負けヒロインの姉に転生した私 ~どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!!~ 作:スーパーマンのみりん干し
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帝国、正式にはガーデンベルグ新生帝国。それが俺の国の名前だ。
この大陸で最大の武力を持ち、第二位の国土を誇る大国で、俺はその国の第一皇子である。
まあ、そうは言っても公務に関しては、大部分を弟のレオニールに任せている。さぼっている訳ではない。俺は軍に所属しているから、軍務が忙しいだけだ。
いや、本当だからな?
その証拠に、俺は常勝将軍として名を馳せている。そうは言うが、負けた事も当然ある。
大事なのは勝ち続ける事より、どう上手く負けるかだと、俺は考えている。
下手に勝ち続けて、一度大敗すれば、将兵の信は失い易く、肝心な時に将兵から裏切られる。上下関係も勿論だが、信頼関係は更に大事だと思う。
勝つ時は徹底的に勝ち、負ける時は徹底的に被害少なく負ける。何事も引き際が肝心だ。
そう、何事も引き際が肝心。だから俺は今も生きているし、余計な将兵を失わず、かつ紫翠にも出会えた。
あの戦争、連邦の選民思想から端を発した戦いに、我が帝国は参戦する気は無かった。
だが、四代前の皇帝が連邦と結んでしまった同盟により、半ば無理矢理参戦する事となった。
俺個人としては、あんな不利な同盟なぞ無視一択だったが、約定を守らない国は信用を失う。
なので、仕方なく参戦したが、散々な目にあった。
俺達が担当する事になったのは王国辺境にあるシュレン領、王国の盾とも矛とも言われる屈強な領地だ。
最初に言おう。帝国は、やる気無く部隊を展開していて助かった。
元より、帝国と王国とでは国力に差がある。王国は農産国であり、大陸最大の穀倉地帯を持つが、中立国という立場故に、軍の量というものは低い。しかし帝国は軍事国家である故に、王国を越える物量を当然用意出来る。
だから、数を用意して威圧し、無血とはいかないまでも、被害を最小限に降伏させるか、連邦が息切れを起こして、この戦争がなし崩しになるのを待つ。それが俺が立てた作戦であり、帝国の意思だった。
相手のシュレン領主であり、未来の義父上でもある芭蕉・シュレンは、そんな俺の考えを見抜いたのか、こちらが寄せれば引き、引けば寄せ、とにかくこちらとの衝突を避けた。
流石は名将と謳われた芭蕉・シュレンだと、上手く侵攻出来ず歯噛みする連邦を尻目に、俺は義父上に喝采を贈っていた。
無論、そんな戦いでも人的被害は出たが、戦争なのだ。百の被害を五十程度に済ませられれば、それ以上の益は無いと言える。まあ、連邦の連中は馬鹿みたいに突っ込んで、シュレンの騎兵隊に返り討ちに遭っていたがな。
あれでは、あまりに兵が哀れだ。なので、かなりの数の脱走兵を、帝国で手引きしてやったりもした。当然、明らかにスパイな奴は処したが。
だが、違和感があった。前線の士気は最悪、脱走兵もあり、突撃しては兵は減る一方の連邦と、仕方なく軍を動かす帝国と協商。
そして帝国と協商は、この時既に王国から秘密裏に、和平案を受け取っていた。
つまり、あの戦争は一国対三国ではなく、連邦対王国、そして帝国と協商との戦争になっていた。実際は、連邦は異民族からの恨みも買っていたので、異民族とも戦っていた訳だが、我々もそうだったのでこれは除外する。
だから、連邦が戦線を維持する理由は、ほぼ無くなっている筈なのに、連中は強硬な態度を崩さず、更に兵を増員する有り様。
何かおかしい。そう思い、各所に探りを入れるが、特にこれといって連邦が有利になる状況ではない。帝国はやる気無く、協商も既に模擬演習めいた戦いになっている。
しかしその状況で尚、連邦は攻勢を強めようと、馬鹿げた物資輸送計画を立てていた。
目的も意味も理解出来なかった行動だが、すぐに理解出来た。
芭蕉・シュレンが病に倒れたのだ。
連中、どういう訳か、その事を事前に察知していたらしく、一番厄介なシュレン領軍の柱が倒れたと見るや、一気呵成に王国領へ攻め入り始めた。
いくら王国が少数とは言え、それでも将はいるし、私兵を持つ貴族もいる。ロムレシア王も、最前線である辺境三領に援軍を送るが、絶対的に数が足りない。
無論、我々も連邦の妨害を行っていたが、豊かな王国領を目の前にした蝗の群れには、焼け石に水と言うしかなかった。
連中には、甘い菓子がたっぷり詰まった箱の様に見えていたのだろう。我先にと箱に群がり、中身を貪ろうと、蓋を開けた。
そこまではよかった。連邦にとって、芭蕉・シュレンの居ないシュレン領は、間違いなく菓子の詰まった箱だった。
だが実際に開けると、中からは菓子ではなく、義姉上が飛び出してきた。
連邦に同情する気は無いが、あれは哀れだった。
飛び出せ! 義姉上の戦場だった。
とにかく、義姉上は強かった。突然現れた大女がちょっと突撃すれば、連邦の前線に大穴が開き、あのばかでかい薙刀を振れば、当たり前と十や二十の将兵の首が飛ぶ。
