水平線上のノア   作:野生のムジナは語彙力がない

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お帰りなさい! 指揮官様!

指揮官とキラスターはタコを追って、スロカイたち機械教廷組のいる場所へと移動します。そこで、タコに関する衝撃的な事実が発覚し……?


それでは、続きをどうぞ……


第6話:岩場でスロぴょい

非公式夏イベント『水平線上のノア』

第6話:岩場でスロぴょい

 

 

 

タコの襲撃から、指揮官が身を呈してアイリを守り抜き、それから数分後……

 

機械教廷組によって占拠された海岸の一角

そこではスロカイを始めとする9名の機械教廷出身者たちが、羽を伸ばして自由気ままにくつろいでいた。

 

 

 

「海水浴と聞いて、どのような下らないところへ連れて行かれるかと思いきや、まさかこの地球上にまだこれ程の場所が残っていたとはな。この静謐さ、まさに外部から隔絶されたかのよう……フッ、たまには凡人も良いことをする」

 

砂浜に立てかけられたパラソルの下で、水着姿のスロカイは美しい海を前に微笑を浮かべた。その隣には、当然のようにマティルダの姿もある。

 

「そうですね。ところで陛下、ここは日差しが強いみたいなので、この日焼け止めクリームをお使い下さい。それで……も、もし宜しければ、私が陛下の体にお塗りして差し上げ……」

 

「いや、日焼け止めはしてある」

 

「そ、そうですか……」

マティルダは静かに落胆した。

 

「フッ……だが、そうだな」

 

突然、スロカイはマティルダの手から日焼け止めのチューブを奪い取ると、蓋を開け、クリームを自分の掌に落とした。

 

「へ、陛下……?」

 

「余が直々にお前の体に塗ってやろう」

 

「え……そ、そんな! 私なんかのことで、陛下の手を煩わせるなど勿体無ないです! それくらい自分で……」

 

「マティ、いちいちそんなことを気にする必要はないぞ? それに、お前の体にこの白濁を塗りこむのは……余がしたいからそうするのだ」

 

「へ……陛下…………あんっ!」

 

「ほう? 少し触れられただけでいい反応ではないか」

 

「こ、これはただ……日焼け止めが思いのほか冷たくて」

 

「そうか。なら続けるぞ?」

 

「お……お待ち下さい陛下! ひゃ!? あ……そ、そこはダメです! そこだけは…………あああああああああッッッ!!!!」

 

砂浜にマティルダの嬌声が響き渡った。

 

 

 

「…………」

 

2人から少し離れた場所では、いつものチェーンソー……ではなく、木の棒を持ったウェスパが1人で黙々とスイカ割りをしていた。

スイカはどうやら七瀬汐月が作ったものらしく、剛腕を持つウェスパですら一撃では叩き割れないほどの強度を誇っていた。

 

「…………♪」

 

それでも、砂浜にはすでに無数のスイカの残骸が転がっており、数回の殴打でまたしてもスイカを粉砕したウェスパは、無表情ながらもどこかスッキリとした顔つきとなっていた。

[粉砕されたスイカは後ほど、スタッフたちで美味しくいただきました]

 

 

 

「あー……陽の光は嫌いだけど、たまにはこういうのもいいよね〜」

 

「そうですわね。こうして普段は聞くことのない自然の音色に耳を澄ませながら読書を楽しむというのも、また一興というものです」

 

骸の人格が表面化し、大人っぽい姿となったヴィノーラは木陰に座ってほんわかとした表情を浮かべ、その隣ではジュディスが涼しげに読書をしていた。

 

「青い海、白い砂浜、そして……かき氷〜♪」

 

「はあ……全く、貴方はいつもそれですか」

 

また、ヴィノーラたちのすぐ近くでは、リルルとシンシアが同じパラソルの下で夏の海の風物詩を堪能していた。

 

 

 

 

「アイリス、あれは何だろうか?」

 

「え……どこ?」

 

ウィオラとアイリスは波打ち際で海水に浸かり、水の冷たさを満喫していると、何やら赤いボールのようなものが海面に浮かんでいるのを見つけた。

 

「ボールか何かに見えるが……」

 

