『島』に着いた一行はそれぞれ動き始める……
というか今年の水着スキンの追加が2人だけ(プライドとナナ)って、少な過ぎですよダッチー。しかもプライドに至ってはサイコロステーキ先輩化してますし……
まあまあまあ
それでは、続きをどうぞ……
非公式夏イベント『水平線上のノア』
プロローグ2
指揮官との海水浴を心待ちにして集まった、およそ60名の参加者を連れて指揮官が向かったのは、██洋上に浮かぶ小さな島だった。
鬱蒼と生い茂った森、その周囲に点在する自然の作り出したビーチ、澄み切った青空の下、島の周囲に他の島や陸地は見えず、一面に海が広がっているという……まさに絶海の孤島である。
船を接岸させる波止場を超えると道が二手に分かれており、その内の1つは小高い丘のある島の中央へと続き、木々に囲まれた小道を少し進むと、丘の麓に建てられたレトロな雰囲気の白い洋館に辿り着く。
もう一方の道は島の外周にあるビーチへと続いており、白い砂浜、波打ち際に押し寄せる穏やかな波、海の深い青色、そしてどこまでも広がる水平線を望むことができた。
指揮官達の乗る船が島の手前に着水し、ゆっくりと接岸すると、波止場の入り口にある灯台から2つの人影が姿を現し、桟橋を渡って船に近寄ってきた。
人の形をしたそれは、特にこれといって特徴のない顔立ちをした男女だった。無表情で、両名供に白い軍服の上にマントを羽織った服装をしており、息の合った動きで船の前まで移動した。
一見すると双子かと見間違うほど似通った両名ではあったが、しかし、下半身が車輪のついた移動ユニットになっていることから、彼らがオートマタであることが分かる。
船から降りた一行は、2体のオートマタに連れられるようにして島の中央部にある洋館へと移動した。
洋館に辿り着くと、そこから男女に分かれ、それぞれ別々の部屋へ案内される運びとなった。
その後、夜になるまで各自で自由時間ということになり、参加者達は思い思いの方法で『島』を満喫しようと動き始めた。
「すげぇな……」
部屋に通されたベカスは、落ち着いた内装と至れり尽くせりな設備に感嘆の声を上げつつ、ベランダの扉を開けた。眼下に太陽の光を受けてキラキラと輝く美しい海が広がっており、さらに心地よい潮風が部屋の中へと吹き込み、開けっ放しのドアから通路へと流れていった。
(どう? 気に入った?)
「お、指揮官。いや……気に入ったも何も……オレ今まで、はこんなに居心地のいいホテルに泊まったことなんてねーぜ! ひゃっほう!」
部屋の入口にいた指揮官へと振り返ったベカスは、そう言って勢いよく背後のベッドに寝転がった。
(そう? 確かアフリカで高級ホテルに泊まったことがあったような……)
「いやな……いくら高級だからと言って、それが居心地の良さに直接繋がる訳じゃねぇんだこれが。カルシェンには悪いがオレにはこっちの方が合ってる」
(あー……確かに、周りに高そうな調度品ばかりがあると落ち着かないよね)
「まー、それは人によりけりだとは思うけどな。だが、ホテル側は客のニーズに合わせて変更点を加えるとかしてだな……とにかく、そこんところをしっかりして貰って……」
(あはは……まあここはホテルじゃなくて、どちらかというと別荘みたいなものだけど)
そう言って指揮官は、部屋の中にいたもう1人へと視線を向けた。
「先生見て見て! すっごく綺麗だよ!」
その少年……高橋龍馬はベランダに駆け寄り、軽く手すりに身を乗り出した。そして、海の方を眺めて満面の笑みを浮かべ、指揮官へと振り返った。
(そうだね)
「うん! こんな綺麗な景色……僕、もしかしたら生まれて初めてかも」
(ん……それは褒めすぎじゃない?)
