負けヒロインの姉に転生した私 ~どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!!~   作:スーパーマンのみりん干し

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お姉ちゃんの秘密
実はお姉ちゃんには、口の悪い小人族の親友が居る。
あと、地味にお化けの類いがちょっと苦手。
理由は斬り難いから(斬れないとは言ってない)


合流

「……義姉上」

「義弟、話を纏めると、三国が同意した護衛で間違いないな?」

「はい!」

 

 ふむ、だとすると父上も知らなかったという事か。いや、あの父上の事だ。知っていながら、知らぬ振りをする事くらいやる。

 恐らく、私を動かす為に、一芝居打ったのだろう。

 しかし、暗殺されたのが、あの近衛団長とは、少々ただ事ではなさそうだ。

 

「ラインハルト、お前はこれをどう見る?」

「……十中八九、連邦の仕業に間違いはない。しかし、連中の手にしては、やけに周到だ」

「確か、異民族に暗躍が得意な連中が居ただろう」

「……連邦は異民族からの信用を失っている。奴らが手を貸す事は万が一にも無い」

 

 あの一族は、金さえ積めばどんな仕事も受けるが、一度でも信用を失えば、二度とその姿を見る事は無い。

 つまり、信用を失う様な事をした相手は、この世からおさらばするという事だ。

 先の戦争でも、あの一族の姿はちらほら見かけていた。だが、見つけ次第で私の部下であり、今は先程の不埒者の尋問に当たっている平八が処理していた。

 平八は実に優秀な部下だ。私や瑞穂の手の回らない部分に、よく手が回り私達が気付いた時には、既に案件が終わっていたりする。

 能力に対し、平民である事が悔やまれる。と、そんな下らない話もあるが、私の部下に貴族も平民も関係無い。能力があれば、平民でも重用する。

 この辺りは、目の前で脂汗を流しながら座るラインハルトも、同じ考えを持っている。

 

「あの、義姉上……」

「どうした?」

「何故、俺はここで正座を?」

「……先程の愚行を忘れたのか?」

 

 動向しているもう一人の部下である五郎兵衛が、何処からか調達してきた薄い石材を、膝に追加でもう一枚乗せてやると、ラインハルトは右に左に不可思議な動きを見せる。

 ラインハルト、お前は確かに紫翠の婚約者で、それは私も認める。お前は紫翠を深く愛し、そして紫翠と共に手を取り合って生きる覚悟も有り、紫翠に苦労をさせない財と地位、そして才覚を持っている。若干、顔つきが厳しいきらいはあるが、まあ大した事ではない。

 だが、お前は許されざる愚行を犯した。

 

「義姉上、あの、どうかご勘弁を……」

「もう一枚追加するか?」

「誠に申し訳御座いませんでした……!!」

 

 石を抱きながら、頭を下げるラインハルト。

 私も紫翠が怒っていなかったので、そこまで怒っている訳ではない。現に、五郎兵衛が持ってきた石も、見た目はそれらしい軽石だ。

 まあ、畳で石を積む訳にもいかんからな。

 さて、この愚弟が犯した愚行だが、今この場に紫翠とユリアナ、瑞穂が居ない事が答えだ。

 

「義弟、私は紫翠との交際は認めた」

「はい」

「手を繋ぐ事と、接吻までは許そう許さんが。だが、まだ日も沈みきらぬ内から、未婚の女に抱き着くな。はしたない」

 

 この愚弟は、まだ旅塵も汗も流していない紫翠に抱き着こうとした。今の季節、まだ涼しいとは言え、日中は結構蒸す。実際、町で一休みした紫翠の額には、うっすらと汗が滲んでいた。

 紫翠も年頃の乙女である。着物もしっかりと香を焚き染め、髪にも香油を塗っているし、香り袋も懐に忍ばせている。

 季節の対策はばっちりでも、気になるものは気になる。故に、今はユリアナと瑞穂を伴って、湯浴の最中だ。

 そして私は、この愚弟に説教ついでに、現状の確認をしている。

 

「よいか、愚弟。シュレンには、男女七歳をして席を同じゅうせず、という言葉がある」

「はい、存じております……」

「これは、男女七歳ともなれば、みだりな交際は控えよという意味で、お前も皇子という立場なれば、その辺りはよく理解しているだろう」

「はい、その通りで御座います」

「まったく、私もお前の気持ちがまるで分からんという訳ではない。だが、恥じらいは持て。分かったな?」

「はい、肝に命じます」

 

 さて、説教はこの辺にするとして、もうすぐ三人が湯浴から帰って来る頃合いだ。

 私も準備をしなければ。

 

「愚弟、ラインハルト。お前も湯浴に行って、汗を流してこい。五郎兵衛」

「へい」

「皆に交代で湯浴に向かわせろ。あと、護衛でラインハルトに付いて、背中でも流してやれ」

「畏まりまして。ささ、ラインハルト様」

「うむ、いつも済まぬな。五郎兵衛殿」

 

 むさ苦しい男共は去った。私も紫翠の髪を梳ったら、湯浴に行くとしよう。

 櫛と香油を用意し、水気を拭き取る手拭いも抜かり無い。

 後は紫翠の帰りを待つだけだ。だが、なんだこれ? 

