負けヒロインの姉に転生した私 ~どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!!~ 作:スーパーマンのみりん干し
因みに、お姉ちゃんの側近は、前回の平八と五郎兵衛を含めた七人です。
瑞穂は別枠側近。
さて、とりあえず不審者の身元は割れた。
アンナ・ファレス、原作主人公でありヒロインであり、そして先読みの巫女でもある。
「話は分かった。つまりお前は、私と同じ転生者で、推し云々は先の戦争での活躍からという事だな」
「ハイソノトオリデス」
原作では、ファレス家は没落貴族だったが、パー子の話を聞くには現在は中流貴族並みには、その勢いは回復しているらしい。
そして、それらにはこの変態が関わっている。
どうやらこの変態、私の想像以上に優秀な変態らしく、今王都で流行っている最新のトレンドの、六、七割に噛んでいる。
最近では服飾や絵画に使われる顔料に新しい概念を持ち込み、一番最新の発明に射影機、つまりカメラがあるらしい。
「それで、お前の願いとやらはなんだ?」
「ええと、その前にですね……」
「なんだ?」
「何か着ましょう」
「ここは風呂場だ。人を露出癖の様に言うな。そして、こちらを向け」
「無理です! 推しの湯上がり姿でも脳が焼き切れかけたのに、推しの入浴、裸体なんて見たら、私の魂ごと死んじゃう……!!」
なら、風呂場に付いてくるな。大体、お前が来なければ、私は紫翠の髪を梳ってから、のんびりと風呂に浸かっていたんだ。
この変態が、他人にあまり聞かせたくない話だというから、仕方なく変態と湯浴しているが、本来なら私は湯には一人で浸かりたい人間だ。
「変態、話というのはなんだ?」
「あれ? 不審者から変態扱いになった。いや、推しに変態扱いされるのも、それはそれで……」
「死ぬか?」
「ひゅえっ! もう一度確認したいのですが、翡翠将軍は私と同じ転生者で、この世界の原作も知っている。で、間違いないですか?」
「ああ、間違いない。だが、私は自分が転生者であると、周りには言っていないし、前世の記憶とやらも、お前の様にはっきりとはしていない」
この世界には、転生者は割りと居る。
だが、私やこの変態の様に自覚があるのは、滅多に居ない。
ラインハルトの側近のガイウスは、前世の記憶をかなり残した転生者らしいが、私は違う。
私に残った前世の記憶は、この世界には原作となるゲームがあり、私はそれに嵌まっていた事と、私の前世は今と同じ女であるという事。後は、何故か筋肉の鍛え方が朧気にある。
「ふへへ、私も似た様なものです。それで、将軍は原作のゲーム、〝君とあなたのウキウキドキドキラブラブライフ ~一筋の血風を添えて~〟は、どこまでやりこみました?」
「……一応、達成度は百%までやった記憶はあるな」
「……ぶっちゃけ聞きますけど、DLCの存在は知ってます?」
「DLC? 無いな」
「ああー、やっぱり。それでいきなりぶっこみますけど、この世界多分、DLCの流れに入ってます。理由は貴女の妹である紫翠様です」
「……詳しく話せ」
変態が言うには、どうやら私が死んだ後に新しくDLC、ダウンロードコンテンツが発売されたらしく、その内容は本編のif、もしもの世界、つまり私の愛しの妹である紫翠が生き残った世界の話らしい。
「あのバッドエンド一直線の紫翠様が、バッドエンドを全て回避、もしくは乗り越えて幸せを手にした世界線の話でして、発表時は盛り上がりに盛り上がりましたよ。私も女子大のサークル仲間と一緒に、どの様に攻略するかと毎日語り合いました。……語り合ったんですけど……」
「どうした?」
「あのゲーム、開発陣が絶対クリアさせる気無いだろって難易度でして、タクティカルゲームのプロの人達をして、諸葛孔明かハンニバル・バルカ呼んでこいって泣き叫ぶ難易度だったんですよ……!」
変態曰く、敵の移動範囲が異常、一手で飛車角行がこちらの王将の目の前に飛んでくる上に、二回行動有り有りで、倒したと思った敵が当たり前に復活して、しかもステータスは軒並みアップ。加えて、一般ユニットすらこちらのネームドユニット並みのステータスで、常に数はこちらの倍。
攻撃も防御バフは無視、防御すら攻撃バフガン盛りでどうにかというレベル。
しかし、そこまではどうにかなった。どうにかしたらしい。
やっぱり変態だ。
「ものは試しに、新しく導入された外交システムで、何故か強くなった連邦を囲い込んで、徹底的に叩いたらスルスル攻略出来て、あっちで迫害されてたケモっ子も攻略出来るようになったりして、DLCとして破格のボリュームでしたね」
「紫翠はどうなった? 幸せになれたのか」