「龍馬、ひとつ聞いてもいいか?」
はしゃぐ龍馬を見て、微笑ましいものを感じた指揮官は小さく笑った。その一方で、ベッドの上で足を組み、両腕を枕にしてリラックスしていたベカスがふと、龍馬へと声をかけた。
「うん、何かな」
「なんでいるんだ?」
「えっ?」
「いやだってお前……今日、A.C.E.学園の生徒は林間学校があるって聞いていたんだが」
「あー……それなんだけど…………実は」
ベカスの問いかけに、龍馬は気まずそうな表情を浮かべつつも、自分がここにいる理由を説明し始めた。
A.C.E.学園に所属する龍馬は、本来であれば姉の高橋夏美や佐伯楓たちと共に林間学校に行かなければならない身ではあった。
しかし、本人が林間学校の日程を勘違いしていたことで、インターンシップで基地に来ていたA.C.E.学園組の中で、1人だけ取り残される形となってしまっていた。
その為、それを不憫に思った指揮官は、急いで姉の夏美やA.C.E.学園の教員(エリカ)に『龍馬のことは、こちらの方で面倒を見る』という旨の連絡を入れ、もののついでという事で急遽『指揮官主催の海水浴』への参加が決まった。
「なんか……ズル休みしているみたいで罪悪感が」
(まあ、これに関してはこちらの連絡ミスという見方も出来なくはないから……龍馬くんはあんまり気にしなくてもいいよ)
「そんな! 先生たちは悪くないんです! 僕がついうっかりしていたからで……」
(まあ、そういう訳だからさ……林間学校に参加できなかった分、こっちの方で楽しんでね)
「はい! そうします!」
いつも通りの調子を取り戻した龍馬は、元気いっぱいそう答えた。しかし、それを見ていたベカスは……
「知ってるか龍馬! 男らしい人ってのは、よく学校をサボるものなんだぜ」
「えっ……そうなの!?」
「そうなんだよな〜。ほら、よくドラマやアニメなんかの男らしくてカッコいい主人公も、何かにつけて学校から抜け出してるしよ。だからこの調子で龍馬もどんどん学校をサボって……」
(はいそこ、息を吐くように嘘つかない)
龍馬がベカスの言葉に真剣に耳を傾けようとしていたので、指揮官はベカスの言葉を止めることにした。
(仮にも教員だったこともある人が何を……)
「残念、オレにはその記憶がねーんだわ」
(まったく……)
そう言ってニヤリと笑ってみせるベカスに、ため息を吐きながら、指揮官は2人に背を向けた。
「あれ、先生どこ行くの?」
(ちょっと『島』の管理人と会ってくる。長くなると思うから、ベカス達は先にビーチで遊んでてね)
「うん、分かったー!」
「…………」
龍馬は指揮官を手を振って見送った。
しかし、その一方でベッドの上に寝転がっていたベカスの目に、何やら怪しげな色が浮かび上がっていたことに気づく者はいなかった……
「よし、龍馬……そろそろ水着に着替えようぜ!」
「そうだね! えっと……水着は確か鞄の中に……」
何気ない会話から、水着が鞄の中にある事を確認したベカスは……そして、ついにそれを実行に移すことにした!
「龍馬! 見ろ!」
「えっ!?」
「外に恵方巻きが浮いているぞ!」
「恵方巻き大好き! どこどこ!?」
そう言って龍馬の視線をベランダの外へと誘導したベカスは、素早くベッドから起き上がって龍馬の鞄へと駆け寄り……そこから音もなく水着(男子用)を抜き取って、自身の懐に忍ばせた。
「あれ〜、恵方巻きなんていないけど?」
ひとしきりベランダの外を見て、恵方巻きの存在を確認出来なかった龍馬が振り返ると、そこには何食わぬ顔をしてベッドの上に寝転がっているベカスの姿があった。
「いや、スマン。どうやら見間違いだったみたいだ」
「もー、ベカスったらおっちょこちょいなんだからー」
「わりぃ、それよりも早く水着に着替えようぜ」
「そうだね。えっと水着は確かここに…………あれ?」
自分の水着を探して鞄を探っていた龍馬だったが、いくら探しても入れておいたはずの水着が忽然と消えてしまっていることに気づき、徐々に慌て始めた。
「どうした?」
「その……どうやら水着を忘れてしまったみたいなんだ。うぅ……林間学校の時といい、僕って何ておっちょこちょいなんだ……」
