負けヒロインの姉に転生した私 ~どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!!~   作:スーパーマンのみりん干し

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明けましておめでとう御座います。本年も何卒お願い致します。


シュレン領¦古くから小人族(分かり易く言うとドワーフやホビット)と深く交わり発展してきた職人の町。
優れた刀工や、絹織物の産地として有名。
また、小人族と交わり続けた為、シュレン人は全体的に小柄な人間が多い。
男性で平均150~160㎝、女性で140~150㎝程。
最近では王国の血も入っているので、伸びているがやはり小柄な人間が多い。

七本鞘
官兵衛¦約170㎝
七郎次¦約175㎝
五郎兵衛¦約165㎝
久蔵¦約172㎝
平八¦約160㎝
菊千代¦約185㎝
勝志郎¦約155㎝

シュレン家
芭蕉・シュレン¦160㎝
翡翠・シュレン¦サイドン
紫翠・シュレン¦ギリッギリ140㎝


黒曜・シュレン(故人)¦150㎝




未知の敵

 さて、私はお姉ちゃんなのだが、情けない事に今とても落ち込んでいる。 

 お姉ちゃんは乙女だから、着物の胸元を斬られて恥ずかしいし、あの程度の雑魚に手こずってしまった。

それらはもういい。いやよくない。着物の件が小夏に知られたら、また顔面に膝を入れられる。

なんとかして誤魔化さねばなるまい。

しかし、今はこの地べたに正座の状態をどうにかしなくては。

 

「だから、なんでオメエは毎度毎度加減ってもんが出来ねえんだ? あァ?」

「いや、加減したぞ?」

「顔面陥没させてか?」

 

 いや、本当に加減したんだぞ。本当だからな! 

 だから、そうやって人の頭を煙管でバシバシ叩くな。

 お前のは父上のと違って、鋳鉄製の手延べ煙管だから、流石のお姉ちゃんでも痛いんだ。

 

「しかし姉上、加減をしていたにしては、些か動きに精細を欠いていませんでしたか?」

「ん? ああ、妙な感じがしてな」

「あ? んだそりゃ」

 

 今、アンナが錬金術の応用で蘇生している連邦女だが、実力は勝志郎とどっこいで、平八達なら問題無く倒せる程度だった。

 つまり、お姉ちゃんである私なら苦戦する理由は無いという事になる。

 しかしだ。私は苦戦した。

 アンナの言う未来視の宝玉とやらが原因ではない。

 

「おい、変態」

「はい、只今蘇生作業中の変態です」

「お前の知識の中に、対象の動きを阻害する魔術、もしくは魔術具はあるか?」

「あります。しかし、翡翠様の動きを阻害するとなれば、中級以上の魔術師が数百人。術具となれば最低でも千以上を使い潰せば、可能性はある程度です」

「現実的ではありませぬな。しかし、姉姫様。儂らには魔術の気配は感じませなんだ」

「そこだ」

 

 平八にさせられていた正座から立ち上がり、倒れている連邦女に近付く。

 おい、馬鹿。もう目が覚めているだろう。私が気付いていないと思ったか? 

 

「ばけ、ものが……」

「私はお姉ちゃんだ。化け物ではない」

 

 私が殴った時に、一瞬だが手応えに違和感があった。

 私がピンボールをしていた時と同様の、体全体にまとわりつく水の様な重さ。それが、一瞬だけだが私の腕に集中した。 

 恐らく、というより確実に、この女の仕業ではない。私は使えないが、魔術というのは、行使するのにかなりの集中力を要する。

 私を回避しながら、魔術を行使出来るのは、本当に一握りの上級魔術師の中でも、更に一握りの者達だけだ。

 こいつには、不可能だ。

 

「さて、素直に吐けば赦してやる」

「……だれが、蛮族なぞに赦しを乞うものか」

「……はっきり言ってやろう。お前は捨て駒だ」

 

 アンナだけなら、まだ確信は無かった。だが、こいつの口振りから紫翠とラインハルトも、ターゲットだと分かった。

 王国、帝国、協商連合の三国で、私が紫翠を溺愛しているという事は知れ渡っている。

 まともに情報を渡されているなら、私の前で紫翠に手を出すとは宣言はしない。

 まともに情報収集をしていて、まともな手勢を集められるなら、私にパー子、七本鞘が居る場で紫翠とラインハルトを狙わない。

 私達を手玉に取れる実力と自信が有るなら、話は違ってくるが、こいつはそうではない。

 実力は勝志郎程度、魔術具有りで菊千代を相手取れるかどうか。一般兵よりは上、しかし将にはなれない。

 どうやっても一流手前の暗殺者が限界だろう。

 つまり、組織的に考えた場合、まともに情報を与えられず、まともに情報を集められず、実力も替えが利くこいつは、いつ使い捨てても問題の無い捨て駒でしかない。

 

「ただ使われて死ぬか、それとも一矢報いて死ぬか。選べ」

 

 傭兵一人程度なら、お姉ちゃんの権限でどうにでも出来る。だが、暗殺の首謀者であるこいつは別だ。

 確実に情報を吐かせた上で、司法の裁きにかける必要がある。

 そして、大元である連邦の馬鹿共に、要らぬ事をするなという意味を込めて、こいつの首を送り付ける。

 連邦の連中は、預かり知らぬ事だと言うだろうが、それに関しては外交官の仕事だ。

 そしてその結果、争いになるならお姉ちゃんの仕事だ。

 

「……主の教えを、理解せぬ蛮族に死を」

「……残念だ。平八」

「へいへい。分かってたこったろうに」

 

