再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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来訪者編 修哉の成長+母の看病

 話し合いの結果、俺達はそれぞれの役割を担う事になった。

 

 真由美が情報管制を担当し、十文字とエリカが実働部隊を率いて動く体制に落ち着いた。そして俺と幹比古は真由美の指揮下に入っての捜索班となっている。

 

 若干の棘がありながらも穏やかに終わった事により、幹比古から感謝される事となった。危うく自分の胃がキリキリ痛くなる破目に陥っていたかもしれないと心の底から助かったようだ。

 

 言われてみればそうかもしれない。もしも俺が仲介役にならなければ、エリカと真由美は敵意を見せながらも無言になってるだろうし、十文字も敢えて何も口出しをせずに見守っており、幹比古だけが一人で喋り続ける光景が目に浮かぶ。十師族と百家でもない一般人側の俺が纏めるなんて普通に考えておかしいが。

 

 ともあれ、役割が決まった事で一旦解散し、俺は剣道部がやってる闘技場へ向かって遅れながらのクラブ活動を行った。

 

 

 

「なぁリューセー、このところ千葉と吉田の様子が変じゃないか?」

 

 ルーチンワークになってる修哉との手合いを行い、小休止をしてる俺に問われた。

 

「変って?」

 

「西城の見舞いの後から、千葉が学校に来ては教室で寝てたり、吉田は保健室に何度も足を運んでるから、何か遭ったんじゃないかと思ってな。紫苑も不審がってたぞ」

 

 敢えて逆に問う俺に、修哉は具体的に答えてくれた。

 

 パラサイトの事を抜きにしても、修哉と紫苑が異変に気付くのは当然だ。いつも元気そうに学校に通ってるエリカと幹比古が、朝から体調不良と言わんばかりに日々が続いているのだから、逆に気付かない方がおかしいだろう。

 

 因みにレオが吸血鬼(パラサイト)に襲われた件については、(一部を除いた)魔法科高校の生徒には伏せてある。現在話題となってる「吸血鬼事件」の被害者に自分が通ってる学校の生徒も含まれてると知れば、必ず大騒ぎになるだろうと七草家と十文字家が箝口令を敷いたのだ。

 

 俺としても修哉と紫苑が首を突っ込んで被害に遭うのは嫌である為、今回は敢えて何も教えなかった。いくら俺が鍛えてるからと言っても、相手が人外の悪霊であれば分が悪過ぎるどころか、逆に精気を奪われてしまうのが目に見えてる。

 

「リューセーは何か知らないのか?」

 

「……さぁな。エリカは百家、幹比古は古式魔法師の名門で、どちらも有名な家系だ。恐らく家の関係で夜中に何か手伝わされてるかもな」

 

 俺の大事な友人に嘘八百を並べたくなかった為、敢えて遠回しに誤魔化す事にした。

 

 言っておくが嘘じゃない。パラサイトの捜索は名門の家系が行ってるから、その生まれであるエリカや幹比古はそれに関係している。流石に吸血鬼の事まで教える事は出来ないが。

 

「言われてみれば確かに……」

 

 修哉は思う所があっても、俺が嘘を言っていないと理解したみたいで、それ以上の口出しをしなくなった。一般人の自分が首を突っ込むべきじゃないと。

 

「エリカ達の様子が変でも、俺達は普通に接してれば良いさ。向こうもそうして欲しいだろうし」

 

「それもそうか。紫苑にも後で言っとかないとな」

 

 俺と話した事で、修哉はエリカ達の不審な行動を気にしなくなったみたいだ。

 

 もうこの話は終わりにするように、修哉が突然ある事を訊いてきた。

 

「ところで、このバンド更に重く出来ないか? 何かもうすっかり慣れて、余り重く感じなくてな」

 

「ほう……」

 

 修哉にバンドを付けた修行を課して半年以上経ち、今も中級用バンドを使用してるにも拘わらず、完全にモノにしたようだ。

 

 予想以上の成長速度に、師である俺としては非常に嬉しいのだが、チョッとばかり悲しくもある。前世(むかし)の頃、丸っきり戦いの才能が無かった(イッセー)を鍛えていた時は、じっくり教えながら成長させていた。あの頃に比べると余りにも速過ぎる為、個人的には少々物足りない気持ちだ。

