負けヒロインの姉に転生した私 ~どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!!~   作:スーパーマンのみりん干し

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知り合いからの質問

Q.お姉ちゃんは魔法の類いが使えない?
A.はい、まったく使えません。マジで欠片も使えない。

Q.アンナは魔法使い?
A.はい、アンナはこの世界では、魔法使いに分類される錬金術師です。
赤毛で薄い錬金術師です。
薄い錬金術師です。


賊軍

 善政を敷けば、悪行は無くなるか否か。

 人類が政を始めて以来、延々と語られる議題だが、政に関わる事もある私から言わせると、悪行は無くならない。

 何故なら、人類とは他の生物とは違う方向性で、はっきりとした自意識を持ち、欲望という動力源を持つ生き物だからだ。

 故に、人類は発展し正しきを行い、間違いを犯す。

 人類が人類である以上、悪行は消えて無くならない。

 

「ふむ、まあ驚きはしたが、こんなものだろう」

 

 若干、虫刺されの様に僅かに赤くなった額を掻きながら、私がそう言えば、賊の射手は信じられないものを見る様な目を向けてくるが、普通に考えたらただの矢がお姉ちゃんである私に刺さる訳ないだろうに。

 こいつら、何考えてたんだ。

 

「それで、貴様らは何処の者だ? 素直に喋れば、悪い様にはせんぞ」

 

 襲ってきた賊は、全部で十二人。旅人を襲うなら十分過ぎる数だったが、相手が悪かった。

 お姉ちゃんである私が、ただの賊如きに負ける理由が無い。

 所要時間二分足らずで、全員お縄だ。一応、全員死なせてはないが、結果はこいつらの態度次第だな。

 ……まあ、大体の見当は付いているがな。

 

「へっ、シュレンのお神輿デカ女に話す事なんざ……」

 

 はい、一人終了。

 誰がお神輿女だ。私はお姉ちゃんだから、お神輿に担がれても、敵陣中央突破当たり前だぞ。

 しかし、こいつら脆すぎる。ビンタ一発で背骨ごと折れたぞ。

 菊千代を見習え。あいつは、私の拳骨十発は耐えるぞ? 

 

「……次、貴様はどうだ?」

「な、何も、俺は何も知らねえ! 本当に知らねえ! 儲話があるって言われただけだ!!」

「誰にだ?」

「連邦だ! 連邦の変な女が、ここをあんた達が通るから、シュレンの美姫を拐えば大金と身分をやるって、だから……!」

「分かった」

 

 とりあえず、こいつらは何も知らんのだろう。

 私のルートを知っていたのも、賊にしては妙に装備が良いのも、その連邦の変な女の手引きがあったからだろう。

 菊千代と勝志郎の二人を見逃したのは、単純に入れ違いになったか、頭が働いてこちらの戦力を減らす事か思い付いただけだな。

 しかし、連邦、連邦か……。

 まだ殴られ足りないのか。

 

「……ちょっと、連邦の国家元首の首でも取りに行くか」

「翡翠、バカ待ちなさい。いくらあの国家元首でも、首を取ったら泥沼の戦争になりますわ。……両手足へし折るくらいにしなさいな」

 

 あの国家元首の人望の無さは、歴史に残る域だから、首取っても大丈夫な気はするが、まあ一応は命は残してやろう。

 

「姉上、お待ちを」

「どうした紫翠」

「ここは早々に王都に赴き、この件を伝えるのが先決かと。そして、恩と責任を高く売り付けてやりましょう。具体的には王都から来期着工予定の、治水工事の予算を出させましょう」

「流石は紫翠だ。ついでに減税も取り付けてやろう」

 

 今年は何かと入り用だから、王都の連中に払う金は少なければ少ない程良い。

 もし抵抗したら、自分達で呼びつけておいて襲撃を許すとか、内通者が居るんじゃないのか? 

 ン? お前か? それともお前かってやれば、大人しく要求を飲むだろう。

 それなら、紫翠の祝儀も最低限しておこう。

 多分だが、多額の祝儀や祝いの品を出して、婚姻が成功したのはこちらの力があってこそ。だから、紫翠の子はこちらに寄越せとか言い出す輩が居るかもしれん。

 そんな事言われたら、お姉ちゃん大暴れだよ。

 大事な妹と義弟、そしてその娘か息子だぞ? 

 お姉ちゃんは可愛がるに決まってる。

 その権利を奪おうとか、万死に値する。

 

「(`皿´)」

「翡翠、いきなりどうしましたの?」

「……気にするな」

「義姉上、そうなると証拠が必要になる」

「む、そうだな。おい、お前」

「へ、へい!」

「私の大事な大事大事な妹を拐った後、何処へ行く気だった? 素直にさっさと喋れ。ああはなりたくないだろう」

 

 頭が変形して、上半身がげんなりと垂れ下がった死体を指差すと、男は私が驚く程よく喋った。

 聞けば、この連中は王都周辺で食い詰めた傭兵崩れで、安酒場で管を巻いていた所に、件の女がやって来て、今回の話を持ちかけたらしい。

 装備も計画も向こうが用意し、私を射殺して混乱している隙に紫翠を拐い、この近辺にある大平原との境界の森で女に引き渡す。

 そこで金を受け取ると同時に、王国領内から逃げる。

 その様な手筈だったらしいが、一つ違和感があった。

 

「異民族、しかも亜人の女か」

 