騎兵だから、馬の脚を止めようと、連邦が網を射掛けるが、そんなもの知ったことかと、網ごと引き摺り倒して大暴れ。
俺の副官など、あそこにいなくてよかったと、呆然と呟いていた。
一応、援軍の要請もあったが、あそこに行ったら間違いなく死ぬので、適当に伝令が届かなかったと無視した。
その後、連邦の要請を嫌々受けた協商が、ユリアナ殿を送って、王国と協商の二大巨女大戦が勃発したが、戦線が崩れた事で引き分けに終わった。
長々と語ったが、ここからは停戦に向けた動きになるので割愛する。
ここからは、俺達と紫翠の出会いだ。
俺が紫翠と出会ったのは戦争が終わり、停戦後の貿易諸々に関する条約を定める為の会談。その後に開かれた夜会だ。
初めて見た紫翠は、夜にしか現れない妖精か何かと見紛うばかりで、誰もが見惚れていた。夜空をそのまま映したかの様な黒髪、その名を表す透き通った瞳、シュレン独特の着物に身を包んだ姿、可憐でありながらも凛とした、涼しさを感じさせた。
まあ、すぐ後ろに聳え立つ義姉上に、皆ビビって視線を逸らしていたが。
しかし、そんな事で諦める俺ではない。
是が非でも、紫翠とお近づきになりたかった俺は、一計を案じた。単純に、ユリアナ殿に頼み込んで、二日目の夜会で紫翠と二人で話が出来る場を設けてもらった。
まあ、すぐに義姉上にバレたのだがな。
紫翠・シュレンのあるところに、翡翠・シュレン在りとはよく言ったもので、シュレン領滞在中は本当に義姉上はよく現れた。
しかし、紫翠との交流を邪魔するのではなく、俺と紫翠の会話を、何をする訳でもなく聞いていた。
後に分かったが、あれ品定めされてたらしい。紫翠に似つかわしい男なら良し、そうでなければ即排除の予定だったそうだ。
流石は義姉上、帝国第一皇子にも中々に過激だ。
そして、すぐにバレたが秘密裏に文通を交わす様になり、シュレン並びに王国との国交も潤滑に戻りつつあったある日、一つの事件が起きた。
最初は、取るに足らない貴族の間によくある妨害工作の一端。誰もがそう思っていた。
だが、俺達皇族に近しい血筋の家に被害が出た時、これは違うと分かった。
そして、帝国の近衛兵団の団長、その三人の内の一人が暗殺された事で、これはただの内輪揉めではないと確信した。
急ぎ、信頼出来る密偵を走らせ、王国と協商の現状を確認すると、二国でも同様に騒ぎ起こっていたらしく、すぐに密書を抱えた密偵が戻ってきた。
二国揃って、恐らくは連邦の仕業という見解であり、一応今一番被害の少ない王国に、ターゲットとなっているだろう人物を集め、事態が納まるまで警護する。その間の護衛には、協商からユリアナ殿、王国からは騎士団と密かに義姉上が当てられるという話だが、何故に義姉上は密かになのか。
その答えは単純明快、義姉上がその話をそのまま聞けば、必ずシュレン領に引っ込んで、紫翠だけを護る。
義姉上の行動パターンは、一に紫翠と領民、次に国だ。実際、シュレン領を含めた辺境三領は独立は可能だと、俺は見ているし、ロムレシア王もそう認識している。
故に、ロムレシア王は自分達の評価を無能としてでも、王国最強の一手を近くに置いて、刺客に対する牽制としたい。
もっと事実を言うなら、王国は先の戦争で予想よりも被害を被っている為、王都周辺の防備をこれ以上薄く出来ないというのもあるだろう。
先王の軍縮政策の煽りを受けた形だな。ロムレシア王には同情する。
今回の案件、本音を言うなら、紫翠や他の者達は帝国に迎えたかった。だが、帝国は軍事国家、対する王国は中立国だ。大事な娘や家族を預けるのに、軍事国家では不安もあるだろう。実際、協商連合からは不安の声が挙がったらしく、まあ仕方のない事だろう。
本当は紫翠だけでも、帝国に迎えたかったが、本当に仕方ないな。ああ、仕方ない。
だから、俺が行く。
なんだ? ガイウス。皇子が動くな?
ははは、嫌だ。もう俺はシスイニウムが枯渇しているのだ! シスイミンもだ!
これ以上お預けを食らったら、俺は連邦を滅ぼすぞ!
あ? カワカミン? 鈍器ラノベ中毒者みたいな事を言うな?
ええい、訳の分からぬ事を言うな!
あ、お前ら、なんだその禍々しい雰囲気の縄と器具は?!
離せ! ええい、離さぬか!! 我皇子ぞ!?
政務ならレオニールが居るぞ!
離せ! HA☆NA☆SE!!
待て! 話せば分かる! だから、その禍々しい器具を俺に近付けるな!
やめろやめろ、俺に近寄るなああああ!!
皇子はこのあと、最後のガラスをぶち破って、未来へと脱出しました。
お姉ちゃんに平八以外の幼馴染み
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いる(♂)
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いる(♀)
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要らないぞ