「そういえばさっき、基地の子供たちがビーチバレーをしようって言ってたけど、もしかしたらそのボールかもしれないわね」

 

「だが、なぜこんなところに?」

 

「きっと海の方にボールを飛ばしちゃって、ここまで流されてしまったのよ。このまま沖の方に流されちゃったらお魚さんたちが餌と間違えて食べちゃうかもだから、私たちで確保しておかなくちゃね」

 

海に流されたビニール袋を、ウミガメがクラゲと勘違いして食し、それが元で死んでしまった……という事例があるのを知っていたアイリスは、そうならないようボールを回収することを決めた。

 

アイリスは海中を歩いて進んだ。

幸いにも、ボールが漂っているのは浅瀬でもあった為、アイリスは特に何事もなく海を進むことができた。

 

「アイリス、気をつけるのだぞ」

 

「分かってる。もう少しで……」

 

アイリスの指先がボールに触れた時だった。

 

「え?」

 

その瞬間、ボールが振り返った。

いや、それはボールではない……タコだった。

 

『……うじゅり♪』

 

そんな鳴き声と共に、タコはアイリスが反応するよりも早く彼女に向かって触手を伸ばし、着ていた黒色の水着へと絡みついた。

 

「え……え……?」

突然のことにアイリスは戸惑いを隠せなかった。

 

「どうした、アイリス?」

 

「えっと……これ、ボールじゃなかった」

 

タコは吸盤を使ってアイリスのお腹に張り付き、水着の隙間に触手を入れようとしている。アイリスは何が何だか訳も分からず、ウィオラへと振り返った。

 

「それは……タコか? 動物界、軟体動物門、頭足網、鞘形亜網、八腕形上目、タコ目の……」

 

「そうみたい、だけど……」

 

アイリスは冷静にタコを見下ろした。

タコは触手を器用に動かして水着の結び目を解き、それと同時に水着の内側に滑り込ませた触手を引っ張り始めた。

 

「えっと……どうすればいいの? これ」

 

「いや、私に聞かれても……」

 

そんな言葉を交わし、ウィオラは少しだけアイリスの水着に絡みついたタコを見ていると……

 

「もしや、そのタコはアイリスの水着を欲っしているのではないか?」

 

「え? そうなの?」

 

『…………(こくこく)』

 

やがてタコの意図に気づいたウィオラがそう聞いてみると、タコはまるで人の言葉が分かっているかのように頷いてみせた。

 

「えっと……あの、タコさん。これは食べ物じゃないのよ? 食べたらお腹痛くしちゃって、下手したら死んじゃうし……だから離してくれると嬉しいんだけど……」

 

『……うじゅる!』

 

アイリスは水着を離すよう説得してみるも、しかしタコはどうしても水着が欲しいのか、引っ張るのをやめようとはしなかった。

 

「そう……そんなに私の水着が欲しいのね。でも……ごめん、これはあげられないの……」

 

アイリスはそう告げ、目を閉じた。

すると、彼女の体から水着が消失した。

 

『……うじゅ!?』

 

そのため、水着を引っ張っていたタコは勢い余って海面に落下してしまった。目の前から急に水着が消えてしまったことに、驚きを隠せないようだった。

 

「私は少し念じるだけで、一瞬で着替えることができるの。凄いでしょ?」

 

『……!』

 

「ごめんね。これは私の体の一部みたいなものだから……でも、そんなに水着が欲しいんだったら指揮官に相談してみて! あの人ならきっとタコさんにも似合う水着を用意してくれると思うよ?」

 

『うじゅ!』

 

タコはアイリスに興味を失ったようで、海中に身を引っ込めると、そのままどこかへと泳いで行ってしまった。

 

「何だったの……?」

 

「さあ?」

 

タコを見送り、波打ち際に戻った時だった。

 

(おーい、2人ともー!)

