赤き星の旅路   作:月影海斗

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サボが登場します。エースの性格が若干変わってるかもしれません。


第5話 危機一髪!?

 5歳になった僕はエースに連れられて、山の中を歩いている。ここ数年の生活で体力も鍛えられたおかげで、すぐには疲れない。でも、エースには劣ってしまう。

 

 何故、エースに連れられて山の中を歩いているのかというと――サボに会わせてくれるらしい。前からエースがサボの話をよくしていてくれたため、会うのが楽しみだ。しかし、ここ最近エースのことを兄ちゃんって呼びそうになる。まだ恥ずかしくて言えないが……。

 

 さて、そのサボはというと『不確かな物の終着駅(グレイ・ターミナル)』で暮らしている。以前、エースにどんな所なのか聞いたところ、スラムでありゴミ捨て場のような場所らしい。その話を聞いて、僕は嫌そうな顔をしたら、無理に来なくても大丈夫だとエースは言ってくれた。エースの優しさが本当に嬉しい。

 

 そして、その優しさを知る度にエースが何に悩んでいるのかを知りたいと思ってしまう。僕の前では見せないようにしているけど、何かに悩んでいる姿をたまに見てしまう。エースがここに預けられていることと関係があるのかもしれないが、今の僕が介入するべきことではないと思う。

 

 それに、僕もそろそろ自分のことについて知らなければならないと思う。母さんが何故、僕を預けて姿を消したことも……

 

 

 歩くこと数時間、『中間の森』という所で1人の少年が待っていた。その少年は金髪でゴーグル付きのシルクハットを被っていた。

 

 

「ようエース! 待ってたぞ」

 

「わりぃなサボ。遅くなっちまった」

 

 

 やはりこの少年がサボだったようだ。身なりからしてしっかりした家の子にも見えなくもない。でも、エースが心を許すほどの人なんだ。いい人なのだろうと思った。2人が楽しそうに会話しているのを後ろから眺めていた。自分の家に兄がいて友達を連れてきたら、こんな感覚なのかなと思った。

 

 

「こいつがシオンか。おれはサボ!よろしくな!」

 

 

 色々と考え込んでいたらサボに話しかけられていた。2人からすっかり目を離していたみたいだ。慌てて僕はサボに挨拶した。

 

 

「は、初めまして。シオンといいます。いつも兄ちゃんが世話になってます!」

 

「なぁ!?」

 

 

 あれ? エースは何で戸惑ってるんだ。サボも口を開けたまま固まってるし。僕、何か言った…………………あ! ああああああああ!! しまった…兄がいたらなんて考え事してたからついエースのこと兄ちゃんって言っちゃった。ああ、もう恥ずかしい……。

 

 

「ご、ごめんエース……! エースのこと兄ちゃんって言っちゃって……」

 

「いや、シオン。エースは別に怒ってないと思うぞ」

 

「……って、おいサボ! 余計なこと言うな!」

 

 

 サボはニヤニヤしながら僕とエースを見ながら言ってきた。エースは顔が赤くなりながらサボに突っかかってる。僕だけはよく分からずに首を傾げていた。

 

 

「別に怒ってないから気にすんな。それより、ここで早くメシ食おうぜ!」

 

「う、うん。ちょっと待って。今、出すから」

 

「お、メシか! おれも腹減ってたんだ」

 

 

 僕は持ってきた弁当を取り出して、3人で食べた。いつもダダンたち山賊やヒロトさんとじいちゃんなど、歳の離れた人と一緒に食べていたから、こうして歳が近い者同士で食べるのも新鮮だ。

 

 食べながら色々な話をした。2人は海賊船を手に入れるために海賊貯金を貯めているらしい。2人はどうやら将来海賊になるらしい。サボは将来どうするのか尋ねてきたが、はっきりと決まっていない僕は答えられなかった。エースはゆっくり考えればいいと言ってくれた。海賊や賞金稼ぎ…どちらの道に進もうか……。じいちゃんには悪いが海軍に入る気はない。

