再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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入学編 一科生(ブルーム)二科生(ウィード)の溝

 黒髪の少年に仕返しをした入学二日目。

 

 俺――兵藤隆誠は1-Fにいるクラスメイト達と一通りの顔合わせをした。

 

 最初は一科生に対する差別意識があるのかと少々不安に思ったが、全員が全員そうではない。寧ろ、余り気にしてないように見受けられた。

 

 とは言え、一科生になれなかった事で非常に残念がっているのも中にはいた。その内の一人が仲良くしようと接していたのに、プライドが高い所為か、相手を突き放すように言い返している光景を見た。これから一年間やっていくのに、自分から孤立したら後々辛いのにと思いながら。

 

 俺は俺で仲良くなれたのは男子一人に女子一人だ。今はもう互いに名前で呼び合っている。因みに俺は『リューセー』でいいと言っている。

 

 二人共、特に一科生に対する差別はないのだが、有名な第一高校に入学した事で若干気後れしている節があった。理由は殆ど破れかぶれな状態で試験を受けた結果、二科生とは言え偶然に合格出来たらしい。大して魔法力を持たない自分達が、本当に第一高校に通っても大丈夫なのかという不安感があるようだ。

 

 そんな不安を払拭しようと、俺なりに励ました。『偶然でも合格したなら、それを誇りとして今後は頑張ればいい』と。

 

 二人は気休めな言葉だと思っていたみたいだが、それでも多少は晴れたみたいで頑張ろうと決意する。

 

 しかし、頑張ろうと言っても決して容易な道ではない。

 

 二科生は一科生と違い、魔法師として最も重要な魔法実技の個別指導を受ける権利がない。独力で学び、自力で結果を出すしかなかった。

 

 それは勿論俺や二人だけでなく、二科生全体に言える事だ。二科生として迎えられた以上は、教えられない事を前提として入学を許されているのだから。

 

 教師が少ない為に、才能ある一科生を優先せざるを得ない学校側の考えは分からなくもない。でもだからと言って、始めから放置するのはどうかと思う。二科生の中にだって、もしかすれば金の卵がいるかもしれない可能性だって充分にあると言うのに。

 

 例えば仲良くなった男子――(あま)()(しゅう)()は、魔法力が低いと言っても身体能力は相当の物だ。鍛えればかなりの結果を出せる。本人の努力次第だが。

 

 次に仲良くなった女子――()(えき)()(おん)は、魔法力や身体能力が共に高い。身体能力は男の修也に負けるが、それでも女子から見れば凄い方だ。

 

 故に上手く指導すれば、結構いい線行くんじゃないかと俺は思ってる。しかし、それはあくまで俺の見立てに過ぎないから、二人が一科生として指導される事は絶対にない。

 

 これは非常にどうでも良い事なんだが、この二人実は付き合ってるんじゃないかと思うほど凄く仲が良い。俺がさり気なく二人が恋人同士なのかと訊いてみるも、真っ先に修哉が否定した。単なる幼馴染だと言ってるのだが、それを聞いた紫苑は小声で「……バカ」と呟いていたのが聞こえた。

 

 二人の関係がすぐに分かった。紫苑は修哉の事が異性として好きだけど、肝心の修哉本人がその思いに全く気付いていない鈍感野郎だと。本当なら俺が指摘すべきなんだが、これは当人たちの問題なので敢えて口出しせず見守る事にした。いつか修哉が紫苑の想いに気付けばいいなと思いながら。

 

 

 

 

 

 

 午前は総合カウンセラーの紹介、第一高校のカリキュラムと施設に関するガイダンスの他、選択科目の履修登録に午後は各分野の専門課程見学だった。

 

 前者の方は穏やかに終わるも、その後が問題だった。入学早々にやらかしたと言うべきか、一科生が二科生を見下す行動を目撃していた。

 

 それが起きたのは昼食時の食堂だ。俺と修哉と紫苑は当事者じゃなく、巻き込まれたのは昨日に遭遇した黒髪の少年がいるグループだった。彼の妹と女子生徒二人、あと今日初めて見るガタイの良い男子生徒の計五人だ。

 