「気にするなよ。水着がないって言うんだったら他の誰かから借りればいいじゃねーか! そうだ、こんな事もあろうかとオレはもう1つ水着を持ってきてるんだった!」
「本当に!? じゃあ、貸してくれるの?」
「ああ、困った時はお互い様って言うしな……ほら」
「わぁ、ありがとう!!」
そう言ってベカスは懐から水着を取り出した。
何故、そんな所に水着を忍ばせていたのだろうか……そんな事も気にせずに、龍馬はベカスから2つの布を受け取った。
「え? 水着が2つ…………って、ベカス!」
「なんだ、どうしたんだ?」
「これって、女の子用じゃないか!」
それは上下に分かれた女子用の水着だった。
しかも、龍馬にぴったりのサイズだったりする。
「あー……わりぃ、うっかりしてたわ。まあしょうがないから今回ばかりはそれ付けてくれよな!」
「着ないよ! 僕は男の子なんだから!」
「オイオイ、そんなこと言っていいのか? 普段は忙しくしている指揮官がせっかく海に誘ってくれたんだぜ? それなのにお前さんは海に入らねぇって言うんだったら……指揮官に悪いと思わないかぁ?」
「そ……そんな……」
女子用の水着を持ったままどうしていいか分からずオロオロとしている龍馬に、ベカスは真剣な眼差しを浮かべて続けた。
「龍馬、ほかに選択肢はねぇんだ」
「うぅ…………うん、分かった」
龍馬は静かに頷くと、顔を真っ赤にしながらも水着に着替えるべく、バスルームの中へと入った。
「計画通り!!!」
ベカスは悪い笑みを浮かべた。
「へっへっへっ……最近は指揮官やグルミとかいうガキどもに規制されて中々拝むことが出来なかったが、久しぶりの龍馬ちゃんだぜグヘヘへへへへへへwwwww」
気持ちの悪い笑みを浮かべ、ベカスは龍馬のいるバスルームへ忍び寄ると、その扉へと張り付いた。そして中から聞こえてくる衣擦れ音に耳を澄まし、その興奮度合いはさらに高まっていくのだった。
「龍馬たん龍馬たん……はぁはぁはぁ……」
息を荒くして扉を舌舐めずりしていたベカスは、そこでふと、龍馬がバスルームの扉に鍵かけていない事に気付いた。
「……そうか、フッ…………なるほどな」
それはただ単に、恥ずかしさのあまり龍馬が鍵をかけ忘れていただけなのだが、そんな事を知らないベカスはそれを自分にとって都合が良いように解釈し始める。
「つまり誘ってるんだろう? 龍馬ちゃーん!」
両手をワキワキとさせ、ベカスはバスルームのドアノブに手をかけた。「今イクよ! 龍馬ちゃん!」心の中でそう叫びながら、ドアノブを回し……そして、ドアが勢いよく開かれた。
「……なっ!?」
いや、違う。
開かれたのはバスルームの扉ではなかった。
「……お前は!?」
素早くバスルーム前から飛び退き、ベカスは部屋の玄関へと視線を向けた。大きく開かれた扉、その先に立っていたのは1人の男だった。
「なんだ……お前かよ、ウッド」
「…………」
扉の向こうにいた男の姿を見て、ベカスは安堵のため息を吐いた。
それはUSF所属の軍人・ウッドだった。
黒のラッシュガードにスパッツ姿の彼は、何も言葉を発する事なく、代わりに意味ありげな視線をベカスに向けている。
「全く……指揮官じゃねーかってヒヤヒヤしたぜ」
「…………」
「ウッド?」
「…………」
ベカスの声に応えることなく、ウッドは無言で部屋の中へと足を踏み入れた。その只ならぬ雰囲気に、ベカスは思わず一歩退いた。
ウッドは両手に何かを持っていた。
しかし、ウッドの手元がちょうど暗がりになっていた為、ベカスの位置からではそれが何なのかを視認することが出来ない。
「オイ、何か言えよ……というか何持って……」
ウッドがゆっくりと近づいてきた事で、ベカスはウッドが持つそれが何なのかを、ようやく理解することが出来た。
「お、女物の水着……?」
「…………」
ウッドが左手に持っていたのは、女性用の白い水着だった。トップは眼帯と呼ばれるもので、胸の中心が開いたセクシーな作りのもの。アンダーは三角ビキニに純白のパレオが組み合わさったものとなっている。(諸説あり)
「な、なんだよその瓶は……」
「…………」
続いて、ベカスはウッドの右手にある瓶を注視した。
