負けヒロインの姉に転生した私 ~どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!!~   作:スーパーマンのみりん干し

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遅くなりまして、申し訳ありません。


こちらはこの作品の未来の話ですが、読まなくても大丈夫です
https://syosetu.org/novel/282460/


会合

「皆、よくぞ来てくれた」

 

 通された王宮の一室にて、そう言って、全員が恐縮する中、頭を下げるのはロムレシア王国の現王である、マクレガー・ロムレシアその人だった。

 老いて尚、衰え知らずの肉体と精神は、この国を背負う者としての覚悟と矜持を感じさせるが、今の私にはそんな事を気にする余裕は無い。

 

「王よ、どうぞ頭をお上げください。某らは参集に応じたまで。王が頭を下げられる所以はありませぬ」

「五郎兵衛よ、此度の事は余に責がある。人としての謝罪に、地位など関係無い」

 

 さて、どうする? 

 小夏に言い訳や誤魔化しは効かない。問答無用の膝が顔面に飛んでくる。

 私はお姉ちゃんだから、並みの打撃は効かないが、何故か小夏の膝蹴りとか、平八の煙管、父上の木刀は痛い。

 何故かは知らないけどな。

 まあ、痛いだけで効かないからいいけど、お姉ちゃんでも痛いのは嫌だ。

 小夏の膝蹴りは鼻がツーンとするから、出来れば食らいたくはない。

 だが、私はあの狼女のせいで、小夏が織った着物を破いてしまっている。このままでは、顔面飛び膝蹴りは確定だ。

 

「して、報告通りであるならば、やはり襲撃を受けてしまったという事なのだが……。シュレン将軍はどうしたのだ?」

「……王よ、発言の許可を」

「構わぬ。平八よ、貴公は平民なれどシュレン将軍の側近。遠慮なく申せ」

「……では、恥を曝す様ですが、少々身内の問題で将軍は悩んでおります」

「身内? まさか、妹御に何かあったのか?」

「あ、いえ、何と申しますか。シュレン領内独自の問題でして……」

 

 どうする? 今から繕うか? 

 いや、お姉ちゃんはお姉ちゃんだから、繕い物も当然出来るが、小夏は専門家の上、私の着物は全て小夏の手製だ。まず間違いなくばれる。ばれて、膝蹴り一発が二発に増える。あと、思いっきり噛まれる。

 

「そうか、また芭蕉と喧嘩でもしたか」

「いや、まあ、はい……」

 

 あ、ダメだ。これは膝蹴りコース不可避……

 

「昔から変わらんな。五郎兵衛」

「お恥ずかしい限りで」

「構わん。しかし、襲撃とはな……。して、報告にあった未来視の宝玉の存在は真か?」

「某らにも分かりかねます。しかし、彼奴らが何らかの魔術具を使用していたのは確かかと。その証に姉姫様の動きを阻害する魔術を用いる者が居りました」

「シュレン将軍の動きを?」

「はい」

 

 ならば、被害を減らす方向でいくしかない。

 大丈夫、私はお姉ちゃんだから、あの偏屈頑固者を説得するくらい簡単だ。……出来た事無いけど。

 だって、小夏は基本的に人の話を聞かない。私が着物を持って行ったら、確実に何をしたと疑ってくるし、そっと近寄ってもすぐに気付いて、裁縫針か糸切り鋏が飛んでくる。

 お姉ちゃんが何かしたか? 

 したな。悪戯いっぱい……。

 

「恐らくですが、対象を束縛する系統の魔術かと」

「しかし、五郎兵衛殿。シュレン将軍の剛力は同じ戦場に立つ者として身に染みている。有り得るのか?」

「某も魔術に疎い身故に、それについては何とも言えませぬ。しかし、姉姫様の動きは確かに鈍りました」

「つまり、我々では最悪挽き肉になる、か」

 

 うーむ、どうするべきか。

 あ? なんだ平八。話を聞いているのか? 

 聞いているに決まってるだろう。私はお姉ちゃんだぞ。

 襲撃に関しては恐らくだが内通者か、あの狼女が持ってた魔術具だろう。

 普通ならそう考えるが、私はお姉ちゃんなので、普通とは違う。

 全てはあの包帯女? 男? のあいつだろう。

 あれは私に本当にギリギリまで気配を感じさせなかった。

 あの全身に巻き付けた呪符か、本人の実力かは判断出来んが、あいつは只者ではない。間違いなく、一連の流れはあいつが絵図を描いている。

 

「であるならば、シュレン将軍はその者が首謀者だと?」

「左様、直に相対した者の意見です」

 

 得体の知れない奴だったが、それ以上の薄気味悪さと底の知れなさがあった。

 あれを逃したのは、もしやしなくても致命的かもな。

 

「あの者を押さえられなかった、私の落ち度です」

「姉姫様、それは違うかと。落ち度というのであれば、姉姫様の補佐を果たせなかった我らです」

「五郎兵衛、恐らくあいつに勝てるのは私かギルベルトの二人だけだろう。あの時、私が斬るべきだったのだ」

「シュレン将軍、その者の特徴を教えてくれないか?」

「ギルベルトよ、逸るな」

「王よ、お言葉ですが、シュレン将軍があの様に表現するのは二度目です。一度目は連邦の大将軍であったキエフク。情報共有は必要かと」

 

 相変わらず、こいつは真面目だし、戦闘狂だな。真面目な戦闘狂って怖いな。こいつ怖い。

 

 しかしそんな真面目な戦闘狂のギルベルトと違って、私はお姉ちゃんなので、普通に平和主義だし、戦わないで済むならそれに越したことはない。

 第一、私の優先順位は紫翠、家族、シュレン領と領民、国の順番だ。ラインハルトは家族計算で紫翠と同等なので、帝国も私の防衛対象に入るな。

 という訳なので、私としては私の大事なものが害されないなら、連邦が王国に攻め入ろうが構わないし、あの包帯が何を企もうが知った事ではない。

 そう、私の大事なものが害されないならな。

 