そこへ指揮官とキラスターが駆けつけてきた。

 

「うん? ああ、指揮官ね」

 

(って、アイリス……! なんて格好して……)

 

「え?」

 

アイリスの姿を見て、指揮官は慌てて目を逸らした。

タコの触手から逃れるために体から水着を消したアイリスは何も身につけておらず、そのため大切なところが丸見えな状態になっていた。

 

長い金髪、じっとりと湿った白い肌、精巧な作りの義体を使用していることもあって、一糸纏わぬ姿で波打ち際に佇むアイリスの姿は、まるで神話に登場する女神のように美しかった。

 

「あ、これね? 実は……」

 

(あのさ、アイリス……いくら近くに女の子しかいないって言っても、島には男性もいるんだし、大胆過ぎだから……)

 

「ち、違う! 違うの! 説明させて……!」

 

 

 

アイリスは水着を出現させ

そして指揮官に一連の出来事を説明した。

 

 

 

(そっか、タコがここに……)

 

「うん。ついさっきまでここにいたんだけどね」

 

指揮官はアイリスの視線を辿って海側に目を向けるも、そこには既に何の気配もなかった。

 

「ねえ、さっきのタコは一体なんなの?」

 

(その話はまた後で……それよりも、2人はタコがどこに向かったか覚えてる?)

 

「んーと、確かあっちの方に行ったような」

 

「待て、この先には陛下たちがいるぞ」

 

アイリスの言葉に、ウィオラがそう付け足した。

その時だった……

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

『うじゅ……』

 

ややあって海面に浮かび上がったタコは、次の獲物を探すべく、その場所からビーチを眺めていると……

 

『うじゅり……♪』

やがて砂浜に立てられたパラソルの下にピンク髪の少女の姿を見つけると、素早く潜行し目標への接近を開始した……

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

「ふぅ……相変わらず、マティは感じやすいな」

 

ひとしきり恋人を愛でた後、スロカイはパラソルの下で満足げな吐息を漏らした。

 

その傍らには、幸せそうな表情で眠るマティルダの姿があった。だが、今の彼女はだらしなく水着を大きく着崩したあられもない姿になっており……指揮官が見たら絶対に慌てる光景だった。

 

「ふぇへへへへへ…………へいかぁ……♡」

 

「寝言まで漏らすとは……フッ、愛い奴め」

 

そんなマティルダの体に毛布をかけ、スロカイは足を組んで背伸びをしてみせた。

 

「だが、物足りんな。1人だけ気持ちよくなりおって……教廷の外という普段とは違う環境でしたからか、いつも以上に敏感になっていたのかもしれないな」

 

マティルダへ恨めしそうな目を向けるも、彼女が起きる様子はない。仕方なく、スロカイはマティルダが起きるまで自分も眠っていようと目を閉じた。

 

『うじゅり……』

そこへ、海中から砂浜へと上陸したタコがゆっくりと忍び寄ってきた。

 

タコはパラソルの下で眠る2人の周りに誰もいないことを確認すると、静かにパラソルへと近寄った。

ちなみに、ウェスパは気持ち良さそうにしている2人に気を利かせて、いつのまにか大量のスイカと共に姿を消していた。

 

スロカイに対する脅威がすぐ間近にまで迫っているにもかかわらず、彼女の守り刀であるマティルダは未だに目を覚まそうとしない。

 

『うじゅるじゅる〜♪』

 

やがてタコはスロカイの足元にまで来ると、そのベタベタとした粘膜で覆われた触手をスロカイの足に伸ばし……

 

『……うじゅ?』

 

しかし、タコの触手がスロカイに触れることはなかった。それもそのはず、スロカイの水着を盗ろうとするタコの皮膚を、後ろから何者かが引っ張ったからだ……

 

『うじゅ!?』

 

思わず視線を背後に向けたタコは、そこでスロカイの護身用ペットであるダークラビットと目を見合わせて、酷く驚いたように飛び上がった。

 

『…………』

 

ヌルヌルしたタコの皮膚をがっしりと掴んだダークラビットは、口を大きく開けて鋭い歯を見せびらかし「何しとんじゃワレ!?」と目を怪しく光らせ威嚇していた。

 

「ほう、そのような汚らわしいモノで余を好き勝手出来ると思ったか? 本気で?」

 

いつのまにか身を起こしていたスロカイが、恐怖で震えるタコに向かって恐ろしい形相でそう告げた。

 

『う、うじゅ……』

 

「失せろ」

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

『うじゅーーーーーーーーーーー!!!!??』

 

 

 

(え? 何!?)

