負けヒロインの姉に転生した私 ~どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!!~   作:スーパーマンのみりん干し

24 / 28
お久しぶりです。
仕事がどうにか一段落つきそうな気配がでてきましたので、まずは一話投稿します。


姉たる者

「もし、そこの方」

「はい?」

「拙者、シュレン領は翡翠将軍に仕える七本鞘が一人、七郎次と申す。主である翡翠将軍の命により、貴女様をお連れに参りました次第です」

「まあ! あの七郎次様ですの!?」

「は? ええ、同名の者が居なければ拙者が七本鞘の七郎次に相違ありませぬ」

 

想定外の返事に多少面食らった七郎次だったが、すぐに元の調子で答える。

 

「先の戦では七郎次様に我が家と領地は救われました。礼に伺おうとしましたが、我が家とシュレン家は対立派閥でして……」

「……成る程。拙者は役を全うしたまで、お気になさらず」

 

先の戦、七郎次は一時的に翡翠の元を離れ、王都周辺の防衛に入っていた。

これは七郎次が攻めより守りに長けていた事と、翡翠の勘による指示だ。

これに七本鞘筆頭の官兵衛は一応抗議したが、長く仕える五郎兵衛と平八の進言により了承する形となり、その勘は当たった。

それはもう、七郎次が頭を抱えたくなる程に当たった。

連邦軍は異民族を盾にする形で、軍の数が少ない箇所を狙い打ちに来て、ロムレシア王国軍防衛部隊は自身に降りかかる悲劇を覚悟したが、そこは守戦ではシュレン一と呼ばれた七郎次。

即座に地形と防衛部隊の特性と敵の内情を把握し、この令嬢の領地にある廃城を利用して、釣り野伏を用いて敵主力の打破とギルベルト隊の到着までの時間を稼いだ。

 

「あの作戦が無ければ、私も討ち死にしておりまた」

「は? 失礼。まさか、貴女様も戦陣に?」

「ええ、父が戦傷で臥せってしまい私が代わりに」

「それはなんと……」

 

剣技には自信があると、令嬢。ミリア・ボーデンツィアは語るが、まさかこの様な戦を知らぬ娘まで立っていたとは。

いやはや、ロムレシアの女は強い。七郎次は感心しつつも、翡翠の命に従い話を進める。

 

「して、話を戻させて頂きますが、誰かをお探で?」

「ええ、お恥ずかしながら。我が友が見当たらぬのです……」

「御友人が、ですか」

 

さて、どう出るべきか。

七郎次は動き出している主君達の動向を考え、行動に移した。

 

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、お姉ちゃんのターンだ。

あの変態曰く、今回の事はいくつかのイベントとサブシナリオを組み合わせて改変したものだそうだ。

私が知らなかったのは全てDLCコンテンツだったから。

記憶にある香水の件もDLC、そしてこれから起こる事もDLC。ちょっとあのゲーム、後付け商法というか何というかが過ぎないか?

しかし、今はそんな事はどうでもいい。重要な事じゃない。

 

「菊千代!」

「あいよ。まったく苦労したぜ? これをここまで持ってくるのによ」

「そう言うな。私以外で私の武具を持てるのはお前だけなんだ」

「へいへい。で、一応矢筒ごと持ってきたが本当に矢は二本でいいのか?」

「ああ、問題ない」

 

あの変態、アンナが言うにはテキストにあった事件は一度は収束するも、DLCでのある一件で最悪の事態を招いた。

それは紫翠の死だ。DLCでも我が最愛の妹は死ぬらしい。

ははははははは、面白い冗談だ。本当に笑えてくる。

私が居て、義弟が居て、紫翠が死ぬ?

……この世界は私に喧嘩を売っている様だな。

 

「しかし、本当にあんのかよ? そのなんとかってのは」

「知らん。だが、こうして見れば解る。何か居る」

 

城の櫓部の天辺、屋根の上から月を見上げれば違和感満載だ。

まさか、このお姉ちゃんである私が意識して見ないと解らない程とは、なかなかに小癪な仕掛けだな。

 

だが、もう見えた。

見えた以上、私が矢を外す事は無い。

 

「ぷはっ、登れた!」

「んあ? おお、アンナ様じゃねえか。どうしよ?」

「仕掛けには私がここに居る必要がありまして。で、それ何ですか? 槍?」

「姉姫さん専用の矢」

「嘘だー。これ槍ですって、しかも重装歩兵が持つやつ」

「喧しい。で、まだか?」

「もう少しです」

 

何やら複雑な機械を取り付けた筒を背負ったアンナが、菊千代の背に貼り付きながら答える。

まったく、来る必要は無いだろうにドレスでここまで登って来たか。

根性だけは認めてやる。

 

「菊千代、そいつを確実に守れ」

「応さ。アンナ様、この菊千代様にしっかり捕まってろよ」

「はい!」

 

さて、後はギルベルト達の動きを待つだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ギルベルト騎士団長、七郎次様。これは一体どういうつもりなのでしょうか?」

「申し訳ありません、ミリア・ボーデンツィア様。現在、貴女様達にはある疑惑があり、この様な無礼を働く形なってしまっております」

「疑惑、ですか?」

「はい、ある事柄に関わらさせられてしまっているという、言ってしまえば巻き込まれてしまっているという疑惑で御座います」

「巻き込まれてしまっている? まさか、ジニーが?」

「恐らくはジニー様も被害に遭われている可能性が御座います」

 