「ま、まさかそれ…………TGMか!?」
「…………」
ウッドが右手に持っていたのは、TGMと呼ばれる薬品の入った瓶だった。TGMはオスカー製薬(仮)の開発したトランスジェンダーメディスンで……
つまり服用者の体に『性転換』を促すのである。
「オ、オイ……ウッド! そんなもんどこで……」
その薬の効果を知るベカスはひどく狼狽した。
その間も、ウッドは徐々にベカスへ距離を詰める。
「まさか、お前……」
ベカスの脳裏にバレンタインデーの記憶が蘇る。以前、ベカスはTGMを服用して女体化した際に、こうしてウッドに迫られた事があったのだ。
[詳しくは『焦燥バレンタイン』を参照下さい]
そして、ウッドはこう一言……
「ヤ・ラ・ナ・イ・カ・!?」
「やらねーーーーよおおおおおおおお!!!!」
「着替えたよー、って……あれ? ベカス?」
水着に着替えた龍馬がバスルームから出ると、つい先ほどまで部屋の中にいたはずのベカスが忽然と消えてしまっていた。
「えぇっ……!? なんでこんな、酷い有様……」
代わりに、部屋の中はまるでここだけ台風が駆け抜けていったかのように酷く荒れていた。物は倒れ、ベッドは大きく乱れ、窓ガラスは全損、照明の灯りはスパークを引き起こし、何もかもがぐっちゃぐちゃになっている。
「もー……ベカスったら、遊んだ後はちゃんとお片付けしなさいって子どもの時に教わらなかったのかな……」
「おーい、龍馬くんいる?」
「入ってもいいか?」
龍馬が部屋の惨状に小さく腹を立てていると、玄関の扉がノックされると共に、扉の向こう側から2人組の声が聞こえてきた。
「あ、入ってもいいよー」
「失礼するよ……って、り……龍馬くん!?」
「お、お前……ッ、なんて格好してるんだ!?」
部屋に入ってきたのはアルトとグルミだった。
両名とも水着姿で、上にパーカーを羽織っている。
2人は女物の水着を着た龍馬の姿を目にするなり、酷く驚いた表情を浮かべた。
「あ、これ…………その、似合ってるかな?」
龍馬は恥ずかしそうにしながらも、自分の着ている水着を示した。ヒラヒラと揺れるフリルが特徴的な、子供用の黄色いビキニである。(諸説あり)
「いやいやいや!!! 似合ってるかどうかそういう問題じゃなくて……いや、似合ってると言えば確かに似合ってるけど……た、多分!」
「あ、ああ……それよりも何で男のお前が女物の水着なんか着てるんだ? というか、なんだこの部屋の荒れ具合は…………まさか、あの男になにかされたのか……!?」
最悪の事態を想定し、アルトとグルミは青ざめた。
「ち、違うよ! ベカスは何もしてないよ! むしろその逆で……水着を忘れてしまった僕の為に、水着を貸してくれたんだ。女の子用だったんだけど……」
「そ、そっか……」
「ならよかった……」
「う、うん……?」
龍馬の言葉から大体の事情を察したアルトとグルミは、そこでほっと胸を撫で下ろした。純粋な龍馬は彼らの抱いた懸念の事を知らないこともあって、疑問符を浮かべるばかりだった。
「でも……部屋が酷いことになってるけど?」
入口から部屋の中をチラリと見て、アルトが告げる。
「うん。着替え終わってから見るとこうなってたんだ」
「何があったにせよ、お前は部屋を変えるべきだろう。そもそも最初から、あんなオッサンとお前を2人きりにさせる訳にはいかなかったんだ……」
グルミはため息と共にそう呟いた。
「まあいい、それよりも早く下に行こう。確かシャロと曦夜が待っているんだろう?」
「そうだった! でも、龍馬くんが……」
「僕は大丈夫だよ!」
「そう? ならいいんだけど……じゃあ行こうか」
龍馬の言葉に頷きを返したアルトは、そう言ってグルミと共に下のロビーに向かって移動を始めた。龍馬は水着の上に薄手のカーディガンを羽織ると、2人の後に続いた。
荒れた部屋の中、その片隅に落ちていた龍馬の水着(男の子用)が発見されるのは、それからしばらく後のことだった……
ーーーーー
「あれ? 指揮官……なにしてんの?」
(ん……ああ、シェロン)
『島』の管理人と会う為に部屋を出た指揮官は、偶然にも通路でシェロンと遭遇した。
(シェロンこそ、ここで何を?)
