ゆずソフトの小説   作:かんぼー

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注:元作品のネタバレ含みます!!

かんぼーです。
ゆずソフトSOURさんのデビュー作品PARQUETと喫茶ステラと死神の蝶のクロスオーバーを作ってみました。時系列的にはPARQUETのエピローグからアフターまでの間です。

初長編にして、ゆずソ2作品のクロスオーバーとなかなか大胆に出てしまったことを後悔しています…思いついたネタがこれだったんです()

※キャラ崩壊や元作品の設定崩壊が起こっていることがあります。この点を理解できる方のみ、お読みになることを推奨します。
※誤字脱字等の指摘も受け付けています。



PARQUET
神様の賭け事(PARQUET 城門ツバサ×喫茶ステラと死神の蝶 明月栞那)


 俺たちが3人で暮らし始めてからしばらくたった。クリスマスの夜に茨木さんと約束した花見もちゃんと行うことができ、それもまた俺たちの心の中に楽しい思い出として刻まれている。

 日常生活はというと、三人で暮らすようになったとはいえ元から意識は三つあったわけで、特に変わったことはなかった。これまで通り、城門さんは昼間にアインザッツでバイト、夕方からは自由時間。一方で茨木さんと俺は昼間は自由に、夜は熊童さんのフラワーショップでバイトをしている。今日もまた俺たちのバイトの時間が近づいてきたのでそろそろ家を出ようかとしていた。

 

「茨木さん、そろそろ行こうか」

「うん、そうだね…ツバサさんはこの後どうするの?」

「ボクはこのあと人と会う用事があるのでね。その人とご飯を食べに行く予定だよ」

 

 城門さんが人と食事…なんだかめずらしいな。そもそも城門さんに知り合いなんているのだr―

 

「む。今、何か失礼なことを考えなかったかい?」

「き、気のせいだよ。さあ茨木さん、行こう」

「あーっ!逃げた!」

「…逃げたね」

 

 城門さんがジーっとにらんでくるのを横目に、俺と茨木さんはバイトに向かった。

 


 

「さて」

 

 二人がバイトに行くのを見送った後、ボクも準備をする。

 

「久しぶりに会うんだ。身だしなみもきちんとしないと…」

 

 数十分の支度ののち、家を出て駅に向かう。

 その人とは駅で待ち合わせをすることになっているのだ。

 

「…この時間帯でも肌寒くはなくなってきたね」

 

 なんせ、もう数週間でゴールデンウィークだ。そりゃ暖かくもなるよね。

 駅についてそんなことを考えていた時。

 

「あの…城門さん、ですよね?」

 

 背後からボクを呼ぶ声が聞こえた。

 ボクは振り返り、答える。

 

「うん、そうだよ。久しぶり、明月さん」

 


 

 移植施術が行われた後、ボクとリノ君は数日間の経過観察の後に施設の外に放り出された。

 そのころから今も住んでいるコンテナを改装した家で生活をしていた。

 明月さんと初めて出会ったのは、たしか昼間しか活動できない生活にも慣れて、またリノ君とも、申し送りという形ではあったがコミュニケーションが取れるようになってきて。そして自分の過去の記憶探しも初めて少しずつ成果も出てきたころだったと思う。

 

「すみません。誰かいますかー?」

 

 ボクが朝起きてリノ君からの申し送りを見終わった直後、来客があった。

 

「こんな朝早くに誰だろう?リノ君に宅配でも来たのだろうか?」

 

 でもリノ君からそんな申し送りはない。本当に誰だろう?

 

「どなたですか?」

 

 玄関扉を開けると、そこには一人の女性が立っていた。髪が長く白金色?をしていて、それが風で大きく揺れているのが特徴だった。

 

「初めまして。突然の訪問申し訳ありません。私は明月栞那と申します」

 

 明月さんはペコリとお辞儀をする。相手方から名乗ってきて礼儀正しい。宅配ではなかったけど、今のところ怪しい人物でもなさそう。

 

「そして、あなたが城門ツバサさんですよね?」

「え…?」

 

 前言撤回。怪しいかも。

 ボクは死んだことになっているはずだ。それなのにボクを訪ねてくる人がいるなんて。ボクの移植を行った研究者なら事実を知ってるはずだが、ぱっと見研究者のような風貌ではない。じゃあ、この人は一体…?