 

「指揮官、見て! タコが!」

 

指揮官がキラスターに示された方向に目を向けると、そこには吹き飛ばされ、空中を華麗に舞うタコの姿があった。

謎の力により空中に舞い上がったタコはそのまま上昇を続け……そして、ついに見えなくなってしまった。

 

「あれって……さっきのタコさん?」

 

「そのようだが……一体何が……」

 

アイリスとウィオラは思わず顔を見合わせた。

 

とりあえず4人は当初の予定通りスロカイの無事を確認するべくその場所へ向かうと……そこには、パラソルの下で何やら青筋を浮かべているスロカイと、ボキボキと指を鳴らす仕草をしているダークラビットの姿があった。

 

(スロカイ様!)

 

「ん……ああ、誰かと思えば凡人ではないか」

 

(はい……それで、タコは)

 

「来るのが遅いぞ。全く、何なのだあのタコは! 余に不貞を働こうとするものだから、ダークラビットの力で空の彼方まで吹き飛ばしてやったぞ」

 

(そ、そうですか……ご無事でなによりです)

 

とりあえずスロカイの無事を確認したところで、指揮官はホッと胸を撫で下ろした。すぐ近くで眠っているマティルダの蕩けた表情が気になりはしたものの……

 

「凡人、何か知っているようだな?」

 

(はい。実は……)

 

 

 

指揮官はスロカイ、アイリス、ウィオラに事情を説明した。するとタコが吹き飛ばされた際に生じた爆発音が気になったのか、アルトやグルミ、トリスタに黛と……今まで会ってきた仲間たちが続々とその場に集まってきた。

 

因みに水着をタコに盗られてしまった高橋龍馬は、その後、部屋で無事に自分の水着を見つけられたようで、海水パンツを着用し、しっかりと大切な部分をガードしていた。

 

指揮官はそこで、スロカイの活躍によってタコは空高く吹き飛ばされ、脅威は排除されたことを全員に伝えた。

 

「そうなの! あー、よかった」

 

「水着は取られちゃったけど、まあいっか」

 

それにより、シャロや龍馬など直接的な被害を受けた者たちは歓喜し、子どもたちの安全を確保できたことでグニエーヴルは安堵するのだが……

 

 

(そういえば……)

その一方で、指揮官は気になっていることがあった。

 

 

(アイリスって、タコに襲われたんだよね?)

 

「ええ。そうだけど……」

 

「え? でもそれっておかしくない? 指揮官はさっき言ったよね……タコは子どもの水着を狙うって」

 

指揮官が感じた疑問をキラスターが代弁した。

 

(うん。そう思ったんだけどね……)

 

「うーん、私という存在は数世紀前から存在してはいたけど、この時代では義体を持ってまだ間もないから……そういう意味でタコさんは勘違いをしたんじゃないの?」

 

(いや、流石にそれは……)

 

そこで指揮官はアイリスを見つめた。

上品で才色兼備、高身長で肉づきの良い(ただし胸は除く)体つきの義体は、誰がどう見ても大人の女性であるといえた。さらに言えば数世紀も幽霊だったという彼女の背景を鑑みると、精神年齢的にも幼い筈がなかった。

 

普通、そんな彼女を子どもと見なすだろうか?

そんなことを考えながら、指揮官はアイリスを見つめた。

 

「あの……指揮官、そんなに見つめられると恥ずかしいんだけど……」

 

(ああ、ごめんね)

 

アイリスが襲われた理由を考えていた指揮官だったが、つい彼女のことを見つめ過ぎていたのだろう……うっすらと頬を赤く染めるから彼女から視線を逸らすと、そこでスロカイと目が合った。

 

「おい、凡人」

 

(スロカイ様、どうなされましたか?)