「あたし? あたしは……暇だからちょっとウロついてただけ。まあ適当に見て回ったら部屋の中でのんびりゲームでもするつもりー。あ、指揮官も部屋に来る? 一緒にダラけようよ」
(残念だけど、基地から持ってきた仕事をやらなくちゃだから……)
「えぇ、こんな時にまでお仕事? せっかくのバカンスなんだから仕事のことは忘れて沢山遊びなよ」
シェロンは呆れたような表情を浮かべた。
本来であれば指揮官不在の基地を運営する為に、留守番をしていた筈のシェロンだったが、泊りがけになる事を知るや否や、基地の運営を待機していた機動部隊の隊長に任せ、こうして指揮官と共に『島』にやって来ていた。
(勿論、仕事が終わってからそうさせて貰うよ。というかシェロンだって、せっかく海に来たんだから泳ぎにでも行ったらいいのに……)
「泳ぐと疲れるからヤダ。っていうか、そんなにあたしの水着姿が見たいわけ?」
(まあ、それもあるかな)
「え? それマジで言ってる?」
(そりゃあね。だってシェロン、基地の中でデスクワークばかりで全然運動してないでしょ? だから水着を着けてくれてるってことは、少しでも運動しようとする気になってくれたって事で……)
「ああ、そういう事ね」
指揮官の言葉に、シェロンはつまらなさそうに肩をすくめてみせた。
(どうしたの?)
「はぁ……何でもない。っていうか運動しろって言われてもさぁ、あたし別に太ってないけど?」
(太ってるとかそういう問題じゃなくて……シェロンはまだ若いからいいけど、でも今の生活習慣が年を取ってから影響してくることもあるって聞くし……今の内に改善していった方が)
「うっさい! オカンか!」
(そこはお父さんじゃないんだ……)
アニキの次はお母さんか……
自分に対するシェロンの呼び方に、指揮官は苦笑した。
「まあでも……前の時みたく、ここにはウザ絡みしてくるような連中もいなさそうだから、気が変わったら行ってみるよ」
(本当に?)
「気が向いたらねー」
(それ、絶対やらないパターンだよね……)
シェロンの言葉にため息を吐いた指揮官だったが、まあ『島』でどう過ごすかは彼女の自由だ……と、それ以上は何も言わないことにした。
「で、指揮官はどこに?」
(いや、ちょっと管理人に会いに行こうかと)
「管理人って、あれのこと?」
そう言ってシェロンは通路の先を指差した。
指揮官が振り返ると、ちょうど男性型のオートマタがエレベーターに乗り込もうとしているところが見えた。
(いや、管理人と言っても、あのオートマタたちはこの洋館を管理しているだけで……『島』の管理人は別にいるんだ)
そう言いながらシェロンへと振り返った指揮官は、次の瞬間『それ』の存在に気づいた。いつからそこにいたのだろうか、シェロンの背後に小柄な少女が佇んでいる。
「…………」
ショートにまとめられた青い髪、深い海のような色をした瞳、幼さを感じさせる顔立ちと、起伏の少ない体つき、その表情に一切の感情はない。
オートマタたちがつけているものと同じマントを羽織り、その隙間からチラチラと見える服装は黒のスポーツブラにショートパンツのみと、肩とヘソが丸出しの状態で、肌色面積が多かった。
(ああ、噂をすれば……)
「え?」
指揮官の視線に気づいたシェロンがキョロキョロと後ろを振り返るも、少女はシェロンの動きに合わせて音もなく移動し、常にシェロンの死角に位置取った。
(ノア、久しぶり)
「はい、主様。お久しぶりです」
ちょうど隣に来たところを見計らって指揮官が少女に声をかけると、その少女……『ノア』は無表情のまま碧色の瞳で指揮官のことを見つめ、そう言って小さく頭を下げた。
「え……うわっ!? びっくりした!」
背後から聞こえてきた声に、シェロンはびくりと震えた。飛び退くようにして振り返り、そして指揮官の隣に佇む少女を不思議そうに見つめた。
「1年と2日、8時間31分5秒ぶりですね」
(こうして面と向かって話すのはね。元気してた?)
「はい。主様もお変わりなく……」
(それは良かった)
そう言って指揮官は微笑みを浮かべるも、しかし『ノア』と呼ばれた少女は氷のような無表情を崩すことなく頷くのみだった。
「えっと、だ……誰……?」
まるで幽霊のようにいつのまにか姿を現した『ノア』を見て、シェロンは戸惑いを抱きつつもそう聞いてみた。
「……お初にお目にかかります。私は『ノア』と申します。僭越ながら、この『島』の管理をさせてもらっている者です」
『ノア』はそう言って、無表情のまま小さく頭を下げた。
第1話へ続く……
ベカスがすごい変態っぽいことしてますが、キャラ崩壊ではありません。元からこういう奴ですので……また、ウッドがなんかアレな感じになってますが、ムジナが別に書いてる『焦燥バレンタイン』を参照頂けると、ウッドが何故こうなってしまったのかを理解することが出来ます。
次回から遊びます。
第1話は明日投稿します。
それでは、また……