再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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今回は主に第三者側の内容です。

そしてまたしてもフライング投稿です。


来訪者編 それぞれの状況

 リーナは一高に留学して、もうすっかり溶け込んでいた。

 

 自分と対等に接して一種のライバル関係になっている深雪や、A組クラスメイト達、とても親切にしてくれる同級生達で順風満帆な学生生活を送っている。そうすれば潜入捜査がしやすくなるから。

 

 今のところ順調に進んでいると思ってもおかしくないのだが――

 

「何で一度も勝てないのよぉ~~!!」

 

「リ、リーナ、落ち着いて下さい……!」

 

 そうでもなかったみたいで、リーナは非常に口惜しがっていた。

 

 今いる場所は学校から少し離れたマンションの一室。留学生であるリーナはそこで暮らしている。

 

 リビングにあるテーブルの席に着いた途端、彼女は目の前にいる同居してる女性に向かって愚痴っていた。

 

 こうなっている理由を簡単に述べると、二科生である兵藤隆誠に負け続けているからだ。勝負を挑んでは負けての繰り返しで、敗北の数は既に二桁を通り越し全戦全敗である。因みに今日も挑んでアッサリ敗北したと補足しておく。

 

 勝負と言っても最初にやった金属球を利用した実習や、コンパイルでタイムを競ったり等、様々な実習内容を勝負形式でやっていただけだ。

 

 だが、先程述べたように結果は全てリーナの敗北。加えて、まるで自分の敵じゃないように勝利している隆誠の姿を見続けた事で、今まで抑え込んでいた不満が、ここに来て一気に爆発してしまったのだ。

 

「いい加減にしなさい、シリウス少佐! それでもスターズ総隊長ですか!?」

 

「!」

 

 愚痴っている上官に段々嫌気が差してきたのか、女性――シルヴィア准尉が心を鬼にして叱咤した。それを聞いたリーナことアンジー・シリウス少佐はハッとする。

 

 漸く冷静に戻ったリーナは、自分が醜態を晒していた事を理解したみたいに頬を赤く染めていく。

 

「す、すみませんでした、シルヴィ。お見苦しい姿を見せてしまって……」

 

「……まぁ、確かに負け続けていたら、そうなるのは仕方の無い事かもしれませんが」

 

 謝罪を受け取ったシルヴィアも、不満をぶちまけるのには一理あると思っていたようだ。USNA軍統合参謀本部直属魔法師部隊のスターズ総隊長であるリーナが、高校生に魔法実習で負け続けていると聞いて最初は耳を疑った程であるから。

 

 いくら戦闘関連じゃない魔法実習とは言え、あのリーナが魔法に関する事で負けるなんて普通にあり得ない。彼女がいる一高のA組は一科生の中でも優秀なクラスであるから、そんじょそこらの生徒達に負ける筈はないと最初は思っていた。

 

 だと言うのに、それが一科生に劣っている筈の二科生の男子生徒に未だに勝てずに敗北し続けている。本国が知れば、『それは一体何の冗談だ?』と疑問を抱かれるだろう。これが一般の魔法師相手であれば。

 

「どうやら『シューティング・スター』は、魔法実習の方でもリーナを上回るほど相当優秀のようですね」

 

「ええ。私もまさか、あれ程までとは思いませんでした」

 

 彼女達USNA軍は兵藤隆誠の事を最初から知っていた。九校戦を見た日から。

 

 ハイスクールで見たとリーナが隆誠に教えたのは嘘ではないのだが、詳細な情報については軍経由で知った。

 

 USNA軍としては当初、一番の障害となる存在は十師族の家系かと思って見ていたが、そこで思わぬ人物――兵藤隆誠の活躍に何度も驚かされた。

 

 ピラーズ・ブレイクでは明らかに殺傷性が高い魔法を披露し、モノリス・コードでは目で追う事すら不可能なスピードを見せる他に凄まじい剣技を繰り出していた。もう完全に高校生レベルを超えているどころか、スターズに匹敵していると過言ではない実力者であった。

 

 だと言うのに、あれ程の実力者はリーナが潜入してる一高では補欠(alternate)――二科生の扱いであった。普通に考えれば、兵藤隆誠は優秀な一科生であってもおかしくない筈だが、何故劣等生の扱いをしているのかが全く理解出来ない。一高にいる教職員達の目が曇っているのはないかと疑問を抱いた程である。

 

 それを解消しようと、リーナは理由を付けて隆誠に実習による勝負を挑むも、何度も言ってるように無残な結果となった。あれほどの実力者を劣等生扱いしている一高が絶対おかしいと結論する。

