赤き星の旅路   作:月影海斗

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UAやお気に入りが増えてて驚いてます。ありがとうございます。今後も続けていきたいと思っているので、よろしくお願いします。


今回からオリジナル設定が出てきます。


第7話 呪われた力

 

 エースと話をする数時間前、僕はヒロトさんにすべてを聞いていた。

 

 

「まずは、俺たちの家族関係について話さないとな」

 

「家族関係?」

 

「ああ。俺の親父は海軍に所属していてな、ガープさんの弟なんだよ」

 

 

 つまり、ヒロトさんや母さんにとって、ガープさんは伯父になるわけか。そういえば以前、母さんのことを姪って言ってたっけ。

 しかし、親が海軍で娘が海賊って……改めて聞くと、何とも言えないな。海軍は海賊を捕らえなければならないけど、自分の娘がその対象って……どんな気持ちなんだろう。

 

 

「それじゃあ、ヒロトさんのお母さんは?」

 

「母さんは、海軍には所属していなかったよ。俺たちが生まれる前は賞金稼ぎだったんだ」

 

 

 僕は驚いた。まさか、お祖母ちゃんが賞金稼ぎだったなんて。

 

 

「2人の出会いの話はよく聞かされてたなぁ。親父が軍務中に母さんと出会って、そこから互いに惹かれ合って、親父からプロポーズしてたって言ってたよ。後、運命の出会いを感じたとも言ってたっけ」

 

 

 ヒロトさんが懐かしそうに語っていた。運命の出会いを感じたって、ロマンチストだな。お祖父さんってそんな人だったんだ……

 

 

「それで、俺たちが生まれてからは、母さんは賞金稼ぎを辞めて、マリンフォードっていう海軍本部が置かれてる場所で、海兵の家族の住居があったからそこで暮らしてたんだ」

「………………」

 

「親父と歳が離れた兄さんは海軍として活躍して、「ちょっと待って…」ん?」

 

「ヒロトさん……お兄さんがいたの?」

 

 

 ヒロトさんたちにお兄さんが…兄弟がいたなんて初めて聞いた。僕が訊いたら、ヒロトさんの表情が変わった。それは、寂しそうな、どことなく悔しそうな表情だった。

 

 

「……もう、すでに死んでるけどな」

 

「!」

 

「俺たちは仲のいい兄弟だった。俺もあの時までは兄さんに憧れてて海軍入るって言ってたんだ。――でも、あの日を境にすべてが変わってしまった。そして、知ってしまったんだ。俺たちに受け継がれてきたものに………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――呪われた力(・・・・・)だと恐れられたものに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 俺がまだ幼かった頃、毎日が充実していた。俺には年の離れた兄さんがいた。兄さんの名前はスバル。そして、父さんはラグナ、母さんはルナという名前だった。兄さんは幼い頃から多くの才能があって将来有望だった。15歳という年齢で海軍の中佐を任せられるほどだったんだ。いくら仕事が忙しくても家族の時間を忘れようとせず、仕事優先の父さんをよく引っ張ってきてた。兄さんは俺に航海術や医学、剣の扱い方など多くを教えてくれていたが、家族と過ごせる時間は俺にとって幸福だったんだ。それだけでなく、センゴクさんやおつるさん、ガープ伯父さんと親しくなった原因も兄さんが俺によく会わせてくれていたからだ。

 

 3人も何かと俺たちのことを気にかけてくれて、よく面倒を見てくれてた。伯父さんにはよく、修行と称して虐待かと思うようなことを何度かさせられたけど……。兄さんと父さんがよく説教もしてた。俺にとっては、海軍そのものが家のように思っていたのかもしれない。

 

 

 でも、すべての関係はあの出来事を境に変わってしまった。あの日の数日前、母さんは父さんに連れられて、母さんが賞金稼ぎになるまでに過していた場所に向かった。そこには1つの王国――〝アマツミカ〟があるらしい。どんな国か聞いたが詳しく教えてくれなかった。ただ、母さんの生まれ故郷ということだけだった。

 

 