 平八が羽織の袖から縄を引っ張り出す。魔術仕込みの平八の羽織は、大量の武器や道具を納められる。

 便利な羽織だが、私には使えない。魔術や魔術具を扱うには、魔力が必要になる。

 

「くそ、離せ!」

「離せと言われて離す馬鹿が何処に居る。……あと一応、あの魔剣だが、例え刃が通ってもこのデカブツには通じなかっただろうよ」

「何を、言っている?」

「あの手の魔剣の仕組みってのは、斬りつけた相手の魔力を手懸かりにして、相手の魂を引き摺り出す。……魔力ってもんを、欠片も持たねえこいつには効かねえ」

 

 連邦女とアンナが、目を見開いて私を見てくる。

 この世界に存在する、有りとあらゆるものを構成する元素、その根幹となるのは魔力だ。

 故に、その辺に転がっている石ころや雑草、空気に至るまで微量ながら魔力を含んでいる。

 だが、お姉ちゃんである私はその魔力を一切持たない。

 理由は、……よく分からない。母上はその辺を教えてはくれなかったからな。

 

「化け物……、化け物め! 主の教えを解せぬばかりか、世界からも外れた化け物め……!」

「そこまでだ」

「姉上……」

「大丈夫だ。気にしていない」

 

 母上がそう願ってくれたから、母上がそう望んでくれたから、母上がそう祈ってくれたから、私はここに居る。

 私の原点は、全て母上の想いだ。

 だからこそ、私は迷わない。

 

「このまま王都へ向かう。もうこれ以上は……」

「それは困りますね」

 

 迷わないお姉ちゃんだから、突然の襲撃者にも対応出来る。

 

「……少しは迷いませんか?」

「黙れ。面妖な術を使いよって」

 

 やはり、体が重い。よもや、一瞬で下手人を取り返され、私が拳を受け止められるとは、先程までとは段違いに動きも力も鈍っている。

 しかも、問題はこいつだ。この両目眼帯、というか顔全体に、呪符を織り込んだ布を巻き付けた男。いや、女か? 

 ……どっちだ? 

 

「並みの人間なら、とっくの昔に挽き肉になる程の圧をかけても、漸く動きが鈍るだけですか……」

「やはり、先程からのは貴様か」

「主の教え子を、むざむざ死なせる訳にはいかないので」

 

 今の今まで見ていた癖に、よく言うものだ。しかし、今の状態は非常にまずい。全力で動けば、この程度の負荷なんぞ問題無いが、近くに紫翠とラインハルトが居る以上、巻き込んでしまう可能性がある。

 それに、この顔包帯がよく解らん。

 性別に関してはどうでもいい。問題は実力の程がまるで読めん。

 戦えば勝てる。確信はあるが、紫翠やラインハルトを背にした現状で、被害無く勝てる相手ではなさそうだ。

 

「では、私共はこれにて」

「待て!」

 

 止める為の私の拳は空を切った。二度三度と、手当たり次第に木や岩を引き抜いて、辺りを探るが気配はおろか、姿一つ痕跡一つ見当たらない。

 一瞬だった。一瞬で、奴らは消えた。

 残ったのは、見覚えの無い文字で描かれた呪符の数枚だけ。

 嗚呼、これ程までに屈辱を覚えた事は無い。

 

「姉上……、お気を確かに。シュレンの武姫の名が泣きます」

「……済まん、紫翠」

「いえ、しかし姉上。今のは?」

「分からん」

 

 二人は本当に霞みの如く消え去った。

 博識なお姉ちゃんの私だが、あんな魔術は見た事が無い。

 

「平八」

「真っ先に俺に聴くなよ。姿を消す隠密系の魔術なら俺も使えるが、あれは視覚的に消えてる様に見せるだけで、あんな風な事は出来ねえ」

「官兵衛」

「儂も同じです。長く戦場に身を置いていますが、あの様な面妖な魔術は初めて見ましたな」

 

 久蔵は本当に殆ど喋らないが、首を横に振っているから知らないのだろう。

 物知りな七郎次が居れば、もしかしたかもしれん。

 というか、七郎次は何処に行った? 

 

「遅れまして」

「遅いぞ、七郎次。何処に行っていた」

「へえ、平八殿の頼みで、ユリアナ様をお呼びに。しかし、どうやら道に迷う魔術を食らった様で、ご覧の有り様でして」

 

 何から何まで、後手に回っていたという訳か。

 今回は完敗だが、私は負けず嫌いなお姉ちゃんだから、次は勝つ。

 

「そうか。パー子は」

「私なら、ここに居ますわよ。というより翡翠。貴女、暴れ過ぎですわ。何がありましたの?」

 

 うっさい、パー子。




お姉ちゃんの理不尽なフィジカルと、まだ描写の無い紫翠の理不尽な魔力の原点は、母である黒曜・シュレン。
かなりの女傑であったらしく、夫である芭蕉に嫁入りする為に、夜這いを敢行したり、邪魔な許嫁を家ごと壊滅させようとしたりしたらしい。
また、武芸魔力共に凄まじく、まだ存命だった頃、既に紫翠を授かり身重だったにも関わらず、お姉ちゃんがまるで歯が立たなかった。
それでかなり弱ったと言ってのけた。

小夏¦お姉ちゃんの親友の小人族。呉服問屋の娘で、お姉ちゃんが着物を汚す度に顔面に膝を叩き込んでいる。

お姉ちゃんに平八以外の幼馴染み

  • いる(♂)
  • いる(♀)
  • 要らないぞ
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