 

 まぁ、俺の心情なんて如何でも良い。修哉を鍛えてる一番の目的は、達人クラスである紫苑の父親に勝つ為にやっているのだ。それを達成させなければ、あの二人は一生ただの幼馴染関係で終わってしまう。こう言うのはなるべく早く達成させるに越した事はない。俺としても修哉と紫苑の恋を成就させたいと願っているから。

 

「だったら明日、上級用バンドを用意しよう」

 

「え、マジか?」

 

「ああ。だけどアレは中級と違って格段に重いから、そんな直ぐに使える物じゃない。チョッとばかり様子を見させてもらう」

 

「分かった」

 

 級が上がると重さが全く異なる事を修哉は理解している。去年に初級から中級に変えた時、急に動けなくなった事を身を以て経験したから、今はこうして慎重になっているのだ。

 

 これで上級用バンドに慣れたら、完全に紫苑の父親を超えた身体能力を持つ事になる。尤も、流石に上級となれば相当の時間を要するので、半年掛かる事を考慮しなければならない。

 

 明日に備えようと、俺は今日の手合わせでもう一段階ギアを上げる事にした。修哉もそれに応えるよう、一層身を引き締めてくれている。

 

「うぉぉおおお! やってやる!」

 

「はっはっは! その意気だ!」

 

 取り敢えずバンドを外しての手合わせを再開し、俺は全力で攻撃してくる修哉の攻撃を楽しそうに捌いていた。

 

「……壬生主将、既に見慣れてるとは言え、あの二人の攻撃が早過ぎてもう目で追えないんですけど」

 

「あ、あはは……。兵藤君はともかく、あんなに強くなった修哉君はもう今のあたしじゃ、絶対勝てそうにないわね」

 

「壬生、もういっその事あの二人を剣術部にやった方が――」

 

「それは絶対ダメ!」

 

 俺と修哉の手合わせを見ている壬生達が何やら話していたが、敢えて気にしない事にした。

 

 

 

「さ~て、上級用バンドを用意しないと」

 

 午前のクラブ活動が終わり、午後以降は家でゆっくり過ごしながら明日の準備に取り掛かろうと帰宅している。

 

「ただいま~」

 

「兄ちゃん!」

 

「にぃに!」

 

 自宅に到着し入って早々、セージとセーラが出迎えてくれた。しかし、いつもと様子がおかしく、何やら慌ただしい感じがする。

 

「どうかしたのか?」

 

「ひっく、おかあさんが……」

 

「たおれちゃったの~!」

 

「ッ!?」

 

 急に泣き出しながら言ってくるセージ達の言葉を聞いた瞬間、俺は血相を変えてリビングへ向かった。

 

 その後、母さんの容態を確認するも命に別状はなかった。どうやら最近忙しくて疲労が溜まり過ぎた余りに倒れてしまい、挙句には風邪を引いてしまったようだ。

 

 これでは今夜の捜査も無理そうだと思った俺は、真由美に事情を説明しようと不参加の連絡をするのであった。

 

 

 

 

 

 

『え? 今日学校休むのか?』

 

「ああ、母さんの風邪が思った以上に酷くてな。ってな訳で修哉、悪いけどアレはお預けだ」

 

『ねぇリューセーくん、良かったら私達も手伝うわよ?』

 

「大丈夫だよ、紫苑。俺は普段から弟達の面倒を見てるから」

 

 週明けとなった月曜日の朝。

 

 昨日倒れた母さんの看病をするも、一日経っても治る気配を見せなかった。どうやら母さんの風邪は思った以上にしつこいようで、簡単に治るものじゃないと改めて認識した。

 

 だから今日は学校を休んで、引き続き看病する他に聖書の神(わたし)能力(ちから)を使って治療する事にした。と言っても瞬時にではなく、自然治癒力を高める為の加護を数時間置きに施すだけだが。

 

 他にも理由はある。母さんが風邪を引いている為、未だに小さいセージとセーラの面倒を見ないといけない為、今日は俺が代わりにやるしかなかった。授業が多少遅れた程度で何の問題も無いから大丈夫だ。

 