 連邦の亜人差別は、最早狂気的とも言える。

 人には無い尻尾や耳が生えている。耳の形が違う。

 手足の長さや数、体型が人間とは違う。

 ただそれだけで、連邦では人間ではない獣以下の存在として扱われる。

 人間とは違う。それだけで、亜人は人間ではないとされ、連邦ではまともな扱いは受けられず、名誉を得る為の機会すら与えられない。

 戦地で見た亜人達は、一人の例外無く物として扱われていた。

 そして、この連中に話を持ちかけた女は、王国では珍しくない狼の耳と尾を持っていた。

 あの連邦で、亜人が実行犯を選ぶ権限を持ち、要人の拉致という任務に就く。

 有り得ない事だ。

 普通ならな。

 

「官兵衛」

「……情報はありませんが、政変の類いか、体の良い捨て駒と見るのが妥当かと」

 

 であるならば、我々はどうすべきか。

 悩む必要も無く、答えは決まっているが、重要なのは方法だ。

 

「そなた、他に何か知らぬか? 気付いた事でも構わぬ」

 

 官兵衛がそう問い掛けると、先程まで答えていた男の隣で縛られている男、私を射った射手が口を開いた。

 

「……胡服、連邦の中でも遥か北の異民族の服装だった」

「それは、真か」

「ああ、本当だ。昔、連邦に雇われた時に見た事がある。あの意匠は連邦の北部の衣装だった」

 

 射手の話が真実かは、周りの連中の反応から判る。

 賊達はしきりに頷き、腰に提げた剣も王国では、見た事の無い物だとも言っている。

 さて、しかし問題だ。

 主犯の女は捕らえる。これは決定事項だが、女が異民族の亜人であるのは問題だ。

 異民族が何故に国に帰順しないのか。それは連中が国の仕組みを理解していない事と、国という枠組みに入らずとも、部族という枠組みで生きているからだ。

 

「姉姫様、如何致しますかな?」

「……如何にせよ、捕らえねばなるまい」

「御意」

 

 連中は国に頼らず生きていける程に強かで、部族が滅びかければ、平然と他の部族に順応する。

 これは、大平原に住む異民族が信じるものが、強きものが正しいという思想と、全部族の信仰する神が同じである事が可能にする。

 無論、個人間のいざこざは発生するだろうが、大平原に住む異民族全体から見れば、些細な事なのだろう。

 

 だからこそ、異民族という国という枠組みに囚われない存在を、政治的駆け引きに用いる事は難しい。

 連邦からすれば、自国民ではない異民族。しかも、彼奴の嫌悪し忌むべき亜人を、助けようなどと考える筈が無い。

 必ず、異民族が勝手にやった事、獣の鳴き声が崇高なる人語に聞こえるとは、やはりロムレシアの民は穢れているなどと宣ってくるだろう。

 黙らせるだけなら、撫で斬りにしてしまえばいいが、今のロムレシア王国の戦力では、帝国と協商連合の援軍が間に合わない可能性がある。

 いや、我がシュレンを含めた辺境三領は平気だが、母体が嘗て二代に渡って蝕んできた、悪政という病を克服している最中なのだ。

 余計な負担は、こちらの負担にもなりかねない。

 

 しかし、件の女を捕らえない理由にはならない。

 

「……シュレンの武姫、取引だ」

「あ?」

「引き渡しの詳しい方法を教え、お前達に協力する代わりに……」

「貴様らを解放しろ、か?」

「そうだ」

 

 この射手、交渉下手もいいところだな。

 こちらに何の旨味も無い条件で、私が頷くと思っているのか。

 だが、一つ気になるのも事実だ。

 

「詳しい方法とは?」

「解放の確約が先だ」

「……解放は無理だが、減刑は確約してやろう。死罪が鉱山での労役になるだけだが」

「……死ぬよりはましか」

 

 王族や貴族を狙った者は、例外無く死罪。これはロムレシア王国の法だ。

 しかし、賢い私は利用出来るなら、罪人でも利用する。

 それに、こいつらなんか殺しても死ななそうだし、使い倒してみよう。

 

「それで、詳しい方法とはなんだ?」

「それは……」

 

 射手が語る受け渡し方法だが、いまいち要領を得ないというべきか、理由は解るのだが目的が謎だった。

 他の七本鞘や、ラインハルトと紫翠、パー子も首を傾げている。

 だが、一人だけ他とは違う様子の奴が居る。

 

「あー、翡翠。これ、どう見ますの? 嘘ではないでしょうけど……」

「とりあえず、おい変態」

「はい、変態です!」

 

 何故か親指を立てた笑顔で、変態(アンナ)が馬車から降りてくる。

 しかしこいつ、風呂でも思ったがちゃんと食べてるのか? 

 原作のアンナより、妙に背が低いし、体の各部が薄い。

 そんな薄い変態だが、こいつは有能な変態だとパー子は言っていた。

 ならば、どう有能なのか。

 変態は私と紫翠、そして賊をぐるりと見回してから、一度頷いてから、もう一度親指を立てて、こう言った。

 

「私にいい考えがある!」

 

 もう駄目な気がしてきた。




常識¦お姉ちゃんに矢は刺さらない

Q.紫翠は箱入りっぽいけど、死体見てビビんないの?
A.紫翠「シュレンの娘が、死体如きで臆すると?」

お姉ちゃんに平八以外の幼馴染み

  • いる(♂)
  • いる(♀)
  • 要らないぞ
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