前半:こっそりバレンタイン
今年のバレンタインの時に書いたものです。リノちゃんは誰も見てなかったらこういうことしそうだと思います。
後半:私を迎えに来て
5月の終わりごろに書いたものです。6月にした方が良かったんじゃないかと後悔しております。
※キャラ崩壊や元作品の設定崩壊が起こっている可能性もあります。この点を理解できる方のみ。お読みになることを推奨します。
※誤字脱字等の指摘も受け付けています。
こっそりバレンタイン
ふーっと深呼吸を一つ。だからってドキドキが治まるわけじゃないんだけど。
フラワーショップから帰ってきてお風呂に入った後、私はリビングに戻れずにいた。私の手には、カナトに内緒で作ったチョコクッキー入の包みが握られており、それが小刻みに震えてしまっている。
「ああ、もう!!」
ここでいつまでも立ち止まっていてもしょうがない。ツバサさんは既に寝ているし、渡すには絶好の機会だ。彼に渡して、「おやすみ」言って、部屋に戻って寝る。ただそれだけ、それだけだから。
「……よし」
意を決してリビングへと続くドアを開ける。
「カ、カナト!あのっ、これっ」
「すぅ……すぅ……」
「え、えぇ、そんなことある……?」
普段は私がおやすみと言うまで起きているカナトだが、今日に限っては疲れているのかソファに横たわって寝ていた。少しゆすってみるも、全然起きそうにない。
さっきまでのドキドキはどこへやら、すっかり気が抜けてしまった。まあ、カナトに直接受け取ってもらうことはできないけれどせっかく作ったんだし。彼が目を覚ました時、真っ先に見つけてもらえるようにと、ソファ近くの机の上に包みを置いておく。
そして、気持ちよさそうに眠るカナトの顔を覗く。いつもはあまり感情を表に出さず怖い顔をしているが、寝顔はとてもかわいいと思う。
そんな彼の無防備な姿を見ているとふと魔が差してしまった。私は彼の耳元にそっと口を近づけ―
「カナトのが本命だから……その、好き……だよ」
囁いて、そして我に返る。鏡を見なくても自分の顔が真っ赤になっているのが分かる。
「……おやすみっ!!」
私は今自分がしたことを忘れようと、急いで寝室に向かうのだった。
私を迎えに来て
「綺麗……」
ぼーっとショーウィンドゥの中を眺める。そこには純白のドレスが何種類か並んでいる。
街で買い物をしていたら急な雨に降られてしまった。生憎傘を持っておらず、慌てて近くのお店の屋根の下に駆け込んだのだが、雨はしばらく止みそうにない。そこで、カナトに電話して傘を持ってきてもらうことにした。自分が駆け込んだお店がウェディングドレスを扱っているところだと気付いたのはその後で、せっかくなので少し見ていくことにしたのだ。
前まではこういう物には一切興味がなかったのに、今は少しばかり意識してしまう。やはりそれは意中の人がいるからなのだろうけど。
それにしてもドレスがまぶしい。その白さに思わず吸い込まれてしまいそうになる。私がこれを着て、そして彼はタキシードを……、って何考えてるんだろ。そんな日が来るとは限らないのに。
「おーい、リノ!」
ドレスをじっと見ていると聞き覚えのある声がして、我に返る。後ろを見ると、傘を持ったカナトが。当たり前だが、彼は私服だ。いつかタキシードを着て私の前に現れてくれるかな、なんて望みすぎだろうか。
「わざわざ来てくれてありがと。ホント助かる」
「お礼なんかいい。リノが望むなら俺はいつでも迎えに行くから。頼ってくれていいんだ」
私が望むならいつでも、か。それなら……さっきの妄想も望んでいいのかな。
「ふーん、迎えに来てくれるんだ。じゃあ、私いつまでも待ってるから。あ、でもそんなに待てないかも」
「リノ?どういう意味だ……?」
カナトは不思議そうな顔をしている。私はクスッと笑って、彼から受け取った傘を広げて帰路に就く。いつか彼が私を迎えに来てくれると信じて。