負けヒロインの姉に転生した私 ~どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!!~ 作:スーパーマンのみりん干し
「そういえば、翡翠。貴女、今夜の夜会が何故開かれたかご存知ですの?」
「あ? とりあえず皆揃ったし、学園入学前の面会わせぐらいにしか聞いてないな」
「……だから、ラインハルト様も慌てていましたのね」
お、なんだ? ラインハルトが何故慌てる。奴は私より夜会慣れしているから、今更慌てる様な事はあるまい?
しかし、紫翠を伴っての夜会となると、あまり無いか。
「……いいですの? 翡翠、落ち着いてよく聞きなさい」
「パー子、私はお姉ちゃんだから何時でも落ち着いている」
「貴女のとんちき理論は、この際どうでもいいですわ。翡翠、今夜の夜会は言ってしまえば、婚約発表の場ですのよ」
「婚約発表? 誰と誰のだ」
「ロムレシア王国次期国王マクシミリアン殿下と、アンナ様。そして、貴女の妹である紫翠さんと、ラインハルト殿下のですわ」
「そうか」
そうかそうか、王子と
というか、あいつマジで原作ルートを進んでるな。となると、これから先は学園ルートに入るのか。
ふむ、そうなると紫翠の護衛を考えねばなるまい。
平八を付ければ何ら問題は無いのだろうが、奴は奴で忙しい上に、紫翠は女子寮に入る。……童顔だし、勝志郎に女装させるか? いや、やめてやろう。
「翡翠、どうしましたの? 何か変なものでも食べましたの?」
「お前、私を何だと思っているんだ? 私はお姉ちゃんだぞ、妹の幸せが一番に決まっているだろう」
「貴女の事だから、またよく分からない理論に展開するのかと」
「パー子、私はお姉ちゃんだから常識があるし、ラインハルトとの交際は認めている。寧ろ、婚約発表となれば、紫翠に寄る羽虫が減る。喜ばしい事だ」
実際、紫翠目当てに縁談を申し込んでくる連中は多かった。目的は紫翠を通じて、シュレン領を支配下に加える足掛かりを作りたいとか、ロムレシア随一の美姫と唱われる紫翠を独占したいとか、私が許せん理由ばかりだった。
その点、我が義弟ラインハルトは違った。下心を一切隠さず、紫翠が欲しいと正面から交際を挑んできた。
その前から、ちょくちょく紫翠に会いに来ていたが、まさか正面から来るとは、流石のお姉ちゃんも吃驚だった。
人間性、財力、立場、権力、性格、実力、全て紫翠の婿に据えるに、ラインハルトは足りる。
だから、私はラインハルトとの婚約発表に賛成だ。
しかし、今回の事は聞いていない。大方、あの悪戯好きな王の仕業だろう。
まったく、あの方の悪戯好きにも困ったものだ。五郎兵衛が言うには、若かりし頃は父上と揃って学園を騒がせていたという話だ。
「求婚に関しては、私もですわね」
「なんだ、いい男がいないのか?」
「ええ、全員パーシシェリ家の家督狙いですもの。協商連合の盾となる覚悟の無い殿方はお断りですわ」
「お前も大変だな」
私は私より強くて、何よりシュレン領と家族を優先出来る男以外を受け入れるつもりは無いから、縁談はほぼ無い。
ちょっと寂しかったりするが、私はお姉ちゃんなので、紫翠が幸せになってからで構わない。
全ては妹の幸せと安寧が優先されるのだ。
「しかし、パー子」
「なんですの?」
「この夜会、何かしらの騒動があると思うか?」
「……可能性は全く、という訳ではありませんわね」
あの包帯の事だ。何かしらの仕込みがあってもおかしくはない。
だが、私とパー子、平八と菊千代を除いた七本鞘の五人、そしてギルベルトの居る場で騒動を起こす可能性は極めて零に近い。
魔術による結界も夜会という限定された場なら、可能性はあるが、紫翠が居る以上、それは意味を為さん。
私に魔力は欠片も無いが、紫翠の魔力は桁外れだ。あの森では、周辺の地脈への影響を考えて、紫翠は動かなかったが、王宮内なら独立した環境なので紫翠は動ける。
つまり物理的に私達、魔術的に紫翠が居る以上は、敵が何かをしようとも、何も出来ずに制圧されるという事になる。
ラインハルトは、そうだな……。なんか、殺しても死ななそうだし、大丈夫だろ。
