負けヒロインの姉に転生した私 ~どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!!~ 作:スーパーマンのみりん干し
「しかし、あれですわね」
「なにがだ?」
「シュレン姉妹に私、話題のファレス家の令嬢に極めつけに帝国第一皇子。それに加えて、貴女の側近の七本鞘。これ、王都の皆様が腰を抜かす可能性のある面子ですわよ?」
道中でパー子がこんな事を言い出したが、果たして本当にそうだろうか。私も紫翠も王都には行った事はあるし、変態は変態で王都の学生だし、義弟はちょくちょく王都に顔を出している。
七本鞘も、あの戦争時には王都周辺の戦線に出向いていた。
だから、腰を抜かす事は無いと思うぞ。
「( -_・)?」
「あのね、翡翠。王都の方々からしたら、貴女はこの国の大英雄で、七本鞘はその英雄の部下。そして、紫翠さんはその大英雄が溺愛する妹で、ラインハルト様はその婚約者。こんなVIPの集団に加えて、今話題のファレス家令嬢に、協商最大戦力である私。ここまではっきり言えば、貴女のすっからかんの頭でも理解出来まして?」
だ、誰が頭すっからかんの脳筋巨女だ?!
「( ゚皿゚)」
「相変わらずの顔芸だこと。それより翡翠、もう日が高くなり始めてますわよ。もし野営を考えているなら、今から準備をしないと間に合いませんわよ?」
「それなら抜かり無い。菊千代、勝志郎」
「応さ」
「はっ」
私並みの大男と、まだまだ少年と言える小柄な男。私の側近の七本鞘一番の新人の二人だ。
「近くに村があった筈だ。村長に話をつけて、昼餉を摂れる場を構えてもらって来い。あと、村で何か商売をしていたら、これで買い物でもするといい」
そう言って、大きさの違う革袋を二つ手渡す。大きい方は村への謝礼を兼ねたもので、小さい方は二人への駄賃だ。
菊千代はお調子者だが馬鹿ではないし、勝志郎は真面目な奴だ。
だから、すぐにどちらがどちらかを理解して、懐へ仕舞いこんだ。
「姉姫さんよ、一番広い場所だな?」
「ああ、そうだな。出来るだけ広い場所がいい。勝志郎、交渉は菊千代に頼れ」
「はっ、菊千代殿。お願い致す」
「任せろって、勝の字」
二人がこの先にある村に向かうのを見送って、パー子の方を見ると、なんだか妙な目を向けてきた。
「どうした? パー子」
「いい加減に人の名前を覚えなさいな。……人の部下にこう言うのは難なのですが、大丈夫ですの?」
「なんだ、そんな事か。確かに二人揃って未熟者だが、あの二人以上に民との交渉に向いた部下は居ない」
特に農民との交渉なら、菊千代一択だ。
あいつは平八や勝志郎の様な、平民でも下級武士でもないし、五郎兵衛や官兵衛、七郎次に久蔵の様な武家でもない。菊千代は、原作では戦う力の一つも持っていなかった農民だ。
原作で農民とは完全な生産職で、戦闘の場に出す事は出来なかった。
だから、私はこの世界でもそうか、それに近いのだろうと、何も考えずにいた。それをひっくり返したのが、菊千代だ。
奴の登用の際には、かなり揉めた。平民の平八を側近の七本鞘に迎える時もかなり反論があったが、菊千代の時はその比ではなかった。
だから私は、反論のある奴は菊千代と一騎打ちで、試合をさせた。私の側近に足る実力があれば良し、無ければこの話自体無かった事にする。
その結果、菊千代は反対していた侍全員を下し、晴れて七本鞘の最後の一人になった。
ちなみに、私も試合をしたが、私はお姉ちゃんなので余裕で勝った。当然だな。
「まあ、貴女が大丈夫だと言うなら、大丈夫なのでしょう」
「まあ楽しみにしていろ。面白いものが見れるぞ」
そう言いつつ、背後の馬車に気を向ける。
ラインハルトが帝国から持ってきた馬車、なんでも冷暖房完備で、対魔術加工や諸々が施されているという話だが、御者と馬を討たれたら終わりでは?
