負けヒロインの姉に転生した私 ~どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!!~ 作:スーパーマンのみりん干し
仕事で私の立場が変わり、かなり忙しくなっており、これから今まで以上に更新が不定期となります。
拙作を楽しみにされている方々には、大変申し訳ありませんが、何卒ご理解の程を宜しくお願い致します。
「なあ、バカ」
「バカじゃない。私はお姉ちゃんだ」
まったく、相変わらず失礼極まりない奴だ。しかし、だからこそ平八は信頼している。能力的にも人間的にも、平八は変に私を持ち上げたりしない。
しかも、こいつはものの見方が基本マイナス方面からだから、私が気付かない事に気付ける。
「一応言っとくぞ? 一応言っとくからな? オレは平民だ」
「ああ、そうだな」
「本来なら、登城なんざ許されん身分なんだぞ。その辺、その筋肉か金属しか詰まってない頭は、ちゃんと理解してるか?」
「だがお前は私の側近、七本鞘だ」
確かに、平八は平民で本来は登城は許されない身分だ。
だが、私こと翡翠・シュレンが任命した側近七本鞘であり、王国法を解釈すれば騎士もしくは、準騎士相当の身分となる。
故に、登城が許される。
「姉姫様の言う通り、胸を張れ。平八よ」
「いや、五郎兵衛の叔父貴よ。今から王に謁見する訳だから、流石に準騎士階級でもマズイだろうよ」
「ロムレシア王は斯様な事を気にする器ではないぞ。若かりし頃は、学友である大殿とかなりやんちゃをしておられた」
「ほう? それは初耳だ」
「大殿はあまり昔の話をされませんからな。しかし、学園を抜け出して、二人で町の酒場で大暴れしていた時は、流石に肝を冷やしました」
ほうほう、あの父上がその様な振る舞いをしていたとはな。確かに父上は戦地での話はすれど、そういった話はしなかった。
「平民だと見下す輩じゃないって事か」
「左様、兵士は将校除くほぼ全員が平民故に、それを見下せば必ず国が傾く。まあ、けじめは必要ですがな」
まあ、けじめは大事だな。けじめは大事だな。
分かるか? 平八。けじめは大事だぞ。
あ、なんだその顔は?
私主君ぞ?
「だったら、それらしくしろ」
「その通りよ、翡翠」
あ! やけに着飾った格好の氷雨が部屋から飛び出してきた。
いや、なんでこいつがこんな所から飛び出してくるんだ?
「私も一応は王国騎士団の部隊長で、ギルベルト団長の補佐役だから、同席する事になってるのよ」
「ほーん、部隊長ねえ? あのお転婆お嬢様が立派になったもんで」
「そういうあんたは、全然変わらないわね。チビ八」
「テメーも人の事言えるかよ。泣き虫氷雨」
「……姉姫様」
ああ、そうだった。この二人は昔から、顔を付き合わせると、こんな感じで言い合いを始めるんだった。
とりあえず、下手に止めると更に悪化するので、落ち着くまで放っておくのが一番いいのだが、ここは王宮だ。
何かと寛容なシュレン邸内ではない。
……今気づいたが、普通に平八とか氷雨、小夏が出入り出来る貴族の屋敷って、ちょっとおかしくないか?
なあ、五郎兵衛。その辺り、どうなってたんだ?
え? 母上の指示で、平八達に限り出入りを許可してた?
父上は? 母上に、私と紫翠に必要な事だからって押し切られたのか。
母上、昔から未来が視えてるんじゃないかって、そう思っていたが、まさか本当に視えていたのか?
いや、無いな。母上のあれは、多分ではなく確実に勘だ。
西から異民族が攻めてくる気がするって、母上が言ったら本当に攻めてきたり、明日五郎兵衛が腰をやる気がするって言ったら、本当にお前腰やったもんな。
「ばーかばーかチービ」
「張っ倒すぞ、跳ねっ返り」
しかし、そろそろ止めんといかんな。
立場と地位があっても、二人は貴族とは違う。身分制度の強い王宮で、二人が騒ぎを起こすのは少々マズい。
「おい……」
「貴公ら、そこまでだ」
止めようとしたわたしの言葉を遮り、私の台詞を奪ったのは、礼装のギルベルトだった。
おのれ、優男め。
しかし、何故だかこいつは私に会う時は、必ず軍装か礼装のどちらかで、もう少し砕けた格好、私服姿というものを見た事が無い。
持っている小物や色味から、センスが悪い、という事ではなさそうだ。いや、こいつの面なら多少の問題は無かった事になるし、貴族なら専属の仕立屋を抱えている。
単純に、騎士団団長職が忙しいのだろうか。
「だ、団長……」
「友宜を深めるのは大事だが、それは後にするといい」
「随分な登場じゃあないか、ギルベルト」
「シュレン将軍、迷惑を掛けたな」
「構わん。音沙汰無かった昔馴染みが、息災であった事を知れたからな」
「音沙汰無かったって……。あんたね、私が何回手紙出したと思ってんの?」
「┐(´∀`)┌」
「その顔芸もやめなさい。というか、その顔どうやってんのよ?」
まったく、昔から喧しい奴だ。何かあると、すぐにシャーシャー鳴くのは変わらん。
もっとこう、お姉ちゃんみたいに余裕を持て、余裕を。
私なんて、紫翠と領地と家に何かない限りは、余裕で受け流せるぞ。
「しかし、シュレン将軍。相も変わらず美しいな、貴公は」
「は? 私はお姉ちゃんだから綺麗に決まってるだろう」
ギルベルトも、戦地以来殆ど会ってなかったが、相変わらず妙な事を言う奴だ。
私が美しいのは、私が紫翠のお姉ちゃんで、母上の娘だから当然の事なのにな。
お? 平八。どうした? そんな苦虫を噛み潰したみたいな顔して。
五郎兵衛も、どうした?
