警察女子寮
四年に一度東京オリンピックが開かれる年に目を覚ます女性警官、日暮休女はピンクを基調としたパジャマ姿で
「す~~~すぴぃ~~~むにゃむにゃ♪」
気持ち良さそうに眠っていた。しかしそんな彼女の顔が
「うぅ……熱い……熱いよぉ……」
少しずつ不快な表情へと変わっていく。
床板の色が変色し、所々から煙が上がっていたのだ。その原因は休女がいる404号室のすぐ下の階にあたる304号室にあった。
304号室。この部屋の主である女性婦警は天ぷらを作っていた。その途中、女性婦警は調味料がないことに気づき、火を止めることを忘れて買い出しに出てしまったのだ。放置された油が入った鍋はついに火を吹き出し、周囲の可燃物に発火。火は部屋全体に瞬く間に広がり、ついには休女が寝ている404号室の床板と接する天井近くまで燃え広がった。
「ううぅ、熱い。……熱い熱い熱い……うあああぁぁぁっっっ!!」
普通ならあり得ない熱気に、休女の目が赤い発光と共に見開かれた。
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妹の休女が火にあぶられているのとほぼ同時刻。深い眠りについている兄の日暮熟睡男も上の504号室から天井から落ちる、洗濯機から漏れ出した水を受けて不快感を覚えていた。
「うぅ……」
無意識に寝返りをして天井からボタボタと落ちる水滴を回避する日暮。しかし天井から
「うぅ、うぅっ……うがあああぁぁぁっっっ!!」
避けても避けても顔にかかる水滴に、怒りに満ちた日暮は吠えた。
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「……で、休女のやつが──」
「……へぇ、そうなんですかぁ──」
両津と起女は楽しそうに談話をしながら歩いていた。しかしその楽しい時間は
ドッカァァァァァァンッッッ!!!!
二つの異なる方向から発せられる爆音で終わることとなった。異なる方向の爆音は爆発による黒煙や土ぼこりを発し、二つは徐々に近づいていく。
「両津さん!!」
「おうっ!!」
爆発の正体が何かわからなかったが、二人の脳裏には一つの答えがあった。自転車に跨がる両津の後ろに起女が乗ると、両津は一気にペダルをこいだ。
周りの風景を追い抜くほどの速度で駆け抜けたその先にあったのは怪獣が暴れたかのように破壊された道路や建築物。そして
「ウウウゥゥゥッッッ!!!!」
「ウガアァァァッッッ!!!!」
空中で獣のように吠える日暮と、同じように地上で吠える休女の姿があった。
「……最悪だ」
両津は乾いた声でポツリと呟く。
一人でも抑えられなかったのに寝起きの悪い二人が起きている。
「……終わった」
両津の目の前が絶望で暗くなりそうになった、その時だった。
「両津さん、私の後ろにいてください」
隣に立っていた起女が両津を守るように一歩前へ歩く。
「ん? 起女!」
「ウガッ!」
起女の存在に気がついた日暮と休女はエネルギー弾と手刀による斬撃を放つ。
空中と地上。二つの異なる方向から放たれる攻撃を、瞬き一つせず起女は見据えると
「
スーツの内ポケットに入れていた金色で
「これはいったい?」
何が起こったかわからない両津に、起女は二人から視線を外すことなく説明する。
「私は兄の熟睡男のように予知能力や念動力といった超能力はありません。そして休女のような超人的な五感やオリンピック選手をも
起女は懐から黒一色の札を数枚取り出し宙へと投げる。黒い札は刀を
「このように式神を操ることができます。二人を同時に相手をするのは正直に言うと厳しいです。ですがまだ完全に能力が目覚めていない二人ならば、勝機はあります」
その言葉に両津は「おおっ!」と声を漏らし期待の目で起女を見る。
「兄はこれで当分は動きが取れないはず。その間に!」
起女は休女に目を向ける。
「起女、起女、起女……起女ェェェッッッ!!」
休女は殺意をむき出しに起女に向かって突進した。
「あ! あそこでイケメンのヌードダンサーが全裸でリンボーダンスしてる!!」
「え!? どこどこ!?」
あと1,2秒で喉元を切り裂くまで突進していた足を止めて休女は起女が指さす方向を見る。そこには
「ハッ! ハッ! ハッ!」
トレードマークである海パンを脱ぎ捨て、裸で両手に火のついた
「あいつ、何をしているんだ?」
何の前触れもなく現れリンボーダンスをする海パン刑事に、両津は呆れた表情で見る。
「……」
両津同様に休女も固まる。その時だった。
「
起女がギョロリとした目のおかっぱ頭の女性を召喚。静気と呼ばれた真っ黒な袴を来た式神は日本刀のような筆を休女の両手足に向けて振り下ろした。
その直後、休女は「ウゥ!?」と苦しい声を上げてだらんと項垂れた。
「何だ? 休女に何が?」
両津の疑問に起女が答える。
「
「どこかで聞いたことのある説明だな、ん?」
目の前でくらっとよろける起女。だがすぐに体勢を整えて空中で激闘を繰り広げる日暮と粕人達に目を向ける。そこでは日暮が起女が召喚した式神を駆逐した所だった。
起女は日暮に視線を向ける。
「一気に決着をつける!
