負けヒロインの姉に転生した私 ~どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!!~   作:スーパーマンのみりん干し

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はい、久々です!


嫌な臭い

「紫翠」

「姉上、どうされました?」

 

 取り囲む人混みを掻き分け、着いた先は貴賓席。

 紫翠とラインハルトとの繋がりが欲しい連中が、私はお姉ちゃんだから周りに屯しているが関係ない。

 

「五郎兵衛、官兵衛を連れて、限界まで紫翠とラインハルトの側に居ろ。妙な臭いがする」

「畏まりました。しかし、妙な臭いですか?」

「ああ、花の蜜を煮詰めた様な鼻を突く臭いだ。……嫌な予感がする」

 

 誰もが首を傾げる。やはり、気付いたのは私だけか。

 見れば、ユリウスも王の元に着いて、ドルセンは辺りに目を光らせている。

 その中で、王の直援のギルベルトがこちらに頷き、会場のある部分に視線だけを向けて見せた。

 成る程、奴か。

 原作では悪役令嬢の役回りをしつつ、和解ルートに進めば主人公の良き理解者となる。

 しかし、ルートによっては主人公の為に敵対する。

 何と言うか、損な役回りの娘だった。

 

「義姉上、彼女が何か?」

「いや、妙に落ち着きがない。誰か探しているのか?」

「ふむり、貴族となれば侍従を連れてもおかしくはありませぬが……」

 

 確かに、貴族ともなれば侍従の一人や二人を連れていてもおかしくはない。

 しかし、今この夜会の場には一定の身分の者しか入れない。最低でも下級貴族の位が必要になる。

 

「七郎次」

「はっ」

「あの娘を見張れ。気付かれない様にな」

「御意」

 

 七郎次なら顔も人当たりも良いから、それほどは警戒はされない筈だ。

 私が持つ原作知識は、もう役に立たないと見て良いだろう。

 いや、私が生きている時点で原作知識は意味を為さない。

 アンナも言っていたが、今のこの世界はDLCの設定が入り込んでいる。〝崑崙〟、中華風の大国で私が知る限りではテキストでのみ姿を見せた。

 しかし、アンナはあの国の関与の可能性を示した。

 

「姉上、貴女は陛下の元に」

「紫翠、私はお姉ちゃんだ。妹と義弟を護るのは当然だ」

「いえ、何か嫌な予感がします。姉上は陛下と殿下を御守りください。……手は既に用意があります」

 

 五郎兵衛と官兵衛が居る以上、確かに紫翠に仇なす者は近付けないだろうが、嫌な予感がするのはお姉ちゃんも一緒だ。それに陛下にはギルベルトが付いている。

 しかし、紫翠の覚悟も無下には出来ん。

 

「義姉上、俺が付いている。大丈夫だ。俺と一緒なら会場が爆発しても、服がちょっと焦げて髪が膨れるだけで済む」

「……判った。武運を祈る。あと、ラインハルト。紫翠の分はお前が引き受けろ」

「無論だ。紫翠の分も倍に膨れてみせよう」

 

 五郎兵衛と官兵衛が味わい深い顔を向けるが、ラインハルトの事だ。こいつ、城が爆発してもなんか平気な顔して出てくるだろうし、なんだかんだで戦場の私からも逃げ切って今こうしている。

 ガイウスが言うには、産まれながらに何らかの魔術を得ているのではないか。という話だが、燃える砦から部下達と共に転げながら、怪我もなく飛び出てくる様な奴だ。

 ガイウスの話も頷ける。

 

「五郎兵衛、二人を頼む。官兵衛、七郎次からの報告次第では菊千代と勝志郎を呼び出せ」

「御意」 

「姉姫様、武運を」

 

 二人に頷き、陛下と殿下の元へ急ぐ数歩の間、あの甘臭い臭いが鼻を突いた。

 他の奴らは気付いていない様だが、お姉ちゃんの鼻は誤魔化せない。

 臭いの元は何処だ。

 化粧や香水、酒に料理に紛れてもこの臭いははっきりと判る。

 問題はこの臭いは会場のあちこちから漂っている。正直言って鼻が曲がりそうだ。

 

「ギルベルト」

「む、シュレン将軍。……この臭いか?」

「やはり気付いていたか」

「貴公程ではないが、確かに鼻を突く臭いだ。化粧や香水の類いにしては強すぎる」 

「ギルベルト、シュレン将軍。変事か」

「陛下、今はまだ変事とは言えません。ですが、違和感がある事は確かです」

「ふむ、であるならば婚約発表は続行する。……治めてみせよ」

「はっ」

「御意に」

 

 さて、どう出るか。

 お前か? それともお前もか? と、雑に引っ張るのは容易い。

 しかし、今この会場に居るのは一定以上の身分を持つ貴族。後ろ暗いものを隠している者も居るだろうが、ただ臭いがキツイという理由で引っ張るのは不可能だ。

 

「ギルベルト、どうする?」

「正直手詰まりだな。手札は臭いのみ、何か動きがあれば別だが……」

 

 そうだ。何も動きが無いのが問題だ。

 何か動きがあれば、即座に鎮圧は可能だが、それでは王族の婚約発表に傷がつく。

 しかも、今回は国内だけの問題では済まない。

 同盟国である帝国皇子の婚約発表も兼ねているのだ。

 ラインハルトは何も言わないだろうが、何かあれば帝国との同盟への傷となり、王国の自治を疑われる事に繋がる。

 それよりも、私の最愛の妹と義弟の婚約発表を邪魔する事が許せん。

 

「(#・∀・)」

「将軍、その顔はどうにも締まりが……」

「だが、どう出る。最悪は手当たり次第になるぞ」

「ふぅむ……」

 

 お姉ちゃん的には手当たり次第にぶっ飛ばしても問題無いのだが、それは個人の話で実際はそうもいかん。

 最愛の妹と義弟、家族や領民に迷惑はかけられん。

 であるならばどうするべきか。

 一番は七郎次があの令嬢から話を聞き出すのが、一番確実なのだが事は早急に運びたい。

 相手が動き出してからでは遅い。

 さて、どう動くか。

 

 ……というか、これなんか見覚えあるぞ? 

 原作のイベントラッシュの中にテキストだけであった怪しい香水イベントじゃないか? 

 しかしあのイベントは町中で起きた筈で、確か精神に作用する成分がどうとか書いてあった様な気がする。

 うーむ、どんな内容だったか……。

 

 駄目だ。まるで思い出せん。

 そもそも、私はお姉ちゃんであるが故に最愛の妹に関する情報以外は朧気にしか記憶してない。

 つまりサブクエスト的なテキストは印象に残っていない限り、そんなのあったな程度だ。

 しかし、私はかしこいお姉ちゃんなのでこういう時は人に頼る事が出来る。

 つまり、

 

「おい」

「はいぃぃぃ! ちょっと部屋抜け出して来ました!」

「アンナ様!?」

 

 

 こいつは変態だが、この世界があのゲームを元にしている以上、こいつ以上に知識のある人間は居ない。

 つまり、こういった事態にはこいつが適任だ。

 変態(アンナ)は私の予想通りに、実に良い笑顔で言った。

 

「私にいい考えがある!」

 

 ……いや、やはりダメか?

お姉ちゃんに平八以外の幼馴染み

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