再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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来訪者編 意外な結果

 聖書の神(わたし)の加護と精霊(こども)達のサポートにより、母さんの容体は落ち着いたどころか、今まで以上に元気となった。風邪が治った事に、セージ達の面倒や家事をやっていた俺に申し訳なさそうに謝っていたが、「家族なんだから協力するのは当然だよ」と返した。

 

 そして翌日の朝。俺は学校へと向かう。

 

「おはよう、リューセーくん。大丈夫なの?」

 

「おはよう、紫苑、修哉。母さんはもうすっかり元気だよ。ところで、昨日は何かあったか?」

 

 教室へ来て早々親の容体を確認してくる紫苑達に、俺は元気になった事を簡単に教えた後、学校側の状況を訊いてみた。

 

「おはよう、リューセー。まぁ、多分……何か起きたと思う」

 

「多分?」

 

 修哉が歯切れの悪い返答をしてくるので、思わず不可解そうに目を細める。

 

 詳しく話を聞いてみると、物凄く不機嫌な生徒を見て何かが起きていたように思っていたそうだ。その生徒とは……何とエリカだった。理由は今も分からないが、昨日の昼休み以降から急に不機嫌になっていたらしい。因みに今も不機嫌のまま登校してるようだ。

 

 他にも司波、幹比古、柴田も一緒にいたみたいだ。その三人は何やら芳しくなさそうな感じが見受けられるも、何が起きていたのかが全く不明。話を聞こうにも剣呑な雰囲気を出してるエリカによって阻まれていた為、全く分からず仕舞いで今に至るとの事だ。

 

 エリカ達がそうなってるのは恐らくパラサイト関連で、余り喜ばしくない結果になったかもしれない。

 

 本当なら隣の教室に行って司波達に状況を聞きたいところだが、敢えてやらないでおく事にした。いくら俺が協力者とは言え、一昨日の捜査に不参加の他、昨日に学校を休んでいたのだ。そんな俺がノコノコとE組の教室に行って聞きに行こうとしたら、今も不機嫌なエリカが即座に噛み付いてくるだろう。

 

 だから司波達ではなく、真由美から聞く事にした。流石に食堂で聞くわけにはいかないから、敢えて生徒会室を利用させてもらう。新生徒会が発足された事で利用しなくなったが、別に使用禁止と言う規則はないから問題無い。加えて真由美にはお詫びの意味も兼ねて、今日はスイーツを用意している。彼女の事だからスイーツと聞いた途端、すぐに了承してくれるだろう。

 

「そうか。取り敢えず今のエリカに近付いたら不味いのがよく分かった」

 

「でも一体、本当に何が起きたのかしら。千葉さんがあんなになるって……」

 

 紫苑が不審そうに呟いたので、俺は首を突っ込ませないように敢えてこう言った。

 

「今は放っておいた方が良い。もしあの状態のエリカに関わったら、とんだ藪蛇になる可能性が高いぞ」

 

「……それもそうね」

 

「確かにな」

 

 俺の言葉に紫苑だけでなく、修哉も同感だと頷いていた。

 

「ところで修哉、今日は約束のバンド持ってきたから、クラブの時間になったら一回試すぞ。良かったら紫苑も初級から中級用バンドを試してみるか?」

 

 俺が修行用バンドの話題を出した途端、修哉と紫苑はすぐに食いついて、予鈴がなるまで会話は続いていた。

 

 

 

 

「司波。チョッと良いか?」

 

「何だ?」

 

「昨日の件について訊き――」

 

「悪いが俺はこの後やらなければいけない事がある。詳しい事は七草先輩に聞いてくれ」

 

 休み時間に運良く司波と会ったので話を聞こうとするも、暗に教えたくないと言いたげな素っ気ない態度だった。

 

 普段は簡単に説明してくれるが、俺を見た途端に一瞬不機嫌そうな表情となっていた。まるで嫌な事を思い出したように。

 

「もしかして、俺が妹と光井に教えたアレ恨んでる?」

 

