は、ライが直してくれるため、特に気にしすぎる必要はないだろう。
ラフな格好に着替えた2人は、皆が集まっている広場へと向かった。そこには大きめの丸いテーブルがあり、料理が配膳されている途中だった。
「遅いよ~父さん、シオン」
「といっても、まだ料理が配膳されている途中じゃないか」
「俺、手伝います」
ブーたれるマークの事は放っておいて、シオンは配膳の手伝いを始めた。運んでいるのはオカマたちだが、客人にそんなことはさせられないと言われた。しかし、世話になっているのだから手伝いぐらいはさせて欲しいとシオンは言う。
既にこのやり取りも何回目だろうと周囲はやれやれといった視線や表情を向けた。熱心な様子に折れたのか、「しょうがないわね~」と言われたシオンは手伝い始める。
「シオンってば真面目なんだからな~。偶には楽をしても良いのに」
「お前が不真面目過ぎなんだろうが、ラゼル。もっと周りを見習え」
「酷いな~。ボクはいつでも女の子の相手をするときは真面目だよ」
「ダメだ…コイツ。言っても無駄か…」
「好きにさせておけ、シノン。軽薄でナンパ癖の悪い男に関わるのは疲れるだけだ」
「はぁ……分かったよ、姐さん」
とは言え、さすがに外でバカな真似をするようであれば容赦はしないがな、という視線を向けられたラゼルはビクッと肩を震えさせた。シノンはセレナに鋭い目を向けられた時のラゼルの態度の変化の早さに、驚きを通り越して呆れたように再び息を吐いた。
そんなやり取りは置いておき、料理の配膳も終わった。シローとゲツガは今はこの場に居ないため、それを除く幹部全員が席に着いた。ちなみに、ツキカゲとライは席に着かず、ヒロトの後ろに控えている。
各々が自分の目の前にある料理を食べている最中、ヒロトが話し始めた。
「食べながらで構わないから聞いて貰いたい。今後の予定について話そうと思う」
それを聞いた他の者たちは耳を傾ける。
「俺たちの所在もそろそろ海軍に知られているところだろう。というわけで、そろそろここを離れようと考えている」
「確かに、私も同意見だ。何やら追われる立場のような気がしてならないが仕方ないな」
「彼らが俺たちを手放したくないと考えているのは既に俺たちの間では周知の事実です。悩むだけ無駄ですね」
「やれやれ、旅を始めたあの時は…まさかここまで有名人になるとは思わなかったからな。ま、弓の腕も上がってきていることだし別に構わねぇけど」
ヒロト、セレナ、リオ、シノンの古参勢の4人が言葉を交わす。シオンとルティナはその様子を食事を止めて聞いており、マークとラゼルは耳を傾けているが、傍から見れば話を聞いているのかと問いたくなるように忙しく料理を食べている。
「そこでだ。船の次の進路はシャボンディ諸島に向ける」
「シャボンディ諸島といえば、新世界に入る海賊たちが集まる場所のことだっけ?」
「ええ。偉大なる航路の前半の海で名を上げた悪名高い海賊たちが集う地で有名です。それに睨みをきかせるために、近隣に海軍本部も設置されています。ですが……お父様、良いのですか? 新世界に入るということは彼らと遭遇する確率も高くなるということですよ」
「ああ……そろそろ頃合いだと思っていたからな。それに、俺たちの目的地も新世界にあるんだ」
「そういえば、ヒロトさん。目的地って? まだ聞いていないけど…」
「悪いな、シオン。お前やルティナたち新参者にはまだ教えてやれないことだ。だが…一言で言えば、俺やお前たち3人に関わりのある地ということだけだ」
「俺やルティナにマークと関わりのある地……?」
疑問符を浮かべた3人に対し、ヒロトは「直に分かる」と告げた。気にはなったが、3人もとりあえずは納得した様子に彼も珍しく笑みを浮かべた。
話し合いと食事を終えたセレナやシノンたちはそれぞれ出航の準備や船員たちに指示を出そうと動き始める。ほとんどの者たちがこの場からいなくなり、残っていたのはシオンとヒロトとライだった。
「いつもありがとうございます、ライさん。あんなに美味しい食事を作っていただいて」
「もったいないお言葉をありがとうございます。私だけの力ではありませんよ」
「素直に受け取っておけ。お前にも色々と苦労を掛けてる。この場所に初めて来たときは、お前にニューカマー拳法を習わせることになってしまったからな」
「皆様のためとあらば、構いませんよ。それに……あれで屈するようでは私もまだまだ未熟ということです」
そう言いながら遠い目をするライにシオンは苦笑いをした。
このカマバッカ王国には“攻めの料理”と呼ばれるものがある。『99のバイタルレシピ』として王国に伝わっており、ニューカマー拳法奥義の“花嫁修業”に含まれているという。
かつてこの国を初めて訪れたライは、これを学んだ。その過程では、心を乙女にしてニューカマー拳法を学ばなければならないとのことだった。
これを知った、ライと同行していた者たちは哀れみの視線を彼に送ったらしい。ヒロトも思わず気に掛けるほどである。
だが、ライはそれに屈することは無かった。ニューカマー拳法を学び通し、『99のバイタルレシピ』を無事に入手できたのだった。そのおかげで、一味に多大なる貢献をしてくれたと言って良いだろう。
「それを聞いたときは本当に大丈夫なのか気になったけど……」
「ご心配なく。私は私のままです。中々に興味深いものでしたが、オカマになるような気は一切ありません」
「ははは……」
肉体的よりも精神的に辛そうだなとシオンは思った。仮に自分がそれを学ぶことになったらどうなるか分からない。というより、想像したくなかった、
前世でもオカマとは無縁だった筈なのだが、生まれ変わってから実際にそれを味わうことになるなんて誰が想像出来るのだろうか。
思わず口に出しかけたが、何とか飲み込んだ。転生したなんて話は一応話さないように心がけている。身内なら話しても大丈夫だと思わないことはなかったシオンだったが、結論から言うと、墓場まで秘密にしようと決めたのだった。もし、気変わりが起こらなければだが……。
「シオン、お前も準備しておけ。明日の朝には出発する」
「分かったよ、それじゃあお先に」
まだ話を続けそうな2人を置いてシオンは広場を離れた。
それを見送ったヒロトは先程までの穏やかそうな雰囲気を消し去り、ツキカゲを呼んだ。
「状況は?」
「予想通りです。彼らが動き始めています」
「やはり、か……アイツもしつこいな」
「仕方ないことだと思いますよ。それと、海軍も……」
ライからの報告も受けたヒロトは目を閉じ、腕を組んで考え始める。
彼らから貰った報告はそれほど重要な事だからだ。そう簡単に対応できることではない。
考えを纏めたヒロトは目を開けて告げる。
「こうなっては仕方ない。不確定だから全員には告げないが、一部の奴らには伝えておいてくれ。――戦の備えをしておけと」
「御意」
「承りました」
2人が去ったのを確認し、ヒロトは椅子の近くに置いておいた己の剣を手に取る。
「――久々にお前と共に戦えそうだな、『ジークフリート』」
黒き衣を身に纏い、漆黒の剣を振るう剣士。それ故に彼――ヒロトは〝魔剣士〟と呼ばれるのだった。