赤き星の旅路   作:月影海斗

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第4話 コルボ山での生活

 月日が経つのも早く、僕がダダンに預けられてから2年が経過した。初めの頃はここで生きていけるのか不安だったけど、そこはエースが僕の面倒をしっかり見てくれた。狩りの仕方を始め、ここで生活していくための色んなことを教えてくれた。ダダンたちも面倒を見てくれている時、不機嫌そうに見えるけど、実際は気にかけてくれているのだろう。

 

 この前も、僕が誕生日を迎えた時に狩りのために弓が欲しいと言ったら、僕が使えるようなサイズの弓と矢をくれた。ドグラとマグラが言うには、「お頭が自分で作ると言い出した」ということを聞いたため、2人から話しを聞いた後に笑顔を浮かべて「ありがとう、ダダン」と言った。そしたらダダンはしばらく僕と顔を合わせようとしてくれなかったが、照れているのかなと思った。

 

 また、ヒロトさんも時々様子を見に来てくれている。旅の土産話を聞かせてくれたり、料理を作ってくれたりなどありがたいことだ。エースもヒロトさんに懐いているみたいだし、以前は3人でご飯を食べたり夜に星空を見上げたりしている。

 

 

 そういえば、エースに新しい友だちができたらしい。その友だちの名前は、サボ(・・)というそうだ。

 サボとの話をする時のエースはとても楽しそうで、話を聞いている僕も微笑ましく思っている。エースはもう少し大きくなったら会わせてやると言ってくれて、その日が楽しみに思った。

 

 

 それからさらに1年が経ち、僕は弓矢を携えて山の中にいる。ふと、僕は何かの気配を感じた。その気配の方向に向かって僕は弓を構え、矢を放った。放った方に歩くとその先にはウサギに矢が刺さっているのを見つけた。

 

 3歳になって気づいたことだが僕は気配を読むことに長けているみたいだ。エースは狩りが楽になって助かると言ってくれているが、本当にそうだと思っている。生き物がどこに潜んでいるかを察知しやすいし、猛獣が現れたとしてもどこから現れるか分かっているため対処しやすい。

 ただ、いつも気配を感じることに長けているというわけではない。他にも、この歳にしては力もあるように感じている。

 

 その後も僕は、獲物をいくつか仕留めてダダンの所へ帰ろうとした途中でワニを持ったエースと合流し、一緒に帰った。エースは僕が仕留めた獲物の量を見て、嬉しそうに僕の頭を撫でてきた。エースもワニを仕留めている時点ですごいとは思う。以前、僕がワニを見つけて、目の前に転んでしまい、喰われそうになった時はさすがに死ぬかと一瞬思ったが、エースが鉄パイプを使ってワニを仕留めた時はあまりの衝撃に腰が抜けるほどだった。鉄パイプってこんなに強かったんだと鉄パイプの有用性を再評価した。

 

 

 ダダンの家での食事は、茶碗一杯の米と水が保証されているが、これ以上の量を食べたければ自分で調達してこなければいけない。さらにはダダンたちに分け前も差し出さなければいけないので、それなりに多くの食料を調達してこなければ腹を満たすことはできない。僕の場合は、それほど多く食べないから構わないが、エースの食べる量が多いため、なるべく多くの獲物を仕留めるようにしている。

 

 しかし、ここで生活していると前世よりも食料のありがたみを感じる。自給自足の生活がこんなにも大変だとは思ってなかった。肉はこの山で十分な量を調達できるが、野菜に関しても山の中で採取できるが、以前変なキノコを食べてしまったらしばらくの間、体調を崩したためエースに説教された。大変だとは思うがここでの生活がいつまでも続けられればいいなと思ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

  ガープさんとヒロトさんが一緒にダダンの家に顔を出しに来た日、彼らは僕の誕生日を祝ってくれた。

 

 

「じいちゃん。今回は何を持ってきてくれたの」

 

「おお、そうじゃ。今回のプレゼントはの――」

 

 

 ガープさんのことは話せるようになってからはじいちゃんと呼んでいる。初めて呼んだときはガープさんと呼んだが、何やら落ち込んだ様子を見せていたため、試しに「じいちゃん?」と言ってみたらあからさまに上機嫌になった。あまりの単純さに僕は苦笑いをしてしまったけどね……

 

 それより、3歳のときの誕生日は何をされるか分からなかった。急に僕を連れ出してどこかへ行こうとしたが、エースがそこに突っかかって拳骨を受けていた時に、ヒロトさんが来て、それはもうすごい口論になった。そのときの話の内容は、

 

 

『だから、あんたは考えていることがおかし過ぎるんだよ!! 何で3歳児を危険な所に連れ出そうとしてるんだよ!!』

 

『何じゃ! 何か文句でもあるんか! わしはこの子を強い海兵に育てるために――』

 

『――その前に命を落としかねないんだよ!!』

 

 

 というやり取りがあった。挙げ句の果てには取っ組み合いの大喧嘩になり、ダダンたちはそれはもう見事に怯え、エースもあまりの迫力に体を震えさせていた。

 

 誕生日に何をやらかそうとしてるんだこの人はと僕はため息を吐きながらどうしようかと思い、ある一つの案を思い浮かべた。正直に言うと、この案が上手くいくかは分からないがやってみる価値はあると思っていた。

 

 

『…………2人とも!!』

 

『『――うん?』』

 