七郎次に連れられた部屋で強い目を向け、ギルベルトと七郎次に抗議をしていたミリアだったが、友人が関係していると聞き力が抜けたかの様に、椅子に座り込んでしまう。

 

「ジニーは、無事なのですか……?」

「現在、シュレン家七本鞘の一人である久蔵が捜索しております。あまり信じられぬかもしれませぬが、御安心を」

「……畏まりました。七郎次様、貴方を信じます」

「有難う存じます。であれば、こちらを」

「これは?」

「アンナ様がお作りになられた嗅ぎ薬になります。念の為にお願い致したく」

 

七郎次が差し出したのは、原作でも解毒剤として登場した嗅ぎ薬の入った小瓶だ。

 

「これは、なんと言いますか。……無臭?」

「アンナ様が改良されたものになります。御気分は如何でしょうか」

「そうですね……。少し鼻の通りが良くなった様な……」

「であれば重畳です。して、ミリア様。少し御伺いしたいのですが、最近で身の回りに何か変化は?」

 

嗅ぎ薬を仕舞う七郎次に変わり、ギルベルトがミリアに問う。

 

「変化ですか? そうですね。最近はあまり。ああ、そう言えば出入りしていた行商をあまり見なくなりましたね」

「行商、ですか?」

「ええ、元々はジニーの家に出入りしていた者で、舶来の珍しい品を扱っている者でした」

「舶来の……。もう少し詳しい話はありませんか?」

「そうですね。確か……、最近ジニーが買った香水が昆崙からのものだとか」

「昆崙からのもの、ですか……」

 

 

――ギルベルトさん、今回の事で一番警戒するべきなのは連邦ではなく、他の国の名前が出た時です。

 

 

今回の作戦立案者のアンナの言葉が思い出される。

昆崙は隣の大陸の覇者、連邦という閉鎖的な国を隔てても、その名と偉容は王国にまで伝わっている。

 

「あの、何か御座いましたか?」

「いえ、お気になさらず。……誰だ」

 

扉がノックされ、ギルベルトと七郎次が警戒する。

 

「……我だ」

「久蔵か。首尾は?」

「完了した。しかし、不測により気を失って戴いている」

 

扉を潜り、茶の髪の少女を抱き抱えた久蔵が入ってくる。 

 

「ジニー?!」

「申し訳ありませぬ。お声掛けを致したところ、急に錯乱された為、当て身にて気を失って戴きました。この身の処分は如何様にも」

「構いません。ジニーも武門の出、不覚を恥こそすれ、情けに怒る様な娘ではありません。しかし、一体何が起きているのですか?」

 

久蔵に抱き抱えられたジニーに駆け寄り、ミリアは再度問う。

 

「これより起こる凶事を起こさぬ為の事です」

 

そう言うと七郎次は窓を開け、シュレン家のみが使う笛を吹いた。

そして、この笛が合図であった。

 

「来たぞ!」

「翡翠様!」

 

無言で翡翠が斜めの屋根で足を開き、弓を構える。

シュレン領の力自慢十人が全力で掛かっても撓りもしない強弓が、翡翠一人の力で半月の如く曲がり、槍と見紛う矢は真っ直ぐに月を目指している。

 

「我が最愛の妹と義弟の幸福を邪魔するとは、こうなるという事だ」

 

言うや否や放たれた矢は、鋭い風切り音を後ろに追いやり、ひたすらに月へと疾走した。

そして、

 

「よしっ! 割れた!」

 

雲を削り取る様に、月とロムレシア王城の間にあったであろう何かが粉砕された。

 

「さあて、解毒剤の噴霧を開始します! さあ、菊千代様走って!」

「こっからかよ! 任せろ!!」

「いや、お前は戻れ。婚約発表が始まる時間だ」

「あ、大丈夫です。これ、フレッシュゴーレムですから」

 

言うとアンナの首が有り得ない角度に曲がる。

背負っている菊千代がスゴい顔をするが、事態は待ってはくれない。

すぐさま菊千代は屋根伝いに走り出し、背の偽アンナが解毒剤を噴霧していく。

換気の為にバルコニーに続く窓は開いているから、これで安心だろう。

翡翠は菊千代から預かり、屋根に刺していた最後の矢を取ると、城門から離れた森目掛けてその矢を射った。

 

「気配がだた漏れだ。二度とくだらん真似をするな」

 

森を睨み付け、翡翠は屋根から飛び降りる。

そして、

 

「あ……」

 

ドレスの裾が汚れた事に気付き、血の気が引いた。




翡翠の弓¦翡翠の薙刀の刀身となった魔猪の腱や革、シュレン領の良質な木材や竹、鋼材を織り混ぜてシュレンの職人衆が

「姉姫様ならこれくらい引けるべ」

と、普段出来ない使えない使ったら使用者が死にかねない技術をふんだんに使い作った弓。
因みに弦を張れるのは翡翠だけ。職人衆が機械を使って弦を張ろうとしたら、機械が弓に負けて弾けた。

お姉ちゃんに平八以外の幼馴染み

  • いる(♂)
  • いる(♀)
  • 要らないぞ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。