 

「はい…そうですけど…?」

「少しお話ししたいことがあるので、時間をいただいても構わないですか?」

「わかり…ました」

 

 とりあえず家の中に招き入れる。ボクがまだ生きていることを知っている人間だ。玄関先で話して、ボクに関する話を通りがかった他人に聞かれようものなら大変である。

 彼女をソファに座らせてお茶を出す。ボクが彼女の前のソファに座ったと同時に、彼女は話し始めた。

 

「先ほども申しましたが、突然の訪問申し訳ありません」

「いいや、ボクも今日は特に用事はないので大丈夫だよ。それにしてもボクのことを知っているなんて、なにか訳ありの人に決まっている。なら、話を聞いてみる価値はあると考えたんだ」

「確かにそうですよね。怪しく見られても仕方ないですよね」

 

 明月さんは少し考えるようなそぶりを見せる。

 

「…雑談でもして少しずつ親睦を深めるのもありかとは思いましたが、そうですね。今のうちにいろいろとぶっちゃけちゃいましょう」

「まだ明月さんには怪しいところがあるというのかい?」

「ええ、実は私は―」

 

 なんだろう、詐欺師とか泥棒とかだろうか。それだとリノ君にも迷惑かかっちゃうから嫌なんだけど。

 そう考えたら家に入れちゃったのまずかったかな…。子供の頃からずっと病院暮らしだったから「一人でお留守番」なんて経験ほぼなかったし…ごめんリノ君!!

 心の中でリノ君に懺悔している時、ボクの予想をはるかに超える言葉が明月さんから告げられる。

 

「―私は死神です」

「ん?し、しにがみ?」

 

 しにがみ?しにがみって「死神」のこと?そんなもの、実際に存在するの?

 あ、もしかしてこれって…!

 

