再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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入学編 新入部員勧誘①

 校門前の出来事から二日後。俺や友達となった修哉と紫苑は問題無く学校生活を過ごしている。

 

 けれど、俺としては味気の無いものだった。

 

 知っての通り二科生のクラスは一科生と違って教師がいない為、ガイダンスによって課題が出される事になっている。その課題の提出が唯一、履修の目安となるのだ。

 

 前世での高校生活を経験した俺から見て、これでは何の意味も無いと断言出来る。教師と言う監督がいるからこそ、生徒は育つ。分からない事を聞いて、それを教師が説明し、生徒は理解して学ぶ。その工程を完全にすっ飛ばしてる二科生のカリキュラムは、完全放置と言う名の自習メインだ。

 

 魔法について初心者の新入生が多くいるのに、独力で自習し理解しろだなんて無理な話だ。まぁ二科生はそれを覚悟で入学してるから、俺がああだこうだと言ったところで意味は無い。

 

 因みに今回行った実習授業はそれなりに出来た。台車を加速し、端まで減速して停止、逆向きに加速・減速……という内容だ。頭の中で演算式を構築しながら魔法を使う、という面倒なやり方は好きじゃない。

 

 前の世界で俺が使っていた魔法や魔術は、その物の理論を完全に理解し、それを魔力に変換させる為の演算能力を必要とする。やってる事はこの世界の魔法と同じなんだが、俺が別世界の異物だからか、どうも簡単に理解出来ない仕組みになっている。嘗て全知全能だった時の聖書の神(わたし)が、今はこんな無様な結果を晒すとはな。向こうにいる弟のイッセーや天使のミカエル達が知ったらさぞかし嘆くだろう。

 

 この世界の魔法が自分に合わないなら、いっそ自分本来の力を使って試してみるのも良いかもしれない。このまま無意味な事をし続けたところで魔法の向上なんか出来やしないので。

 

 そう決意した俺は、今度の実習で俺本来の魔法を使って試す事にした。それでとんでもない結果を出してクラスメイト達だけでなく、後から知った司波達が信じられないように驚愕するなどと、この時の俺は全く考えもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 西暦2095年4月6日

 

 

 

「リューセーはどこの部活に入るんだ?」

 

「あんま考えてない。そういう修哉はどうなんだ?」

 

「俺は剣道部。壬生先輩から約束されてな」

 

 午後の授業が終わり、校庭へ行く準備を終えた修哉が俺に訪ねてきた。

 

 今日から一週間、クラブ活動の勧誘週間となっている。

 

 魔法科高校も普通の学校と同じくクラブ活動がある。けれど、魔法を使ってのクラブ活動があるから、そこが普通の学校と違うところだ。

 

「壬生先輩って誰?」

 

「ああ。前の中学の時に世話になった先輩で、俺が第一高校に入学したら是非とも剣道部に入ってくれって。リューセーは知らないか? 中等部剣道大会で全国2位の壬生(みぶ)紗耶香(さやか)って結構有名なんだが」

 

「悪いが、俺はそんなに詳しくない。と言うより、壬生先輩って女性なんだ」

 

「? そうだが?」

 

 修哉の知り合いの先輩が女性と知った俺は、この場にいない紫苑が頭に浮かんだ。別に他意はないんだが、彼女はこの事を知ってるんだろうか。

 

 因みにその紫苑は一足先に校庭へ向かっている。陸上部に入部すると、ついさっき修哉から聞いたので。

 

「一応聞きたいんだが、紫苑も壬生先輩の事は知ってるのか?」

 

「ああ、知ってるよ」

 

「ついでに仲の方は?」

 

「普通に良いぞ。ってかリューセー、質問の意図が全く分からないんだが」

 

 修哉の返答を訊く限りでは、紫苑と壬生先輩って人の中は良好か。どうやら恋敵の関係じゃなさそうだ。良かった良かった。

 

 そんな考えを余所に、俺は何でもないと言いながら誤魔化した。

 

「良かったらリューセーも剣道部に入らないか? あの人は剣道に関して凄く厳しいけど、美人で優しいぞ」

 

「考えておく。一応、他の部も一通り見ておきたいから」

 

 遠回しに断った俺に修哉は少し残念な表情となるが、「そうか」と言って元に戻って教室から出ようとする。

 

「じゃあ俺、先に行ってる。もし時間があったら剣道部へ寄ってくれ」

 

「おう、分かった」

 

 早足で教室を後にする修哉を見送った。

 

 さて、完全に出遅れてしまったが、そろそろ俺も行くか。

 

 部活の勧誘期間は一週間だから焦る必要は一切無い。ゆっくり見て、これだと思ったら入部すればいい。尤も、今のところは何処にも入部する気はないが。

 

 

 

 

 

 

 

 校庭に来た俺は、さっきまでの考えを即座に撤回した。

 

 と言うより、甘く見ていたと言った方がいい。何故なら俺の目の前で、何処のクラブも新入生を死に物狂いで確保しようとしているから。

 

 すぐに指定のクラブに決めた修哉と紫苑の判断は正解だった。あんな凄い事になるぐらいなら、さっさとクラブを決めて入部した方が良いだろう。

 

 でないと、各運動部員達の中心にいる美少女が争奪戦に巻き込まれる破目に……ん? よく見るとあの美少女、司波と一緒にいる赤毛の子じゃないか。

 

 災難としか言いようがない。あれはもう争奪戦と言うより、獲物の奪い合いと言ったほうが正しいか。

 

 ここは彼女を助けた方がいいかどうか判断に迷う。名前を知らない他人でも、一応ちょっとした顔見知りになっている。

 

 司波がいてくれたら……と考えていたら、突如オーラを感じた。言うまでもなく司波のオーラが。

 

 察知した方へ向けた直後、司波は彼女を助けようと魔法を展開しながら動き出した。すると、赤毛の子を囲っていた各運動部員達が平衡感覚を損なったように、そのまま尻餅をついた。

 

(見た感じだと、振動系魔法か。上手い使い方をするな)

 

 上手い方法で赤毛の子を救い出した司波は彼女の手を掴み、そのまま引っ張り走り出していく。

 

 しかし、それとは別に気になる事が出来た。アイツの片腕に見慣れない物がある。

 

 あれは確か風紀委員の腕章だ。此処へ来る途中、風紀委員らしき人がどこかのクラブに注意していたのを見た。

 

 司波は一昨日にそんな物はなかった筈だが、どうやらいつの間にか風紀委員になったようだ。

 

 風紀委員は基本的に一科生がなるものだと思っていたが、まさか二科生もなれるとは思わなかった。それとも、何らかの特例として認められたか。

 

 だとしても、差別意識が強い一科生が二科生を簡単に認めるとは到底考えられない。そう考えると司波が何か凄い事をやってのけて風紀委員になった可能性が一番に考えられる。

 

 どんな方法を使ったのかは凄い気になるが、それは後で調べてみよう。

 

 取り敢えず、修哉が入部する剣道部の方へ行ってみるか。別に入部する気はないが、部員の奪い合いの場と化してる校庭に居たくないからだ。ないとは思うが、俺も捕まる可能性がある。




お気付きでしょうが、オリ主が単独行動してる時は地の分メインとなっています。

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