負けヒロインの姉に転生した私 ~どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!!~ 作:スーパーマンのみりん干し
また、今回はお姉ちゃんの親友枠が出ます。
とりあえず、会合の結果は平八の報告を待ち、現状を維持する事に決まった。
理由としては、一連の襲撃が本当に連邦主導の元に行われているか、現状では判断出来ず、また、仮にそうだったとしても確たる証拠が無いままでは、連邦に対する抗議も不可能。
それに加えて、今の三国内には先の戦による厭戦の風潮があり、王国軍も疲弊から回復しきっていない。
元より、ロムレシア王国は軍国ではなく、中立寄りの国である。それに加えて二代に渡り続いた悪政により、国力軍事力共に低下しているのが現状だ。
現王になり、国力は回復傾向にあるが、それでも先の戦による傷は浅くない。
それに、連邦と戦い勝ったとしても、王国にとってのメリットが少ない。
連邦という国は大陸一の国土を誇り、大量の鉱山資源と人的資源に恵まれた国だ。だがその反面、国土全体が寒冷地で、資源が埋没する鉱山は険しく、人が住める平地も国土に対して広くはない。
その上、長きに渡る差別思想が国全体に疫病の様に広がっており、いつそれが限界を迎えるのか分かったものではない。仮に、そういった者達を移民として迎えても、それにも限度があり、過ぎれば次はこちらの内情が不安定になる。
しかも、連邦と三国の間には異民族達の縄張りである大平原があり、貿易をするにも奴らを警戒しながらの流通ルートが必要になる。
それに加えて厄介な事に、大平原は魔獣の発生地域でもある。これは原作で大平原というステージが、某ポケット怪物で言うところの、ワイルドエリアに相当するからだろう。
その為、大平原では異民族と魔獣にも警戒をしなければならない。
この世界は、本当に現実の癖に妙なところで、原作の設定を引っ張ってくるな。
以上の事から、我々三国が連邦を平定するにはデメリットの方が大きいと判断され、今も目の上のたんこぶとして、連邦は存続している。
「という訳で、王都観光をしよう」
「意味が分からん。また狂ったか?」
「狂ってない。私はお姉ちゃんだ」
割り当てられた部屋で、書類に眉間の皺を寄せていた平八を観光に誘ったら、酷いことを言われた。
現状維持と方針が決まったからには、何時までも緊迫していても仕方ない。
ついでに言うと、辺境住まいにとって王都なんぞ滅多に来れる場所ではないのだ。
今がチャンス、私も乙女なのだ。この機会に流行りの化粧品やら小物やらを買いたい。勿論、紫翠のものが最優先だがな。
「だから、平八。案内を頼む」
「お前さ、俺を何だと思ってんだ?」
「平八」
「お前、本当にバカな。俺はお前と同じ辺境住まい、王都の案内なんぞ出来る訳ないだろうがよ」
「だが、お前は平八だぞ?」
「理由が理由になってねえ。大体、お前が買いたいのは化粧品の類いだろう。俺より七郎次の旦那の方が適任だ」
七郎次か、七郎次なあ……。
「あいつ、なんかキラキラしてるから、妙に娘達が寄ってきてなあ……」
「あー……、なんかそれは分かるな。旦那、遊郭の用心棒してたからか、妙に女受けが良いというかなんというか」
「シュレン人には珍しい金髪も目立って、私のお忍びには向かん」
「目立つ云々で、お前にだけは言われたくない」
「な、なにおう?!」
私は平均的なシュレン人だぞ。体は少し大きいかもだが、髪は黒で目立つ要素は無いだろう。
まったく、平八は何を言っているのやら┐(´∀`)┌
「┐(´∀`)┌」
「……お前、自分が誰なのか理解してるか? ええ、シュレンの首狩り姫様よ」
「やめろ! その呼び名は可愛くない」
「可愛いも可愛くないもあるかよ。第一、俺はこれからあの六人の調書を取りに、シュレン領に戻らにゃならん」
「んー、なら仕方ないか」
「妹姫様、……紫翠を連れて行ってやれ」
「だから、案内を頼んだんだが……。七郎次に頼むか」
「そうしとけ。というかお前、小夏に会ったか?」
「え、小夏? ……まさか、もう王都に来たのか?」
「あー、うん。……後ろ、見てみろ」
い、嫌だ! 見たくない。絶対に見ないからな!
