1999年7の月に恐怖の大王が現れる。
この言葉は1999年を生きた当時の人々に衝撃を与えた言葉である。この言葉に多くの人は「恐怖の大王とは何なのか?」と議論した。ある者は「巨大な隕石では?」と言い、またある者は「未知の病原菌では?」と言った。またある者は「戦争だ!」と言い、またある者は「環境破壊によるものだ!」と言った。
そして。恐怖の大王をこの目で見た
「恐怖の大王とはそんな目に見えないものや遠いものではなく、
と。
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1999年7月。
「あ~、あちぃ……」
亀有公園前派出所に勤務する警察官、両津勘吉は自転車を押しながらパトロールをしていた。とめどなく流れる汗をぬぐう気力もなく「ぜぇぜぇ……」と息を切らし舌を出す。
「……あぁ、喉が渇いた。水分……水分を……ん?」
ふと自動販売機が目に入り両津は残る体力を振り絞って自動販売機にたどり着く。
「よし! 飲むぞ! ……あれ?」
財布を開けた両津は中身を見て止まる。財布の中身は50円玉が1枚、10円玉が5枚。自動販売機の商品はどれも110円。お金が足りなかった。
「くそっ! 10円! 10円!!」
両津は制服のポケットや自動販売機の下などにお金がないか探す。しかし無情にもお金はなかった。
「だ、だめだ……もう動けんぞ……」
絶望し自動販売機に寄り掛かった、その時だった。
「あの。お困りでしたらこれを」
グッタリとする自分の前に差し出された未開封のペットボトルに、両津は奪うように受け取るとゴクゴクと一気に飲み干した。
「いやぁ! 助かりました、ありがとうございます……え?」
「……」
自分の顔をじっと見る女性に両津は固まりつつも謎の女性を観察する。
両津より若干背の高い女性は目鼻立ちが人形のように整っており、腰まである艶やかな黒髪を首の後ろで結っていた。透き通るように白い肌と優しげな表情はとても印象に残る。麗子を始めとするモデル体型を多く見ているためスタイルは特に何も思わない両津だが、スーツの胸元を盛り上げる膨らみと見事な半球を描くヒップラインは両津のように目が肥えた男でなければ目を奪われるには十分なプロポーションだった。
(始めて見る女だが……どういうわけか始めて見る感じがしない。何故だ?)
その原因がわからず両津は難しい顔をする。
「あの失礼ですが、もしかして……」
両津を見て何か言おうと考えていた女性は数秒考えた後、口を開く。
「貴方は亀有公園前派出所に勤務されている両津勘吉巡査長ではないですか?」
「え、何でわしの名前を?」
初対面の人間に言い当てられ驚く両津に女性はハッと手を口に当てる。
「あ、申し遅れました。私、
「春眠起女?」
両津は首を傾げる。始めて聞く名前だったが似たような名前が喉元まで出てきたからだ。
(春眠起女、春眠起女、春眠起女……ダメだ。すぐそこまで出てきているのだが!)
悩む両津に女性はクスッと微笑む。
「すみません。
(ん? ……ッ!?)
「日暮、起女……ッ!? まさか、アンタ……休女の──」
「はい、休女の双子の姉です。兄の
「ははは、そうでしたか!」
楽しく談笑し始める両津と起女。この時、二人は知らなかった。この楽しい時間が吹き飛ぶ出来事が今まさに起ころうとしていることを。
春眠起女(はるねむり おきめ)
旧姓:日暮起女。休女の双子の姉。四年に一度しか寝ないタフネスOL。中学生くらいの休女を大人にしたような容姿をしている。
日暮熟睡男&起男のように超能力は使えず、妹の休女のように五感や身体能力に優れていないが……。