 

 話している内に、サボは敬語を使う必要はないと言ってくれたから気楽に話しかけている。ただ、初対面で今日会ったばかりだから変に緊張してしまう。

 

 

「珍しいな。こんなにガチガチになってるなんて」

 

「まぁ、慣れれば大丈夫さ。ところでシオン。ちょっといいか」

 

「うん? どうしたのサボ?」

 

 

 サボが何やら真剣そうな表情で僕に言ってきた。僕とエースは水を入れた水筒をコップに注いで飲んで、話を聞こうとしたらとんでもないことを言い出してきた。

 

 

「いや、大したことじゃないんだけど……おれのことも兄ちゃんって呼んでほしいなぁ……なんつって」

 

 

 ブーッ!! とエースが口に含んでいた水を吐き出し、僕は水を思い切り飲み込んでしまい、2人ともゲホゲホと咳き込んでしまった。

 

 

「サ、サボ! 唐突に何を言い出すんだよ!?」

 

「いやー、エースが兄ちゃんって呼ばれてたのが羨ましくなっちまって……、おれも1回だけでも呼ばれたいなーと思ったんだよ」

 

「……………」

 

 

 忘れようとしてたのに、また恥ずかしくなってしまった。心臓もバクバク鳴ってるし、顔も熱くなってくるのを感じる。するとようやく咳き込んでいたエースが落ち着いたのか声を荒げて言った。

 

 

「ふざけんなサボ!! いくらお前でもそれは許さねェぞ! こいつはおれの弟……分だ!」

 

「いいじゃねぇかよエース。別に減るもんじゃないだろ?」

 

「よくねェ!!」

 

 

 2人が言い争ってる……。まるで、末っ子を取り合う兄弟だな。エースは優しいが、たまに過保護に感じてしまうこともある。ヒロトさんが言うには僕のことを大切に思っていてくれるかららしい。仲のいい友達でも、僕のことは渡したくないのかもしれないな……って、そんなこと考えてる場合じゃ無い。早く2人を止めないと。

 

 でも、どうすればいいか分からずオロオロしてると、ふと何かの気配を感じた。気配を感じる方に目を凝らしてみると、そこには複数の狼がいた。しかも、明らかに凶暴すぎる。何でこんな所に。2人は言い争いに夢中になってて気づいてはいない。慌てて近くに置いてあった武器を取ろうとしたが滑り転んでしまった。挙げ句の果てに狼のいる方に向かって。

 

 

「うわぁ!!」

 

「シオン!?」

 

「おい!大丈……! チッ! サボ! 狼だ!」

 

 

 2人の声が聞こえるが、距離が少し離れてる。2人が鉄パイプを持って駆けつけようとしたが、それより早く狼が飛びかかってきた。

 

 

「ガウッ!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 両手を前にだして狼を押さえようとしたが、うまく押さえられず、腕に噛みつかれ、さらにはもう一匹の狼に片足を噛みつかれた。

 

 

「ウッ!!」

 

 

 狼の牙が深く食い込んで痛くなった。身体を動かせず喰われるのかな……と思って目を閉じようとしたら――

 

 

「「何してんだぁ!!」」

 

 

 2人の怒声が聞こえ、目を開けるとエースとサボが鉄パイプで狼を殴り飛ばしていた。

 

 

「おい、シオン!大丈夫か!」

「サボ! シオンを頼む! ――覚悟しろよ狼ども……!!」

 

 

 サボが駆け寄ってきて、エースは単身で狼に向かっていった。あぁ、助かった。2人が助けてくれたことに安心したのか、僕は意識を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

「……オン! シオン!」

「おい! 目を開けてくれ……!」

 

 

 僕を呼ぶ声が聞こえて目を開けると、涙目になった2人の姿が見えた。

 

 

「エース……サボ……」

 

 

 2人の名前を呼ぶと、僕が無事だったことに安心したのか2人が抱きついてきた。

 

 

「ごめんな……シオン……怖い思いさせちまって」

 