「…リノ君。ボク、今死神が見えているんだ。どうやらボクは死んじゃうみたいだよ。まあ、もう既に一回死んでるんだけどね!!」

「あー、すみませんすみません!混乱するのはわかります。まずは落ち着いてください!」

 

~~~~~

 

「城門ツバサさんは以前に人格の移植を行ったんですよね?」

「うん。そうだね」

 

 明月さんの努力によってボクは何とか落ち着きを取り戻した。いやまあ、明月さんが死神であることを100%受け入れた訳ではないんだけど。

 

「わかりました。そのことについてお話というか、少し伝えておかないといけないことがあります。そうですね、まずは死神や魂についてお話ししましょう」

 

 そういうと明月さんはお茶を一口飲んだ。

 …お茶よりもコーヒーとか紅茶とかを飲んでる方が似合うなぁ。出す飲み物間違えたかも。

 

「私たち死神は、簡単に言うと人の魂が神様のところに帰るのを手助けするといった仕事をしています。なので、人の魂について詳しいのです」

「は、はぁ…」

「人の魂は死ぬと『体』という器を残して神様のもとに還り、そしてまた別の器に入り、別の命として地上に戻ってきます。いわゆる転生というものでしょうか?その繰り返しです」

 

 へぇ…。

 あたりまえだけど初耳。とてもじゃないけどすぐに理解できる話ではない。明月さんもそれをわかっているようで、ちゃんとボクに話を受け入れさせる時間を与えてくれる。

 

「あなたたちが行ったBMIによる人格の移植。あれは、どうやら『転生』とすこしばかり似ているようなんです。といいますか、まさか人格をデータ化して送るなんて技術が開発されて、それが実行されるなんて思っていませんでしたよ」

 

 明月さんは肩をすくめながらそう言った。

 …死神のような魂を扱う人たちにとっては想定外の事態なのだろう。人格移植の研究は凍結したはずだし今後はこういったことは起こらないはずだが…一応謝ったほうがいいのだろうか。いや、今は話に集中しよう。

 

「どうやら、記憶を移植するときにはこういうことは起こらないようなのですが、人格を移植するときには魂も何らかの要因で一緒に移植されてしまうようなのです。逆に言えば魂の移植が同時に起こるからこそ、城門さんは今も生きているということになります」

「…つまり、明月さんの話を簡単に説明すると、『城門ツバサ』という器から記憶と人格、そして魂を『茨木リノ』の器に移植した。それが今のボク達ってわけだね」

「はい。そうです。ですが、ここで問題が起きました」

 

 明月さんの声色が少し変わった気がした。ボクも息を飲んだ。

 

「通常は一つの器には一つの魂しか入らないんです」

「うん。そうだろうね。…あれ、ということは…」

「ええ。普通ならありえないことが起こっています」

 

 そうだ、『茨城リノ』の器には『城門ツバサ』『茨城リノ』の二つの魂が入っている。

 一つの器に二つの魂が存在している。なるほど、死神さんもボクのところに押しかけてくるわけだ。

 

「このようなありえないことが起こっていると…どうなるのだろう?」

「普通なら神様によってお二方の魂はすでに消し去られているはずです。こんな異常事態、神様が放っておくわけがありません。神様の仕事は世界の秩序を保つことですから。ですがお二方はまだ生きています」

「…それは、どうしてだい?」

「こればかりは神様の考えなので、はっきりとはわかりません。ですが、私の仮説としては城門さんが行っていることに理由があると考えています」

「ボクがしていること?」

「はい。確か、移植前の記憶を探しているんですよね?」

 

 記憶のすべてを移植させることは体に相当な負担を掛けることになる。だからリノ君の体に移植をしたボクの記憶はほんの一部である。

 過去の自分が何を考えていたのかを知る。そのためにボクは記憶探しを行う。ボクのためだけではない。リノ君のためにも。リノ君にできる限り迷惑を掛けないようにする。そのために。

 

「おそらくその記憶探しが、神様がお二方を消さない理由なのだと思います」

「どうしてそう思うんだい?」

「それに関してもはっきりとはわかりませんが…何か昔の記憶に手がかりがあるかもしれません」

「ボクの記憶に手がかりが…」

 