『それ以上大喧嘩してみなよ。それ以上するっていうなら、ぼくは2人のこと…………大っ嫌いになるからね……!!』

 

 

 『大っ嫌い』という言葉がこの辺り一帯に響き、2人の顔を見てみると、面白いくらいに落ち込んでいた。この2人は僕のことを結構可愛がってくれている。だから、相当ショックだったのだろう。特にじいちゃんは相当なダメージを食らったみたいだ。だが、僕は悪いとは思わなかった。以前、2人が喧嘩した時は、その激突の余波がこちらにも被害を及ぼしていた。危うく身内に殺されるかと思ったよ。僕の方も色々と二人にイライラしていたし、お灸をすえるいい機会だったのだろう。毎度、大喧嘩に巻き込まれるこっちの身にもなってほしい。ふと、エースの方を見ると、顔面が蒼白していた。

 

 

『エース。どうかした?』

 

『…………え? あ、いや……お前、えげつないな……』

 

『ん?』

 

 

 そんなに悪いことをしたのかなとそのときは思っていたが、今思えばさすがに『大っ嫌い』は言い過ぎだったのかもしれない。2人の言い争いを止めようと思って言ったことだったが、2人は明らかに僕の機嫌を損ねていないか気にかけるようなっていた。特にヒロトさんが……。まあ、もし母さんに知られたら大目玉を食らうからだろう。また、そのときのエースの反応が気になって聞いてみたところ、

 

 

『お前の背からとてつもないものを感じた……』

 

 

 どうやら無意識の内に何かのオーラを発していたのかもしれない。

 

 

 ということもあり、今回の4歳の誕生日も何かされないか少なからず警戒している。じいちゃんが出してきたものは――

 

 

「ほりゃ。わしからは本じゃな」

 

「…………………えっ?」

 

 

 一瞬、何を渡されたのか理解できなかった。あのじいちゃんが誕生日にまともな物を持って来てくれるなんて……! 感動のあまり涙が出そうだった。ちなみに本は、航海術や医学、世界についての本だった。以前、色んなことを学べる本が欲しいと言っていたのを覚えていてくれていたのだろう。

 

 

「ジジイにも、まともな物を渡せる判断力もあったんだな」

 

「何じゃエース! わしがまともでないみたいに言いおって。お前はわしのことを何だと思ってるんじゃ!」

 

 

 全くもってエースに同意せざるを得なかった。幼子を山賊に預けるわ、修行と称して谷に落とそうとするわ、これをまともと呼べるのだろうか。2人のことは放っておいて、ヒロトさんが僕にプレゼントを渡してくれた。

 

 

「俺からはこれだな。誕生日おめでとう」

 

 

 そう言って一振りの剣を渡してくれた。

 

 

「えっ? これって……」

 

「前から剣を欲しがっているのをエースから聞いたからな。お前でも振るえる剣を作ってもらったんだよ」

 

 

 思わずエースの方を見たら、僕から目をそらして口笛を吹いていた。あまりの嬉しさに僕はエースに抱きついた。

 

 

「エース~~~~~!!」

 

「うわ! おい、急に抱きつくなよ!」

 

 

 エースは嫌そうな顔をしているが、そんなことお構いなしに抱きつき続けた。大人たちは微笑ましそうに見つめてくれていた。エースは普段から僕に優しいが、今日ほどエースの優しさが嬉しいと思ったことはなかった。転生してからといものの、精神年齢は高いはずなのにいつの間にやら今の身体に引っ張られてしまったのかもしれない。今となっては別に気にもならなくなったけどね。

 

 

「エース……ありがとう……!」

 

「…………はぁ……別に構わねェよ……」

 

「2人もありがとう!」

 

 

 エースはそっぽを向きながらも照れくさそうに頬を掻いていた。

 家族というのが心地いいものだと改めて感じる1日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 フーシャ村から離れた1つの民家にヒロトがいた。彼は、シオンを預けてから人里から少し離れた場所に住む場所を移していた。

 

 

(エースから聞いた話によると、シオンは気配を感じることに長けている。もしかしたら見聞色の片鱗があるのか……)

 

 

 シオンのコルボ山での生活を聞いて、彼は自分の甥っ子のことについて考え、1つの仮説を立てた。

 

 

(親の才能を受け継いだのか……。もし、そうなら早めに鍛えるのいいのかもしれない。とはいえ、ガープさんに鍛えさせるのはまずいかもな……あいつの才能を知ったら、早い内に海軍に連れて行かれるだろう)

 

 

 彼は、今いる部屋を出て、自分が手に入れた本が収納されている部屋に入り、1冊の本を引き寄せた。そこには、不思議な果物のようなものが記載されていた。

 

 

(もし、あいつが強くなりたいと願ったら、これを食べさせるのも一つの手段か……。となると、海賊を狩っている最中に探しておくべきだな……)

 

 

 本をもとあった場所に戻し、彼は外に出た。そこには夕焼けが広がっていた。まるで、あいつと別れたあの日のように……。今あいつはどこで何をしているのだろうか……。頭を振って、考え出したらきりが無いなと思い、空を見上げた。

 

 

「あいつがもし、自分の進む道を決めたら、俺も自分の在り方を考えなければなれないのかもな……」

 

 

 誰かに向けて発した言葉は、誰にも聞こえることはなかった。

 

 

 

 




次回からは彼を登場させる予定です。
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