「悪かった……お前に辛い思いさせて……」

 

 

 2人が謝ってきたが、僕は別に怒ってなかった。元はといえば、ドジッて心配をかけた僕の方が悪いと思ったから。抱き寄せられたことで2人の温もりが心地いいと思いつつ、思いついたことがあったからそれを言ってみた。

 

 

「大丈夫……助けてくれてありがとう……エース兄ちゃん。サボ兄ちゃん」

 

「「!!」」

 

 

 僕の言ったことに2人して驚いていた。笑顔を浮かべながら見ていたら2人とも顔が赤くなっていた。こう見るとサボもお兄ちゃんのように思えてきてしまった。また、言い争いにでもなったら困るが、さすがにこの状況ではしないだろう。2人はお互いの顔を見合わせた。

 

 

「……ま、まぁサボなら特別に許してやってもいいぞ……」

 

「お、おれも悪いことしたよ……。ごめんな、二人とも……」

 

 

 2人も無事に仲直りできたみたいだ。喧嘩だったのかは不明だが、エースは意気地になっていたこと、サボは言い出してしまったことからの罪悪感だろう。ようやく、張り詰めた空気も無くなり、安心して身体の力を抜いたら笑いがこぼれてしまった。

 

 

「ぷっ……くくっ…………」

 

 

 僕が笑いをこぼしてのを見て、2人は互いの顔を見合わせると、僕につられたのか笑い出してしまった。

 

 

「「ぷっ……あっはっはっはっは!」」

 

 

 危険なこともあったが、サボとも仲良くなれたし、エースもある意味でサボのことを認めてくれたみたいだ。とはいえ、しばらくは無理しない方がよさそうだ。狼に深く噛みつかれたせいで、腕と片足がうまく動かせない。サボとはその場で別れ、グレイ・ターミナルへと戻っていった。

 

 僕とエースの方は帰るために痛みを堪えてなんとか僕は立とうとしたが、片足が痛すぎて立てないところをエースがこっちに背中を向けてしゃがんできた。

 

 

「乗れよ…」

 

 

 どうやら、おんぶをしようとしてくれるみたいだ。「いいの?」と尋ねてみたが、「歩けねェだろ……」と言われ、何も言い返せずにそのまま、おんぶしてもらった。僕と荷物を背負っているのに重くないみたいだ。

 

 

「エース……重くない?」

 

「大丈夫だから心配すんな……。それと、悪かった。危険な目に遭わせて……」

 

「ううん。エースたちのおかげで助かったから。それと言ったでしょ。ありがとうって」

 

 

 さっきお礼を言ったが、まだ気にしてたみたいだ。僕に怪我をさせてしまったことに責任感を持たせていたのかもしれないと思った。ただ、僕は2人のことを恨んでいるわけではない。今までだって、エースがいなかったらと思うと……。それに、そのエースが楽しそうに話してくれていたサボと今日会ってみて、エースと同じように優しい人だと認識できたから嬉しかった。僕はお礼の意味を込めてエースの肩を優しく叩いたら背負い直してくれた。ちゃんと僕の気持ちが伝わったみたいだ。

 

 

 その後、無事にダダンの家に帰ると、僕の怪我を見てダダンたちが何があったのか根掘り葉掘り聞いてきた。僕が誤魔化そうとしたが、エースが何があったのかを正直に話した。言い争いをして目を離した隙に僕が襲われたという出来事を聞いたダダンはエースに対して叱責していた。いつもなら適当にあしらうエースも今回は甘んじて叱責を受け入れていた。

 

 そのまま、傷の手当てをし、晩ご飯を食べ、エースと一緒に風呂に入った。傷の部分が多少はしみるが仕方ない。それより、腕と片足がうまく動かせなかったから、エースが食べさせてくれたり、体を洗ってくれたりした。少し恥ずかしかったが、ありがたいと思いながらしてもらった。その後、寝室に行き、布団に入って寝ようとしたら、エースが僕を抱き寄せてきた。

 

 