 8歳だった俺と7歳だったテレシアは、家に留守番してるのも退屈じゃないかと気にかけてくれたセンゴクさんたちが仕事場で面倒を見てくれていた。俺は子供ながら、書類仕事はできていたから手伝いもした。おつるさんからは、海軍に入隊したら是非自分の部下に欲しいと言ったら、センゴクさんも自分の部下に欲しいと言い出して、言い争いになった。その光景はとても微笑ましかった。その後、伯父さんと兄さんが来て、2人を落ち着かせていた。6人で他愛もない話をしながら時間が過ぎていた。

 

 

 

 

 

 

 数日が経ち、あの日の夕方になり始めた頃、部屋の外が慌ただしくなっていた。海兵である4人も何事かと様子を確認しに行ったときに、1人の海兵が部屋に入ってきた。その海兵の顔色は誰から見ても悪いもので、何かがあったのだと理解した。

 

 

「どうした。一体これは何の騒ぎだ!」

 

 

 センゴクさんがその海兵の元に行き、話を聞こうとした。だが、その海兵の顔色は悪いままだった。しかし、その視線は兄さんや俺たち兄妹に向けられていた。

 その視線に気づいたのか、兄さんもその海兵の元に行った。

 

 

「落ち着いてくれ。一先ずは、今の状況を教えて欲しい」

 

「ば……ば……ば……」

 

 

 やっと声を出したかと思えば、声を詰まらせていた。痺れを切らしたのか、センゴクさんが大声を上げた。

 

 

「何かあったのかを状況を知らせろ!」

 

「!! ば……バスターコール(・・・・・・・)が発令されました!」

 

 

 まるで、時が止まったような静寂だった。その意味を理解していた俺もどういうことか理解できていなかった。その時、海兵が俺たちに視線を向けていたことに、ある事が脳裏に浮かんだ。

 いち早く事情を理解したおつるさんがその理由を尋ねた。

 

 

「何故バスターコールが発令された!? 対象は!?」

 

「た……対象は、アマツミカ王国……! と……特例によって権限を委譲されていたラグナ中将が発令した模様……!」

 

 

 脳裏に浮かんだものが現実となって俺に襲いかかった。母さんの生まれ故郷にバスターコールが発令された? しかも、それを発令したのが父さん? あまりにも急な事に俺は戸惑ってしまった。

 

 

「発令された理由については詳しくは存じ上げません。ですが、ここにおられる方々には、本部にて待機されるようにとの政府からのご命令です……」

 

「政府からおれたちに待機命令……? 何故、そんな命令をされるんだか……」

 

「分からないねぇ。一体どういう理由であたしらにそんな命令を……」

 

「………………」

 

「センゴクさん? 何か気になることでも……」

 

「いや……一先ずは、報告ご苦労だった。下がっても構わん」

 

 

 伯父さんとおつるさんは頭を悩ませ、センゴクさんは何か気になることがあったようだった。兄さんはそんなセンゴクさんが気になったみたいだが、答えずに報告しに来た海兵を下がらせた。

 

 今、この部屋は重苦しい雰囲気に飲まれていた。誰1人として声を出そうとしなかった。テレシアが不安そうに俺の服の裾を掴んできたが、「大丈夫」と声をかけて心配させないようにした。

 

 

「センゴク。あんたは何か心当たりがありそうだったね。何か分かったんじゃないのかい?」

 

「……ここにいる面々は、あの国と少なからず親交があった身だ。政府は恐らく、あの国を滅ぼすつもりなのだろう。――あの国に住む者を1人残らず……。だからこそ、少しでも不安要素のある我々を参加させないようにしたのだろう」

 

「けどなぁ、それならラグナの奴がよっぽどその要素が強そうに見えるぜ。嫁の生まれ故郷を滅ぼすなんて、想像するだけでも――」

 

 

 伯父さんが次の言葉を発する直前、プルプルプルと音が鳴り出した。センゴクさんがすぐに部屋に置かれていた電伝虫の受話器を取った。

 

 

『センゴク……さん』

 