 

「タコは子どもだけを襲うのか?」

 

(ええ。その筈だったのですが……)

 

「つまり、タコに襲われかけた余は子どもだと……お前はそう言いたいのだな?」

 

(いえ、そんなつもりは……それにまだ仮定の話ですので……)

 

スロカイは青筋を浮かべていた。

彼女は子ども扱いされることが嫌いだったことを思い出し、指揮官は慌てて首を横に振った。

 

そこで指揮官は、改めてタコが襲う人物の傾向について考えてみることにした。最初に襲われたのは高橋龍馬、続いてシャロ、アルト、アイリ、アイリス、最後にスロカイ

タコに襲われた人たちの共通点は……

 

「…………」

 

(……ん?)

 

指揮官が考えを巡らせていると……

ふと、グルミが何やら後ろめたそうな表情をして、明後日の方向を見つめていることに気づいた。

 

(そういえば、グルミ)

 

「ッ……! あ、ああ……どうした?」

 

(今、タコが襲おうとする人の傾向について考えていたんだけど……マンガの中にも、そういうのってあったりしなかった?)

 

以前読んだマンガの内容から、グルミはタコが水着を盗もうとしていることにいち早く気づいていた。指揮官はそのことを思い出し、彼からヒントを貰おうと声をかけた。

 

「いや、その……あるには、あるんだが……」

 

(そう? もしかしたらヒントになるかもしれないから教えて欲しい。どんなに馬鹿げたものでもいいからさ……)

 

「ああ……わ、分かった」

 

グルミは小さく息を吐き、指揮官を見据えた。

 

「その……失礼だとは思うが、許して欲しい」

 

(大丈夫だよ、言ってみて)

 

「……確かに、マンガの中に出てきたタコも、とある条件で人を選別して水着を盗んでいた。それで……その条件というのが」

 

(その条件は……?)

 

 

 

「……バストサイズの大きさなんだ」

 

 

 

(うん、なるほど…………え?)

 

グルミの口から飛び出てきた衝撃的な一言に、指揮官は思わず疑問符を浮かべた。

 

(それって……本当?)

 

「そうだ。馬鹿げているのは分かっているが……」

グルミはそう言って気まずそうに顔を伏せた。

 

 

 

「なるほどねぇ……じゃあ、それを踏まえて今まで襲われた人たちを見ると……ふふっ、つまりそういうことね〜」

 

黛は今までタコに襲われたことのある高橋龍馬、シャロ、アルト、アイリス、そしてスロカイを順に見つめ……そして納得したように笑い、胸についた巨大な双丘を揺らした。

因みに、アイリはグニエーヴルと共に先に洋館に戻っているため、既に姿はなかった。

 

 

 

「なるほど! つまりシャロはお子様体形の貧乳だったからエロタコに襲われちゃったってことね!」

 

「お子様体形で貧乳なのは㬢夜だって同じでしょうが! アンタが襲われなかったのは、ただ単に海から遠かったってだけで、立場が逆だったら襲われてたのはアンタだった筈よ!」

 

いつも通り、シャロと㬢夜は言い争いを始めた。

 

 

 

「えっと、確かに胸はないけどさ……」

 

「僕たち、男だよ……?」

 

(多分……2人のことを女の子と勘違いしたんじゃないかな? ほら、アルトくんは髪が長いし……龍馬くんは女の子用の水着を着てたし)

 

龍馬とアルトは複雑な表情を浮かべた。

 

 

 

「つまりタコがあたしを襲わなかったのは、あたしがナイスバディーだったからで……」

 

「いや、キラスターの場合は指揮官や姉さんたちと一緒にいたからだろ。指揮官はともかく、あんな怖い人たちと一緒にいたら誰だってお前を襲ったりしない」

 

「はぁ!? 何ですって!」

 

グルミの言葉にキラスターは激怒した。

 

「ねえグルミ……あとでお話ししましょう」

 

それと同時にトリスタは顔に影を落とし、うっすらとした笑みを浮かべてグルミを見つめた。

 

「怖い人たちって……私もか?」

 

「さ、さあ……? リンダも気にしなくていいよ」

 

「…………」

 

さらにトリスタの後ろでアルセール、レイア、そしてリンダの3人は微妙な表情になった。

 

 

 

「胸の大きさか……うーん、確かに他の人たちと比べると私の胸は小さい方だけど、でもシンシアに比べるとずっと大きい筈なんだけどなぁ……?」

 

「あら? では削り取ってあげましょうか?」

 

