またしてもフライング投稿です。
横浜侵攻以降は大きな事件も起きなく、俺は平穏な日々を送っている。
12月には魔法科高校の二学期定期試験があり、再び異例の事態が起こった。二科生の俺だけでなく、友人の修哉と紫苑も驚くべき結果を示したのだ。
前回と同じく、先ず理論・実技を合算した総合順位はこれだ。
一位 1-F 兵藤隆誠
二位 1-A 司波深雪
三位 1-A 光井ほのか
はい、何と俺は前回の定期試験で総合一位だった司波深雪を追い越しました。あの時は理論での差があった為に二位だったが、改めて勉強して理解した為、一位を獲得する事が出来た。
これには当然、またしても学校中が大騒ぎになったのは言うまでもない。だが、抗議しに行く度胸までは流石に無かったみたいだ。俺が九校戦でかなりの実力者であるのを知ってるからか、下手に手を出せば返り討ちに遭う事も理解していたようだ。勿論それは正解である。もしも魔法を使っての嫌がらせなどしてきたら、副生徒会長として取り押さえるつもりだった。流石に風紀委員会みたいに検挙する事は出来ないが、生徒会にもそれなりの権限がある事を真由美や摩利から教えてもらったから。
さて、次に実技の方は――
一位 1-F 兵藤隆誠
二位 1-A 司波深雪
三位 1-A 北山雫
ここまでは前回と全く変わらないのだが、注目すべきはもう少し下の順位である。
八位 1-F 佐伯紫苑
九位 1-F 天城修哉
何と、俺が今も鍛えている修哉と紫苑が上位の一桁に入っていたのだ。これには本人達も吃驚していた。
まぁそうなるだろうと俺も大体の予想はしていた。二人には今も付けている修行用バンドで身体能力、魔法力を向上させている。加えて『飛翔術』も教わってる事で
二人の結果にE組のエリカとレオ、更には幹比古までも加わって詰め寄られた程である。司波は三人と違って俺に『一体どうやってあれ程の結果を出したんだ?』と、明らかに俺が修哉達に何かしたかのような質問をされたが、『二人の努力の結果だ』とはぐらかした。それでも未だに疑いの眼差しを送られるも完全無視だ。
そして理論の方は――
一位 1-E 司波達也
二位 1-F 兵藤隆誠
三位 1-A 司波深雪
司波妹に勝てたのだが、司波兄は前回と同じく結局勝てなかった。点数は僅か数点差であった事を知って、俺が修哉達に知られないよう内心悔しがったのは内緒だ。
これにて終わりかと思いきや、この理論の結果でチョッとした問題が発生した。司波妹がここ数日荒れていたのだ。聞いた話によると、A組の教室は文字通り冷え込んでいたらしい。彼女から発するブリザードによって。
最初は俺に理論で負けたから腹を立てたのだろうと予想するも、後に原因が分かった。前回の試験と違い、司波妹が司波兄と並んでいない事に不機嫌だったという仕様もない理由に、俺は果てしなく呆れるばかりだった。それによって生徒会で仕事をしてる際、司波妹が俺を見る度にブリザードを放出するから、生徒会室もA組と同様に冷え込んでいた事も補足しておく。
定期試験が終わり、残りはプライベートがメインであるクリスマスイベントだった。
最初は俺、修哉、紫苑の三人でクリスマスパーティーをする予定であったが、司波一行から参加して欲しいと頼まれた。最初は疑問に思ったが、どうやら向こうはパーティーの他、北山の送別会も兼ねているようだ。既に知らない仲ではないと言う理由で、俺達も参加させてもらった。
送別会と聞いて俺は思い出した。北山が年明け後に三ヵ月の期間でUSNAへ留学しにいく他、USNA側も一人の女子生徒を一高に留学させる事を。謂わば交換留学である。
それと同時に疑問も抱いた。魔法師の海外渡航を厳しく制限されてる状況の中、何故こうも簡単に留学が認められたのかを。
西暦2096年1月9日
