負けヒロインの姉に転生した私 ~どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!!~ 作:スーパーマンのみりん干し
翡翠・シュレン、というのが今世の名前であり、今の私を形作る確固たる自我である。
突然だが、今世に至るまでの前世において、この世界は一部では有名であった。
所謂、乙女ゲームであり、その中でも異色の骨太タクティカルシミュレーション恋愛ゲームとかいう、中々にどうした?
と、問いたくなる様なジャンルであったと記憶している。なんでも、男女両方からのユーザーを求めた結果、タクティカルシミュレーションと恋愛ゲームが合体したらしい。
意味は分からないが、ゲームの評価としてはある点を除けば神ゲー、少ない問題点が全てを台無しにしたクソゲーと、真っ二つに分かれていた。
骨太の戦略ゲームに、男女両方の視点から進められる恋愛ゲーム、ちょっとしたミニゲームの類いも充実したタイトルに、私は嵌まっていた。
そのゲームの中で、私の妹である紫翠・シュレンは屈指の人気キャラであり、そして悲劇の負けヒロインであった。
主な舞台となる〝ロムレシア王国〟、その辺境領主の娘であり、三国随一の美姫として、決して傲らず決して慢心せず、日々を王国の第一王子の許嫁に相応しくあろうと努力し続けていた。
その在り方に、数多くのユーザーが魅せられ、彼女を攻略しようと躍起になり、そしてその全てが心折られていった。
彼女、紫翠・シュレンはユーザーがどれ程に危険を排除しようが、好感度を上げようが関係無く、全てのルートでバッドエンドを迎える。
そう、何をどうしようが最悪の終わりを迎えてしまう。
ある時は事故死、またある時は謀略による暗殺。そしてストーリーにある流行り病による病死に、カルト教団の生け贄等々、粗方思い付く最悪の死に方をしてしまう。
その最悪の中で、唯一の生存エンドでも救われない。
ストーリーが終わり、主人公と無事結ばれ、婚前旅行の船旅で海難事故に遭い、主人公達は助かるものの、紫翠は一人だけ記憶を全て失い、流れ着いた別の土地で一人でひっそりと生きて、その生涯を終える。
我が妹ながら、何がどうしてそうも不幸なのかと問いたくなる。
と、突然だがここまで語って、自分はどうなのかと言う話になるが、私、翡翠・シュレンはゲームに存在しない。
正確に言うと、ゲームに存在はしているが、それは紫翠に関するテキスト上だけだ。幼少の頃、シュレン領内にて発生した魔猪に、紫翠を庇い目の前で生きながらに食い殺された。
それが私だった。
だが私は、そこまでに凄く鍛えたお姉ちゃんなので、魔猪の一頭や二頭、軽く頚を捩り折るなんて簡単だ。
たかが軍馬二頭分の大きさの猪なんて、お姉ちゃんにかかったらちょっと大きいうり坊だ。頚を捩り折って、味噌鍋にして食べた。美味しかった。
その時に引き抜いた牙は、私の薙刀の刃にした。適度に重く、素晴らしく硬く、凄まじく切れるので、どんな敵でもスパーンだ。我がシュレン領の鍛冶衆に感謝。
妹と両親、家臣団にかなり怒られたが、まあ結果良ければ全て良し。これで一旦は翡翠・シュレンは生き残り、妹を守護るお姉ちゃんになった。
そこからも、領内にて暴れる北方異民族相手に暴れたり、妹に対して良からぬ企みを謀っている相手を、見つけ次第始末したり、とにかく暴れ散らしていたら、シュレン領の首狩り姫だの、何処の中国武将よろしく、翠来々とか言われて、領と王国辺境の守護の要みたいになっていた。
しかしまあ、お姉ちゃんだからこれぐらいは当然だ。
だが、問題も発生している。
「……私は反対です。父上」
「そうは言うが翡翠、これは王命。逆らうにはそれ相応の理由が必要であり、その結果どうなるかは解っているだろう」
よく解っている。この王命に歯向かえば、紫翠だけでなく、シュレン領にも咎が及ぶ。それだけでなく、私の妹に対して、よくも知らない俗人達は、真しやかに嘯くのだ。