 それから先は正直あまり覚えていない。過去のボクの記憶に、ボク自身が考えている以上に何か重要なことがあるのかもしれないと考えてしまってあまり話が頭に入ってこなかった気がする。とにかく明月さんからは、今はまだ神様から何もされていないがそのうち審判を下される可能性があること。それを避けるために自分の記憶探しを続けて行うのががよいとアドバイスを受けた。あと、自分のような死神の存在は周りには話さないで欲しい、とも。

 そして明月さんの連絡先ももらった。もし何かあったら連絡してほしいとのことだった。まあ、この連絡先も今日久し振りに会うまで使うことがなかったわけだが―

 


 

 時を戻して現在。駅で再開したボクと明月さんは二人でレストランに向かう。この二人で話すとなると他の人に聞かれては困る話になるので、個室で少しお高めのレストランを予約しておいてある。

 

「それにしても急に連絡してくるなんでどうしたんですか?メッセージの文面的に、暗い内容ではなさそうでしたが」

「実はいろいろ解決したことがあったから、直接伝えたいなと思ってさ」

「そうなんですか!それはよかったです!それで、何があったんですか?」

 

 ボクは明月さんに記憶を取り戻したこと、今はもうリノ君の体ではなく新しい体で生活していることを伝えた。

 

「これってつまり、リノ君の体にある魂はもうリノ君のもの一つだけで、ボク自身の魂はこの新しい体に移ったってことなんだよね?」

「そういうことになりますね。一つの器に二つの魂という異常事態は解消されたようですね」

「これで神様に審判を下されることもなくなったって、ボクもリノ君も心配いらないってことだね。よかったよ…」

「おそらく。もう問題ないと思います。それにしても、無事に解決できてよかったです」

「ほんとにね。まあ、もとはと言えば自分がまいた種だったわけだけど」

 

 二人で少し笑う。ちょうど給仕さんが料理とお酒を持ってきてくださったので乾杯をする。

 

「城門さんの問題解決に、乾杯!」

「そうだね、ありがとう、乾杯!」

 

 お高いお店とあって、お酒も料理もものすごくおいしい。やっぱりおいしい料理を食べられるっていうのは最高だ。こんど、機会があったら伊吹君とリノ君と一緒に食べに来たいな。

 …そういえば、前明月さんが話してくれたことに関して気になっていることがあるんだった。聞いてみよう。

 

「それにしても…ボクの記憶に手がかりがある、みたいな話をしたけど、結局どの部分に手がかりがあったのかわかんないんだよね」

「…もう移植前の記憶は全て取り戻したんですよね?」

「100%ってわけじゃないけど、ほとんど全部取り戻したよ」

「じゃあ…話しても構わないでしょう」

「え?何か知ってるんですか?」

「そりゃ、知っています。その人がどのような人生を送っていたかは調べればわかることです。いろいろと手続きは踏まないといけませんが。城門さんに関わる前にちゃんと城門さんの人生やその他もろもろについて,下調べはしましたから」

 

 え、死神さんには人生のすべてが筒抜けなわけ!?

 

「ちょっと、それはプライバシーの侵害じゃないか!?」

「だって、その人の人生を知らないとその人の魂なんて救えないんです。それに、人生を調べるといってもあくまで緊急を要する時だけです。普段からいろんな人の人生を勝手にのぞき見してるわけじゃありませんからね?」

 

 うーん、明月さんに助けられたボクが文句を言える立場ではないか。

 

「でも、ボクの人生を知ってるなら、初めから教えてくれたらいいと思うんだけど」

「それだと意味がないからです。まあ、とにかく初めから話しましょう」

 

 そう前置きしてから明月さんが話し始める。

 

「前に、死ぬと魂は神様のもとに還り、そしてまた別の命としてこの世に戻ってくると言いました。しかし、魂の中には死んでも神様のもとに還ろうとしないものもあります。それはこの世に未練が残っている魂やこの世に絶望している魂です」

「未練…絶望…」

「死神としてはそういった神様のもとに還りたがらない魂を帰らせるのが仕事なのですが、あまりにも還りたがらないとその魂はこちらの手で消滅させるしかありません。この世に留まり続ける魂はろくなことをしませんから…」

 

 ちょっと困った顔をする明月さん。

 死神さんも大変なんだろうなぁ…何があったかは深く追求してはいけないんだろうけど。

 