「あー……でも襲われなかったのは、人の目が多かったのも影響してるのかも……こっちはウィオラと2人っきりだったのに対して、あっちはリルルとヴィノーラ、ジュディスもいたし……それにおばさん怖いし……」

 

「そう、どうやら死にたいようね」

 

肩をすくめるアイリスに、

シンシアはモノクルを不気味に光らせた。

 

 

 

(まあ、何にせよ……タコの標的が分かって良かった。これなら、またタコが現れるようなことがあっても対処しやすいし……)

 

グルミの言葉から、タコが襲う人物の傾向について納得した指揮官が、今後のことを考えようとした時だった。

 

「おい凡人、何が『良かった』だと……?」

 

(あ…………)

 

その言葉と共に強烈な殺気を感じ取った指揮官が振り返ると、そこにはスロカイの姿があった。表情こそ笑みを浮かべてはいるものの、その顔には青筋がはっきりと浮かび上がっており、怒りを露わにしているのは明白だった。

 

「顔を貸せ、凡人。少し話そうか」

 

(…………はい)

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

スロカイに連れられるまま、指揮官は近くの岩場へと移動した。人気のない岩場の真ん中にはちょうど隠れられる空間があり、ビーチからは完全な死角となっている。

 

「やれ」

 

(うわっ……!?)

 

指揮官が岩場の中に足を踏み入れた瞬間、スロカイの指示でダークラビットが動き、小さなペットには不釣り合いな剛腕で、指揮官を地面の上に押し倒した。

 

(な、何を…………ぐっ!?)

 

「ふふん、いい眺めだな」

 

仰向けに倒れた指揮官の上にスロカイは素早く腰を下ろして馬乗りの状態になると、そこから嘲笑を発すると共に、混乱した様子の指揮官を見下ろした。

 

「ダークラビット、周りを見張っていろ」

 

『……!』

 

スロカイの命令を受けたダークラビットは、まるで本物のウサギのような華麗な動きで岩場を次々と乗り越えると、やがて岩場の影に姿を消した。

 

「さて……凡人、少し話をしようではないか」

 

(す、スロカイ様……とても話をするというような雰囲気ではないのですが……)

 

「黙れ」

 

(……はい)

 

スロカイに睨まれ、指揮官は口を噤んだ。

すると、彼女は小さくため息を吐き……

 

「つまり、余がタコに襲われかけたのは……余の胸が小さいからだと、そう言いたいわけだな?」

 

(……さ、さあ……?)

 

「そうやって、余を侮辱しようというのだな?」

 

(な、なぜそういう話になるんですか……)

 

お茶を濁そうとするも、まるで決めつけているかのようなスロカイの言い方に、指揮官は押され気味になった。

 

(スロカイ様、先ほどのやりとりを気にする必要はないと思われます。タコの傾向について確かな証拠もありませんし、特性についてまだ理解できていないところがありますので……そもそも、なぜ水着を集めるのかということも依然として不明で……)

 

「御託はいい……お前、納得したよなぁ?」

 

スロカイはそう言って身を倒し、指揮官の顔を至近距離で見つめた。

 

「タコの狙いが胸の小さいやつの水着だと聞いて……凡人、思いっきり頷いてたよなぁ? それで、余がタコに襲われた人の頭数に入っていないとは言わせないからな」

 

(……はい、思わず)

 

黛やウィオラ、トリスタなど、周りに胸が大きい人物が多いこともあって、指揮官は胸の大きさに関して感覚が麻痺していたことを正直に告げた。

 

それと同時に、スロカイの胸も年頃の少女にしてはかなり大きい部類に入ることを伝えた。

 

「そうだ、今まで散々見せてきたよなぁ? この水着に極東服、春節やクリスマスの衣装………胸ばかりを強調した服を、凡人は嫌がる余に無理やり着せ、散々いやらしい視線を向けてきた。その挙句、余の胸を批判するというのは無礼にも程がある」

 

(え……無理やりなんてそんな……というか、いつもスロカイ様の方から見せびらかしてくれていたような……)

 

「ハッ……忘れたとは言わせないぞ、事実を自分にとって都合の良いように解釈し、ありもしない虚構を作り上げる。凡人はこれだから、典型的な勘違いストーカー凡人なのだよ」

 

(えぇ……?)