「……あー、ギルベルト団長殿。なんか、その、申し訳ない」
「某からも、誠に申し訳ありませぬ」
「いや、平八殿、五郎兵衛殿。あまり気にしなくていい。シュレン将軍がこうなのは、昔から慣れている」
「翡翠、あんた本当に……」
なんだ? お姉ちゃん苛めか?
私はあれだぞ? 苛めには武力で対抗する派だぞ?
「( ・`д・´)」
「だから顔芸……、もういいわ」
「うむ、全員揃った所で行くか」
「いや、謁見の間はあっちだろう?」
ギルベルト、まさか本当に団長職が忙し過ぎて、慣れた王宮の間取りも分からなくなったのか?
まあ、こいつは騎士団団長の他に、その馬鹿みたいに整った外見で、軍の広告塔みたいな仕事もしてるから、私よりも遥かに忙しいのだろう。
現に、この廊下の曲がり角から複数人の気配を感じる。声と足音の軽さから、女である事は確実だな。
ははは、お姉ちゃんには及ばないが人気者だな。
しかし、忙しさのあまり、慣れ親しんだ場所の間取りまで分からなくなるとは、なんと哀れな……
「シュレン将軍、何か妙な勘違いをしていないか? 我々が向かうのは、別に用意した部屋だ。そこで王がお待ちだ」
「いや、大丈夫だ。ギルベルト、お前も私の様に補佐や側近を構えろ。かなり、公務が楽になるぞ」
「ふむ、確かに私の補佐は氷雨に任せきりだったな。もう一人二人、選任を考えてみよう」
どうした? 氷雨。なんだか、私が余計な事を言ったみたいな顔しているな。
「あの、団長。補佐官任命は、どうか私にお任せを」
「む、そうか? ならば、君に任せよう」
「はっ、必ずや団長の補佐官に相応しい者を、選出してみせます。……あと、翡翠」
「ん?」
「いや、平八、五郎兵衛おじ様。色々と本当にお願いしますね?」
「分かった」
「これも教育係であった某の不徳、任されよ」
さっきからなにー? 何なんだ?
お姉ちゃんはお姉ちゃんだから、間違いなんてしないんだぞ? お姉ちゃんはかしこいからな!
「(*・∀・*)」
「翡翠、それバカの顔よ」
「( ;゚皿゚)」
「シュレン将軍、貴公はどの様な表情をしても、可憐なのだな」
「団長……。あ、そうだったわ。翡翠」
「なんだ?」
「あんたの事だから、どうせ夜会服を持ってきてないでしょ? 小夏を呼びつけてあるから、後でしっかり採寸されてきなさい」
「え……?」
ま、待て、氷雨。今、小夏を呼びつけてあると言ったか?
え? 嘘? やだ、今すぐ逃げたい。
いや、まだ大丈夫だ。私があの森で着物を破いた事は、まだ小夏の耳に入っていない筈だ。
大丈夫、大丈夫だ。お姉ちゃんはお姉ちゃんだから怒られない。
なんだ平八、どうして、お姉ちゃんにそんな優しい顔を向けるんだ?
「……一応、言っとくぞ? あの森での事は、もうあいつの耳に入ってる。素直に説教されとけ」
……私、今から帰っていいかな?
氷雨・カレット
身長¦約170㎝
体重¦平均より筋肉が多い
元はシュレン領内でも有名な大店の娘で、そのままならなに不自由無い生活を送れた筈なのに、何を考えたのか、翡翠の初陣の後に王国騎士団に飛び込んだ。
槍の腕前は七郎次に次ぐ。
因みに、お姉ちゃんはうなじの辺りで髪を纏めているが、氷雨はポニーテールにして、愛用の十字槍もお姉ちゃんの大薙刀を鍛えた刀匠の手によるもの。
紫翠と仲が良い。
ギルベルト・ガッセナール
身長¦約180㎝
体重¦約90㎏
王国の名門ガッセナール家の当主であり、お姉ちゃんと双璧を成すロムレシア王国最強の個人である。
絶世の美男であり、またメンタル強者でもあり、お姉ちゃんのお姉ちゃん理論を、初手で受け入れ理解した。
また、自身に向けられる好意にはかなり鈍い。
お姉ちゃんに平八以外の幼馴染み
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いる(♂)
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いる(♀)
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要らないぞ