起女は金色で縁取られた白、青、赤の札を飛ばす。すると白い札は巨大な白い虎、青い札は巨大な青い龍、赤い札は巨大で真っ赤な鳥へと変化していく。
獣特有の咆哮と共に白虎は日暮に向けて口から振動する球を発射する。
「!?」
受け止めて投げ返そうとした日暮だったが、嫌な予感を感じて急遽その球を受け流す。受け流した球はビルに直撃。ビルは球の超振動によって一瞬にビルだった砂状のものへと姿を変えた。
「ハァァァ!!」
恐怖を覚えた日暮は力を溜めた巨大エネルギー弾で再び振動弾を放とうとした白虎を消滅させる。その恐怖心が起女が狙っていたものだった。
「青龍! 朱雀!」
主の呼びかけに式神は動く。青龍は日暮めがけて突進する。
「く、クソが!!」
エネルギー弾で迎え撃つ日暮だったが先ほどの白虎に向けたエネルギー弾で息切れを起こしていた。エネルギー弾は野球ボールほどの大きさしかなく、青龍を削ることは出来ても消滅するまでは至らなかった。
青龍は瞬く間に距離を詰め、日暮に体当たりした。
「ッッッ!?」
青龍の体当たりを受け、氷漬けになった日暮は地面に落下した。
「ッッッ!!」
氷の中でもがく日暮は大きく目を見開く。朱雀が真っ赤な炎をまとわせて自分に向かって来たからだ。
獲物を見つけ急降下する隼のように向かってくる朱雀を、氷漬けになった日暮に回避する手段はなかった。
氷漬けになった日暮と炎をまとった朱雀が激突、轟音と共に周囲が霧に包まれた。
「や、やったのか!?」
「いえ。まだのようです」
霧の中からユラユラと動く。霧が晴れると、そこにはフラフラになりながらも立つ日暮の姿があった。
「ちくしょう、まだ生きていたか。しかし休女は動けず日暮があそこまでダメージを受けていたら……え? おい、どうした!?」
両津は目の前で崩れ落ちようとした起女を支える。
「……も、申し訳ございません。今さっきの戦闘によってただでさえ眠る周期に入りつつあった私の身体が……完全に眠る周期、に……ス~ス~」
ゆっくりと目が閉じて寝息を立てる起女。それに反比例するように
「よし、もう少しだ。もう少しで傷が完全に塞がる!」
「おぉ! 身体が、身体がどんどん軽くなっていく!」
戦闘状態へと近づいていく日暮と休女。
その光景に両津は今まさに寝ようとする起女の身体を揺さぶりながら叫んだ。
「こら、寝るな! 寝るならあの二人を完全に眠らせてから寝ろ!!!!」
2000年。
磯鷲早矢や擬宝珠纏を始めとする女性警官達は剣道場で鍛練をしていた。そこに現れた眠たげな顔の謎の少女。謎の少女は化け物じみた身体能力で次々と婦警を剣道で倒していき、ついには早矢と纏を挑発する。
早矢と纏は謎の少女に勝つことは出来るのか?
次回。早矢&纏対謎の少女(仮)
獄錠呪。
幽遊白書をご覧になった方ならなんとなくピンと来るのではと思います(笑)