 食事中の彼等に一科生が身勝手で傲慢な振る舞いをしながら、明らかに見下す発言をしたのが始まりだ。

 

 そして放課後、司波深雪が兄達と一緒に帰ろうとするところを、一科生がまたしても難癖を付けていた。それによって明らかに険悪なムードとなっている。

 

「なぁリューセー、アレどうすればいい?」

 

「見ててすっごく不愉快なんだけど……」

 

 少し離れたところで見ている際、俺と一緒に帰ろうとしてる修哉と紫苑が不快そうな表情をしていた。当然、一科生の横暴な振る舞いに対してああなっている。

 

 二人がそんな気持ちになるのは俺でも充分に理解してる。一科生がやってるあれらの行いはただでさえ深い溝を広げている愚かな行為だ。とても仲良くやっていけたりはしない。

 

「放っておけ。ここで俺達が止めに入ったところで、一科生側が素直に引いてくれないどころか、余計に悪化するだけだ」

 

「でもリューセー君、あのままだと私達帰れないわよ?」

 

「そうなんだよなぁ……」

 

 紫苑の言う通り、今彼等が言い争いをしてるのは校門前だ。それによって俺達は足止めを喰らわされている。

 

 無視して通ろうとすれば、代表と思われる一科生の男子生徒が間違いなく因縁を付けてくるだろう。俺達と同じ他の二科生達も同じ事を考えてるみたいで、下手に動こうとはせず黙って見ているだけだ。

 

 売り言葉に買い言葉状態だったが、痺れを切らしたと思われる一科生の男子生徒がCADと思われる小型拳銃を取り出して照準を定めている。対して二科生の女子生徒がいつの間にか接近し、警棒らしきCADを振るって男子生徒の小型拳銃型CADを弾き飛ばした。

 

「速い……」

 

「彼女、相当な実力者みたいね」

 

 一科生の方はそれなりの実力者である事は分かったが、修哉と紫苑にとってはどうでもいいようで女子生徒の動作に目を見開いていた。

 

 確か彼女は昨日の入学式後に見た赤髪の子だ。未だに名前は知らないけど、紫苑が言った通りの実力者であるのは間違いないだろう。まぁそれとは別に、何故か同じ二科生の(ガタイのいい)男子生徒と言い争いになってるが。

 

 一科生が二科生に負けたと言う事実を認めたくないのか、他の一科生の男子生徒達も応戦しようとCADを通じて魔法の発動準備に移った。加えて一科生の女子生徒がどう言うつもりか、同じクラスメイトに向かって魔法を放とうとしている。

 

「おいおい、不味いぞこれ……!」

 

「もう喧嘩どころじゃすまないわよ……!」

 

「大丈夫だ。あそこを見ろ」

 

「「え?」」

 

 慌てる修哉と紫苑とは他所に、冷静な俺は二人の視線を移す為に指をさした。

 

 誘導された二人は俺が示した方を見ると――

 

「止めなさい! 自衛目的以外の魔法による対人攻撃は、犯罪行為ですよ!」

 

「風紀委員長の渡辺(わたなべ)摩利(まり)だ。事情を聞きます。全員付いて来なさい!」

 

 生徒会長――七草(さえぐさ)真由美(まゆみ)、そして風紀委員長――渡辺摩利が現れ、暴動を止めようと参上した。

 

 第一高校の『三巨頭』と称される二人の前に、校門前にいる二科生は勿論のこと、相手を見下していた一科生達も慌てふためく。

 

 もしバカな行動をした瞬間、起動式の展開を完了している風紀委員長のCADから魔法が放たれるだろう。

 

 一科生や二科生など関係無く、校門前にいる新入生を連行して喧嘩両成敗と思いきや、予想外の事態が起きた。

 

「すみません、悪ふざけが過ぎました」

 

「悪ふざけ?」

 

 と、黒髪の少年が唐突な台詞を口にした事で、渡辺摩利が思わず鸚鵡返しをした。

 

 無論、彼の台詞に聞こえていた俺達も訝っている。

 

「あれが悪ふざけって……」

 

「どう見ても限度を超えてると思うんだけど」

 

