負けヒロインの姉に転生した私 ~どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!!~ 作:スーパーマンのみりん干し
これも全部、キングクリムゾンが悪いんだ
やあ、俺だ。ラインハルトだ。暫く、そう一年くらい出番が無かった帝国の皇子だ。
なんかこう、一年くらいロムレシア城で紫翠とキャッキャッしてた様な気がするが、まあ気のせいだろう。
しかし今回の事だが、蓋を開けてみれば簡単明解。
言ってしまえば宮廷の権力争い。これが端を発していた。
義姉上の活躍、それに伴うシュレン家並びに辺境領主達の権力の上昇。これを危惧したのだ。
何をバカな事をとも思うだろうが、これが中々に頻発する。王国の様な中央集権、世襲制官僚制度を採用していると、まあこれがよく起こるのだ。
まず、義姉上と紫翠のシュレン家はロムレシア王家とも繋がりのある名家だが、ここでシュレン家の複雑な生い立ちが絡んでくる。
元々を辿れば、シュレン家はロムレシア王国の臣民ではなかった。
あの異民族達が住む大平原より、現在のシュレン領に移り住んだ移民がシュレン家の始まりなのだ。
と言っても、これ自体とてつもない昔の事であり、今のシュレン領や王国でもそれを知るのは、ほんの僅かな者や歴史家達のみだ。
だが、バカな宮廷雀共はそこが気に入らなかった。
我らはロムレシア王国建国以来の忠臣、それなのに持て囃されるのは移民からの成り上がりのシュレン家。
気に入らぬと、戦時中も最前線で暴れ散らすシュレン家を筆頭にした辺境領主達に嫌がらせの類いを行っていた。いや、嫌がらせに関しては戦前、もっと言えば今代の王から三代前に遡る。
ロムレシア王国は大陸一の農産国だが、今代の王マクレガー王の父祖父曾祖父は、言ってしまえば愚王そのものだった。
金遣いの荒い曾祖父、色欲狂いの祖父、そしてお飾りの父。その中で金遣いの荒い曾祖父が事の発端だった。
ロムレシア辺境領は異民族達の住む大平原と隣接している領地が多い。シュレン領なぞもろにお隣さんだ。
故に防衛に金が掛かるし、異民族達の機動力ははっきり言って今の帝国にも脅威だ。
義姉上が居らず辺境領主達の軍も今程充実していなかった時代、異民族は度々辺境領の守りをすり抜け王都周辺まで、
ぶらりロムレシア旅行~土産は現地、旅費も現地調達~
を繰り返していた。国軍を出せという話だが、ロムレシア王国軍は歩兵が主であり、騎馬に滅法弱い。
いや、これについては異民族の騎兵が強すぎるだけか。
その事を嫌という程理解していた四代前までのロムレシア王は、兎に角国を護る為に軍の増強と、それに必要な産業食糧生産を強化してきた。
それを食い潰したのが、上記の三人だ。
曾祖父は詐欺師に騙され高額な贋作を買い集め、自己満足だけの美術館の為に公共事業費を削り、祖父は色に狂い国中から美男美女をかき集め、農業支援費を消し飛ばし、そして最後の父は佞臣共の言いなりになり、連中の放蕩の為に軍費を弾き飛ばした。
語ってきて頭が痛くなってきたな。
つらつらと千文字程語ってきたが、ここまで愚王が三代続いて、何故王国が潰れなかったのか。
それは役立たず以外の官僚や民衆、そしてギルベルト殿のガッセナール家等のまともな者達が頑張ったからだ。
うん、すごく頑張った。俺も王国に潜んでた密偵の報告書読んで、かなり引くレベルで頑張ってた。
そして、その僅かに残った基盤を今代のマクレガー王が引き継ぎ、戴冠と同時に大粛清を行って今日の王国に至る。
はっきり言って、今回の事の発端は嫉妬だ。
上記の日々を必死に乗り越えてきた宮廷の官僚達には、自分達が王国を支えてきたという過剰過ぎる自負がある。
故にポッと出の義姉上や過去に異民族の進攻を防ぎきれなかった辺境領達を見下していた。
それが義姉上が筆頭になり暴れに暴れ散らし、今や王国はシュレン家無しには成り立たないなどと謳われては、奴等も面白くない。
その醜い感情に漬け込まれた者達が居る。
「つまり、この香水はそう言った負の感情を増幅させると?」
「左様。いやはや、老い耄れには理解し難い物ですな」
俺達の婚約発表が終わり、準備された部屋で七郎次殿からの報告とアンナ殿の情報を照らし合わせると、こう言った背景からその手の薬品を使われた。という形になる。
だが、これにはかなりの問題がある。
「だとするとよ、この香水を広めた奴はこの国の内情を知ってる奴って事にならねえか?」
ロムレシア城の屋根を走り回り、最後には足を滑らせて落下して、少し疲れた様子の菊千代殿の言う様に、敵は俺が語ったロムレシア王国の内情を知っているという事になる。
そしてその上で、この香水を有力な貴族達に売り渡していた。
「……明確な侵略の前段階ですか?」
「喧嘩売ってんのは明らかだろうぜ。勝の字、俺が村に居た頃にも、似た様な手で田に引く水を奪いに来た奴等が居た」
「だが、一体どこの国がこのような回りくどい真似をしたのだ? 連邦か?」
「大体は連邦だろうよ。アンナ様が言うには、姉姫さんがぶち抜いた魔術陣は連邦の様式じゃねえって話だ。話に出てきた昆崙ってやつかもな」
アンナ殿が言うには、あの香水はそれ単体では若干の情緒不安定を誘発する程度だが、今回の魔術を併用する事で最悪の効果を発揮する劇薬となるらしい。
「しかし、人を操るとは……。もし本当なら世が変わるな」
「しかし、官兵衛殿。件の香水が無ければ意味の無い術であるなら、そうは警戒も必要ないのでは?」
「否、逆に言えば香水さえ嗅がせてしまえば、誰でも手中に収められるという事。警戒はすべきであろう」
官兵衛殿の言う通り、これはかなり厄介な代物だ。
予め香水か何か日用品を手渡し、頃合いを見て魔術を発動させてしまえば、後はこちらの意のままとなる。
「しかし、警戒はすれども対策はある。アンナ様がお作りになられた解毒剤。これを用いれば抵抗力が身に付き、一年程は効力は続くという話」
「生産についてはアンナ様が主導されるでしょうし、後は王と姉姫様達の話が終わるのを待つばかりでしょうな」
五郎兵衛殿がそう締め括ると、扉がノックされた。
「誰か」
「久蔵様、瑞穂に御座います。姉姫様がラインハルト様を交えこれよりの話を進めたいと」
十中八九、戦になる。
そう確信し、俺は帝国がどう絡むかを思案しつつ立ち上がった。
出来れば楽な戦が良いな。紫翠と新婚旅行行きたいし、その前に紫翠には入学も控えている。
……待て。紫翠が王国の学園に入学するという事は、それまで紫翠に会い難くなるのか?
え、待って無理……
マジで無理
こうなればそれについても進言せねば、俺の心が保たん!!
お姉ちゃんに平八以外の幼馴染み
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いる(♂)
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いる(♀)
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要らないぞ