「先に会場入りした紫翠が心配だ。行くぞ」
「ちょっと待ちなさいな。ああ、もう……!」
ふむ、番兵諸君。ご苦労、職務に忠実である事、誠に大義である。
さ、扉を開けてくれ。大陸一の美姫が私を待っているのだ。
〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃
「……なあ、見たか」
「見たよ。デカかった。……背が」
「……素直になれ。ここには俺しか居ない」
「…………二人共、オパーイデッカかった」
「やはり、俺達は親友の様だな」
〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃
あ、どうも。貧乏貴族のアンナ・ファレスです。
あの後、城に帰るなり近衛に見付かって連行されて、今の今まで軟禁状態でした。
あっはっはっ、かなり詰められました。……後で覚えてろよ。
しかし、まさかまさかこんな事になるとは、このリハクの目をもってしても見抜けなんだ。
……シュレン組、囲まれてるなぁ。
「アンナ」
「マクシミリアン様」
王族とそれに連なる者しか入れない、バルコニーの貴賓席で、私の隣には婚約者である顔面宝具もとい、存在宝具じゃなかった。
私の婚約者であるマクシミリアン・ロムレシアが、その異様に良い顔で微笑んでいます。
やっばい、マジで顔が良い。付き合って一年近く経つけど、いまだにこの顔の良さに慣れない。
いや、原作通りの金髪華奢低身長女顔で、声も原作と同じショタ役のプロの声かつ、カッコ可愛い王子兼男の娘とか、これもう性癖の暴力ですよ。
つまり、私の勝利。勝ったなガハハ。
……顔が良すぎて死にそう。
「紫翠が気になるかい?」
「ええ、まあ……、私の記憶の事もありますし」
「君の記憶、前世で見てきたという、この世界の記録だね。やはり、なのかな?」
「はい、紫翠様の身には事ある事に不幸が起きます」
翡翠様には伝えられなかったけど、紫翠様はこの夜会でも死ぬ。
原作、その追加DLCでは紫翠生存ルートを選ぶ事が出来、私達プレイヤーは嬉々として、そのルート攻略に乗り出した。
その結果、一つでも選択を誤るとお約束のデッドエンド直行という、運営の悪意を存分に体感出来た。
いやまさか、デッドエンドフラグがランダムエンカウントで、通常戦闘で行動不能になっても、デッドエンドまっしぐらとか、流石の私でも引いたもん。
しかも、原作での紫翠様のパラメーターが、全ユニット中でも最上位クラスというのが、またプレイヤーの油断を誘う誘う。それに加えて、覚えるスキルも生存特化型だから、油断が更に加速して気づいたら手遅れなんて事もあった。
いや、参ったね。我が最推しながら死亡フラグまみれで、一歩でも間違えれば、悪意に満ちた結果に飲み込まれる。
「アンナ、確かに君の見た未来は悪意に満ちたものなんだろう。だけど、僕はそうはならないと思ってる」
「はい、私もです」
恐らく、今までの先読みの巫女は、私と同じ原作を知る転生者なのかもしれない。
原作、〝君とあなたのウキウキドキドキラブラブライフ ~一筋の血風を添えて~〟は、妙な所に小ネタが満載だったり、歴史的なアーカイブが確りと用意されていた。
その時代に合った知識や記憶を持った転生者が、それらを頼りに行動していたとしたら、私の考えも間違いではない。
だけど、今はそんな事関係無い。
「……マクシミリアン様」
「うん、アンナ。……やっぱり大きいよね」
「ですよね! ですよね?!」
今はこの世界で出会った唯一無二の最推しの、特大インパクトのドレス姿を堪能する時だ!!
マクシミリアン・ロムレシア
男の娘、世のプレイヤーの性癖を大いに歪めた。
お姉ちゃんに平八以外の幼馴染み
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いる(♂)
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いる(♀)
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要らないぞ