 何やら、妙な気配を感じる。見られている。否、それにしては気配が薄い。気配を消しているというより、気配そのものが希薄。だが、確かにこちらに意思は向けられている。

 しかし敵意や害意の類いは感じない。寧ろ、好意的なものすら感じる。

 私はお姉ちゃんだが、お姉ちゃんにも分からない事はある。例えば魔術。私はお姉ちゃんだが、魔術の類いが一切使えない。故に、魔術に関する事はまるで分からない。視覚的、物理的に効果や結果を認識出来るなら、それが魔術によるものか、否かを判別する事は出来る。

 だが、そうでない現状の様なものに対して、私はある意味無力だ。

 いや、気配の大元を斬ればいいから、無力ではないな。

 

「紫翠が戻るまで僅か……、斬るか」

「どうかお待ちを!」

 

 そろそろ斬るかと、脇に置いていた太刀に手を伸ばそうとした時、襖が勢いよく開け放たれて、土下座が部屋に飛び込んできた。

 なんだこいつ? 

 小さく折り畳んだ体を、そのままの体勢で畳の上を滑り、ドリフトして私の前で止まった。畳に擦れて、若干熱を持ったのか、僅かに煙が立っている。

 なんだこいつ? 

 ……いや、まさか、しかしこの赤い髪には見覚えがある。というより、見覚えしかない。

 

「私は、ロムレシア学園に在籍するアンナ・ファレスと申します。今回は、翡翠・シュレン様にお願いしたき事があり、無礼を承知で参りました」

 

 DOGEZAの名称は、アンナ・ファレスというらしい。

 いや、知ってる。原作主人公兼ヒロインだ。

 そして今、その原作主人公兼ヒロインが、DOGEZAになって私の目の前に居る。

 なんだこいつ? 

 

「……分かった。面を上げろ。私はそこまで平伏される身分ではない」

「あ、いえ、その……」

 

 DOGEZAがDOGEZAのままなんだが、一体どうしたものか。というか、この主人公は何故DOGEZAなんだ? 

 顔上げろって言っても、顔上げないし、返事もしどろもどろ。

 原作だと、もっとはきはきした子の筈だが。

 

「おい」

「ひゅえっ!」

 

 この主人公、驚きはするのにDOGEZAから人間に変形しないんだが、一体どうするべきか。

 雰囲気から敵ではなさそうだが、さっき言っていた願いとやらが分からぬままだ。

 私はお姉ちゃんだから九割不可能は無いが、DOGEZAに対するコミュニケーションは、流石のお姉ちゃん辞書にも載っていない。

 というか、何でこいつはDOGEZAで部屋に入ってきたんだ? 

 

「ふひひ、推しが、推しがこんなに近くに居る……。すげー黒髪美巨女が袴姿で正座で、しかも袴の上から分かるバキバキのふとももと、パツパツオパーイとかまじやばたにえん……」

 

 しかも、何かボソボソ言ってて、流石のお姉ちゃんもちょっと怖い。しかも、早く何とかしないと、紫翠が帰ってくる。こんなもの、紫翠の教育に悪すぎる。だけど、こいつ原作主人公だから、スパッと斬る訳にもいかないし……。

 マジでどうしよう。

 ……パー子に押し付けるか。

 

「姉上、戻りました。良いお湯でしたよ。……あの、そちらの……、なんというか奇抜な形の方は?」

「妹姫様、見てはなりません。もしやすると、姉姫様が新手の怪異を調伏している最中かもしれません」

「いや、あの、翡翠? そちらの方はもしかして……」

 

 帰って来ちゃった。どう説明したものか。

 

「あー、紫翠。この者はアンナ・ファレスという者で、お前が通う事になる学園の生徒らしい」

ふへ、王子も良かったけど、やっぱり推しは最高……、え、紫翠?」

「はい?」

 

 紫翠の名を聞いた瞬間、DOGEZAが人間に変形した。

 まるで、バネ仕掛けの玩具の様に跳び跳ねて、アンナはDOGEZAから人間に戻った。

 そして紫翠を見るなり、突然絶叫し、

 

「我最推湯上拝謁妖艶可憐! 尊過分我限界愛愛愛……!! 脳死確定絶対……!!」

 

 直後にぶっ倒れた。

 え、なに、これ? 

 お姉ちゃん怖い。

 

「あの姉上、こちらの凄く特徴的で奇特な方は一体?」

「お姉ちゃんにも分かんない」

 

 いや、本当になんだこいつ?




平八
翡翠の最も信頼する部下の一人。
手先が器用で、戦闘は勿論、尋問から諜報まで幅広く担当する。
翡翠とは幼少時よりの付き合いで、割りと口が悪い。
原作でのユニットは歩兵。
扱える武器やスキルが全キャラ中で、トップクラスに多い為、何でも屋の様なユニットでもあった。
バフデバフスキルが使える本部みたいな性能。

五郎兵衛
翡翠の最も信頼する部下の一人。
父である芭蕉の頃よりシュレン家に仕える古株。シュレン姉妹にとって、爺や的存在でもある。
流行り病で妻に先立たれ、男手一つで娘を育て上げた。現在は孫が二人居る。
芭蕉から縁談を貰う事もあったが、自分の妻は一人だけだと全て断っている。
原作でのユニットは騎兵。統率系スキルが多く、体力値も高かったので、多少の無理は押し通せる。

お姉ちゃんに平八以外の幼馴染み

  • いる(♂)
  • いる(♀)
  • 要らないぞ
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