「ギルベルト、変装の可能性もあるが、奴は全身に包帯や呪符を巻き付け、性別は見た目では判断出来ん」

「人相も分からないか?」

「生憎、顔を呪符で覆っていてな。辛うじて、鼻や口元だけは露出していてな」

「顔が分からんとなると厄介だな……」

 

 確かに、あれが変装だとしたら、顔の分からん実力者が間者として潜入してくるケースもある。

 あのクラスの実力者が、自ら間者として動くとは考え難いが、奴はここまで出てきていた。最悪の事態は考えるべきだろう。

 

「気配なら私が分かる」

「つまり、そいつは出てこないって事ね」

「氷雨、それは決めつけが過ぎないか?」

「団長、将軍が認める実力者が、そうそう簡単に前に出てくるとは考え難いでしょう。私なら確実に殺れる瞬間まで出ません」

「それもそうだがな」

 

 確かに、氷雨の言う通り、奴が直に動く事は無いかもしれない。

 だが、奴らの目的が謎だ。

 主の復活、その為に紫翠やラインハルトの魂が必要だと、あの狼女はそう言った。

 主とはなんだ? 

 何故、復活の為に魂が必要になる? 

 答えを私は知っている。

 原作で、紫翠が辿る末路の中にたった一つだけ、異色と言えるエンディングがあった。

 

 邪教の生け贄ルート

 

 それまで、影も形も無かった邪教がいきなり現れ、紫翠を始めとした強い魔力を持つ者を拐い、生け贄として魔獣を召喚した。

 しかし、復活したのはテキストにある様な伝説の魔獣ではなく、普通にちょっと強い程度の魔獣でしかなく、ストーリーを進めてきたプレイヤーには、高い経験値とシナリオのストレス発散にしかならなかった。

 だが、この世界はゲームではない。ゲームに酷似した現実だ。

 原作には存在しない者や組織、思想があって当たり前。原作には存在しない私が存在しているのだから、それは当然の事だ。

 しかし、連邦の連中が何を考えているのか、皆目検討がつかない。

 変態(アンヌ)なら、何か気付いていそうだが、あいつは城に着くなり、近衛に拉致されていったから、今すぐ話を聞くというのは難しいかもしれん。

 うむ、参ったな。

 

「(´д`)」

「あの、姉姫様。お顔が……」

「久々に見たな。シュレン将軍のその顔芸も。やはり、貴公は母君によく似ている」

「母上に、ですか?」

「うむ、貴公の母君である黒曜殿も、芭蕉の奴をからかう時に、よくその様な顔をしておった」

 

 王がそう言うので、五郎兵衛を見たらさっと顔を逸らしたから、私は母上と同じだったのだと、かしこいお姉ちゃんは確信した。

 しかし、あの母上が父上をからかっていたのか。恐らく、私が産まれる以前の事なのだろうが、少し意外だな。

 私にとって母上は、いまだに越えられぬ強者であり、何時も父上の傍らで微笑んでいた優しい母だった。

 

 ……稽古の木刀の一撃は、今に至るまで感じた事の無い痛みだったが、今は置いておこう。思い出すと、今でも頭が痛くなるからな。

 

 しかし、母上と同じ……。妹と同等に母上大好きなお姉ちゃんな私からすると、凄く嬉しい言葉だ。

 

「( ^ω^ )」

「ふむ、シュレン将軍は母上が好きなのだな」

「( ^ω^ )<当たり前だろう、ギルベルト」

「うむ、その顔で話されると、少々驚く」

「( ^ω^ )<そう言えば、お前達は襲撃を受けなかったのか?」

「我々は貴公らの様な襲撃は受けていない。だが、コメリット伯爵令嬢が一人亡くなった」

「それはまた何故だ」

「王都へ来る前、支度中に馬車が倒れて、庇いに入った侍女諸とも下敷きになった。馬車の車軸には細工の形跡があった」

「……かなり、深い所まで入り込んでるな」

 

 というか、コメリットって、確か原作で攻略対象じゃんか。え? あの性悪ロリ巨乳死んだの? 

 しかしだとすると、紫翠をこのまま学園に入れるべきか。

 伯爵令嬢を難なく暗殺してみせる様な連中が、紫翠を狙うならシュレン領に帰った方が安全かもしれん。

 いや、シュレン領に帰ったとしても、間者の心配は尽きない。なら、人の出入りが制限される学園の方が、まだ僅かだが安全か? 

 

「王よ、発言を」

「よい、申せ。平八」

「まだ報告に纏めてはおりませぬが、襲撃の他に我々の周囲で不審な集団を捕縛しております。内訳は敵意害意の無い異民族の男女六人」

「何故、異民族がシュレン領に?」

「まだ通訳が完全ではありませんが、亡命を求めている様でして」

「亡命? その者達は今は?」

「シュレン領内にて捕縛中で、こちらの取り調べに対して協力的です」

「亡命、国を持たぬ異民族がか……。今、連邦で何が起きているのやら。平八、大至急調べを進め報告せよ」

「御意に」

 

 ああ、嫌だ。異民族が亡命を求めているとなると、異民族の庭である大平原に隣接するシュレン領は、かなりの影響が出てくる。

 この流れで間者が紛れ込んでも、気付く事は難しい。

 これでは、紫翠をシュレン領に帰す事は出来ん。

 あれもこれも、全部連邦のせいだ。あの狼女と包帯は絶対許さん!

お姉ちゃんに平八以外の幼馴染み

  • いる(♂)
  • いる(♀)
  • 要らないぞ
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