「エ、エース……?どうしたの……?」

「――お前は…おれとサボが……兄ちゃんたちが守ってみせる……」

 

 

 今日の一件はエースに色々と気を遣わせてしまったみたいだ。過保護がまたひどくなりそうだ。まぁ、別にいいかと思い、「おやすみ、エース」と言って眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 ある夜の海、船の上で複数の人物が会話をしていた。

 

 

「それで、成果はどうだった……」

 

「おうさ! 上々さ。お目当ての物も手に入りましたしね」

 

「そうか。すまないな、いつも迷惑をかけて……」

 

「気にすることはありません。こちらの方こそあなたには助かっています。あなたがいなかったら今の俺はいませんから」

 

 

 3人の男がそれぞれ会話をしていた。1人は赤みが強いオレンジ髪を結んで弓を背に持ち、1人は黒髪でローブを着て本を持っている。そして、その2人と会話していた人物は――

 

 

「――にしてもヒロ兄よぅ。悪魔の実なんて手に入れてどうする気なんだよ」

 

「使い道の方は考えてある。心配することはないさ」

 

 

 その男はヒロトだった。彼は、一時的にドーン島を出て、今いる船に来ていた。

 

 

「疑問に思うだけ無駄ですよ、シノン。あなたはただヒロトさんの言うとおりにしておけばいい」

 

「うっせェぞ、リオ! 大体お前は何で上から目線何だよ!」

 

「事実のことです。俺がこの人に拾われたのはあなたより先だから上から目線なのは間違っていない」

 

「んだと!? オレよりチビのくせに!!」

 

「あなたより頭脳で優れているので構いませんよ」

 

 

 始まった……と思い、ヒロトは頭を抱えた。この2人は何かとよく争う。性格の問題なのか、ただ相性が悪いのか、この2人のやり取りはヒロトをよく困らせる。とにかく、落ち着かせようと思い、2人を止めようとしたとき、上から声が響いた。

 

 

「やめろ。2人とも、ヒロトをこれ以上困らせる気か」

 

 

 黒い翼を生やした黒い長髪の女性が降りてきた。彼女の姿を見た瞬間、やべっ! と言いたげな顔をシノンは浮かべ、リオは無表情で彼女を見ていた。

 

 

「でもよぉ……こいつの言い方に問題もあると思うぜ、姐さん」

 

「彼女に説得してもらうだけ無駄ですよ。あなたもいい加減その態度を直すことですね」

 

「ハァ!? こいつ……言わせておけば……!」

 

 

 はぁ……とため息を吐きを2人のことを放っておき、ヒロトは彼女の方へと視線を向けた。

 

 

「苦労をかけるな……セレナ」

 

「構わん。2人の扱いには慣れてる。それよりも……ツキカゲ!」

 

 

 セレナが呼ぶと、音も立てずに一人の男が現れた。その男は忍びの格好をしており、口元は布で隠され、頭に鉢巻きを巻いていた。そして、その男は一つの箱を抱え、その箱をヒロトに手渡した。

 

 

「こちらになります……」

 

「ありがとう。二人も助かったよ……セレナ、ツキカゲ」

 

 

 ヒロトが箱を開けると不思議な色をした果物のようなもの――悪魔の実と呼ばれるものが入っていた。じっと見続けた後、箱を閉じて、彼は4人を見つめた。シノンとリオも視線に気づいたのかヒロトへと体を向けていた。そして、頭を軽く下げて言った。

 

 

「また、しばらくは会えないと思うが、あの件についても頼む」

「分かっている。そちらも任せろ」

「御意」

「おぅ!オレらに任せな!」

「また、会えるのを待っていますよ」

 

 

 セレナ、ツキカゲ、シノン、リオの順番で言い、ヒロトは笑顔を浮かべ、彼らに背を向けて海へと視線を向けた次の瞬間、彼は船から姿を消していた。

 

 

 

 

 




最後に出てきた人物たちはヒロトの仲間です。今後も何人か増やす予定です。
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