「何を言ってるか分からないな。誰かの所為で変な誤解をした深雪とほのかを説得するのにかなり時間を要したが」

 

「……はいはい、俺が悪かったよ」

 

 降参する様に謝罪するも、司波は俺に話してくれる気は無いようだ。あの時の仕返しなのかは分からんが、ここは予定通り真由美に聞くしかなかった。

 

 恐らくコイツの事だから、それを理由にして(俺だけに)有益な情報を教えようとしないだろう。もしくは許す対価として何も聞かずに協力しろ、とか。

 

 まぁどちらにしろ、今の司波は俺に対する怒りの感情がある為、暫く放置するしかない。万が一に向こうからパラサイトの捕縛に手を貸せと言われたら、断る理由が無いので協力するつもりでいる。

 

 

 

 

「達也くん達は知らないだろうけど、昨日はもう本当に大変だったんだから!」

 

「そ、そうでしたか……」

 

 昼休み、俺はスイーツを食べながら不満をぶちまけている真由美の話を一通り聞いていた。

 

 今いる場所は生徒会室であり、つい先程まで彼女と昼食を済ませていた。

 

 前生徒会長の真由美と現副会長の俺が二人っきり。変な誤解をされるかもしれないが、浮ついた空気は一切無い。食堂でパラサイトの話をする訳にいかない為、人目の無い生徒会室を選んだだけだ。

 

 俺が電話で誘った時、少しばかりからかうような雰囲気を感じ取ったので、スイーツも食べれると教えた途端、予想通り「絶対行く!」と良い返事をしてくれた。

 

 生徒会室にあるダイニングサーバーを利用して軽く昼食を取りながら、一昨日までの話を聞く事が出来た。

 

 司波がパラサイトに仕込んだ発信機のお陰で確かに捉える事は出来ていたが、対象の捕縛まで至らなかったみたいだ。どうやら発信機の使い勝手が余りにも悪く、三時間おきに発信される特定パターンの電波を捉えても、向こうが相当の距離を移動していたと言っていた。

 

 日曜日の結果を聞き終え、今度は俺が昨日学校を休んだ話となった。どうやらパラサイトが校内に侵入してきたらしい。

 

 その日はマクシミリアンの社員が新型計測装置のデモに来る予定だった。しかし、その女性社員の一人がリーナの知り合いとは別に、覆面女のパラサイトであったとも判明。そこを司波妹が冷凍魔法で凍り付かせるも、何とパラサイトが自爆したそうだ。その後は司波達の誰かに取り憑こうとしていたところを阻止するも、結局は逃げられてしまう結果になったらしい。

 

 恐らく、司波は無様なものだと歯軋りしていただろう。敵を捕まえる事が出来ず、更には止めを刺せずに逃がしてしまうなど、アイツからすれば恥も同然の結果だと自己嫌悪してるに違いない。犠牲者が一人も出なかったと言うマイナスにならなかったとしても。

 

 因みにパラサイトの正体が交換留学生の知り合いだったと判明すれば、普通ならリーナを拘束してもおかしくない。だが敢えて逃がした事で、彼女がパラサイトと手を組んでいたと思い込んでいたエリカはお気に召さず散々異を唱えていたようだ。それを聞いた俺は、朝に修哉が教えてくれたエリカの不機嫌な理由が瞬時に納得した。

 

 そのリーナは昨日の件に関する事なのか、今日も学校を休んでいるらしい。パラサイトがリーナの知り合い=USNA軍の関係者なら、軍人の可能性が高い彼女は今頃USNA大使館で査問会をやらされているかもしれない。

 

 一通りの話を聞き、俺と真由美は同時に昼食を食べ終えた数分後、今度は食後のデザートとして、俺が作ったスイーツ『ふわふわシフォンケーキ』を用意した。

 