 

 先程まで物凄く口惜しがっていた彼女だが、あくまで日常生活に溶け込んでいる留学生のリーナとしてに過ぎない。アンジー・シリウスの顔になれば、そんな事は些末なモノだと切って捨てるだろう。

 

 隆誠が如何に魔法実習が優れ、九校戦で見せた試合が凄かろうとも、生死を賭けた実戦となれば全く異なる。もしも戦闘で挑む事になれば、確実に自分が勝つとリーナは自負している。高校生相手であれば猶更に。

 

「ところで、あの二人についても何か分かりましたか?」

 

 一旦話題を変えようと、リーナはシルヴィに訊ねた。

 

 リーナことシリウス少佐の潜入任務は、十月末に極東で観測された戦略級魔法によるものと思しき大爆発(グレート・ボム)の実行者、即ち術者の正体を探ること。容疑者の中には東京の高校に通う学生三名がいる。その学生と言うのが兵藤隆誠、そして司波達也と司波深雪。リーナはその三人に接触して調べるのが目的であった。

 

「公的なデータベースを洗い直していますが、今のところはまだ何も新しい情報は見付かっていません」

 

「そうですか。ミアの方はどうですか? 今日はまだ戻っていませんが」

 

 ミアとはミカエラ・ホンゴウで、リーナ達と同じく諜報員の一人。魔法研究者である彼女は現在、魔法大学に潜り込んでいる。今の時間帯ならもう此処にいるのだが、今日は未だに戻っていない。

 

「彼女の方もこれと言って無さそうです。どうやら今日は研修があるみたいで、今夜は遅くなると先程連絡がありました」

 

 潜入してるとは言っても、研究者として来た以上はそれなりにやらなければならない。リーナやシルヴィも理解してるから、ミカエラが遅くなる事に何の疑問も抱いていない。

 

 二人はその後、司波兄妹について話し合うのであった。

 

 

 

 

 

 

「兵藤は少しばかりやり過ぎたな」

 

 場所は変わって司波家のリビング。

 

 ソファに座って寛ぎながらコーヒーを飲んでいる達也がそう呟いた。

 

「お兄様、それは兵藤くんがリーナに魔法実習で勝ち続けている事ですか?」

 

 いつも隣に座っている筈の深雪は、今日は珍しく正面のソファに座っていた。敬愛する兄の呟きに反応して早々確認する様に問うと、達也はすぐに頷く。

 

 因みに少し前まで、達也は地下室で深雪の想子(サイオン)波測定検査をしていた。それが終わって今はこうしてリビングで寛いでいる際、リーナの正体を確信したかのように話していたのだが、途端に隆誠の話題となった事により、達也は無意識に眉を少しばかり顰めている。警戒すべき相手だからか、深雪が隆誠と仲良く話してるのを見かけてモヤモヤしてるからか、それは当の本人も全く気付いていない。

 

「正直言ってアレは不味い。リーナが『シリウス』であれば」

 

 一科生以上の実力者である事を既に知ってる達也は、留学生であるリーナ相手でも簡単に勝てるだろうと既に予想していた。

 

 しかし、今回ばかりは相手が悪い。USNA軍のスターズである『アンジー・シリウス』にそんな事をすれば、却って警戒されてしまう恐れがある。

 

 達也がリーナの正体に気付いたのは、去年の11月頃に四葉家当主――四葉真夜から本宅へ招待された時の事だ。そこで色々と話をした際、USNA軍スターズが動いている事を話してくれた。流石にどうやってそれを知り得たのかまでは教えてくれなかったが。

 

 他にも、スターズが独自に調査して、あの爆発――マテリアル・バーストが魔法によって引き起こされた事を掴んでいるそうだ。その術者と思われている中に、達也と深雪、そして兵藤隆誠を容疑者の一人として特定している事も。

 

 達也は真夜の口から隆誠の名前が出た途端に一瞬疑問を抱いていたが、すぐに納得した。九校戦のピラーズ・ブレイクで、明らかに殺傷力や威力が高いと思われる魔法を瞬時に使っていたから、それをUSNA軍が戦略級魔法を使えるかもしれないと。

 

 その際、以前から真夜より命じられていた『兵藤隆誠が扱う魔法の調査』について問われたが、現在も不明と達也が結果報告をした。こればかりは流石に失望されるだろうと覚悟していたが、真夜からは「もう少し様子を見ましょう」と猶予を与えられた為、引き続き調査するよう命じられた。達也としては何故ここまで引き延ばすのかと不審に思うも、断る選択肢が一切無い為に続けるしかない。

 