「まぁ取り敢えず様子を見よう」

 

 修哉と紫苑は理解出来ないと眉を顰めてるが、どうやってやり過ごそうとするのか気になる俺は二人を宥めた。

 

 そこから先は口が上手いと言うか誤魔化すのが得意と言うか、巧みな話術で生徒会長と風紀委員長を納得させている。余りにも見事な話術に修哉と紫苑が舌を巻くほどだ。

 

 結局のところ、今回の暴動は単なる悪ふざけという事で全員不問と言う形で終わった。その際、黒髪の少年の名前が漸く分かった。一年E組の司波(しば)(たつ)()だと。

 

 生徒会長と風紀委員長がいなくなった事で穏やかな空気となり、一科生は一足先にいなくなった。その一人が司波達也に捨て台詞を残して。 

 

「さて、じゃあ帰るか。暴動の元凶がいなくなったし」

 

「そうだな」

 

「全く、あの連中の所為で余計な時間を喰わされたわ」

 

 俺が言った元凶は言うまでもなく一科生の事だ。それを分かっている二人は頷きながらも、移動を始めた俺の後を付いていこうとする。

 

 すると、移動する俺達に司波達也が気付いた。

 

「お前は……!」

 

 此方を見た途端に司波達也が親の敵みたいに睨んできたので俺は思わず足を止めた。その行動に修哉と紫苑だけでなく、彼と一緒にいる司波深雪達も意外そうに見ている。

 

 睨んでいる理由は勿論分かっている。俺が去る前に、司波達也が俺に熱い眼差しを送ったと言う同性愛疑惑の発言をした所為で誤解されたのだと容易に想像出来た。

 

「やぁ、昨日振りだね。あの後どうなった?」

 

「そっちが誤解を招く事を言った所為で、深雪の勘違いを正すのに時間が掛かったぞ」

 

「さいですか」

 

 昨日の事を知ってる女子三人は揃って苦笑していた。まぁ司波深雪の方は物凄い誤解をしていた為か、物凄く気まずそうに目を逸らしている。それを全く知らない他の面子は首を傾げるばかりだ。

 

 どうでもいいが、一科生の女子二人がいつの間にか司波達也側に加わってるな。いつの間にか和解したみたいだ。

 

「悪かったよ、司波達也君。もうあんな事は言わないから、どうか許してくれ」

 

「……謝るならいい」

 

 頭を下げた俺の行動に、司波達也は少し面食らいながらも許してくれた。

 

 それじゃあ謝った事だし、この場を去るとしますか。

 

 一通り話を終えた俺は修哉と紫苑を連れて帰ろうとするが――

 

「待て。帰る前に名前を教えてくれないか? もう知ってるだろうが、俺は1年E組の司波達也だ」

 

「一年F組、(ひょう)(どう)(りゅう)(せい)だ」

 

 名前の開示を求められたので、俺は素直に答えた。

 

 昨日は誤解を招く事をしたのだから、それくらいは別に構わない。恐らく司波の事だから、自分の名前を知っておいて俺の名前を知らないのはフェアじゃないとでも考えたんだろう。

 

 お互いに名前を名乗った事により、これが本当の意味での顔合わせとなった。

 

 

 

 

 

 

 ―おまけ―

 

 

「なぁ達也。さっき兵藤って奴と、誤解を招いたとか司波さんの勘違いとか言ってたが……」

 

「………悪いがそれについては黙秘させてもらう」

 

 二科生の男子生徒、西城レオンハルトからの質問に達也は拒否し――

 

「黙秘って……達也さん、一体何が遭ったんですか?」

 

「私も気になる」

 

「お、お二人とも、大丈夫です。そんな物騒な事じゃありませんから……」

 

 一科生の女子生徒、(みつ)()ほのかと北山(きたやま)(しずく)も気になったが、深雪が何でもないように言っており――

 

「……まぁ、達也君にとってすっごい不名誉な誤解なのは確かね」

 

「あ、あははは……」

 

 昨日の事情を知っている二科生の女子生徒、千葉(ちば)エリカと(しば)()()(づき)は達也の心情を察して苦笑していた。

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