冬休みが終わり、三学期の初日からいきなりフルタイムのカリキュラムだった。休みボケが抜けてない生徒にとっては苦痛だろう。それは当然、俺のクラスメイト達も含まれている。
一時限目の授業で早くもダウンしてるのがチラホラいる中、A組にいる留学生の噂が広がっていた。
こういう話には目が無いのか、二時限目の後の休み時間には、修哉と紫苑も気になるかのように話していた。
「聞いた話だと、すっごい美少女らしいぞ」
「かなり綺麗な金髪で、上級生まで見に来てるらしいわ」
少々興奮気味に話してる二人に対し、留学生に大して興味の無い俺は如何でも良いように聞いている。
紫苑が修哉に対して嫉妬の感情を見せないって事は、噂の留学生は同性ですら負けを認める程の美少女なのだろう。
「二人は見に行かないのか」
興味が無いとは言え、これだけ俺に語っているのだから、形だけでも気になるように訊ねてみる事にした。
「無理無理。あんな人だかりに入って行けないって」
「それにあんな押し合い圧し合いの窮屈な思いをしてまで見に行きたいとも思わないわ」
流石の修哉達でもそこまで行く気はなかったみたいだ。けれど、もし修哉が留学生を見てデレデレしていたら、それこそ紫苑が完全に嫉妬するばかりか、へそを曲げてしまうかもしれない。好きな男が他の女に目移りなんてすれば猶更に、な。
「それだけ好奇心が湧いてるって事だ。聞いた話だと、留学なんてここ十年以上無かったらしいし」
ついでに生徒会から聞いた話なんだが、と俺は二人に教えようとする。
「どうやら第二、第三、第四高校でも短期留学生の受け入れがあったそうだ。大学の方でも共同研究の名目で何人か来てるらしいぞ」
「へぇ~」
「一高以外にも交換留学って……それを聞くと、USNAが何だか焦って探りを入れに来たように感じるのは気のせいかしら?」
関心を抱くような返事をする修哉とは別に、紫苑は何だか腑に落ちないような表情となっていく。
話を聞いただけですぐに疑問を抱く彼女には恐れ入る。確かに今まで許可しなかった筈が、こうもいきなり各校に留学を開始してるのだから、疑うのは当然と言えよう。
勿論それは俺も同意している。あのUSNAが単純に日本との交流を深める為に留学生を送ったとは微塵も考えてない。確実に何か裏があると推測している。
日本とUSNAは同盟国であるが、それはあくまで表面上に過ぎなく、西太平洋地域における潜在的競合国である。特に軍事面での魔法に関しては。
魔法科高校や大学にUSNAが留学生を送るとなれば、魔法に関する何かを探ろうとしているんじゃないかと疑問を抱かれても不思議ではない。恐らく俺や紫苑以外にも、他の生徒達もそう考えている筈だ。
「だとしても、その留学生はA組だから、二科生の俺達とは何の接点も無いだろう」
「何言ってるのよ、修哉。留学生と接点を持つ二科生の生徒が、私達の目の前にいるじゃない」
「え? あ………」
紫苑に言われて最初は素っ頓狂な声を出す修哉だったが、数秒後に理解した。生徒会副会長である俺を見ながら。
「出来れば俺としては関わりたくないんだけどなぁ……」
否定出来る要素が一切無い俺は、絶対面倒事になると分かっていながらも、役職の関係上として関わらざるを得ない事に嘆息するしかなかった。
今日の昼食では修哉と紫苑が珍しく弁当を持って来ていた為、俺一人で学食へ行く事となった。
配膳のカウンターへ向かいながら何を食べようかと考えている際、後ろから声が掛かってくる。
「あ、兵藤くん」
「ん?」
自分を呼ぶ声に思わず振り向くと、A組の司波深雪がいた。他には光井ほのかと、見慣れない金髪碧眼の女子生徒も。
最後は全く知らない一科生だが、すぐに誰かなのか分かった。午前中に噂となっていた留学生である事に。
確かに噂に違わぬ美少女だ。修哉と紫苑が興奮気味に話していたのには納得である。
だが生憎、俺や