そこで指揮官は小さく息を吐いた。

 

「分かったら認めろ。余は胸が小さくないと」

 

(は……はい)

 

「それでいい。全く……指揮官がこう言っているにも関わらず、あのタコ奴め……この余を胸が小さいなどと侮辱しおって」

 

何だかんだ言いつつも、スロカイはやはり自分の胸の大きさを気にしているようだった。

 

(これに関しては、別の影響があったのかもしれませんね。公式的な設定ではスロカイ様の胸はそんなに大きくないという話ですので……もしかしたら、タコはそういうものが見えているんじゃないかと)

 

「は?」

 

現に、天界宮(チュゼール編の一幕)では巨大化したヴィノーラの胸を見て、羨ましがる素振りを見せていたことから……と、指揮官がメタ的な話を口にしたところで、スロカイはじっとりとした目つきになった。

 

(いえ、何でもないです……)

 

「いや、そうだな」

 

(え……?)

 

スロカイの小さな呟きに指揮官が驚いていると、彼女は指揮官の体から身を起こし、自分の胸に手を当てた。

 

「確かに……ウェスパやウィオラなど機械教廷にいる者は胸の大きい者が多い。マティだって、最近は発育が良いように感じられる……最も、これは余のせいでもあるのだが……」

 

話している内容だけを聞くとふざけているのだと思われるものなのだが、スロカイの表情は真剣そのものだった。

 

「周りがそのようなものだから、比較すると胸が小さく見られるのは仕方がないのかもしれないな。だが、余はこう見えても、少しは大きくなっているつもりなのだ」

 

(いえ、比較しているつもりは……っ)

 

そこでスロカイは、指揮官の唇を指で塞いだ。

 

「いつか言ったよな、余はお前にだけは子ども扱いされたくない……と」

 

(…………)

 

「それでな……胸の大きさでも何でも、余が成長しているところを凡人が認識していないと思うと、まだ凡人から子ども扱いされているような気がしてならんのだ……」

 

(…………)

 

「どうすればいい? 余は……どうすれば凡人から大人として見られるようになる? どうしたら、お前は余をひとりの大人として見てくれるようになるのだ……?」

 

訴えかけるような眼差しでまっすぐに見つめられ……指揮官は今更年齢がどうだとか正論を言える気分にはならなかった。

 

(スロカイ様……)

彼女の問いかけに、指揮官がどう返すべきか考えていると……

 

「フッ…………冗談だ」

 

(え?)

 

次の瞬間、スロカイはニヤリと笑ってみせた。

 

「よくよく考えてみたら、余は機械教廷の教皇である。それに対し、たかが一司令官の凡人など天と地ほどの差がある……誰が凡人の顔色なぞ伺うものか」

 

スロカイはそこでわざと体重をかけるように座り直した。腹部に強い力が加わり、指揮官の口からうめき声が漏れる……

 

「この状況がいい例だ。教皇である余は上から凡人のことを見下ろし、凡人であるお前は下から余のことを仰ぎ見る……そういうものなのだ」

 

サディステックな表情で指揮官を見下ろし

「どうだ悔しいか? 悔しかろう」

スロカイは、勝ち誇ったように笑ってみせた。

 

指揮官が軽く頷くと、スロカイは満足した様子で指揮官の頰に手を触れた。

 

「フッ……ならば凡人も、いつか余と対等な立場になれるよう、今のうちからせいぜい精進するがいい。私は、お前なら必ずやり遂げるられると思っているよ……」

 

(スロカイ様……)

 

最後の最後で浮かべたスロカイの優しげな表情に、指揮官は心の中にくすぐったいものを感じるのだった。

 

「ふむ……話だけで結構時間を使ってしまったな」

 

(そろそろ戻りましょうか)

 

落ち着いたところで、指揮官は改めてスロカイの姿を眺めた。年齢的にはまだまだ少女と呼べるお人ではあるものの、白い肌に整った顔立ち、そして堂々たる佇まいは大人のそれをも上回る存在感と威厳があった。