「翡翠、悪い癖ですわよ?」
「……性分だ」
私の大事な大事な紫翠を守るものが、頼り無いものでは納得いかんからな。
しかし、馬車が騒がしいな。事が起きた騒がしさではない。
……大体、検討はつくが
「……やはりか」
頭が痛くなってきた。
馬車の扉を開いてみれば、ガクガクと痙攣しながら泡を吹く赤いのが居た。
「お、おい! 何が起きた?!」
「姉上! アンナ様が……!」
「あー、うん。気にするな。……ただの発作だ」
「いや、それは問題だと思うぞ。義姉上」
いや、この変態は死んでも死なんから、問題無い。
「おい、変態。発作を起こしてもいいが、私の最愛の妹と義弟に迷惑を掛けるな。殺すぞ」
「はいぃぃぃっ! 私復活ぅぅぅっ!!」
変態が復活したが、殺す口実が無くなってしまった。
雑に変態罪とかで処せんだろうか?
「姉上、流石にゲストを処すのは如何かと」
「む?」
「義姉上、顔に出ているぞ」
「( ゚A゚ )」
「と、とりあえず復活したんでデスはノーの方針で……」
変態がそう言うが、正直面倒事の種でしかなさそうな気配しかしないから、さっさと一人で帰ってほしいのだが……。
「翡翠様、顔に、顔に出ておりまする」
「( ゚皿゚)」
「とりあえずお役に立ちますから、その顔はやめてぇ!」
「役に立つとは、どう役に立つんだ?」
パー子が言うには、この変態には何か功績があるらしいが、変態以外の印象が無い。
「立ちまあああああす! 私役に立ちまあああああす!」
「五月蝿い。馬車の車輪にしてやろうか」
縄を七郎次から受け取ると、変態が黙った。
最初から静かにしていればいい。
「そういえば、義姉上。平八殿は何処に?」
「平八なら遅れて来る。……不埒者の口が中々に固いらしくてな」
正確には、騎馬民族特有の訛りと部族特有の言語の翻訳に苦戦している様だ。
あの連中の厄介な所は、騎馬による遊撃能力の高さと、その部族にしか通じない特殊な言語を喋る所にある。
あいつら、部族間の連携は並み以下だが、部族内の連携に関しては馬鹿に出来ん。その馬鹿に出来ん連携を生むのが、解読困難な部族言語にある。
その部族にしか伝わらない特殊な発音や、言葉の組み合わせ、中には武具や楽器を打ち鳴らす音や、身振り手振りの仕草、中には歌で意志疎通を図る連中も居る。
翻訳して文字に書き写そうとしても、騎馬民族の大半は文字という文化を持たないというのも、平八が苦戦している理由でもある。
例え、こちらが文字に興しても、連中がそれを理解出来んから、翻訳との整合性が取れない。
一応、行商や貿易の文化を持つ部族は、こちらの言葉や文字を理解しているし、特定部族の特殊言語に通じている者達も居るが、それでも部族内の暗号は理解出来ないらしい。厄介な連中だ。
だから賢い私は、連携なぞ意味を為さん暴力で叩き潰した。
私は賢いお姉ちゃんだから、そのぐらい当然だな。
「姉姫様、もし宜しければ七郎次を向かわせますが」
「無用だ、官兵衛。あの手の尋問は平八に任せるのが最良だ」
「出過ぎた真似を」
「構わん。それが七本鞘の長であるお前の役目だ」
私の側近である七本鞘は、指揮官は官兵衛、その補佐に七郎次。そして直接の部隊指揮に五郎兵衛。
久蔵、平八、勝志郎、菊千代の四人は実働と分かれている。
私が指示したという訳ではなく、自然とこうなっていた。
優秀な部下が出来て、お姉ちゃん嬉しい。
「( ^∀^)」
「姉姫様……?!!」
おやぁ? 何故私の眼前に矢が?
お姉ちゃんに平八以外の幼馴染み
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いる(♂)
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いる(♀)
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要らないぞ