「! ルナか! 一体どうしたのだ!?」

「「「「!!」」」」

 

 

 こちらに連絡をしてきたのは兄さんと俺たち兄妹の母親であるルナだった。だが、その声は怪我をしているようなものだった。まさかと思い嫌な予感がした。

 

 

『どうしても、お伝えしなければならないことがあります……。スバルたちはいますか?』

「……分かった。すぐに代わろう」

 

 

 兄さんはセンゴクさんから受話器を受け取り、僕たちは兄さんの隣に行った。

 

 

「母さん、伝えたいことって……、それよりも母さんたちは……!『聞きなさい!』ッ!?」

 

『静かに聞いて。あなたたちには伝えなければならない。スバルには話したことがあるけど、この国には悪魔の実とは違った特殊な力が受け継がれてきたの。その力は一人一人違ったもので、力の規模によっては世界を滅ぼしかねないものよ。』

 

「「!?」」

 

 

 母さんの言っていることに。俺とテレシアは驚いていた。そんなことなど一度も聞かされていなかったからだ。

 センゴクさんたちに視線を向けると頷かれた。どうやら彼らは知っていたようだ。

 

 

『政府は以前から、この力が受け継がれていることを危険視していた。かつて、いくつもの島がその力によって消滅したこともあった。万が一、強力な力を持った者が政府に逆らえばどのようなことになるか想像できるでしょうね。そして、私やラグナがこの国に向かうことになったのは政府がどうするべきかを見極めるつもりだったみたいよ。……そんな時に悲劇が起こったの』

 

「悲劇って……一体何が――」

 

『――――――――』

 

「「「「「「な!?」」」」」」

 

 

 母さんの言葉に部屋にいた全員が息を呑んだ。母さんの発した言葉が衝撃的なものだったからだ。まさか、そんなことが起きたなんて。

 

 

『すべて、事実よ』

 

「本当に……そんなことが……」

 

『ええ。さっきも言ったように、受け継がれる力は人それぞれ。悪魔の実と似たような力だけど、違うところは――どんな力を得るか得るまで分からない。ただし、海にも入れることができ、海楼石の影響も受けないわ。……話を戻すけど、先の出来事が引き金となって、政府はこの国を滅ぼすことを決断。この国で生まれた者を呪われた力をもつ者として、誰一人として生かすつもりはないみたいね……』

 

 

 予想を上回る出来事に、何も考えられなかった。先の出来事が起こったということだけで、政府は国の人間を殺そうとしているのだ。

 

 

『手際の良さから考えると、結局のところ滅ぼす気があったみたいのように思えるわ。もしかしたら、この事件自体が何者かの陰謀のようね。この国から出ようなんて考えたことのある者は私だけだった。だから、力を持つ者がこの国の外にいることはないわ。皆殺しにすることにとって、これ以上な好条件は無いわね』

「「「………………」」」

 

『――でも、あなたたちは違う』

 

「「「!!」」」

 

 

 そうだ。母さんはアマツミカ王国の出身で、特殊な力を受け継ぐ血筋。そして、その母さんの子供である俺たちは――

 俺は、自分から血の気が引くのを感じた。

 

 

『あなたたちは、この国にはいない。力を持つ者がまだいることが知られたら、何をされるか分からないわ。だから――あなたたちは逃げなさい』

 

「ま…待ってくれ母さん! 母さんは――」

 

『――私はこの国と運命を共にするわ』

 

 

 その言葉にテレシアは泣きそうになり、俺は呆然とし、兄さんや伯父さんたちは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 

 なんでそんなことになってしまったんだ。一体どうして? 何故? 俺たちが何をしたっていうんだ。

 

 

 

 

 

 

「――1つだけ聞きたいことがあるんだ。どうして、父さんにバスターコールの発令を委譲したのか……」

 

『…………政府がそれを望んだからよ。この国を滅ぼすことにおいてラグナの持つ悪魔の実の力は有効的なものだった。……でも、彼にとってこの国は大切な場所でもあった。だからこそ、政府に従うか、国を選ぶかを見極めたのだと思うわ』