「記憶を取り戻したのであれば、移植前の城門さんと茨木さんのそれぞれの状況はご存知ですよね?」

「うん、ボクは死ぬとわかっていたけれどそれが怖くて。逆にリノ君はもう自分なんてどうなってもいいやと自暴自棄になってたはずだね」

「そうです。まさに未練と絶望です」

「すなわち、ボク達の魂は両方とも死神さんにとっては面倒な魂だったわけだ」

「その通りです。しかもなかなか強力な魂だったと思います。おそらく死神が手を差し伸べても神様のもとに還ることはなかったでしょう。もちろんのことですが、私たちや神様は魂を消滅させることは不本意なことです。ですから―」

「記憶探しをさせることで、ボク達に生きる希望を見出させようとした、ってところかな?」

「そうです。正確には記憶探しをするとなるとお二方で過ごす時間が長くなるでしょうから。その過程で二人で生きていくのが楽しいと、これからもそうでありたいと願うようになれば良いなと神様は考えて、審判を下さなかったのだと思います」

「でも、それだと『ボクの記憶に手がかりがある』ってのとはちょっと違うんじゃなかな?」

「はい。これは私の、ちょっとした策なのですが、『記憶に手がかりがある』といえばかなり詳細な記憶まで細かく探してくれるのではないかと思いまして。そうすればそれだけ時間がかかるので、お二人で過ごす時間が少しでも長くなるのではないかと…」

 

 明月さんは自分の秘策を聞かれたのが少し恥ずかしかったようで、隠すようにお酒を少し口に含む。

 …確かに探さなくてもいいような記憶も探してたような気がする。いや、橋姫さんがボクにいろんな記憶を与えてきたからそう感じてるのかもしれないけど。

 とにかく。なるほど、記憶を明月さんから直接教えられるのではなく自分で探す。その過程で生きることに執着心を持たせようとしたわけだ。ボクにもリノ君にも。

 明月さんもボクが理解したのを見てうなずき、そして続ける。

 

「茨木さんは城門さんと一緒に過ごしていくにつれ、そこに楽しさを見出してくれました。生きることに執着心を抱いてくれたはずです。それは城門さんも知っていると思います。一方で、城門さんも茨木さんとの生活を楽しんでたはずですが―」

「…そうだね、記憶を取り戻したら消えようと思ってた。リノ君とずっと一緒に過ごしたいけど、これ以上迷惑をかけるわけにはいかないからって考えてた。そこは神様の想定とは違ってたかもね」

「そうです。それに茨木さんと一緒にいたいと思いながらも消えてしまうとなると、それは未練が残った状態で死ぬことになってしまいます。まあ、以前に比べたら未練の強さは強力ではなくなっていると思うので、死神の力で神様のもとに還すことはできたでしょう。ですが、できれば私のような手助けがなくても死んだら神様のもとに還ってもらうのが本望です。そこで()()()()()()()()

「え?」

 

 神様が動いた?あれ、いつの間にか審判が下ったのだろうか?いや、そういうわけではなさそうか。

 

「具体的に、神様は何を?」

「伊吹カナトさん。彼の出自はご存知ですよね?」

「ああ、複数の人間の記憶を持ち合わて作られた、だったかな」

「彼は作られた後、長らく目覚めませんでした。彼だけでなく、同じ方法で造られた他の人も目覚めていません。でもそれは当たり前です。肉体を造ってそこに記憶を植え付けてもそれだけではただの器です。魂を造ることはできませんから」

 

 でも、伊吹君は目覚めた。ということは…

 

「神様が、伊吹君の体に魂を与えた…」

「そうです。普通は魂の無い体に神様が自ら魂を与えるなんてことは絶対にありません。基本的には魂自身が入る器を決めるのですから」

「でも、伊吹君が目覚めたとしてボクに出会って、そして救ってくれる可能性なんて微々たるものでは―」

「確かに出会ったのは奇跡かもしれませんが、出会ったとき彼に何かを感じましたよね?」

 

 そういえば…伊吹君の手に初めて触れたとき私の中に何かが走った。伊吹君も何かを感じ取ったようで驚いたような顔をしてたっけ。

 

「伊吹さんと城門さんが出会えさえすれば確実に何かが起こる。それに賭けたのだと思います」

「神様が賭け事を…そこまでしてボク達の命を救おうとしてくれた理由って…」

「城門さんが望んだこととはいえ、人格の移植は非合法です。ましてや、それを利用して自分の快楽を得ようとした人間もいましたよね?」

 

 あ、橋姫さんのことだ。

 