私が振り向かず、後ろから感じる夜叉の如き気配を視認しなければ、マジギレした小夏は居ないんだ。
そうだ、シュレディンガーの小夏だ。
このまま振り向かずこの部屋から出れば、膝蹴りも無く噛まれもしない。
「……翡翠」
居ない、居ないんだ。なんか、声が聞こえた気がしたけど、小夏はシュレン領に居るんだ。
私の背後で静かにキレてたりしないんだ。
「翡翠」
「翡翠、もう諦めろ」
「い、嫌だ! 私は怒られたくない!」
「へぇ……、アタシに怒られる様な事したんだ」
「ひゅっ」
「翡翠、大丈夫。怒らないから、こっち向け。な?」
「それ、怒るやつじゃん!」
振り向かない。私は振り向かないぞ。
「翡翠、アタシも暇じゃないんだ。あんたの夜会服を仕立てなきゃならないんだ。さっさと向けや!」
「は、はいぃ……」
もう駄目だ、おしまいだぁ……。
「よう、翡翠」
「おう、小夏」
震えながら振り向いた先には、実に良い笑顔の小夏が居た。
私の膝程の小さな体からは、目に見えて憤怒の圧があった。
「なあ、翡翠」
「はい」
「襲撃があったって聞いた」
「はい」
「また、あんたが前に出て戦ったって聞いた」
「はい」
「なんだかよく分からん魔剣で斬りつけられたって聞いた」
「まあ、はい……」
えっと、小夏は笑顔のままなんだけど、なにこの状況?
平八は煙管を吹かしてるし、小夏は笑顔のまま、なんだか声が泣きそうだし、流石のお姉ちゃんも何がなにやら分からないよ。
「えーと、小夏?」
「翡翠、アタシは戦えない。あんたの着物を作る以外出来ない」
「こ、小夏さん?」
「あんたの体が、訳分からんくらい頑丈なのは知ってる。……心配させんな」
「あー、すまん?」
あの、これどうしたらいいの?
小夏は俯いて、おかっぱ頭で顔が隠れて見えんし、平八は書類片手に、我知らぬと煙管を吹かしてる。
なんか、小夏は震え出してブツブツ言ってるし、お姉ちゃんどうしたらいいの?
「小夏?」
「そうだよ、あんたの体が訳分からんくらい頑丈なのは知ってんだ。だがなあ、アタシが作った着物はそうじゃない」
「あ……」
「シュレン家に納める為に、最上級の絹と糸に針、染料も選びに選んで、鋏だって刀鍛冶に頼んで鍛造してもらった特注品。しかも、あんたのその無駄にデカイ体を収める為に、型紙も新たに切り出して、さあ完成して納めたら、半年経たずに破けましただあ?」
「ひぃ……!」
小夏の真ん丸お目目が血走ってる!
これ、膝蹴りと噛み付きじゃ済まんぞ。
「あんたは何度言えば分かんだ? アタシの作る着物は、あんたみたいに雑に扱っていいもんじゃねえってさ?」
「あの……、誠に申し訳なく思っております。以後この様な事が無いよう、再発防止に……」
「喧しい! 正座しろ! 正座ぁ!」
怖い……。キレた小夏は本当に怖い。
「分かるか? 背丈だけあるなら、アタシだって苦労はしない。だが、あんたは背丈だけじゃない。その無駄にデカイ乳と尻を、綺麗に無駄なく収めて、かつ型崩れしない様な縫製にするのに、どれだけ手間が掛かるか、分かるか? あァ?」
「はいぃ……」
「大体、あんたは加減ってもんが無い。アタシが肌触りだけじゃなく、耐久性も考えた生地を選んで、それに見合う縫製にしても、次の注文の時にはもう破いたり解れたり、アタシの苦労が分かるか?」
「はい、誠に申し訳ありません」
「今回だってそうだ。戦うなら、それ用の衣装があるのに、態々普段着で行きやがって、胸元をざっくりいかれやがってよぉ……。あれ、直すか?」
「あ、その、出来ればお願いします……」
「分かった。なら、さっさと行くぞ」
「え?」
「平八、こいつ借りてく」
「好きにしろー。あ、紫翠忘れんなよ」
「え?」
「今から王都観光兼、王都の流行りの調査だ。あんたの夜会服を仕立てても、流行りを外してたら笑いもんだ」
「あの私、夜会には……」
「エッグイの仕立ててやるから、楽しみにしてろ」
「ワァ……ァ……」
泣いちゃった。
小夏の仕立てるエグイ夜会服とか、マジでエグイやつじゃんか。
私、どうなるんだろう?
謝ったら許してくれるかな?
無理だろうなぁ……。
乳バーン! とか、尻ドーン! とかじゃないといいんだけど……。
小夏
身長¦1m無いぐらい(70㎝)
体重¦軽い
髪 ¦黒のおかっぱ
お姉ちゃんの親友の小人族、平八は腐れ縁の相棒。
家がシュレン家御用達の呉服屋である関係から、幼い頃からシュレン姉妹と交遊がある。
今は半ば翡翠専属の職人となっていて、すぐに着物をダメにする翡翠の顔面に、膝蹴りを叩き込むのが上達しているのが悩み。
自ら戦場に赴く翡翠を心配しているが、言っても聞かない事は理解しているので、とりあえず無事に帰ってこいと祈っている。
お姉ちゃんに平八以外の幼馴染み
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いる(♂)
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いる(♀)
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要らないぞ