 

「……じゃあ、父さんは俺たちや国より、政府の命令を優先したということか……」

 

『……そういうことになるわね』

 

 

 兄さんはしばらくの間、言葉を発さなかったが、ため息を吐くと苦笑いを浮かべた。

 

 

「……父さんらしいや。分かった。俺たちはここから離れるよ。こいつらは、俺が必ず守ってみせるよ」

 

『ごめんなさい。あなたたちに重責を負わせて……』

 

「大丈夫だよ。母さん、これだけは言わせてくれ。――俺をこの世界に産んでくれてありがとう(・・・・・・・・・・・)

 

 

 兄さんは俺とテレシアに受話器を預けた。

 

 

『ヒロト、テレシア。あなたたちの成長を見守れないダメな母さんでごめんね。父さんのことは恨まないであげて。あの人は最後まで自分の信念を貫き通したんだから……』

 

「………………」

 

「うん……うん……お母さん……大好き……!」

 

『私もよテレシア……。ヒロト……あなたも愛してる――』

 

 

 その言葉を最後に母さん声は聞こえなくなった。テレシアは泣き出してしまい、おつるさんが抱きしめた。兄さんにはセンゴクさんが肩に手を置き、俺は伯父さんに抱き寄せられた。

 

 

 

 

 

 

「俺たちはここを離れます。俺たちを捕らえるというなら――」

 

「何のことだ?」

 

「……は?」

 

 

 兄さんが次の言葉を言う直前、伯父さんがそれを遮った。あまりのことに、兄さんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。伯父さんとおつるさんは俺たちを放してくれた。

 

 

「おれたちは何も聞いちゃいなかった。そうだろ、おつるちゃん。センゴク」

 

「……ハァ、仕方ないね。あたしらが目を離した隙にあんたらの姿は無くなっていた。そういうことで良いんじゃないのかい?」

 

「………………」

 

 

 3人が何を言っているのか一瞬理解できなかった。俺たちを捕らえないということは、政府に逆らうということなのではないのか。俺は唇をかみしめていたが、センゴクさんが俺の頭を撫でながら俺たちに言った。

 

 

「現時点で政府からは何の命令もきていない。そして、おれたちは先ほどの会話も聞いていない。つまり、おれたちが君たちをどうするつもりもない。故に、君たちが姿を消そうとここにいる3人に責任が及ぶことは無い。だが、手助けすることもできない。それは心しておくことだ」

 

 

 兄さんは3人の顔を見た後、頭を深く下げ、「今まで……お世話になりました……!」と告げて、俺とテレシアを抱えて海軍本部を飛び出した。

 本部の裏手――誰にも気づかれないような場所に向かうと、そこには船が一隻あり、兄さんは何かを察したようだった。すぐに、その船に乗り、マリンフォードから離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「これが、呪われた力だと呼ばれるようになった原因と、俺たちが背負うことになったものだよ」

 

 

 ヒロトさんの話を聞いて、僕は黙っていた。あまりにも、悲惨すぎる。そう思った。確かに、ヒロトさんが僕に伝えるのを躊躇う理由は分かる。こんなことを伝えるのはヒロトさんにとっても辛いことだろう。

 

 

「じゃあ。僕にもその力が……」

「ああ、あるだろうな。俺やテレシアにもその力と思われるものはあったよ。俺の場合は、悪魔の実を食べたことによって、その能力と1つに融合したようなものだったけど」

 

「悪魔の実を食べたら、そうなるってこと?」

 

「恐らくな。100%の可能性があるとは言えないが……」

 

 

 ヒロトさんから視線を自分の足に向けるように俯いた。そんな僕を気遣ってかヒロトさんは頭を撫でてきた。

 今の僕には、何も言葉を発することはできなかった。

 

 

 

 




この事件については、まだ明かされません。もっと先の方になってから明かす予定です。
今回出てきた、センゴクさん、おつるさん、ガープさんはヒロトたち家族にはとことん甘い感じになってます。

次話は明日に投稿できると思います。
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