体つきはまだ未成熟ではあるものの、この時点で胸囲に関しては同年代の他の少女と比較すると遥かに圧倒的で、それ以外に関しても一切の無駄がなかった。

 

「凡人、何を見ている?」

 

(いえ、相変わらずよく似合っていると思いまして)

 

そう言って指揮官はスロカイの水着を示した。

水着の上下がパーソナルカラーである赤に統一されていることもあり、彼女が放つ色気に情熱的なものが加わっていた。

 

さらに青い海を背景にすると、ただでさえ見る者全ての視線を惹きつける魅力があるというのに、その美しさはより一層引き立てられ、高められていた……

 

「フッ……どうせ他の奴らにも同じことを言っているのだろう?」

 

指揮官がスロカイの水着を賞賛すると、彼女から返ってきたのは何とも素っ気ない言葉だった。だが、その表情は満更でもなさそうだった。

 

(思ったことを口にしたまでです)

 

「そうか。まあ、凡人に褒められるのは悪い気分ではないな……見たければ、もっと見るがよい」

 

スロカイはそう言って、赤色の水着に包まれた自分の胸を見せつけてきた。それだけでも十分なのだが、ただでさえ馬乗りの状態になって2人の体が密着していることもあり、指揮官は気恥ずかしさを感じ始め……

 

「ところで、何か気づかぬか?」

 

(何がです?)

 

そう聞き返すと、スロカイは指揮官の鼻先を人差し指で意味ありげにツンツンとしてみせた。

指揮官はそこで、潮の香りに混じってスロカイの体からうっすらと甘い香りがするのを感じた。

 

香水ではないが、とても色気のある香りだった。

 

「フッ……それに考えてもみろ、なぜ余が凡人をわざわざ人気のないこの場所に誘ったと思っている? プライベートな話とはいえ、話をするだけならば人払いをすれば海岸でも出来たはずだ」

 

(まさか……)

 

指揮官は改めてスロカイを見上げると、影の落ちた彼女の表情はにわかに赤く染まり、どこか色っぽいものがあった。

 

「マティは早々に墜ちてしまってな。なので凡人には、余の欲求不満の解消を手伝ってもらおうか」

 

(いや、流石にそれは……)

 

「言っておくが凡人、お前に拒否権はない。ましてや、余に命令する権利もな。それもこれも、余を怒らせたお前が悪い……ならばその罪は、凡人の体で贖罪ってもらう」

 

(いえ、それだけじゃなくて……)

 

今まさに押し倒す形となっているスロカイからは見えないのだが、地面に押し倒された指揮官からは、岩場の上側で何やら慌てた様子をみせるダークラビットの姿が目に入り……

 

 

 

「タノシイ……バカンス…………」

 

 

 

そうでなくとも、海側から徐々に迫り来る殺気に気づくことができた。

 

 

 

「ジチョウ……シロ…………ボンジン」

 

 

 

(ま、マティルダ……)

 

ふと横に目を向けると、指揮官たちのすぐ近くにマティルダの姿があった。彼女は暗い影の落ちた顔を海面から出し、ハイライトの消えた深淵の瞳で指揮官のことを凝視していた。

 

「フッ……見られながらというのも結構乙なものだろ?」

 

(確実に殺されるんですがそれは……)

 

唐突に選択を迫られる形となり、指揮官は思わず大きなため息を吐くのだった。

 

 

 

このあと2人はたっぷり『スロぴょい』しましたとさ

[というかスロぴょいって何?]

 

 

 

第7話へ続く……




ワルチャの方々に相談したところ、ひとけのない岩場で佐々木光子と致したい(以下略)っていう意見が出たのですが、残念ながら日ノ丸キャラ禁止縛りだったので、その代わり光子と同じピンク髪のスロカイ様を出させて頂きました。

それと勘違いしないで欲しいのですが
今回、指揮官がスロカイとマティルダの百合百合の中に入っている感じの話になってはいますが、そもそも指揮官の性別は設定していないので、指揮官×スロカイは実質百合です。
なので最後のアレはスロカイにとってはいつも通りのことという……

次回はポーラとダイビングして溺れかけます。
それでは、また……
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