周囲にいる生徒達は司波と留学生の姿に気圧されているように距離を取っているが、全く気にしてない俺は話しかけようとする。
「司波さんと光井か。それと……」
「アンジェリーナ=クドウ=シールズさんです。もうご存知でしょうが、今日からA組のクラスメイトになった留学生です」
「ああ、彼女が噂の」
さも初めて知ったように少々驚く仕草をした後に自己紹介しようと思ったが、メニューを注文する順番が回って来た為に一旦後回しする事にした。
向こうは俺が一人で昼食をする事を知った後、紹介が中途半端だから良ければ一緒にどうかと誘われたので、特に断る理由が無いから了承する。
俺が来るのを分かっていたのか、レオ達は俺に対して歓迎の姿勢であった。司波兄だけはほんの一瞬、妹と話してる俺を見て眉を顰めていたのは気にしないでおく。
「幹比古、隣いいか?」
「ああ、どうぞ」
相変わらず俺に対する警戒は一ミリも緩めていないなと思いながら、俺は幹比古の隣に座る。
因みに司波妹は当たり前のように兄の隣へ腰を下ろし、光井も倣うように司波の正面にトレイを置いて、その隣に留学生が座る。
「達也さん、ご紹介しますね。アンジェリーナ=クドウ=シールズさん。今日からA組のクラスメイトになった留学生の方です」
光井が司波だけに留学生――シールズを紹介してる事に、俺は思わず苦笑してしまった。それは当然俺だけでなく、司波達も同様に。
「ホノカ、こちらの方だけでなく、他の皆さんに紹介して欲しいのだけど?」
俺達の心情を代弁したのは当の留学生だった。
「え、あっ、ご、ごめんなさい!」
「……まあ、ほのかだしね」
「ほのかさんですしね」
「光井だから仕方ないな」
友人のエリカと柴田、そして彼女と同じ生徒会メンバーである俺は揶揄じゃなく、本心からしみじみと呟いた事に、光井は赤面し、そして絶句した。
「既に兵藤くんには紹介しましたが、もう一度改めて。アメリカから来たアンジェリーナ=クドウ=シールズさんよ」
(俺にとっては三度目だが)司波妹が二度目になる紹介をすると、シールズは金髪を軽やかに揺らし、椅子に座ったまま一礼した。
「リーナと呼んで下さいね」
そう言って目を細め、シールズ(以降はリーナ)は見惚れるような華やかな笑みを浮かべた。
何だか思い出してしまう。
彼女の声だけでなく、喋り方も何となくだがリアスに似ている。声だけで瞬時に思い出してしまうのだ。もしかしたらリーナは転生したリアスなんじゃないかと思うほどに。
けれど、いくら声が似てるからと言っても、すぐに赤の他人であるのが分かった。さり気なくリーナのオーラを探ってみたが、リアスと思わしき
まぁ、声だけで言うなら、司波兄や十文字も充分該当している。司波兄はサイラオーグで、十文字はサーゼクスだ。どちらも当然繋がりは一切無い。他にも声が似ている人物はいるが、全員一切関係が無いと断言しておく。
「F組の兵藤隆誠だ。俺の事は『リューセー』と呼んでくれ。因みに司波深雪さんと同じく生徒会副会長をやっているから、君とは今日の放課後にまた会う予定だ」
「リューセー……」
リーナはエリカ達と同様に一度で覚えようと、確認する様に俺の名前を口にするも、さっきまでとは様子が違っていた。それは当然、司波達も気付いている。
すると、ハッと思い出したかのように彼女は突然立ち上がる。いきなりの事に俺達は目を見開く。
「思い出したわ! 貴方、あの有名な『シューティング・スター』ね!」
「………は?」
いきなり訳の分からない呼び名で言われた事に、俺や司波達だけでなく、聞き耳を立てていたであろう生徒達も呆然としていた。
リーナが隆誠を『シューティング・スター』と呼ぶには勿論理由があります。
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