シュレンの美姫は、名ばかりの駄姫だ。
所詮は田舎娘だ。
王族に嫁ぐ器でなかった愚か者。
やっかみに僻み、流言蜚語、シュレンを含む辺境三領では、そんな馬鹿な話を信じる者は殆ど居ないだろう。
だが、その他の妹を知らない者達は簡単に騙され、その話を嬉々として広める。そして、紫翠の名声には有りもしない傷が深々と刻まれ、後ろ指を指される様になってしまう。
ああ、嫌だ。私はお姉ちゃんだから、自分に対する罵詈雑言は平気だ。だけど、妹と家族に対する罵詈雑言は耐えられない。
そんな奴らは全員根絶やしにしたくなる。だけど、それをすると紫翠が悲しむからしない。
それに、分かっている。ゲームの世界より、この話が来るのが早まった理由は、私だ。
この世界に気付いた私は、とにかく死なない為に体を鍛えに鍛えた。
辺境とはいえ領主の長女として、相応しいとは言えないのは事実だったが、シュレン並びに辺境三領の現状から、領民皆兵制度を採用しており、領民は皆ある程度は戦え、長女である自分もその通りに戦える。
しかし、鍛えて食べて寝て、起きたらまた鍛えて食べて寝るを繰り返した結果、私はこの世界の平均的な女性より、ちょ──―っとだけサイズアップを果たした。
本当にちょっとだけだぞ。
……話を戻す。とにかく鍛えて鍛えて、妹が産まれてからは更に鍛えて、そして戦って戦って戦って、領内に攻め入ってきた異民族や、他の国を追い返したり殲滅したりを繰り返していたら、ゲームの頃よりも辺境三領の力が増してしまっていた。
妹が皇子の許嫁候補の一人として、王室に召し上げられたのも、私の居ないシュレン領では異民族や帝国に対抗出来ないから、妹の美貌を以て王家に取り入り、援助を出させる為でもあった。
それを私一人がシュレン領軍を引っ張って、辺境のあっちこっちで暴れ回って、侵攻が無いに等しくなったお陰で、辺境三領はゆっくりと力を蓄える事が出来てしまった。
恐らく、というより確実に、紫翠は私の居るシュレンに対する人質として要求されている。
他の二領に対しても、同じ様に娘を差し出せと要求しているから、まず間違いない。
「翡翠、お前が紫翠を溺愛している事は、このシュレン領の誰もが知る事だ」
当然だ。お姉ちゃんは妹や弟を愛して守護るのが務めだ。
そしてそれが、過保護に押し込めて、外を見せない、何も教えないという事ではないという事だって知っている。
「翡翠、今回の事は既に紫翠も了承済みだ」
しかし、しかしだ。それでも、死にに行くのと同義の旅路に、妹を向かわせるのは我慢ならない。
なら、どうすればいい。妹は既に覚悟完了、私はまだどうすればいいか悩んでいる。
笑って送り出す?
妹を拐って逃げ出す?
王族全員の首を取る?
そのどれもが可能だ。私はお姉ちゃんだからな。
だが、それらは紫翠を悲しませる結果しか生まない。
どうする、どうすればいい。
どうすれば、最愛の妹を最悪の結果から遠ざける事が出来る。
考えを巡らせ、やはり斬るしかないと結論が出始めた時、父の言葉で閃いた。
「王家からは、送迎は各家から出す様にと仰せつかっている」
「父上、私が行きます」
私史上、五指に入る問答無用の即答であった。
翡翠・シュレン
身長・体重¦実質サイドン
スリーサイズ¦某メロン22さんサイズ
髪色¦黒
外見¦若干目が大きめの和風美人
乳尻太ももドーン! な主人公。ゲームではテキスト以外の情報が一切無いので外見は不明だった。
戦えるという情報すら無かったが、こやつがやりおったので、矢鱈滅多に戦える。
主な武装は大薙刀、大弓、太刀、組手甲冑術。
ユニットとしては騎兵ユニットだが、歩兵弓兵何でも御座れの変態ユニット仕様となっている。
とりあえず、妹が絡むと異民族の一氏族を絶滅させる事も辞さない。
お姉ちゃんに平八以外の幼馴染み
-
いる(♂)
-
いる(♀)
-
要らないぞ