 去年の事を思い出しながらも、達也は隆誠が今後リーナだけでなく、もしかすればUSNA軍からも警戒されると予想した。

 

「いかに兵藤とて、スターズが相手となれば分が悪いだろう」

 

 USNA軍は大亜連合以上に魔法技術が進んでおり、それ以上に多くの優秀な魔法師達も勢揃いしている。スターズのリーナこと『アンジー・シリウス』も当然その一人である。そんな厄介な相手に目を付けられれば、呂剛虎を倒せる実力を持つ隆誠でも難しい。

 

 加えて隆誠は一般人。九校戦を通じて九島烈と縁が出来たといっても、決して後ろ盾になった訳ではない。もしも隆誠がUSNAに拉致や殺害などされても、九島烈が多少の抗議をする程度。故に隆誠がどんな目に遭っても、日本にとってはチョッと優秀な魔法師を失った程度の処理で済ませるだろう。四葉家と言う強力な後ろ盾がある司波兄妹と違うのだ。

 

「まぁ、向こうが本格的に動き出した場合の話だがな」

 

「だと良いのですが……」

 

 ここはUSNAではなく日本。向こうが日本国民の隆誠に害する事をすれば、日本としても黙ってはいられない。

 

 達也もそれを理解しているに加え、あの隆誠がそんな簡単にやられたりしないだろうと考えている。(達也は決して認めないが)多少の心配をする程度だ。

 

 対して深雪は生徒会で一緒に仕事をする事もあって、隆誠と親しげに話せる関係となっていた。兄の達也を除く男子生徒達は少しばかり自分に遠慮するような話し方をしているが、隆誠は全く該当しないどころか普通に話している。深雪にとっては少し新鮮であった。

 

 警戒すべき人物であると分かっていても、九校戦前にやっていた取引(?)をした事で、深雪は達也と違って隆誠に対する信用度が高い。それを知った達也は、少しばかり面白くない顔になっていたのは気付いていないが。

 

 

 

 

 

 

「むぅ~~~~………」

 

「………姉さま、お気持ちは、理解しますが……」

 

 一軒家の屋根には、見目麗しい少女二人が座っていた。今の時間帯が深夜とは言え、もしも通行人が見たら騒ぐだろう。

 

 しかし、例え誰かの目に入っても素通りされる。その子達は人間ではなく精霊であり、姿が見えないように今も透明化している。大好きな主――隆誠からの命令によって。

 

 小柄でありながらも胸が大きな少女精霊――レイが頬を膨らませてる事に、少し身長が高くも青髪の見目麗しい少女精霊――ディーネは少しばかり呆れるように言っている。

 

 こうなっているのは、今も自室で眠っている隆誠を見てるからだ。正確には、彼と一緒にスヤスヤ眠っている弟の星士と妹の星羅を見てだ。ディーネもレイ程ではないが、二人を見て羨ましそうにしている事も補足しておく。

 

 隆誠達が眠って既に数時間以上経っており、未だに機嫌が直らないレイを見て、ディーネが窘める事にしたのだ。普段は(レイ)に従順であるが、妹としてこれ以上見ていられないが為に。

 

「違うの!」

 

 すると、心外だと言わんばかりにレイは否定した。

 

 では何が違うのかを改めて問い直してきたので、彼女は理由を話そうとする。

 

「ディーネも気付いてると思うけど、このところ変なモノが感じるの」

 

「変なモノ、ですか……」

 

 レイの言う通り、ディーネもここ最近気付いていた。精霊である自分とは違う何かが、この東京周辺に潜んでいる事を。

 

 本当であれば隆誠に報告すべきである。感じ取ったとは言っても、それほど大きな反応ではなかった為、レイとディーネは報告するに値しないと結論していた。

 

 だが、ここ最近何度も感知している。上手く表現できないが、嘗て水の精霊(じぶん)が悪性に染まりつつあった頃に似ていた。もし主の隆誠が助けてくれなかったら、あんな悪性の存在に成り下がっていたかもと思うだけで、ディーネは戦慄してしまう。

 

「レイ姉さま、朝になったら、主に、報告すべきかと、思います」

 

「……そうなのね」

 

 妹からの進言に、レイは隆誠に報告する事を決めた。自分達が考えても答えが出ない以上、主の隆誠なら何か分かるかもしれないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

(ダメです。此処からかなり離れているのか、それとも遮断されているのかは分かりませんが、此方の呼びかけに全く反応しません)

 

(私もだ。だが、何としても探し出す。必ずや我等の同胞を救い出すぞ)

 

 そして、隆誠の家から離れた場所より、正体不明の何者かが躍起になっていた。




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