 その直後、真由美は一変した。昨日の事後処理の話に移った途端、やけ食いするような勢いでスイーツを食べ始めたのだ。他の生徒に誤魔化す為の隠蔽工作をするのに骨が折れたと、今もこうして俺に不満をぶつけていると言う訳である。

 

「………はぁっ。凄く美味しい紅茶ね。何か急に心が落ち着いてきたわ」

 

「それは何よりです。お代わりいります?」

 

「ええ、お願い」

 

 ずっと愚痴り続けていた真由美だったが、スイーツと一緒に持参した(水筒に入れた)紅茶を飲んだ後、先程の様子とは打って変わるように穏やかな表情となった。

 

 実は俺が持ってきた紅茶は、ディーネが生成した清水を使って淹れたのだ。母さんの風邪を治す為に使っていたが、これは病気以外にも、精神(こころ)を安定させる効力もある。さっきまで心が荒れていた真由美が急に落ち着いたのは正にソレのお陰だ。

 

「ねぇリューセーくん、今日みたいな事があったら、また頼んでも良い?」

 

「それくらいならお安い御用ですよ」

 

 今回起きてる吸血鬼事件は相当厄介なモノであり、同時に真由美が相当神経をすり減らしているのを理解した。

 

 俺としても、ソレで心が休まるのなら喜んで用意しよう。彼女には色々世話になり、助けられてる事もあるから。

 

「ありがとう。来月になったらお礼をするわね」

 

「来月? ………ああ、もうそんな時期でしたか」

 

 真由美の台詞に思わず首を傾げるも、カレンダーを見てすぐに分かった。それが二月であり、その月にとあるイベント――バレンタインがあったのを思い出しながら。

 

 義理とは言え、(今も片思い中の服部も含めた)一高の男子生徒からすれば喉から手が出るほど欲しがるだろう。

 

 そう考れば、彼女からチョコを貰える俺はかなりの幸せ者だ。周囲に自慢する気は毛頭無いが。

 

「俺以外にもあげる人はいるんですか? 例えば司波達也とか」

 

「ええ、勿論作る予定よ。チョッと(・・・・)苦い(・・)チョコをね」

 

 何故だろうか。真由美が突然黒くなった上に、台詞にも悪意が籠っているような感じがする。

 

 チョッと苦いチョコ、と普通に捉えてもおかしくない。だけど彼女の笑みが妙に黒い気がして、チョッとじゃ済まないじゃないかと思ってしまう。それだけ司波に恨みがある、と言う証拠なのだろうか。

 

 ………まぁいい。司波が真由美から苦いチョコを食わされたところで、俺には如何でも良い事だ。

 

 だがそれでも、俺も苦いチョコを食わされる可能性がありそうだ。出来れば巻き添えは勘弁して欲しい。

 

「あ、大丈夫よ。リューセーくんは甘いチョコだから心配しないで」

 

 俺の考えを読んだのか、真由美は安心させるように言い切ってくれた。さっきまでチョッと冷や冷やしていたのは内緒だ。

 

「そうですか。もし出来れば甘さ控えめのビターでお願いします」

 

「了解よ」

 

「因みに司波の方ですけど、苦いチョコを作るならカカオ九十五パーセント、糖類ゼロパーセントのチョコの他に、エスプレッソパウダーでも混ぜてみたらどうですか?」

 

「あら、それは名案ね。今日の帰りに買っておかないと」

 

 図々しいお願いかと思いつつも、真由美は俺のリクエストに応えようと甘さ控えめのチョコを作ってくれるようだ。それだけスイーツのお礼をしたい、と言う事にしておくとしよう。

 

 因みに司波のチョコに関しては百パーセント冗談で言ったつもりなんだが、本気でやりそうな雰囲気を感じた。もしそんな物を食べたりしたら、如何に普段から無表情の司波でもタダでは済まないと思われる。食べたら吐き出す、もしくは胃に異常(ダメージ)が起きるかもしれない。

 

 一応俺が考案した事を言わないよう念を押しておくと、『誰にも言わないから安心して』と笑顔で答える真由美であった。

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