「茨木さんだって城門さんと出会う前は、一般的な人とは全く違う人生を送ってきました。神様はただ、そんな辛い人生を送ってきた二人に笑ってほしい。それだけの想いだったと思いますよ。神様のことななので、正確にはわかりませんけど」

「こんなボクのために、そんなことを…」

「別にこのような事象は城門さんや茨木さんに限ったことではありません。生きるのがつらい人に死神が手を差し伸べることはよくあります。確かに、今回のように神様直々に手を差し伸べてくださるのは相当稀ではありますが」

「相当稀なんだね…」

「でも、別に気負ったりする必要はありません。不幸な人でもそのうち幸せは訪れます。その手伝いを我々がした、というだけの話です。これまで他の人に比べて相当つらい思いをされてきた二人です。神様が賭けてまで救おうとしたのもちゃんとした理由があると思いますよ」

 

 そうはいっても、神様や明月さんのお話のおかげで今も生きられていることには変わりない。伊吹君と出会えて、彼と楽しい生活を送ることができているのも、神様のおかげである。

 

「いろんな方に助けられて―ボクって幸せ者なんだなぁ…」

「そう思ってもらえてるなら神様も喜んでいると思いますよ。もちろん、私もです。でもそれだけではありません。城門さんの存在が周りを幸せにしていることも忘れないでください」

「…うん、そうだね。もう消えたいなんて絶対に言わないよ。ボクだってリノ君や伊吹君を幸せにしているんだから」

 

 二人に一緒にいてほしいと言われたときのことを思い出す。あれほどうれしいことはなかったし、ボクが二人に必要とされているんだって、ボクの存在が二人を幸せにできてるんだって実感できた。

 それに、これからもっともっと伊吹君のことを幸せにしたい―

 

「まあ、なにはともあれ無事に解決できてよかったです。ちゃんと生きる希望を持ってくれて、そして生きるという道を選んでくれただけではなく、魂と器の問題も解決できて…あれ、城門さん?どうされました?城門さーん?」

「…え!?あ、ごめんごめん。ちょっとぼーっとしちゃってたよ」

「…顔赤くなってますよ?」

「いいや、気にしないで!!」

「…恋ですね」

「えっ」

「恋ですね」

「あ、いや、その」

「伊吹さんですか?」

「まだ何も言ってないです!?」

 

 その後明月さんにいろいろ問い詰められてしまった。まだ付き合ってるわけでもないのに…

 でも、悪い気はしない。むしろ、生きているからこそできるコイバナに胸が躍っていた。

 


 

「ただいまー」

「疲れたー。ツバサさん、帰ったよー」

「あ、おかえりー!伊吹君、リノ君!」

 

 俺たちがバイトから戻ってくると既にツバサさんは人と会う用事を終えたようで、先に家に帰ってきていた。

 

「~♪」

「…茨木さん、なんだか城門さんおかしくない?」

「…うん。おかしい」

「あーっ!今、ボクに失礼なこと言ったね!」

「いやいや。だってなんだかすごく機嫌がよさそうだったからさ」

「そんなに、知り合いの人とお話しするのが楽しかったの?」

「楽しかったよ!それに…ね」

 

 城門さんは一呼吸おいてから、俺たちの方に顔を向けてとびっきりの笑顔でこう言った。

 

「ボク達って幸せ者だね!!」

「…なにそれ、急にどうしたの?」

「なんでもないよ!あ、どうする?リノ君先にお風呂入るかい?」

「あー、うん。そうさせてもらおうかな。今日は疲れちゃったし」

「…俺がミスしてしまったばっかりに、迷惑をかけてしまって申し訳ない」

「だから…それはいいの!誰にもミスはあるんだから…じゃあ先にお風呂入るね」

 

 茨木さんがお風呂に向かっていくが…ところでさっきの城門さんの『幸せ者』ってどういう意味なんだろう?

 それを聞こうとした矢先、茨木さんが二階に行くのを見届けた城門さんから先に声をかけてくる。

 

「ねえ、伊吹君」

「ん?どうした?」

 

 城門さんは俺の方に近づいてきて、そしてちょっと俯きがちに、そっと一言。

 

「ボクと出会ってくれて、ありがとう。そして、これからもずっと、よろしくね」

 

 そういうとすぐに二階の自室へ上がっていってしまった。

 心なしか、その顔はほのかに赤かった気がした。

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