ゆずソフトの小説   作:かんぼー

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注:元作品のネタバレを含んでいる場合があります!!

かんぼーです。こちら、以前にTwitter(@sub__kan__bo__)に投稿したものになります。

前半:涼音さんの注文(汐山涼音)
昂晴のことを大切に思ってる涼音さんのお話だけで締める予定でしたが…うまいオチが見つからずこういう感じになってしまいました。
でも、相手のことを真摯に考えてくれる恋人ってなんだか憧れます。

後半:守るべきもの(墨染希)
前々から子供を題材にしたものを書いてみたいと思っていたので、それを形にしました。
私自身こういう状況に出会ったことがないので、どういった感情になるのか想像で書きましたがいかがでしたでしょうか…?

※キャラ崩壊や元作品の設定崩壊が起こっている可能性もあります。この点を理解できる方のみ。お読みになることを推奨します。
※誤字脱字等の指摘も受け付けています。


涼音さんの注文(汐山涼音)/守るべきもの(墨染希)

涼音さんの注文(汐山涼音)

 

 空には雲一つなく、窓からは小鳥のさえずりが聞こえてくる清々しい朝。

 本当なら俺はのんびりと朝食でも取りたいところなのだが…

「昂晴は今日はステラを休みなさい!!」

「なんでですか涼音さん!!」

 我が家、朝から戦争状態。

「今日は希も火打谷さんも学校があるんですから、俺が休んだらステラは大変なことになりますよ!!」

「いい?昂晴、キミはもっと自分の体を大切にしなさい!!」

「大切にしてますよ!!ちゃんと一日三食たべてるじゃないですか!!」

「そういうことじゃなくて!!キミはここ最近ずっと夜遅くまで経理の勉強してるでしょ?それに、最近キッチンでも結構ミスしてるよね?」

「うぐっ」

 それに関しては言い返せない。実際、昨日も「カルボナーラ」と言われたのにペペロンチーノを作ろうとしたり、「ケーキの在庫がなくなったから冷蔵庫から持ってきて」と四季さんに言われたのにキッチンに戻ったらすっかり忘れてたりした。

「でも…経理の勉強するって言いだしたのは俺の方ですから」

「それは分かってる。私の夢のせいでキミにたくさん苦労を掛けてるのも分かってる」

「別に涼音さんのせいって訳では」

「でもこれだけは言わせて。昂晴が経理の勉強うまくいかなくて私の夢が叶わないより、昂晴が勉強やバイトのし過ぎで体調崩す方が私にとってつらい」

「……涼音さん」

「だから、今日一日は昂晴は休むの!いい?」

「……わかりました。じゃあ今日はそうさせてもらいます」

「私がいない間、経理の勉強もしちゃだめだから。テレビでも見てのんびりしなさい」

「わかってます。今日はゆっくりしますよ」

「あと、最後にもう一つだけ注文」

「なんですか?」

 俺が聞き返すと、涼音さんは少し顔を赤らめてこう答えた。

「昂晴がいないステラは寂しいから、私が家に帰って来たらどうなるか、覚悟しておきなさい」

「……わかりました」

 それだけ言うと涼音さんはステラに向かって家を出ていった。

 

 その夜、家に帰ってきた涼音さんが「ただいま」も言わず俺に抱き着いてきたのは言うまでもない。

 


 

守るべきもの(墨染希)

 

 ここは病室。でも、決してどこか怪我したとかではない。

 わたしの隣には、昨日誕生したばかりの命が眠っている。

「昂晴君にも、早く見せてあげたいな」

 彼は今、諸事情あって遠くへ出張に行っている。もうすぐ産まれそうだ、とわたしの両親が昂晴君に連絡を入れたら「できる限りすぐに帰るようにする」と返事があったらしいが、忙しいのかまだ帰ってきていない。

 隣を見ても、わたしの赤ちゃんは全く起きる様子がない。そっとその小さな手に触れると、ぬくもりが体中に伝わってきて、改めて小さな命がここに誕生したことを教えてくれる。

「…産まれてきてくれて、ありがとう」

 自然とそんな言葉が出てきてしまう。自然と頬を伝うものがある。

 

 ふと、頭をよぎるのはあの人のこと。

「…わたしに、この子を守ることができるのかな?」

 あの人が、わたしたちのことを守ってくれたように。

「わたしの人生の全てを賭けてでも、守れるのかな?」

 あの人が、神様と対峙したように。

「わたしたち、ちゃんと幸せに生きていけるかな?」

 あの人が、最後の最後まで願い続けたように。

「……ううん、違う」

 守れるのかな?幸せになるのかな?じゃない。

「守る。幸せになる。絶対に」

 わたしたち、あの人と約束したんだから。

 

 その時、遠くの方から足音が聞こえてきた。

 それが誰なのか、考えなくてもわたしには分かる。

「希っ!!遅くなってごめん!!もしかして、この子が…」

「もう、()()。そんな大声出したら起きちゃ…あー、泣かせちゃったよー」

「え?あぁ!!泣かないで!!」

「初対面なんだから、もっと落ち着いてよね」

「そんなの無理だろ!!ほーら、パパですよー」

「……なんだか余計に泣かせてない?」

「どうしてぇ!?」

 大きな声で泣く赤ちゃんと、必死にあやす昂晴君、そしてそれを笑顔で見つめるわたし。

 ―うん。大丈夫。ちゃんと幸せになるよ。

 


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