「はい、それは勿論。ちゃんと王子や他のちゃんとした男と結ばれて、一姫二太郎くらいは産んでました」
「なら、いい」
紫翠の幸せの為なら、お姉ちゃんはその程度の敵くらい蹴散らしてやる。
だが気になるのは、あの連邦がそこまで強くなった経緯だ。
連邦軍は、よく言えば物量、悪く言えば数だけ。中には傑物も居るには居るが、出る杭は徹底的に打つのが連邦の政治だ。有能でも上層部から嫌われれば、出世も活躍も出来ない。
あいつら、よく国を保ってるな。
「翡翠将軍は、〝崑崙〟って覚えてますか?」
「崑崙? 遥か東の大国だな。希に交易品が市場に流れてくるだけで、原作でも私と同じテキストだけだった筈だ」
「実は、DLCでもそうだったんですけど、恐らく今の現実でも連邦は既に崑崙の操り人形になっている可能性がありまして、私の予想だと前の戦争は、こちらの力を測る為のものだったんじゃないかって」
「……つまり、崑崙と戦争になると?」
「ゲームでは、連邦の貴族が崑崙の貴族に唆されて暴走して、伝説上の魔獣が復活。それを崑崙と三国が力を合わせて倒してゲームクリア、という流れでした」
「だが、現実では死んでいる筈の私は生きて、シュレン領も発展し、紫翠はラインハルトと結ばれる。かなり原作から乖離しているが、それでも原作の流れから離れていないと見るか?」
「……原作から乖離してはいます。しかし、大筋で起きているイベント。つまり先の戦争と、今回のロムレシア学園への紫翠様の入学。その他にも私が知る限りで、ストーリーの分岐点となるイベントが発生しています」
「多少、強引な流れはあるか?」
変態が後ろ向きで頷いた。
いや、もうこちらを向かないのはいい。だが、時折こちらに視線を向けてきては、フヒッだの、デッッカッッだのと、妙な独り言を漏らすな。
「今回の件、どうにも無理矢理起こした感が凄くて、原作の流れにしたいっていうのが、見え見えなんですよね。まるで、それが一番良いみたいな、解釈の押し付けみたいな感じがしまして。私的に、解釈はあくまで解釈であって、推しにその自分の考えを押し付けるのは、オタクとして最悪の行いともうしますか、某としましてはそれこそがコンテンツの衰退を招く最悪の行いとみてまして……」
「分かった分かった。つまり、原作の流れにしたい奴が居ると?」
「多分、恐らく、メイビー。私は政治に詳しい訳ではないので、原作知識と合わせて考えた結果、そう考えてるだけですけど」
「お前は違うんだな?」
湯に浸けていた右腕を、態とらしく音を立てて湯から上げて、アンナの様子を見る。
パー子が言うには、学園での成績は上の下辺りで、特に魔力の扱いに長けるらしいが、私がちょっと殺す気になれば、簡単に殺せる程度でしかない。
だから、ここで怪しい動き、元から怪しさの塊だが、そんな動きを見せれば原作主人公でも殺す。
そのつもりだったが、一瞬こちらに視線を向けてから、こいつ動きが無い。
逆上せたかと思ったが、それにしては姿勢が崩れていない。
どこか既視感があるから、嫌な予感がしつつも近付くと、
「我覗見推脇、本気限界推入浴色気」
「訳の分からん事を言ってないで、さっさと起きろ」
また変な言語を喋っていたから、軽く叩いたら念仏めいた音を吐き出すのは止んだが、代わりに動かなくなったので、脇に抱えて湯船から上がると、突然首だけを動かして、こちらを見てきた。
「あの、一応言いますけど、私の第一は推しの幸せでして、推しが幸せになる為なら、原作ルートとかどうでもいい系転生者です」
「……私も、紫翠と領民の方が大事だ」
「だから、私が紫翠様を不幸にする可能性のある、原作ルートを選ぶ事はありません」
「一応は信じてやる」
「やった! それでお願いなんですけど……」
「言ってみろ」
「写真、撮らせてもらえませんか? 出来れば翡翠将軍と紫翠様それぞれと、お二人のツーショット」
「悪用しないなら、許可する」
「やったぜ! あと、最後に一つ」
「なんだ?」
というか、こいつ首柔らかいな。梟か何かかみたいに首が回ってて、ちょっと怖いんだが……。
「( ^ω^)おほー、マジ絶景……!」
軽く揺らしたら、ぐったりして動かなくなったので、適当に体を拭いてやって、持ってきていた寝間着に着替えさせた。
いくら変態でも、脱衣場に全裸で放置は哀れ過ぎるからな。
お姉ちゃんに平八以外の幼馴染み
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いる(♂)
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いる(♀)
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要らないぞ