 学校の事務局に連絡した他、真由美にも引き続き捜査に参加出来ない旨を伝えてある。前者はともかく、後者に関しては居た堪れない気分だ。家の事情とは言え、立て続けに捜査に不参加となっては、協力関係になった真由美達に申し訳が立たない。だけど彼女は苦言を呈さないどころか――

 

『お母さんが倒れたなら看病するのは至極当然よ。だからこっちの事は気にしないで』

 

 ――と、逆に気遣われてしまった。

 

 因みにエリカ達には真由美の方から伝えるようだ。彼女の気遣いに俺は決めた。学校に登校する際、彼女に礼を兼ねたスイーツを作ろうと。

 

『分かった。じゃあ紗耶香さんには休んでるって俺の方から言っておく』

 

『もし何か遭ったら、遠慮なく私達に連絡して良いからね』

 

「了解。そっちも学校で何か起きたら教えてくれ……よしっ」

 

 そして電話で友人達の会話を終えた俺は、通話を切って早々、既に作った卵雑炊と水を持って母さんが眠ってる部屋へ向かう。

 

「はい、母さん。朝ご飯と水だよ」

 

「ゴホッ、ゴホッ……。ごめんなさいね、リューセー。学校休ませちゃって……」

 

 俺が入って来た事に気付いた母さんは、横になっていた身体を起き上がらせた瞬間に咳き込んだ。

 

「気にしない気にしない。さ、これ食べて。ちゃんと水も飲むように」

 

「本当に助かるわ……」

 

 病人の母さんを労わりながら笑顔で対応し、「食器は後で取りに行くから」と言って部屋から出ようとする。

 

(レイ、引き続きこの部屋の空気を常に清浄にするんだ)

 

 ――はいなの!

 

 部屋を出る寸前、透明化で待機させてるレイに風を作るよう頼んでいた。

 

 俺の家に空気清浄機は当然あるが、精霊は人間に心地好い神聖な風を作れる他、不調の身体を癒す効果もある。だからこうして母さんの部屋に待機させ、清らかな風を生成させている。流石に怪しまれないよう、空調機で誤魔化しているが。

 

 一応言っておくと、これはレイが自ら望んでやっている。主人(おれ)の母親に寄生した風邪(わるいもの)をやっつけたいと言ってきたのだ。確かに風邪はウイルス感染によるもので、人間の体内に侵入したのだから、寄生したと言うのは強ち間違っていない。

 

 だが、母さんの看病をサポートしているのはレイだけじゃなかった。

 

 ――主、私が生成した、水を、お母上殿は、お飲みに、なりましたか?

 

(ああ、さっき軽く飲んでいたよ)

 

 部屋を出た後、台所に待機していた(同じく透明化中の)ディーネが確認する様に訊いてきた。

 

 この子も母さんの風邪を治す為の力になりたいと言っていた。だから清水(せいすい)を生成するよう頼んだ。水の精霊は、人間の悪しき病を浄化する美しく澄み切った神聖な水を生成する事が出来る。ついさっき母さんが飲んでいた水が正にソレだった。

 

 聖書の神(わたし)の加護に加え、風の精霊(レイ)水の精霊(ディーネ)によるサポート。これなら母さんは全快するだろう。もしこれで治らなかったら聖書の神(わたし)の沽券に関わる事態に陥ってしまうが。

 

「にいちゃ~ん、おなかすいた~」

 

「にぃにのご飯たべた~い」

 

 既に起きていたセージとセーラがお腹を空かせていたようで、朝ご飯の催促をしてきた。

 

「今用意するから、そこに座って待ってな」

 

「「は~い」」

 

 俺の言う事を素直に聞いて返事する弟と妹は、すぐにリビングにあるテーブルにちょこんと座って待とうとしていた。

 

 さて、俺もご飯を食べた後、掃除と洗濯をしないとな。あ、そう言えば食材やセージ達が食べるお菓子も切らしてたから、今日は買い出しに行かないとな。

 

 今日も母さんに代わって主夫をする日になりそうだと思いながら、セージ達と一緒に朝食を食べるのであった。

 

 ずっと主夫業に専念していた為、昼休み頃に一高でパラサイトが侵入してきたなどと、この時の俺は全く知る由も無かった。




リューセーが霊体となったパラサイトと遭遇したら、ピクシーイベント消失してしまうので、今回も原作通りの流れにしました。
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